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燗酒
こんにちは。日本酒コラム担当のおおくぼかずよです。
秋色が一段と深まってまいりましたね。日本酒ラヴァーとしては、秋の実りに合わせていただく燗酒の美味しい季節の到来です。
冷やしても温めても美味しい酒
世界広しといえども、温めて飲む酒というのは日本酒の他、中国の紹興酒など指折り数える程度と言われています。
(ホットワインなどはスパイスなどを足すなど、日本酒のようにそのまま温める文化とは多少違います。)
日本酒を温める、つまり「燗」にするのはいつぐらいからはじまったのか文献を紐解くと、燗についての記述が初めて認められるのは平安時代中期に成立した「延喜式(えんぎしき)」です。
「土熬堝(どこうなべ)」という小鍋に酒を注いで温めて飲んだと書かれています。
また、そのころは燗にして飲む時期というのは9月9日の重陽の節句から翌年3月2日の上巳の節句の前日までの寒い間だけだったようで、一年を通して飲むようになったのは、江戸時代中期になってからのようです。
ジビエと燗酒
1000年以上も昔から飲まれている燗酒ですが、現代では和食以外の料理との相性の良さも注目です。
例えばジビエ。ジビエとは狩猟によって捕獲された天然の野生鳥獣の食肉を指すフランス語ですね。
ヨーロッパでは伝統料理として古くから発展してきた食文化です。
日本では、11月15日から2月15日までが狩猟解禁なので、この時期を待ち焦がれている方も多いのではないでしょうか。
一般的にワインと合わせていただくジビエですが、燗酒を合わせることで文字通り「溶ろける」ように美味しくなる理由があります。
それはジビエの脂肪の融点。融点とは食肉の脂肪が溶け始める温度のことで、不飽和脂肪酸が多くなると低くなり、鶏肉で30から32度、馬肉、豚肉、牛肉の順で高くなり、羊肉は44から55度、鹿肉は55度と言われます。
和牛が柔らかで美味しいと感じるのは不飽和脂肪酸が多いので融点が外国産の牛肉よりもかなり低いためです(松坂牛は20度以下)。
人の体温より高い融点のジビエは冷めないうちに食べないと脂が固まる。
そこで燗酒の登場です。
ジビエを口に含み、ワインの飲用温度帯をはるかに上回る燗酒を合わせる。
口の中で脂がとろけていく・・・ この時、料理の温度そのものも下げることがないというのも燗酒のおすすめポイントです。
燗酒にオススメの純米吟醸酒のご紹介
日本酒を燗にすると、冷たい時は閉じていた味わいの扉がだんだん開いていくようなイメージ、というと伝わりますでしょうか。
そのため、元々の扉の数が多いタイプ、新酒よりは熟成酒、米を磨いている淡麗タイプの酒よりはコクや旨みを残した濃醇タイプの日本酒の方が変化を楽しめます。
今日は最後に冷やしても燗酒でも美味しい純米吟醸酒のオススメ2アイテムをご紹介します。
醸し人九平次 「火と月の間に」 純米吟醸 萬乗醸造(愛知県)
醸し人九平次の季節限定酒。このネーミングの意味がわかったときは、さすが九平次さん!とそのセンスに脱帽でした。「燗」という字を忘れることはないでしょう。山田錦を50%まで磨き上げた純米吟醸酒で、九平次ならではの酸と果実の様な甘みが、ぬる燗にするとさらにふくらみを持って綺麗に表現されます。
大七「皆伝」生もと純米吟醸酒 大七酒造(福島県)
森林の中に入り込んだかの様な落ち着きのある銘酒と謳われ、「皆伝」特有の伽羅の芳香と生もと造り由来の奥深さが素晴らしい純米吟醸酒です。精米歩合58%、使用米は五百万石。完成度の高い味わいを是非お楽しみください。
2020.11.27
おおくぼかずよ Kazuyo Okubo
イベントの司会やナレーターを経験後、食の世界に入る。老舗寿司店にて海外イベントのコーディネートを担当するなど日本文化や食に対する知識、見識を深める。現在は日本酒コーディネーターとして、フレンチやイタリアンのシェフとのSAKE ディナーなどの企画運営の傍ら、15 年以上通い続けている料理教室の経験を活かし、料理教室講師や日本酒に合うレシピの考案など新しいライフスタイルに合わせた日本酒のおいしさ、楽しさ、美しさを提案している。日本酒講座では、明るい雰囲気の中で学ぶべきポイントをわかりやすく伝えることを心掛け、学んだ知識を知識として終わらせるのではなく経験に変えられるよう、クラス会を積極的に行い、皆で日本酒と食の美味しいペアリングを探るなど、ビギナーから日本酒上級者まで楽しめるクラス運営をモットーとしている。
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