2018年、Wines of Greeceのギリシャワインアンバサダーに選ばれて、本格的にギリシャワインとのおつきあいが始まりました(詳細は、vol.1をご覧ください)。前回の山のワインに続き、今回は島のワインのお話です。
昨今のトレンドの一つでもある、島のワイン。3000を超える島があるギリシャはまちがいなく、島のワインの筆頭格でしょう。エーゲ海、イオニア海、リビア海に浮かぶ島々は隔離された環境下ゆえ、特異の自然環境をもち、稀有な土着品種が現存します。
文・写真/青山 敦子
【目次】
1. 島のワイン① クレタ島 シティアのリャティコ
2. 島のワイン② ケファロニア島 ロボラ・ド・ケファロニア
3. 島のワイン③ サントリーニ アシルティコ
1. 島のワイン① クレタ島 シティアのリャティコ Liatiko
ギリシャの果てクレタ島シティアのまたその奥地で、産地やリージョンシステム、品種特性をも超越したワインがあります。奇才ヤニス・エコノムが奏でるシティアのリャティコ。初めて飲んだ時の衝撃は忘れられません。ギリシャワインのアンバサダーになるずっと前のことでした。
クレタ島の大自然の漲るエネルギーこそが、クレタ島のワインに活力を与えているのでしょうか。クレタ島のワインにはえも言われぬ生命力を感じます。東西265km、南北は最大で60kmの細長い土地に、2000メートル級の山が3つも聳える、ギリシャ最南端にしてギリシャ最大の険しい島。アフリカからの熱風を避け、島北側の500〜600メートルの高地に築かれている島大半の畑には、フィロキセラの到達が1972年のため、樹齢の高いブドウ樹が現存しています。
クレタ島原産とされるリャティコはギリシャ栽培面積第4位で、生産性が高く成熟が早い品種です。島中で栽培され通常7月に収穫されます。この一見凡庸と見える品種が、ヤニス・エコノムの手により無類の表現力を奏でます。
シティアのさらに20キロ先クレタ島の東の先端の僻地。550〜650mの高い標高。隣接した海からの絶え間ない海風。そこに図太く息づく自根の古木のブッシュヴァインのリャティコは、驚愕の長い生育期を享受し、9月中旬になってようやく収穫期を迎えます。極端なまでの低収量のワインは、彼が求める味わいに達するまで驚異的に長い熟成期間を経てリリースされます。
ジュヴレ・シャンベルタン?バローロ?リオハ・グランレセルバ?「偉大なワインは美しい熟成をとげる」ということをまさに体現する「ギリシャにこんなワインがあるんだ!」と思わせる極上の逸品です。
ドメーヌ・エコノム Domaine Economou:Sitia シーティア
造り手ヤニスはピエモンテやボルドーの名高いワイナリーで修行を積み、故郷クレタでできるだけ人為的介入をせず、彼が納得のいくワインを少量のみ造っているまさに芸術家。
「2018年7月以来入庫がありません。昨年はコロナで需要が少ないので、リリースは見送るとのことでした。次回の入荷予定も未定です。どこかにまだ在庫があるとしたら、奇跡ですね…」インポーター談。奇跡のワイン!見つけたら買うしかない!