カヴァ ~変革するスペインのスパークリングワイン。歴史・ブドウ品種から最近の動向を徹底解説

カヴァが大きく変わろうとしています。

実は、暫く前からその胎動は始まっていたのです。シャンパーニュ以外は泡と認めていない貴方そして貴女。今はカヴァの動きに目が離せません。

この記事を読めばシャンパーニュとの違いや飲んでおきたい有名生産者が、すぐわかります。更には、今日に至るカヴァの変化の潮流が頭にすっと入ります。ソムリエやワイン・エキスパート以上にカヴァに詳しくなること間違いなしです。

本記事は、ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」が監修しています。ワインを通じて人生が豊かになるよう、ワインのコラムをお届けしています。メールマガジン登録で最新の有料記事が無料で閲覧できます。


【目次】

1. カヴァとシャンパーニュは何が違うの?
2. スペインのスパークリングワイン「カヴァ」誕生の舞台裏
3. カヴァのふるさとは温暖な気候とやせた土壌
4. おぼえておきたいスペイン生まれの主要品種
5. 長期熟成も試してみたい~カヴァの味わい
6. テロワール・品質革命時代の幕開け
7. 新生カヴァの始動へ
8. カヴァのできるまで
9. 待ち遠しい!ワインツーリズム
10. カヴァのまとめ


1. カヴァとシャンパーニュは何が違うの?

カヴァはシャンパーニュとはブドウ品種こそ違いますが、同じトラディショナル・メソッド(伝統方式)で造る瓶内二次発酵のスパークリング・ワインです。

2020年の栽培面積は3万8千ヘクタール。生産者は200社を超えます。2010年代は、年間出荷量が2億4千万本程度で推移しました。シャンパーニュの年間約3億本にさして引けを取るものではありません。輸出が7割を占めていますので、世界的にも良く飲まれています。

それでも、晴れの日に大切な人と乾杯する華やかなシャンパーニュに比べると、カヴァは普段使い。質よりも量という印象の方が多いのでは無いでしょうか。

カヴァの平均的な小売価格は1000円から1500円くらい。シャンパーニュは、それこそ上は天井知らずですが、せめて、最低4000円から5000円の出費は覚悟しないとなりません。

栽培する土地の価格、ブドウ品種の違い、天候の影響、栽培や醸造工程での手間暇、長い歴史と著名人に彩られた確たるブランド力。さまざまな観点から考えると、シャンパーニュの壁は高くて、市場価格も大分違ってしまうのも仕方が無いところはあります。

カヴァのアペラシオン(DO)は、一般的なDOとは少し違います。特定の産地ありきで、その産地で認められたブドウ品種からいろいろなワインを造るというわけでは無いのです。あくまでも、カヴァの生産をする事が前提です。

ですから、例えばカヴァを最も生産しているペネデスでも、カヴァと名乗らないスパークリングも生産されていますし、これはリオハでも同様です。

フランスでは、シャンパーニュ地方で生産したスパークリングがシャンパーニュです。その他の地域で生産した、トラディショナル・メソッドで造るスパークリングは総称としてはクレマンと呼ばれます。そして、使用するブドウ品種等の細目は、夫々の産地のアペラシオンの規則で定められています。

シャンパーニュは村に、グラン・クリュ、プルミエ・クリュの格付けが存在します。一方、カヴァはこれまで熟成期間による分類が基本でした。9割までが、最低9か月澱熟成のカヴァ。熟成期間が長くなるに従ってレゼルバ、グラン・レゼルバとなります。シャンパーニュは、ノン・ヴィンテージでも最低12か月の澱熟成を含む15か月の熟成期間が必要です。

カヴァは瓶内二次発酵で3.5気圧以上、シャンパーニュは5~6気圧で二酸化炭素を閉じ込めています。気圧の高いシャンパーニュの方が開栓後の泡の持続性が良くなります。

業界構造的には、シャンパーニュでは、大手メゾンでも、自社畑を少なからず保有して生産を行うところも多いです。更には、何年分もの異なるヴィンテージのリザーヴ・ワインも自社のセラーで保管して、合計数十種類のワインをブレンドして仕上げる生産者も。

カヴァには素晴らしい生産者が居る一方で、ベース・ワイン(一次発酵を終えたワイン)を様々な産地から調達してブレンドする大量生産のイメージがぬぐえない所があるのも事実です。

シャンパーニュとカヴァを隔てる200年に及ぶ歴史の壁は越えられないのでしょうか?

2. スパークリングワイン「カヴァ」誕生の舞台裏

カヴァは、1872年にスペイン・カタルーニャ州 バルセロナ県のサン・サドゥルニ・ダノヤで生まれます。フランスのシャンパーニュの生産方法であるトラディショナル・メソッドを取り入れたものでした。ワイン生産企業であるコドーニュのジョセップ・ラベントス・ファホがシャンパーニュに触れて、その製法をスペインに持ち込んだのです。今でも、この生誕地カタルーニャ州でカヴァの95%が生産されています。

その後、欧州全域をフィロキセラが襲います。その被害にあえぐ中で、生産者達は、黒ブドウから白ブドウへの改植を進めてカヴァ造りへと舵取りを始めます。もっとも、カヴァという名称になるのは後の時代。20世紀も半ばです。それまでは、スパニッシュ・シャンパーニュともシャンパン、シャンパーニャとも呼ばれていました。

ベース・ワインに糖分や酵母を添加して瓶詰(ティラージュ)をしたのちに地下洞窟のセラー(CAVE)に保存した所から、その名前が付けられたと言われています。気温が15℃以下で年間を通して低めに安定していて振動も無いことから瓶内二次発酵と澱熟成には最適だったわけです。そして、1986年に原産地呼称(DO)が定められます。

3. カヴァのふるさとは温暖な気候とやせた土壌

カタルーニャ州ではペネデスが代表的な産地です。スペイン北東に所在していて、地中海沿岸の海沿いから内陸部の高地に渡って、産地が広がります。全般的には温暖な地中海性気候ですが、内陸に入るにしたがって標高も上がり、大陸性気候の影響を受けます。夏は長く、日照量に恵まれます。ブドウの生育期間中には雨量が少ないので、樹勢を抑えることができます。

カヴァの原料となる主要ブドウ品種は、主として少し内陸に入った標高500メートルくらいまで。海岸と内陸の産地の中間に位置するメディオ・ペネデスで栽培されています。土壌はロームや石灰質の痩せた土壌で、水はけと保水性を併せ持った土壌は、ブドウ栽培に適しています。

他には、リオハも大切な産地で、大西洋からの過剰な雨をカンタブリア山脈が防いでくれています。栽培は比較的標高の高い畑で行なわれています。その冷涼な気候影響が酸を高く維持する助けになってくれます。また、ペネデスよりも晩熟となります。

最新のDOの規定の変更でスペイン全土のカヴァ生産地が以下4つのゾーンに分けられました。ペネデスは、以下のコンタ・デ・バルセロナ、リオハはエブロ・ヴァレーに属します。

コンタ・デ・バルセロナ

95%のカヴァの生産がこの地域に集まっています。カヴァの生誕地であるサン・サドゥルニ・ダノヤを擁し、地中海を望みバルセロナに近い恵まれた土地です。5つのサブ・ゾーンを持ちます。

エブロ・ヴァレー

アルト・エブロとヴァッレ・デル・シエルソの二つのサブ・ゾーンがあります。大陸性気候の影響を受けて冬は寒く、夏は暑くて乾燥します。

レヴァンテ・ゾーン(仮称)

バレンシア州にあります。内陸の産地で標高900メートルくらいの高地までブドウ栽培がされます。日較差が大きい土地です。マカベオとチャッレロ中心の栽培です。

ヴィニェス・デ・アルメンドラレホ

ポルトガルとの国境に近い西方に所在して、温暖で乾燥した平たんな産地です。

4. おぼえておきたいスペイン生まれの主要品種

カヴァに使われるブドウ主要品種は栽培面積の順番に、白ブドウのマカベオ、チャレッロ、パレリャーダです。この3品種合計で栽培面積の8割を超えます。この次に国際品種のシャルドネが来ます。

黒ブドウは、ガルナッチャ、トレパット、ピノ・ノワール、モナストレルの順です。ブラン・ド・ノワールやロゼ用に使われます。

特に重要な品種に絞って少し解説を加えましょう。

マカベオは軽快で爽やか。果実や白い花の香りです。カタルーニャ州が原産と考えられています。芽吹きは遅く、また晩熟ですが早摘みにも向きます。カヴァのベースとなる品種です。標高の高いところで栽培されたブドウは、香り高く酸もしっかりとしたワインを造ります。ペネデスでは、300メートルの所まで栽培されます。軽快な柑橘系やりんごなどの風味です。カヴァ用のブドウとしては最大品種です。リオハではヴィウラと呼ばれます。リオハ・ブランコ、リオハの白ワインにヴァラエタルワイン或いはシャルドネ等の国際とブレンドしても使用されています。

チャレッロは酸とアルコールの骨格を与えます。ほぼ全てがカタルーニャ州で栽培されています。ペネデスでは400メートルくらいの所で栽培されます。芽吹きは中庸から早目でヴィンテージによって霜の被害を受けます。晩熟で、干ばつには強いと言われています。グースベリーやハーブ香や時として土っぽさが出る場合もあります。果皮が厚く、抗酸化特性をもつレスベラトロールなどのポリフェノール類が豊富です。酸と相まってカヴァの熟成可能性を高めます。品質重視の生産者に重用されている品種です。柑橘系やりんごなどの風味がありますが、ゴムやキャベツ臭を感じるといわれる場合もあります。

パレリャーダは他の2品種と比べて最も高地で栽培されます。アラゴン州に起源を持つと言われています。高地でゆっくりと熟すことで、酸を保持して、香りや味わいの複雑性を高めます。糖度が低くて酸は中庸、ブレンドにソフトでエレガントな印象を与えます。収量が低く、晩熟です。アロマティックで、フローラル、柑橘、りんごなどの香りを持ちます。

トレパットは、赤い果皮を持つカタルーニャ州のブドウ。伝統的にロゼワインやロゼスパークリングに使われます。芽吹きは早く晩熟です。軽いフルーティで赤系果実の香りをもったワインになります。

なお、国際品種であるシャルドネやピノ・ノワールをカヴァに取り入れて、活用したのは、コドーニュが最初です。一般的な早飲みカヴァで、シャルドネを用いる場合は強めの酸でしっかりした骨格に仕上げたものを、比較的高価格帯で販売します。

5. 長期熟成も試してみたい~カヴァの味わい

ほとんどのカヴァは、爽やかさやフルーティさが主体。価格も手ごろで気軽に飲める泡です。ブレンドの主品種となるマカベオのりんごの香り、チャッレロのスグリ系の果実香、パレリャーダのフローラルな香りが中心です。シャンパーニュに比べると品種と気候の影響で酸がおだやかです。

ブラインドテイスティングの時にカヴァの特徴香として、ゴムの様な香りを感じることがあります。これはチャッレロの品種特徴だという意見も、還元香の類ではないかという意見もありますが、事実はまだ解明されていません。

一方で、高品質で長期熟成を経たカヴァはトーストや蜂蜜、ナッツ、ドライフルーツが豊かなボディとしっかりした酸に支えられて複雑な表情を見せます。

6. テロワール・品質革命時代の幕開け

低価格戦略からの脱却に向けて

カヴァは広く世界的に流通しているものの、いまだに廉価なシャンパーニュの代替物という見方をされがちです。これを潔しとしない生産者達が動き出します。

現に素晴らしいカヴァを造る生産者達も多いのですが、凄まじいボリュームの中に埋もれてしまいがち。最大手フレシネの黒いラベルのコルドン・ネグロは、一本千円程度で販売量世界一と言われスーパー・マーケットでも良く見かけます。

カヴァの生産者は200社を超えますが、大手のフレシネ、コドーニュの2社合計だけで8割弱という寡占状態です。業界構造としては、ブドウ栽培、ベース・ワイン生産、ベース・ワインの貯蔵、カヴァの生産と4種類の事業形態があります。大手は複数の登録許可を得て運営するのが普通です。

また、ブドウ価格がキログラム当り1ドルを大きく割る様な低価格で取引されることは課題です。これでは、栽培農家は収量を犠牲にしてでも品質を上げようというマインドには、なかなかなりません。

一方で、シャンパーニュは著名なメゾンに始まり新進気鋭の小規模生産者達まで、300社以上がしのぎを削っています。冷涼な大陸性気候という自然の恵みに加えて、素晴らしいテロワールを持った村や畑が特定されています。さらに、20世紀初頭に導入された「エシュレ・デ・クリュ」によるグラン・クリュ、プルミエ・クリュの格付けが、品質の高い産地の評価を固めていったという歴史的背景もあります。

シャンパーニュの輸出は5割強で、カヴァは7割程度です。ですから、結果としては、大手生産者による寡占、資本集約的な事業運営は功を奏したように見えます。低価格と大量生産で国際シェアを取りに行く戦略は上手く行っていたと言えます。

しかし、その最大手の2社も2018年には立て続けに企業買収が発表されました。コドーニュが、アメリカに本拠を置く世界的な投資会社カーライルグループに、そしてフレシネもドイツのスパークリング・ワインメーカーのヘンケルに買収されました。

カヴァの枠組みを超えて

カヴァに起きた地殻変動の動きは2012年にラベントス・イ・ブラン(1986年にラベントス・コドーニュから分かれてジョセップ・マリア・ラベントスが立ち上げ)がカヴァDOを脱退する頃に遡ります。

ジョセップ・マリア・ラベントスはシャンパーニュに負けないスパークリングを造るというカヴァ原産地呼称設立の立役者でした。それなのに彼の子孫がDOから脱退することになるというのは皮肉です。カヴァの量の拡大に伴った品質低下、ブランドイメージの劣化などを憂いて心機一転する必要性を感じたからです。東ペネデスのコンカ・デル・リュ・アノイヤをDOにしたい。ブドウ農家への支払単価を上げ、オーガニック栽培や高樹齢や低収量にすることを孫のペペ・ラベントスは提唱しました。

更には、カヴァDO に属さないペネデスDOが動きます。2014年に、これまで造ってきたスパークリング・ワインにクラシック・ペネデスという分類を導入しました。これは、世界初の100%オーガニック栽培のブドウを使ったスパークリング・ワインです。瓶内二次発酵の上で最低15か月の澱熟成を満たす必要があります。この分野の先駆者のアルベット・イ・ノヤが主導者です。現在では、20近い生産者が彼に続いています。

そして、2017年にはリオハDOCaも、この原産地呼称をスパークリング・ワインにも使用する事を承認します。エスプモーソ・デ・カリダ・デ・リオハの登場です。瓶内二次発酵で、リオハDOCaで使用が認められているブドウ品種、例えばテンプラニーリョ、ガルナッチャやヴィウラ、ベルデホ等も使う事ができます。15か月の澱熟成が必須で、リゼルバが24か月、そしてグラン・アニャーダが36か月となります。

カヴァDOの出した答え

こうして、カヴァDOからの離反や他のDOからの高品質のトラディショナル・メソッドのスパークリングの出現が相次ぎます。この厳しい環境下、2017年にカヴァ最高峰の、カヴァ・デ・パラヘ・カリフィカードが定められました。2021年で6生産者、8区画、10銘柄にしか認証が与えられていません。

  • 畑が最低10年以上経過していること
  • 収穫は手摘みであること
  • ぶどうの収量は最大1ヘクタール当たり8トンまでであること
  • ワインの生産及び瓶詰がその土地で行われること
  • 搾汁は1ヘクタール当たり48ヘクトリットル以下であること
  • 単年のヴィンテージであること
  • 伝統方式による瓶内二次発酵で、最低36か月を超える瓶熟成
  • 補酸は認められない
  • Brutもしくはそれ以下の残糖レベルであること

全体の9割弱が、通常のカヴァ。レゼルヴァでさえ10%程度。グラン・レゼルヴァとなるとカヴァ全体の1%強に過ぎません。そして、カヴァ・デ・パラヘ・カリフィカードになると、更さらに希少な宝石のような存在です。カヴァの反撃です。

反逆者たちが上げたのろし:コルピナットの登場

それでもやはり納得がいかない高品質ワイン生産者達。例えばグラモナやレカレド、トレジョや、ナダルなどを含めた9社は2019年にカヴァDOを後にして、新しい生産者団体、コルピナットを立ち上げます。

カヴァ・デ・パラヘ・カリフィカードは大手でも認証が取れてしまいます。そもそも運動を続けていて、大手と差別化をしようとしていた、小粒でピリリという小規模生産者は不満足だったのです。コルピナットは、ペネデスの中心で生まれたという意味合いを持ちます。この9社の生産量はカヴァ全体からみたら大海の一滴。ですが、グラン・レゼルヴァに絞れば3割を占めることになります。更には当時、まだ13銘柄しか認められていなかったカヴァ・デ・パラヘ・カリフィカードから、コルピナットへ半分が移動してしまうことになりました。カヴァ原産地呼称統制委員会にとってはショックだったことは間違いありません。

  • 100% 有機栽培のブドウを使用
  • 澱熟成は、18か月、30か月、60か月
  • 90%以上は土着のブドウをつかうこと
  • 醸造はコルピナットで定められた場所にある自身のワイナリーで行なうこと

これらの厳しい条件によって、大手ではコルピナットを名乗る事が難しくなりました。

7. 新生カヴァの始動へ

大手生産者中心の舵取りへの批判にさらされてきた委員会は品質や栽培、テロワールの重要視することを宣言しました。

こうした最近の潮流を背景に2019年の年末には以下のようなアナウンスがカヴァDOから有りました。

  • レゼルヴァの最低澱熟成は15か月から18か月にする
  • レゼルヴァの収量はヘクタール当り12トンから10トンとする
  • 全て、ヴィンテージ若しくはマルチ・ヴィンテージとする
  • 全てのレゼルヴァとグラン・レゼルヴァは有機栽培を用いること。ブドウ樹は最低10年以上の樹齢であること。またブドウ産地をラベルに記載すること

シャンパーニュではヴィンテージによる変動はありますが、基本収量はヘクタール当り10.4トンですから、レゼルヴァで有ればシャンパーニュと同程度の収量になったわけです。

また、レゼルヴァとグラン・レゼルヴァは2025年には有機栽培認証を取ったブドウから造られなければなりません。レゼルヴァとグラン・レゼルヴァの割合が10%余りと少ないとは言っても、有機栽培は2019年でまだカヴァ全体の5%程度です。ですから、意欲的な取り組みと言えるのではないでしょうか。

そして、2022年1月からは全てのカヴァは、カヴァ・デ・グアルダカヴァ・デ・グアルダ・スペリオールという大区分の下に分けられます。カヴァ・デ・グアルダは従来のカヴァに相当します。そして、カヴァ・デ・グアルダ・スペリオールは従来のレゼルヴァ、グラン・レゼルヴァとカヴァ・デ・パラヘ・カリフィカードを包括するものです。そして、夫々の分類に別々の色が付いたラベルが付けられます。

先述した4つの地域(ゾーン)が定義され、それらのサブ・ゾーンも定められました。また、ベース・ワインを外部調達し瓶内二次発酵したものと全て自社ワイナリーで造ったワインとを見分けられるようになります。ラベルに「インテグラル・プロデューサー」という表示ができるのです。

これまでのカヴァDOの枠組みが品質やテロワール重視の方向へと変わって行こうとしていると感じませんか?ただ、個別に内容を見ると、これまで見てきた、コンカ・デル・リュ・アノイヤ、クラシック・ペネデス、コルピナットという一連の革命児達の取り組みが、如何にカヴァ原産地呼称統制委員会に影響を与えたかを物語っています。彼らの登場があって初めてカヴァDOが突き動かされたのだという声も聞こえます。

8. カヴァのできるまで

栽培

短梢剪定のコルドンで機械収穫ができる垣根仕立てをしている所も、株仕立てで栽培する畑もあります。最大収量は、ヘクタール当り12トン。植栽密度は、ヘクタール当り1,500本から3,500本程度。シャンパーニュではヘクタール当り8,000本程度の高密植です。

台木は土壌の石灰に耐えて、樹勢をコントロールできるようなものを選びます。灌漑は水分ストレスが酷い場合などは許可されます。害虫としての蛾の被害をフェロモントラップで対策する生産者もいます。コドーニュでは、進んだプレシジョン・ヴィティカルチャー(精密ブドウ栽培)も取り入れています。衛星からの情報をブドウ樹の樹勢や霜害対策にも活用していると言います。

収穫は、フェノール類の成熟を待たずに、糖度が低くても酸の維持を考慮して行われます。機械を使うか、手摘みかは生産者次第ですが、全体としては手摘みが主流です。

大手のフレシネは機械収穫を取り入れると共に、小規模な契約農家から手摘みのブドウも仕入れます。コドーニュも自社畑では機械収穫を取り入れています。機械設備は進化を遂げており、8割方を全粒で粒を傷つける事なく収穫できると言います。収穫では、圧搾するまでにかかる時間を最短にして、温度も極力低く抑えて、酸化も微生物の繁殖も防ぎたいのです。だから、夜間にすばやく作業ができる機械収穫には利点があります。

それでも、最高のブドウの収穫には小さな木箱に手摘み。バルクでベース・ワインを購入してスパークリングを造るという選択は取られません。

収穫は、8月中旬以降シャルドネやピノ・ノワールから始めて、9月末に掛けて他の品種に進んでいきます。

醸造

ベース・ワインを造る一次発酵は15℃前後の低めの温度でステンレスタンクや、セメントタンクで行なわれる事が一般的です。

大手企業では、ブドウ栽培地で圧搾をしたのちに果汁を冷却して中心的なワイナリーがあるサン・サドゥルニ・ダノヤへ輸送する場合もあります。

発酵温度が上がり過ぎることを抑えるために、数日間に分けて収穫したブドウを発酵槽につぎ足したという昔話も聞きます。

高級なワイン造りの為には少量ずつ時間を掛けて丁寧に全房圧搾をすることが効果的です。一方、大量生産の場合は、好ましくないフェノール類が梗から滲み出てしまう可能性があるので、除梗してから圧搾します。

シャンパーニュでは、そもそもアペラシオンの規則上、手摘みのブドウを全房圧搾します。破砕を避けて酸化や微生物汚染を防いで、健全な果実から純粋な果汁を、時間を掛けて絞っていきます。この辺りも低価格帯のカヴァとの品質差には効いてきます。

酸の切れ味を保つために、マロラクティック発酵は行わないことが一般的です。リザーヴ・ワインも、ヴィンテージ差が大きい訳ではないので、余り一般的ではありません。

冷涼なシャンパーニュでは気候的にも有利で高い酸が保持できますので、比較的マロラクティック発酵を行う生産者も多いです。また、ヴィンテージ毎の変動も大きくリザーヴ・ワインを潤沢に有している大手生産者も少なくありません。

元々は人が手を掛けて行っていた動瓶(ルミアージュ)では、80年代には早々と大量生産のワイナリーが中心にジャイロ・パレットを導入しました。504本の瓶が詰められるバスケットを幾つも繋いで制御装置を使って年間22万本も処理できる設備が手に入ります。今では世界中で使われているジャイロ・パレットは、そもそもこの地で発明されたものです。

また、香味成分を生むだけではなく、口当たりもまろやかにする澱熟成ですが、伝統品種は、シャルドネやピノ・ノワールに比べると酸が低いので余り長い期間は必要無いという考え方です。

こうして、温暖な気候で良く熟した果実香で訴求するカヴァと、トーストやブリオッシュ等の香ばしさと活き活きとした酸と味わいの複雑性を有するシャンパーニュ。こうした違いは醸造手法からも生まれてきます。

スタイル

熟成期間による分類以外にも、シャンパーニュと同様に、様々なスタイルがあります。最も一般的なブランコ、ブランコ・デ・ウヴァ・ブランカ(ブラン・ド・ブラン)、ブランコ・デ・ウヴァ・ティンタ(ブラン・ド・ノワール)、ロサード(ロゼ)。

ロサードは、カヴァ全体の1割弱。シャンパーニュとは違ってブレンドでは造れません。黒ブドウに短時間の醸しを行います。シャンパーニュでは一部のロゼを除けばこの造り方は少数派です。また、最低で25%は黒ブドウを使用しなければいけない規定があります。

残糖による分類は、3g/L未満のブリュット・ナチュレから甘さが増えていく順番にエクストラ・ブリュット、ブリュット、エクストラ・セコ、セコ、セミ・セコとなり、最も甘いものがドゥルセで残糖50g/L以上となります。シャンパーニャと同様でEUの標準に準拠しています。

9. 待ち遠しい!ワインツーリズム

ペネデスには300近いワイナリーが門戸を開いていて、数々のガイドツアーが有ります。ブドウ樹の剪定までさせてもらえるツアーも。ワイン博物館のヴィンセウムでは古代のワイン造りに触れられます。7月には音楽とワインの祭典ヴィジャズ・フェスティヴァルで盛り上がります。

そして、忘れてはいけないのがバルセロナ観光。カヴァの生誕地サン・サドゥルニ・ダノヤから自動車で1時間も掛かりません。サクラダ・ファミリア、カサ・ミラ、グエル公園といったアントニオ・ガウディの世界遺産は必見。レンタカーを使うのでしたら、地中海へ向けたドライブで景観を楽しむのもいいですね。

でも、実際に現地に出向く前にもう少しカヴァを勉強しておきたいですよね。

カヴァ原産地呼称統制委員会の会長ハビエル・パジェスは、カヴァの評価を上げて消費を盛り上げる為に教育に力を入れています。カヴァ・アカデミーという教育プログラムを2018年に立ち上げました。業界関係者とワイン愛好家向け両方を対象にしていて、オンライン・プログラムも紹介されています。世界的にカヴァのファンを広める事と、カヴァのエデュケーターを育成して伝道師になってもらおうという意欲的な試みです。

10. カヴァのまとめ

カタルーニャやアラゴン由来の地ブドウを使って、高貴品種のシャルドネ、ピノ・ノワールを向こうに回して、世界的にシェアを獲得したカヴァ。トラディショナル・メソッドのスパークリングという同じ土俵で、その発祥の地シャンパーニュに次ぐ位置にあるのは凄いことです。

スティルワインでは発祥の地フランスに追いつき追い越す勢いがある新世界の産地でも、スパークリング・ワインの分野では、そうは行きません。

この記事を読んでくださった皆さんはカヴァのこれ迄と今後が見えてきたのでは無いでしょうか。

変わりゆくカヴァを今一度見直して、キラキラする宝石のような、あなたの「一本」を探し出しませんか。カヴァDOから脱却した挑戦者たちやDOに残った優秀な生産者たちの品質の高いスパークリング。彼らのワインに掛ける情熱に想いを馳せて楽しんでみましょう。

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