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ワイン産地における森林火災被害
今年は雨が多い印象ですが、日本に台風が上陸しないのは2008年以来だそうです(気象庁データ;10月20日現在)。
関東地方にも長雨を降らせた14号は、南の海上でUターンという異例のルートで過ぎ去りました。
私はアウトドアが趣味で、この夏もよくフィールドに出かけていたのですが、本当によく雨に降られました。
そういえば、梅雨明けは8月に入ってからでしたね。
数年前までは「異常気象」とよく耳にしましたが、最近では「異常」が日常化して、地球規模の気候変動をより身近に感じるようになりました。
世界のワイン産地の「センス・オブ・プレイス」にも大きな影響を与えています。
頻発している山火事もそのひとつで、昨年末から今年のはじめにかけてはオーストラリア各地で大規模な森林火災が発生し、一部のワイン産地にも被害をもたらしました。
そして季節は巡り、北半球の夏。今度はナパ、ソノマに火災の被害が及んでいます。
オーストラリア、南アフリカ、カリフォルニア。
私にとって縁の深いワイン産地は、主に乾燥した温暖な気候で、熱波、強風、乾燥と三拍子揃えば大規模な火災を招くリスクを抱えています。
今回は、近年特に深刻さを増しているワイン産地における森林火災被害についてお伝えしようと思います。
一般的に森林火災は「bushfire (ブッシュファイア)」や「wildfire (ワイルドファイア)」と呼ばれますが、出火元や延焼エリアの地名をとって、特定の名称が付けられます。
8月17日、ナパ郡ラザフォードのヴァガ山脈内で落雷によって出火した「Hennessy Fire(ヘネシーファイア)」は、いざこれから収穫期本番というブドウ畑を煙で覆い尽くしました。
9月27日には「The Glass Fire (グラスファイア)」が発生し、カリストガからセント・ヘレナにかけて延焼。歴史ある有名なワイナリーやブドウ畑、カリフォルニア最古のリゾート施設、ホテルやレストランなどが焼失してしまいました。
ワインスクール
アカデミー・デュ・ヴァン
はじめての方からワインの奥深さを追求される方まで、幅広く講座を開講しています。講師にはワイン業界をリードする現役のプロフェッショナルや、生産地から生産者をお迎えしています。
プレミアムワイン産地に甚大な被害をもたらしたこれらの火災ですが、物理的に焼失を免れたとしても、煙に晒されたブドウの汚染「スモークテイント(煙害)」の問題が残ります。
これは、木が燃える時に発生する揮発性フェノール物質が煙で運ばれブドウの果皮に付着し、ブドウの糖分と結合してグリコシド(配糖体)という化合物となり、そのままの状態では無味無臭なのですが、アルコール発酵やその後の熟成中に分離することで、ワインにスモーキーな風味が現れるという現象です。
そのため、ブドウの糖度が上がり始めるヴェレゾン(色づき)以降に汚染のリスクが高まるのですが、煙に晒されたブドウが、どの程度汚染されているかということは、研究所で分析してみないと判定できないこともあり、生産者たちは難しい判断を迫られるのです。
ソノマやナパを襲った2017年の火災は、ほぼ収穫を終えていた10月上旬だったため、ワイン産業への被害は限定的ということでしたが、今年は収穫期序盤から発生したため、多くのワイナリーが生産を見合わせるという苦渋の決断をしているのです。
ただでさえ、コロナの影響で地元の観光業や飲食業がダメージを受けている中、今度はワインの生産現場を火災が襲ったのです。
もちろん、被災エリアに住む人々の日常も奪われます。
私たちの日常にたくさんの喜びをもたらしてくれるワイン。
その造り手が直面している惨事に心を痛め、何か出来ることはないか、という想いを形にすべく、今年1月には、被災したオーストラリアのワイン産地を支援しようとチャリティーイベントを開催しました。
そして11月7日には、カリフォルニアワインのスペシャリスト山本香奈先生も同じ想いでチャリティーイベントを開催します。
個人の出来ることは限られていますが、気候変動について考えるきっかけとなれば、そして、一人でも多くの想いが被災地に届けられるよう願っています。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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高橋佳子 Yoshiko Takahashi
JSA認定ソムリエ、SAKE DIPLOMA
WSET® Level4 Diploma in Wines and Spirits
A+オーストラリアワイン・トレード・スペシャリスト
ワインサービス、インポーター、卸、と多角的にワイン業界に携わった経験と、オーストラリアの生産者の元で学んだ経験を活かし、フリーランスでワインコンサルタントとして活動中。
ワインで繋がるご縁を大切に、自然体なライフスタイルに寄り添ったワインの魅力を伝えていきたいと思っています。