日本のビジネスシーンでも、ワインの存在感が日増しにマシマシになっている昨今。パンデミックで接待メシが「休憩中」のいま、カゲ勉で基本マナーぐらいは身につけときましょう。まずは形から入るのが大切です。まずはグラスの持ち方から。サイコキネシスをもたない一般人は、ワインを飲む前にグラスを手にもつことが欠かせません。
文/バーニー山犬
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【目次】
①千里の道も一歩から
②ワイングラスの正しい持ち方
③ソムリエ持ちは実用性ゼロ
④ボウル部分をもつのは御法度なのか?
⑤今回のまとめ
①千里の道も一歩から
ビジネスツールとしてのワイン、なんて言葉をよく聞くようになりました。最近はフレンチやイタリアンでなくても、たいてい何かしらワインを置いているようになってきましたし、「ワインにこだわる鮨屋」とか、まったく珍しくなくなっています。よって、接待メシの場に、ワインが登場する頻度はぐっと増えたわけです。会食相手がわざわざワインをチョイスするような人の場合、ゴルフなどと同じく、ワイントークがきっかけで商談がまとまることだって珍しくありません(ワタシ超得意です、そういうの)。だから、ビジネスパーソンの皆さんは、ワインがわかるようになっといたほうがいいですよ、というのがこの特集です。
とはいえ最初に言っときます。ワインの道は、長く険しいです。山あり谷あり、崖もあれば落とし穴ありの道中で、そんな簡単なモンじゃありません。
ただ、考えてみればなんだってそうですよね。ゴルフでも、コースに生まれて初めて出て、100以下のスコアで回れる人なんかいません。みんな、地道に練習して、ちょっとずつ上達するんです。ワインだって同じ。一歩ずつでも前に進むかぎり、いつかあなたも必ずワイン上手になります。ワイン道はゴルフと同じく、美しい景色が眼前に広がる楽しい道のりでもあるので、あせらず少しずつ歩んでいきましょう。
最初のレッスンではまず、ワインにおけるゴルフクラブ、すなわちグラスの持ち方を覚えます。なにはなくとも、グラスぐらいちゃんと持てなきゃね。
②ワイングラスの正しい持ち方
たかがグラス、されどグラスです。持ち方ひとつで、あなたの文明人としての開化度合いが、いっしょにテーブルを囲むひとたちに知れてしまいます。ナイフとフォーク、あるいは箸が用意されているのに、手づかみで料理をむしゃむしゃやりはじめる野蛮人と、ゴハンを食べたくないですよね(例外:インド料理を食べるインド人)。ワイングラスは正しくもちましょう。すべてはそこからです。
正解から入りますね。この写真のような持ち方です。脚またはステムと呼ばれる部分を、指でつまむようにしてもちます。常に片手です。両手で捧げ持つ必要はありません。
ゴルフクラブの握り方にも、なぜそうすべきかの合理的な理由があるのと同じように、ワイングラスの正しい持ち方にも「なるほど」という必然性があります。鍵となるのは、ワインを飲むべき温度です。白ワインであれ赤ワインであれ、はたまた泡がシュワシュワするスパークリングワインであれ、ワインを飲んで美味しい温度は低めです。タイプによってスイートスポットは変わるものの、7~20℃のあいだ。ワインには熱燗もなければ、ぬる燗もありません(ホットワインというのがあるにはありますが、それはまあこの際おいておきましょう)。脚(ステム)の部分をもつのは、手の温度、体温がワインに伝わって、グラスの中身がぬるくならないようにするためです。
ワインスクール
アカデミー・デュ・ヴァン
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③ソムリエ持ちは実用性ゼロ
この正しい持ち方、脚(ステム)の部分を指でつまむ方法のバリエーションとして、台座の部分をもつというやり方もあります。この写真のようにです。
これは、通称「ソムリエ持ち」と呼ばれるものですが、限定的なシチュエーション以外ではおススメしません。なぜなら、まったく実用性がないからです。だいたい、こんなふうにグラスを持とうとおもったら、いったん脚(ステム)の部分を片手の指でつまんでテーブルから持ち上げてから、もういっぽうの手で台座を持つという、二段階プロセスを踏まねばなりません。アホくさいです。また、ワインが入ったグラスの重心(ボウルの底付近)と、手の距離が遠くなるので、うっかりすると中身がオットットとこぼれるリスクすらあります。
こうした持ち方が推奨される唯一のシチュエーションとは、「カッコつけたいとき」です。しかも、宣材写真を撮るような場合に限られます。有名ソムリエさんのプロフ写真で、こういう持ち方をする人が多いことから、その通称がつきました。ただし、もしあなたが食卓でカッコをつけたくても、この持ち方はやめときましょう。ごていねいな二段階プロセスを踏んでグラスを持つところを、いっしょにいる人たちはじっと見ているからです。「この人、もしかしてバカ?」と思われる可能性すらあります。
④ボウル部分をもつのは御法度なのか?
ワイン・リテラシーが低いと一発でバレるよくない持ち方が、ワインのボウル部分をむんずとつかむというものです。通称「ボウル持ち」。
なぜかというと、手の温度がグラスの中身に伝わって、ワインがぬるくなってしまうから。また、ボウル部分に指紋のあとが残ってしまうため、「なんかこの人、グラスがきちゃない」と思われがちです。なお、この「ボウル持ち」のバリエーションとして存在する下の写真のような作法は、人肌が推奨飲用温度であるブランデーを飲むときのもの。初心者はゼッタイやってはならないのですが、上級者になると、「なんだこのワイン、冷たすぎるじゃないか。まったくこの店のソムリエはなってないな。どれ、少しグラスの中でワインを温めてやるか」と、あえてこの持ち方をするときがあります。
なお、「ボウル持ち」について、知っておくべきことがひとつ。欧米における公式な晩餐会やパーティなどのあらたまった場では、この「ボウル持ち」が正しいマナー、正解だということです。「あ、そういえばオバマ元大統領が、こうやってグラス持ってた」と思い出した人もいらっしゃるでしょう。オバマさんはワイン好きですから、TPOをわきまえて、あえてそう持っていたのですね。
⑤今回のまとめ
どうです、道のりはなかなか長そうでしょう?タイトルを見た時点では、バカにしてんのか、グラスくらい持てるわい、と鼻で笑っていませんでしたか?ワイングラスの持ち方ひとつとっても、奥が深いんですよ。でも、これでもう覚えましたね。「脚(ステム)の部分を片手の指でつまんでもつ」のが、正しいお作法です。ただ、大統領的な立場の人は、「ボウル持ち」をしましょう。
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バーニー山犬 Bernese Mountaindog
大手広告代理店の営業担当執行役員を本業にしつつ、ワインライターとして活動する社交ドリンカー。年間100回以上のクライアント接待をこなし、ガンマGTPの瞬間最大風速が4桁に達した経験をもつ「職業病的ワイン依存症」である。欧米赴任中を含め、ワインの力で商談をまとめた実績数もまた、4桁に達する接待メシの達人。