葉山考太郎の新痛快ワイン辞典 Vol.32

葉山考太郎,ワイン,ボキャブラリー,辞典,ワイン用語

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葉山考太郎先生が1999年に出版した『辛口・軽口ワイン辞典』(日経BP社)の続編です。ワインに関する用語が、葉山先生特有の痛快な語り口で解説されています。
今回は、「ろ」で始まる語、「わ」で始まる語をお届けします。

ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」が監修しています。ワインを通じて人生が豊かになるよう、ワインのコラムをお届けしています。メールマガジン登録で最新の有料記事が無料で閲覧できます。

見出し語について

(1) アルファベットで始まる語はカタカナ表記で配列した。【例】AOC⇒エー・オー・シー

(2) シャトーやドメーヌが付くものは、それを除いた見出し語で収録した。【例】シャトー・ラヤス⇒ラヤス、シャトー

(3) 人名は、「姓+名」で収録した。【例】ロバート・パーカー⇒パーカー、ロバート


■ろ■

ローラン、ドミニク (Dominique Laurent)

1988年ごろ急浮上したブルゴーニュのネゴシアン。身長165センチ120キロ、将棋盤に手足みたいにコロコロして、甲高いハスキー・ボイスでしゃべるオジサン。新樽200%、シュール・リー方式、ヴィエーユ・ヴィーニュ、フィルターなしが基本方針。好みがパーカーと似ていることから、高得点をもらい、今ではルロワに次いで人気が高い。樽買いしたグラン・クリュを自分で作った樽に詰め替えるだけなのに(新樽200%はこれに由来)、出来るワインは全く別物。新樽を使うが、樽香があまりないのは本当に不思議。(関連項目:新樽200%、老人ホーム慰問作戦)

 

ローラン・ペリエ (Laurent Perrier)

6大シャンパーニュ・メゾンの一つ。種類の多彩さはダントツで、泡の出ない普通のワインまで何種類も作っている。「シャンパーニュの百貨店」という感じ。看板はグラン・シエクル。「ローラン・ペリエ」は名前が長いので、プロはLPと略す。

 

ローランサン、マリー (Marie Laurencin)

1948年のムートンのラベルを描いたフランスの女流画家。青白い肌の病的でロマンチックな少女を好んで描く。フランス版竹下夢二。日本の女性に抜群の人気で、長野県蓼科にマリー・ローランサン美術館があったが2011年に閉館。2017年、この美術館の作品を東京紀尾井町のホテル・ニューオータニに移転し、再オープンするも2019年に閉館したのは残念。作風ゆえ同性愛を疑われたが、ピカソに紹介された現代詩の元祖、アポリネール(シャンソンの『ミラボー橋』の歌詞で有名)と仲よくなり同棲。でも、アポリネールがモナリザ盗難容疑で警察に拘留されて以来、非常識さに耐えかね不仲に。ローランサンがムートンに描いた絵は、ブドウと女の子が二人。バッカスに仕える巫女さんで、ホッペタがふっくらした天平美人風。ちなみに、私は、「マリー・ローランサン」の文字を並び替えると、「サラリーマン・ローン」になることを発見。それがどした?と言われればそれまでだけど……。

 

ろうじんホームいもんさくせん(老人ホーム慰問作戦)

ブルゴーニュのスーパースター、ドミニク・ローランによる頭脳的作戦。ブルゴーニュは排他的で閉鎖的。ヨソ者に辛くあたる。それを十分承知していたドミニク・ローランは、スイスに近い町からブルゴーニュへ引っ越したとき、ワイン作りを引退した老人を尋ねて相手をし、話を聞いた。長老達は話好きで暇がタップリあるのに、地元の若い連中は煙たがる。だから、ローランは長老からコテコテに可愛がってもらった。長老は醸造技術や畑の良し悪しを熟知しているだけでなく、現役生産者にも顔が利くしコネもある。これにより、ヨソ者のローランが、良い畑の良いブドウを売ってもらえることに。これは、ワイン作りの技術以上に重要なことで、ローランの作戦勝ち。(関連項目:ドミニク・ローラン)

 

ろくシー(6C)

ワインをたっぷり飲んだ贅沢なディナーで食後、デザートと共に楽しむ6種類の物。シャンパーニュ、チーズ、チョコレート、コニャック、コーヒー、シガーで、いずれも頭にCがつく。この中から適当に2つ選べば間違いない。2つのCの後は、7番目のC(抱擁:caress)が待っている……。

 

ロブション、ジョエル (Joel Bobuchon)

1945年生まれ。フレンチの名シェフ。伝説のテレビ番組、『料理の鉄人』に登場したこともある。数多くの料理コンクールに出場して優勝した。マスコミに出たがるシェフが多いのに、いつも厨房にこもる真面目な人。「パリ日航ホテル」でシェフを勤めたあと、3ツ星レストラン、「ジャマン」のオーナーとなる。常に新しい料理を考案しなければならないトップ・シェフの激務からか、宣言通り50歳で引退し、店をアラン・デュカスに譲った。カッコよすぎ?

 

■わ■

 

ワイン・コーディネーター (Wine Coordinator)

1997年から日本ワイン・コーディネーター協会が認定する資格。筆記、口頭試問、サービス実技がある。受験資格は、協会会員であり、指定の講習を受けていれば、実務経験や職業を問わない。入会金1万円、年会費9千円、受講料1万8千円、検定料1万2千円、合格後の認定登録料が2万5千円。計7万4千円。実務経験が必要なソムリエ試験を受けられない愛好家を狙ったのだろうが、高価だし資格のインパクトが弱いので人気はイマイチの気がする。

ワインスクール
アカデミー・デュ・ヴァン


はじめての方からワインの奥深さを追求される方まで、幅広く講座を開講しています。講師にはワイン業界をリードする現役のプロフェッショナルや、生産地から生産者をお迎えしています。

 

ワイン・バーのグラス・ワイン

大抵のワイン・バーで出すグラス売りのワイン。ある意味、その店の顔。出るグラス・ワインには、店によって以下のように6つのタイプに分類できる。

  1. 大魔神型:チリ・ワインからロマネ・コンティまでなんでもグラスOK、どこからでもかかってこいという意地のカタマリみたいなワインバー。こんな店はいつ行っても満席。
  2. 8割打者型:高価な超レア物やシャンパーニュ以外は何でもグラスで売るの店。「大魔神型」と同様、こんなワイン・バーはとても少ない。
  3. 小判ザメ型:最初の客が開けたワインがその日のグラス・ワインになる方式。ゲブルツトラミネールみたいなマニアックな白や、リープフラウミルヒみたいな「お子様ワイン」を頼むと、後の客は困るかも。客中心のように見えるが、ワイン・バーの「責任」を放棄している? 
  4. 固定相場型:ワイン・バーの大部分がこのタイプ。赤白を2、3種類づつにシャンパーニュを1種類、店が選んで出すもの。その中に、有名なワインや無名のスーパー・スターがあるかが勝負。
  5. テキトー型:業者に言われるまま、新世界の安い赤白をテキトーに見繕って出すタイプ。テーブルの間隔が狭く、居酒屋風のオネエサンがセカセカと出てきたり、ピアスをした高校生のバイトがヘロヘロ注文を取りに来たらこの手の店。そんな店はすぐにポシャって、ブランド物のディスカウント店か薬屋に変身する。
  6. 反主流派型:グラス・ワインの重要性を認識しながらも、グラス売りは一切しない、ある意味で潔い店。稀に完全殿様商売型の店もあるが、オークションで競り落とした古酒を市価の半額で売るなど、意外に超マニアックなワインを揃える。なぜか、隠れ家的な店が多い。

 

『ワイン用葡萄ガイド』 (“Jancis Robinson’s Guide to Wine Grapes,” 1996)

ウォンズ・パブリッシングが1999年に刊行したジャンシス・ロビンソン著の翻訳書。800種のブドウを解説。ヒェー。各品種が高級ワインになるかどうかを記号で表しているのは面白いが、ピノ・ノワール、グルナッシュ、シャルドネで十分な私には資料的価値しかない。マジャルカ・アルバ、ウーヴァ・ラーラ、ブリュン・フルカなど、99%のブドウは初耳だが、覚えても役に立ちそうにない。順調に版を重ねているが、誰が買っているんだろう?

 

『ワインをどうぞ』(ワインをどうぞ)

ソムリエ資格を持つJALスッチーを写真入りで総出演させた幻の本。ワイン本というより、スッチー版「プロ野球選手年鑑」なので、いっそ水着写真にすればもっと売れたハズ。掲載顔写真の撮影年が実際の「ヴィンテージ」より若目で、「出来の良い樽」から持ってきたのはご愛敬。この本のウリは、スッチーが足で集めた「世界のワイン・ショップ、レストラン詳細情報」らしいが、国内旅行もままならない庶民には、「モスクワは明日雨だから、傘を持って行かなきゃ」とオチョクられるNHKの「世界の天気予報」みたい?

 

われはムートン(我はムートン)

ムートン・ロートシルトがラベルに書いた有名な文句。ムートンは、1855年のメドック格付けで1級になれなかった口惜しさから、「1級にはあらねど、2級たるを認め得ず。我はムートンなり」とラベルに印刷したのは有名な話。ヘェー、カッコイイ文句だなぁと思ったら、ロアン公の「王にあらねど、王子たるを認め得ず。我はロアンなり」をもじったもの。他人の力をうまくマーケティングに利用するのがムートンのお家芸で、毎年違う画家に描かせるラベルもその好例。(関連項目:ムートン)

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2020.12.25


葉山考太郎 Kotaro Hayama

シャンパーニュとブルゴーニュとタダ酒を愛するワイン・ライター。ワイン専門誌『ヴィノテーク』等に軽薄短小なコラムを連載。ワインの年間純飲酒量は 400リットルを超える。これにより、2005年、シャンパーニュ騎士団のシュヴァリエを授章。主な著書は、『ワイン道』『シャンパンの教え』『辛口/軽口ワイン辞典(いずれも、日経BP社)』『偏愛ワイン録(講談社)』、訳書は、『ラルース ワイン通のABC』『パリスの審判(いずれも、日経BP社)』。

 

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