伊東道生の『<頭>で飲むワイン』Vol.115

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Vin de France avec コロナ

伊東道生の『<頭>で飲むワイン』Vol.115

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このコラムでもお伝えしていますように、コロナ禍のおかげでフランス各地のワイン・サロンが延期または閉鎖され、とくに独立系弱小栽培者は痛手を受けています。

そのフォローかどうか、RVFはプロ向けのサロンを開きます。

11月12日には「シャンパーニュ」、2日には「RVFのグラン・クリュ」、16日は「ビオ・ビオディナミ」をテーマに、消費者側のソムリエ、酒屋、レストラン、インポーターなどと生産者との顔合わせもできるサロンです。

開催場所は、パリ、ルーブル美術館から「二歩!」のHuit Valoisというホールです。

しかし、今の状況で、無事に開催できるか。パリは再びレストランなどは閉鎖ですからね。いずれ、どうなったかは記事が出るでしょう。

 

それはさておき、高騰するブルゴーニュやボルドー以外のワインをいかにして知らしめるか、というのが最近のRVF誌の使命のようなものになっていますが、今月は、Vin de France特集です。

もっともまだ練られていない企画のようで頁数も僅かです。その代わり面白い情報はあります。

かつてvin de table の名称が、2009年にVin de France になり、ミレジムとセパージュの縛りができたとはいえ、それなりに「自由(リベラル)」なワインは、栽培者の意欲を促進するようです。

フランス全土のどの地域のセパージュを使っていいという点を生かしながらも、よりオリジナルなキュヴェへと傾いています。

例えば、フランスの葡萄を集めるにしても、Les Tetes(Panzoult)は4人の仲間があつまったドメーヌで作られたワインで、ガイヤックのガメ・ロゼ、ミュスカデ、ロワールのシュナンとソーヴィニヨン・ブラン、ローヌのシャルドネとルーサンヌから-いずれもビオ栽培で手摘み-集め、それぞれ別々に熟成させたうえで、ロワールの自畑の葡萄とアッサンブラージュして素晴らしい白ワインを作っています。

価格も「民主的な」9-11ユーロ。赤ワインは、ガイヤックのメルロとデュラ、ロワールのカベルネ・フランをアッサンブラージュしています。

シノン近くにあるパンズー(Panzoult)のカーヴが拠点のDomaine des Haut Baigneuxです。

Tetes blanc, Tetes rougeがワイン名ですが、RVF誌では Spotane blanc 2019が14.5点でお薦め。

Jean-Marie Guffensも、ブルゴーニュのシャルドネ(Guffens-Heynen)、リュベロンのヴィオニエ(chateau des Tourettes)、バルサックのセミヨン(Chateau Closiot)をアッサンブラージュ。

まさにトライアングルのTriangle de Guffens 2019は、魅惑的で比類ないものに。

結果的にお値段も、25ユーロと少々高めです。15点。

オレンジワインは、ヴァン・ド・フランスにとっても大きな付加価値。

16点と高評価なのがDomaine de Courbissac, L’Orange 2019。

ミュスカ、マルサンヌ、グルナシュ・グリとテールをアッサンブラージュし、マセラシオンを7日。15ユーロ。

古いセパージュへの回帰も最近の流行で、ヴァン・ド・フランスでもそれは見られます。

Domaine de Realtiere, Cote Gau 2018は、かつてプロヴァンスに植えられていたが、いつのまにか消え去り、コトー・デクサン・プロヴァンスの仕様書にだけのこっていたカリニャン・ブランを使ったものです。

標高450メートルの高地で、ピエール・ミシュラン(Pierre Micheland)は古い苗を保存し、ビオディナミ農法で栽培、それをユニ・ブランおよびセミヨンとアッサンブラージュ。

たっぷりした味わいで薫り高い、このワインのお値段は、そこそこの高地なみ?28ユーロ。

プラジョール(Plageoles)家はガイヤックのさまざまな極めて古いセパージュに精通。ヴェルダネ(verdanel)という南西地区のタロン地方の葡萄を栽培し辛口白ワインを作っています16点で15.50ユーロ。

灌木、小石、ウイキョウといった香りがするのは、Le Loup Blanc Le Regal 2018。こちらはラングドックの古いセパージュを使っています。

テール、グルナッシュ・グリ・ブラン、ミネルヴォワのカリニャン・ブラン。

16点と高評価で、17ユーロ。ただし、年間1200本しかつくっていません。

食べていけるのでしょうか、と心配になります。

ボルドーの古いセパージュを使用しているところもあります。

カステ(castet)とマンサン(moncin)。聞いたこともありません。

これをアンフォラのような素焼きの壺で熟成独特な味わいの赤ワインだそうです。Cheteau Tire Pe, L’Echappee 2017は15点で24ユーロ。

Thierry Navarreはラングドックの古きセパージュを使用して、赤ワインを作っていますが、セパージュはサンソー種に近いもの。15点で11ユーロ。

コルシカの銘醸ドメーヌ・アバトゥッチ(Abbatucci)も忘れてはいけません。

コルシカ産のセパージュを再発見したパイオニアと評判高いですが、もともとここはイタリア領で、そのせいもあるのでしょう。

独特なセパージュでワインを作っています。AOPワインも極めて高評価です。

セパージュは vermentino, rossola bradince, riminese,  carcaghjolo bianco, paga debiti とイタリア語、コルシカ語の綴りのセパージュです。

またアッサンブラージュが本来の土地で、あえてモノ・セパージュで勝負するドメーヌもあります。

Domaine d’Aupihac, Le Carignan 2018とChateau Pech Rode, L’Eperon 2018はカリニャンだけの赤ワイン。

テロワールにこだわると、こういうのもあり、ですかね。いずれも16点で前者は21ユーロ、後者は14.50ユーロ。

同じくテラス・デュ・ラルザックのDomaine Cassagne et vitailles Nimalaya 2017は15点。

このところ、モノ・セパージュで、グルナシュ、サンソーを使用するドメーヌが増えてきているように思います。

ビオの次は、モノ・セパージュが売りになるのでしょうか。

葡萄熟成を、AOP指定地域外で行っているワインもあります。

AOPボルドーではありますが、サンテステフのコス・デストゥネルの白もそのバリエーションの一つですね。

Domaine Francois Chidaine, Baudoin 2018はヴーヴレイのドメーヌのカーヴで熟成させ、そのため、シュナンのAOPを失っていますが、17.5点と素晴らしい評価。27.30ユーロ。

同点で Domaine Vacheron, L’Enclos des Remparts 2018。

ソーヴィニヨン・ブランを植えて素晴らしい白ワインをつくっています。お値段も素晴らしく100ユーロ。

おまけに年間生産量450本。

値段を言えば、Domaine Dagueneauも参戦しています。これはインチキですなあ。

Silex 2018は18点で130ユーロ。

AOC批判はけっこう以前からありましたが、肩肘張ることなく、いいワインはいいワイン、AOPなんか目じゃない、というドメーヌの意気込みも感じられます。

 

2020.11.13


伊東道生 Michio Ito

東京農工大学工学研究院言語文化科学部門教授。名古屋生まれ。
高校時代から上方落語をはじめとする関西文化にあこがれ、大学時代は大阪で学び、後に『大阪の表現力』(パルコ出版)を出版。哲学を専門としながらも、大学では、教養科目としてドイツ語のほかフランス語の授業を行うことも。
ワインの知識を活かして『ワイナート』誌に「味は美を語れるか」を連載。美学の視点からワイン批評に切り込んでいる。

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