第五回は、テイスティングをする際の流れについて、その③です。
前回のその②で、香りについて触れましたので、今回は味わいについて確認していきましょう。
文/富田 葉子
【目次】
①味わいの取り方

口に少量のワインを含みます。「少量」は、ご自身の含みやすい量で構いません。たとえば本年度の日本ソムリエ協会教本ですと「5〜10ml程度」となっています。だいたいティースプーン一杯分くらいでしょうか。そしてワインをお口に含んだら、そのまますぐに飲み込んでしまわないで、口中にいきわたらせて味わいをしっかりと確認してから、吐器に吐き出します。吐器は、アカデミー・デュ・ヴァンの授業ではお馴染みの、茶色っぽい紙コップのことです。使い捨てで、大きくて中身が見えないようになっているのですね。私はおうちで、細長いステンレス製のコップで代用しています。
ここで吐き出さず飲みこみたいという方は、飲みこんでも構いません。過去には「酒の一滴は血の一滴」ということで、絶対に吐き出さない!と言うことを信条にしている方もいらっしゃいました。楽しくなりすぎて人様に迷惑をかけることがなければOKです。ただ、やはりアルコールが入って酔っ払ってしまうと、どうしても集中力も記憶力も落ちてしまいますので、特に試験勉強中や真面目に学びたいという方は、できれば吐き出していただくことをお勧めしています。口に含んだものを人前で吐き出すというのは、大人になってから多くの方があまりしたことがないと思いますので抵抗感を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、ワインのテイスティングでは当たり前のこととなっていますから気にせず実践してください。たとえば、私どものようにワインの仕事をしていると、100種類のワインを飲んでティングコメントを書いたり評価したりするというような場合もあります。一口ずつだとしても全て飲み込んでいては流石に酔っ払ってしまいますので、全員が吐き出しています。ちなみにそういう場で同席させていただく、ベテランのジャーナリストやソムリエの方々は、吐き出し方も非常にスピーディーで無駄がなく、かっこいいなぁと思ったりします。私はあまりスタイリッシュに吐き出せないのですけど、みなさまはかっこよく吐き出してください。笑
こうして、お口に入れた時の印象や、酸味や渋味、アルコールの量、全体的な重さ、吐き出した後の印象などをみていきます。
②味覚と訓練について
