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流行りの「横丁」スタイル
飲食業界での最近の流行は「横丁」スタイルである。
6月に虎ノ門ヒルズにオープンした「虎ノ門横丁」の様子は、みなさんきっとどこかで目にしているだろう。
今日ご紹介したいのは、広尾の「EAT PLAY WORKS」。
7月20日にオープンした最新スポットで、横丁スタイルになった1〜2階のレストランフロアには、あの名店この名店の新業態17店舗がずらっと並んでいる。
どの店もリアリティのある価格設定で、オープン早々に訪れたのだが、またすぐにでも行きたいと、いま本気で思っている。
それぞれの店はカウンター中心に20席弱というこぢんまりした大きさ。
店同士を仕切る壁はなく、テラス席に違う店の料理を持ち寄ることも可能だ(ただしキャッシュオンではない)。
いくつか店を紹介したい。
訪れた日に私が食事したのは、1階にある「寿志團」。
ここは、銀座の予約の取れない店「はっこく」の新業態である。
昼3千円、夜5千円というおきまりが基本で、子連れOK、予約不可。
昨年、やっとのことで予約を入れて「はっこく」を訪れ4万弱払った私には衝撃のスタイルであった。
もちろん、新業態であるからもろもろは全く異なるのであるが、キリッとした赤い酢飯で食べる握りがこの値段とは。大満足だ。
ちなみにシャンパーニュをオーダーすると、料理代よりそっちの方が高くなる。が、そんなことはワイン好きにはよくあることだろう。
人気フレンチ、「レフェルヴェソンス」の新業態は、クラシカルなビストロ料理を出す「ビストロ ネモ」。
「レフェルヴェソンス」で技を磨いた根本シェフの料理に期待を寄せる声が、周りでもとても多い。
料理はアラカルトスタイルで、チラッとメニューを見たら、パテアンクルート、魚のパイ包み焼き、ブイヤーベース、牛頰肉の赤ワイン煮込みと、本当にクラシカル。
それがこんなに気軽なスタイルで食べられるなんて!
ランチ営業をしない代わりに、午後3時からオープンし、ワイン一杯と料理一皿でもどうぞとのことだ。
おそらく17店舗の中で、ワインが一番充実しているのは、スペイン料理店「グラシア」だろう。
スペインや日本橋の「サンパウ」で活躍していたシェフの店で、姉妹店にはあたらないが、ワインリストは日本橋の「サンパウ」のソムリエと相談して作っていると話してくれた。
小さな店に55種類ものワインを揃えている。
ワインといえば、大越ソムリエのベトナム料理店「アンディ」の新業態、「アンコム」という店も入っていた。
しかしこちらは、なんとベトナム料理に日本酒を合わせるという新提案であった。新しい体験を楽しめそうだ。
個人的に次回訪れてみたいと思っているのは、最近発売したビーガンレシピ本が人気の、外苑前「The Burn」の米澤シェフが手がけるベジタリアン料理の店「サラーム」。
いろいろな角度から、今後火がつきそうなビーガンやベジタリアン料理。
いち早く体験するならぜひこの店をお勧めしたい。
博多からは、「豚そば月や」という豚骨ラーメンの店が上陸していた。
壁のない横丁スタイルで、豚骨臭が漂ったら大変なのではと思ったが、ここは全くあの匂いがしない。
脂も全部取り除いて、澄んだ綺麗なスープをとっているという。
ラーメンには詳しくないけれど、締めに食べるのも大いにありだろう。
こんな具合に17店全てを紹介したいくらいだが、決して回し者ではないので、この辺りで。
しかし、本当に毎日でも通いたくなる魅力的なスポットなので、ぜひ、訪れてみて欲しいと思う。
もちろん、訪れる際は、店側でも気を遣っているが、こちらもコロナ対策を万全に。
特に1階席にはテラスもあり、窓も多く、風も流れていた。
ちなみに3〜6階はメンバーシップのワーキングスペース。
これらのレストランがすぐ下にあるのは多いに魅力だ。
コロナ禍で働き方も変わってきた今、ご興味のある方は各自問い合わせてみてください。
▶︎EAT PLAY WORKS/THE RESTAURANTのウェブサイトはこちら
2020.07.31
浅妻千映子 Chieko Asazuma
J.S.A.認定ワインエキスパート。
1972年東京生まれ。聖心女子大卒、大手建設会社で3年間のOL生活ののち、フードライターに。
著書に『食べたきゃ探そう』(時事通信社)、『東京広尾 アロマフレスカの厨房から』『パティシエ世界一』『江戸前「握り」』(すべて光文社)。『東京最高のレストラン』(ぴあ)採点者としても活躍。パティシエをテーマにしたマンガ『キングスウヰーツ』(全5巻 小学館)の原案を担当。近年は『dancyu』などの媒体でもレシピを公開。人気サイト「All About」でプラチナレシピのガイドも担当している。