岩瀬大二のワインボトルのなかとそと Vol.10〜キッズと一緒に楽しむワイン

岩瀬大二,ドン・ぺリニヨン,リシャ―ル・ジェフロワ,日本酒,富山,IWA

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キッズと一緒に楽しむワイン

岩瀬大二のワインボトルのなかとそと Vol.10〜キッズと一緒に楽しむワイン

 

大変で厳しい環境の下。だからこそワインがある時間は楽しく幸せなものにしたい。

とはいえ、家でのおこもり時間が長くなっていますから、気晴らしを兼ねて外で…というわけにもいかず、ワインを家で飲む機会、時間が増えているのではないかと思います。

そんなときに気を使うべきは家族、特にキッズ。

以前、当校での私の日本酒講座で、「昭和の家庭における日本酒」という話をしました。

昭和の家庭において日本酒を飲む父親というのは決していいイメージだけではありませんでした。

いや、むしろ不幸な出来事としてとらえられたこともあったかと思います。

今の世の中では書くのもはばかられるようなことが日常であり世間でも許されるものでもあった。

これは事実です。

でも、今、日本酒の世界は変わりました。

以前取材で訪れたある著名蔵元。

その隠れたコンセプトとしてお話しいただいたのが「家族を幸せにする酒」。

囲んだテーブル、家族全員が笑顔になるような時間をもたらすお酒であることを常に考えているとおっしゃられました。

実はその蔵元の歴史を紐解くと、ずいぶん前の先代が酒にからむ問題を起こし亡くなられたという不幸があったといいます。

後継ぎとなった長男が誓ったこと。それが家族を不幸にしない幸せにする酒。

食中にあうテイスト、ふわっとした世界観、でもそれを守るための堅い哲学に貫かれています。

ワインを家庭で楽しむ。特にキッズたちがいる時間。

そこで大切なのは飲んでいる人だけが浮かれ、愚痴をこぼし、大人の世界だけに閉じこもって語り、逆に酔った勢いでキッズたちの世界を壊すようなことをしないということでしょう。

お酒を味わう親、祖父・祖母、叔父叔母、招かれた友人が、お酒のある場でキッズたちも一緒に楽しめるように朗らかでいること。

きっとその姿に憧れ、キッズたちは次の時代のいい飲み手、ワインや酒の良き文化の継承者となるでしょう。

と、書きましたがこのコラムをお読みいただいている方はそんな心配もないだろうな、ということで、では、より楽しくキッズがいる場でワインや酒を楽しむためには?

いろいろなアイデアや思いやりの実践をいろいろな方からお伺いすることがありますので、そのいくつかを紹介しましょう。

ワインと同じ生産者のジュース

ワイン生産者の中では同時にノンアルコールのぶどうジュースを造っているところがあります。

アルコールの有無でもちろん風味は変わりますが、同じ生産者のものをいただく。

キッズたちは大人と同じ、その地で育った恵みを味わうことでつながれます。

その生産者のジャムやチーズ、パンなどがあればもっと共有できるでしょう。

 

グラスの中の色や香りをあわせる

シードルとりんごジュース、ロゼとクランベリージュース…。

大人もキッズたちも同じ世界を共有出来たら楽しいもの。

香りや素材、色などを寄せてみると自然にそんな気持ちになります。

単純な組み合わせからワインの香りや色を分析しながら実験的、分析的に楽しんでもよいでしょう。

 

グラスのメーカーを一緒に

これはあるグラスメーカーの代表に聞いた話。

大人とキッズたちの使うグラスが同じメーカーと言うだけでも一体感が生まれるというのです。

便利で洗いやすく落下の安全なども考えればキャラクター入りのプラコップでも良いのですが、確かに、家でも非日常を楽しむようなときは、大人はワイングラス、キッズはタンブラー。

同じメーカーでそろえると外食気分にもなります。

 

テイクアウトでレストランを再現

「期限付酒類小売業免許」により、期間限定ではありますが、国税庁より飲食店に酒販免許が認可され、飲食店が酒を販売することが可能となりました。

魅力的なワインや酒と料理の組み合わせを提案してきた飲食店、その一端を自宅でも楽しめるのは朗報です。

キッズ用にはボリュームのあるメインやデザートも用意し、大人は前菜とワイン。

店のセレクトによる素敵なペアリングを家飲みで。

 

エチケットを可愛らしいもので

小さなキッズが同じテーブルにいる。それならばワインのエチケットがかわいいものを選ぶとテーブルが素敵な風景になります。

キツネやリスなどの小動物、かわいらしいイラスト、キッズのかわいいお皿にあるようなポップなイラスト。

そういう目線でワインを選ぶのも楽しいものです。

 

文化、世界の話を語り合う

小学生、中学生、高校生、レベル感は違いますが、ワインやそのほかの酒を通じて話題をその背景にひろげるのはいかがでしょう。

ちょっとお兄ちゃんお姉さんなら、例えばアルザスワインから国境のエリアならではの歴史を話してみる。ニュージーランドならもちろんラグビーの話でも。

ワインの蘊蓄ではなく共有できる話題。タブレットも用意してその場で調べながら広げていく。

大人と一緒のしらべ学習、楽しい思い出になるかもしれません。

 

みなさんがすでに実践されていることが他にもあることでしょう。

家にいる時間が長い今だからこそできるおうちワインの時間、楽しんでください。

2020.05.15


岩瀬大二 Daiji Iwase

MC/ライター/プランナー/イベント・オーガナイザーなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカー、ビール、日本酒などの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」、「酒旅ライター」。「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。お酒単体ではなく、スポーツやロック、旅、地域文化、演芸などさまざまな分野とお酒の魅力を結びつけ紹介している。

フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長
ぐるなび「IPPIN」酒キュレーター
「ヤフー!ライフマガジン」日本酒特集担当
他、ワイン専門誌や情報誌、WEBメディアでの特集企画・ワインセレクト・インタビュー、執筆。日本ワイナリー収穫祭や海外生産者交流イベント、日本最大級のスペイン祭りなどお酒と人々を結ぶイベント演出、MC/DJ多数。

 

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