伊東道生の『<頭>で飲むワイン』Vol.107

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コロナウイルスに負けない?ワイン 少しだけプロヴァンス

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伊東道生の『<頭>で飲むワイン 』No.107

ワイン業界も多大な影響を受けているコロナウイルス。

RVFの雑誌では、まだ中国の影響のみが取り上げられ、とくに四川省、成都で行われ、20万人が訪れるワイン・スピリッツ・エクスポの中止。

30億ユーロのビジネスが消失。

中国へのワイン輸出や、220万人の中国人観光客のキャンセル、当然エノツーリズムもキャンセル、とたしかに影響はありつつも、どこか対岸の火事風であったのですが・・・。

しかしネットでは続々と、直撃するショックを伝えています。

「3密」ということからでしょう、サロンの中止、延期が報じられています。

おかげで、こんなサロンもあったのかと知ることも出来ました。

3月末のロンドンのワイン・フェア、6月のパリのラム酒・フェスト。パリのシャンパーニュ・テースティング、シャトーヌフ・ドュ・パープのサロンなどが挙げられています。

中止になったのもあれば、6月とか7月に延期になったのも。

香港のワイン・エクスポは、7月8日-10日に延期、パリのビール博(プラネット・ビール)は4月から6月に。独立系栽培家のサロン・デ゙・ヴィニュロン・アンデパンダンは、6月12-15日が6月19-21日(これって何かいい加減な延期ですね)。

イタリア最大のサロンVinitalyは2021年まで延期ですが、イタリアの現状を見ると、これも難しいのでは。

ヨーロッパ全体でおよそ200サロンが中止または延期。60億ユーロの損失。

ともあれ、今の情勢では、どれも予測不可能でしょう。

しかし、なんといっても大きいのはボルドー・プリムール。

3月30日から4月2日までの予定でした。

このシステムはボルドーではシャトーをはじめとする生産者がワインを作り、販売はネゴシアンが行うという伝統から生まれたものですが、これを機会に何か変化が起きるかもしれません。

アメリカはトランプ関税、イギリスのEU離脱、中国の情勢、そして自国の危機的状態と内憂外患で、ひょっとしたらボルドーは値崩れを起こすか?

葡萄の世話は続けられていますが、例えばブルーノ・パイヤールでは、デゴルジュマンやラベル貼り、包装などは部分的にストップ。

二次発酵前のティラージュがストップする可能性も示唆しています。

メゾンでもかなりの打撃ですが、レコルタンはかなり厳しいでしょう。

一方、ニューヨークではストレス、不安感からワインやアルコール飲料の売り上げが伸びているというニュースもあります。これはこれで問題ですね。

コロナが去ったら、アルコール依存症が増えた、というのでは洒落になりません。

フランス領ポリネシアでは、アルコール販売に制限を設ける政策をとっています。

アルコールがあれば、依存症だけでなく、ついつい誰かと宴会、ということになるかもしれませんからね。

これに追い打ちをかけるようにアルザスやローヌでは低温凍結の被害もでています。

そうした中、ペルノー・リカールやディアジオは、消毒用アルコールジェルの生産を始めているという、まあポジティヴなニュースも入ってきています。

これ以上続けると、暗くなるので、別の話題を。

今月のRVF誌はプロヴァンスのグラン・キュベ20です。

プロヴァンスと言えば、まずロゼが思い浮かびますが、グラン・ヴァンのイメージはないですね。

まあお隣とも言えるラングドックがそれなりに、高評価を受けるワインを生産しているのに比べても評価は低いように思います。

その中で注目されるのは、白ワインです。プロヴァンスでは総生産量のわずか5%ですが、そのなかで注目すべきワインをご紹介します。

IGP Alpilles Dolia 2013 作り手はDomaine Hauvette、評価の高いドメーヌです。

2004年以来、卵形のコンクリート桶で熟成させています。

その時にこのキュベDoliaがつくられ、15年あまりたちます。

セパージュには、クレーレット、マルサンヌ、ローサンヌ。2013年は、なかでも極めて繊細な仕上がりとなっています。17,5点で、40ユーロ。

Vin de France Cante Gau 2017 Domaine La Realtiere。

Pierre Michellandは、最近カリニャン種で、白ワインを作り始めた一人。

80年から100年にもなる古木で、標高400メートルの地で、ビオディナミ栽培。

ユニ・ブラン種とセミヨン種をブレンド。エキゾチックな香りが楽しめる。16.5点で26ユーロ。

Palette 2001 Chateau Simone。個人的にご贔屓のドメーヌです。

時に130年を超える古木もあり、80%はクレーレット。

他に、ミュスカ、ユニ・ブラン、グルナッシュ種も。

サフラン、蜂蜜の香りでミネラルに富んででいる。17.5点で、33ユーロ。

ちなみに、ここでは、ムーヴェードル、シラー、サンソー、グルナッシュ(50%)も植えられており、同じPaletteで赤とロゼもあり、三色並べて、料理と合わせるのが楽しいです。

Cassis blanc 2019 Domaine du Bagnol 長く忘れられた存在であったカシスの白ワイン。

近年、見直しされていますが、このドメーヌもその一つ。

年間4万本で、マルサンヌ、ユニ・ブラン、クレーレットで、現代的な作りとなっています。15点で、15.50ユーロ。

IGP Var 2015 Domaine Croix Rousse。

クレーレットとユニ・ブランをビオ栽培。アニスやハーブの香りで、しっかりしている。

10年以上は保持しておきたい、一品。良さそうですね。16点で45ユーロ。

Cotes de Provence, cuvee Carendon 2011 Domaine Gavoty。

当主のBernard Gavoty氏は、『フィガロ』紙の有名な音楽評論家の従兄弟だそうです。

これも長期保存タイプ。アーティチョークと合う・・珍しいなあ。16点で37ユーロ。

Cotes de Provence, Blanc de Blancs1966 Clos Mireille。

これまたえらく古いですね。いったい手に入るのでしょうか。

ネットで探しましたが、無理そうです。

ユニ・ブランとセミヨン、ロレRolle種。16.5点で25ユーロ。

えっと思いましたが、これは2017年のものでした。

古いものがあれば、お試しを、ということです。

Bellet 1988 Chateau de Bellet。

またまた古い!シャルドネとロレ種(95%)を3haで栽培していますが、この地区は、90年代にはイタリア由来のvermentiono種が植えられていました。その名残です。

20年経っても、その表現力は素晴らしい、と。若い2017年は16点で22ユーロ。

このドメーヌもSimoneと同じく、赤とロゼもつくっています。

セパージュは地のもので、Braquet、Folle noire、それにGrenacheをこれも3haに栽培しています。

春も深まっていきます。ウィルスに負けないで、プロヴァンスの白を飲んで、元気をだそう。

2020.04.17


伊東道生 Michio Ito

東京農工大学工学研究院言語文化科学部門教授。名古屋生まれ。
高校時代から上方落語をはじめとする関西文化にあこがれ、大学時代は大阪で学び、後に『大阪の表現力』(パルコ出版)を出版。哲学を専門としながらも、大学では、教養科目としてドイツ語のほかフランス語の授業を行うことも。
ワインの知識を活かして『ワイナート』誌に「味は美を語れるか」を連載。美学の視点からワイン批評に切り込んでいる。

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