南北40キロの南東向きの斜面に、宝石のような珠玉の畑が並ぶコート・ドール。屈指のテロワールから類い稀なる銘酒が生み出される、今も昔も人々を魅了して止まない特別な産地です。この地を20年以上欠かすことなく訪れている奥山久美子が、コート・ドールを取り巻く昨今の社会情勢や注目の造り手の姿に焦点を当てながら、黄金の丘の魅力に迫ります。Vol.3は、職人気質のブルギニョンたちと競ってワイン造りを行う、日本人ヴィニュロンたちのお話です。
文・写真/奥山久美子
【目次】
1.狭き門のブルゴーニュで切磋琢磨する日本人生産者たち
2.フロンティア魂あふれる侍ヴィニュロン〜ドメーヌを設立した日本人のパイオニア 仲田晃司 ルー・デュモン Lou Dumont
3.醸し人九平次の挑戦 ドメーヌ・クヘイジ Domaine Kuheuji
4.誠実なヴィニュロン ドメーヌ・プティ・ロワ Domaine Petit-Roy
5.たゆまなき努力家〜シャントレーヴ Chanterèves
1.狭き門のブルゴーニュで切磋琢磨する日本人生産者たち
フランスの一流レストランで修業した日本人料理人が、帰国後にフランス料理界で活躍することは30年以上前からあります。日本人の手先の器用さ、さらに食材を活かした繊細で丁寧な調理法や実直な働きぶりが賞賛され、本場のフランスに出店してミシュランの星を獲得する料理人が大勢います(パリに22軒、地方に11軒)。
しかしながら、ワインの場合、ブルゴーニュで修行し、帰国後に高品質な日本ワインを生産している栽培・醸造家の数は料理人に比べると断然少なく、この十数年で外部からブルゴーニュへ参入者が増えたとはいえアジア人はまだ僅か。特にコート・ドールのような排他的な地域で、職人気質のフランス人と競ってワイン造りをするのには、勇気と情熱が必要です。
今回は、そんなコート・ドールでワイン造りに挑む、才能豊かで熱意に満ちた日本人を紹介します。