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「土とワイン」を読む。
著者は、土壌がワインの味わいにどのように影響するかは
今の科学では証明できないだけで、
ワインの中に明らかに土壌を感じ取ることができると言う。
だが、現行農法のブドウや近代的醸造法で造られたワインは
化学薬品にまみれ個性の無い画一的なものになる。
一方、有機で育てられ土に深く根を張るブドウは
土壌の個性を反映するワインになると説く。
(なるほどある程度は納得できる意見だ。)
と言う訳で、この本で著者が推すのは
ビシッと気合の入った世界の自然派ワイナリー。
この本は土壌ごとに分類された自然派ワインの紹介本だ。
著書では、花崗岩や石灰岩、重粘土と言った、
土壌の違いごとに世界の代表的な産地をまとめる。
そして産地ごとに著者が推す生産者が紹介されている。
土壌ごとのワインのキャラクターのイメージが構成されてくるという
面白い切り口だ。
ただ、残念なことに非自然派ワインへの悪口が凄い。
ボジョレー・ヌーヴォーに至っては「毒入りシチュー」と罵倒。
著者が言いたいことは分からないでもないが。。。
どれ、同じボージョレでもそんなワインとは全くスタイルの異なる
自然派の巨頭、フィリップ・パカレのムーラン・ナ・ヴァンでも飲んでみようか。
いくら自然派でも樹齢が若ければ根は浅く、土壌の個性派表現しないだろう。
パカレのガメは樹齢60年以上。ボージョレの大地にしっかりと根を張った古樹だ。
ムーラン・ナ・ヴァンに特徴的なマンガンを豊富に含む赤い土壌を思い浮かべながら
そのキャラクターをしっかりと楽しもうではないか。
ボージョレの概念が覆る。
土とワイン
著者:アリス・ファイアリング、パスカリーヌ・ルペルティエ
出版社:エクスナレッジ
「ナパヴァレー完全ガイド」を読む。
ナパの虜になった濱本純氏の著。
12年前に出版された前著「ナパヴァレーの休日」と比べて
なんとナパの変容激しいことか。
この本をただ読むのも良いが、前著と読み比べるのも一興。
同じ著者、同じテーマの著書の12年違い。
同一ワインでヴィンテージ違いの試飲のようで楽しい。
たった12年でナパワインのスタイルも大きく変わったが
ナパというワイン産地そのものも
いかに凄まじい変化をしたかが良く分かる。
もちろん、ナパの最新情報がぎっちり詰まっている。
ワイナリーの紹介は言うに及ばず、
ワイナリーツーリズム、レストランなどの情報、
エリアガイドからナパの歴史まで。
現地にオフィスを構え地元に溶け込んだ濱本氏ならではの
ナパを網羅した一冊。
これを片手にナパを訪問すれば楽しさ倍増は間違いなしだ。
さて、この本を読みながら飲むのはもちろんナパワインだ。
1976年のパリ・テイスティングにおいて、
ムートンやオー・ブリオンを押しのけ
見事1位を勝ち取ったスタッグス・リープ。
カリフォルニアが世界に飛躍するきっかけを作った、
その偉大なワインの栄誉を称えてグラスを捧げようではないか。
ナパヴァレー完全ガイド
著者:濱本純
出版社:世界文化社
2020.06.05
遠藤利三郎 Risaburo Endo
本名遠藤誠。三代目遠藤利三郎を襲名する。
ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュの3大ワイン騎士団を始め多くのワイン騎士団から騎士の称号を受ける。世界の歴史や文化の視点からワインをわかりやすく語り、ワイン以外の酒類やシガーにも幅広い知識と愛情を持つ。著書に「ワイン事典(学研)」、監修に「シャンパーニュ・データブック(ワイン王国)」、「新版ワイン基礎用語集(柴田書店)」、共訳に「地図で見る世界のワイン(産調出版、ヒュー・ジョンソン)」など著作多数。ワインバー遠藤利三郎商店オーナー。