ワインとは? ~ワインの種類と作り方。世界標準の酒「ワイン」がまるわかり

ワインとは、主にブドウから作られたお酒(酒税法上は果実酒に分類)です。また、きわめて長い歴史をもつこのお酒は、西洋文明の象徴のひとつであると同時に、昨今では、世界標準の飲み物と言えるまでになっています。

2020年における世界全体でのワイン生産量は、200億リットルほど。その生産国は、ワインのゆりかごである本場ヨーロッパだけでなく、いまや日本を含む世界中に広がっています。

もちろん、生産量だけでいうならば、ワインはビール(年産約1,900億リットル)の十分の一ほどでしかないものの、そのオシャレ度やハイソ感ならビールの敵ではありません。社交の場の主役は、今も昔もワインで決まりなのです。

一方で、何となくワインって難しいし敷居が高い、種類がありすぎてよくわからない、そんな声があるのもまた事実。

この記事では、ワインの定義や特徴からはじまり、ワインの種類やその作り方の最重要ポイントをぎゅっと凝縮して紹介します。それでも、10,000字を超える文章ですが、読み終えていただければ、一般の人にとってはちょっとしたワイン通と思われるレベルに。資格勉強をはじめる方には導入知識としても役立てていただけますよ。ワインとはどんなお酒かをまるっと理解し、自家薬籠中のモノにしちゃいましょう!!

本記事は、ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」が監修しています。ワインを通じて人生が豊かになるよう、ワインのコラムをお届けしています。メールマガジン登録で最新の有料記事が無料で閲覧できます。


【目次】

1. ワインの定義
2. ワインの特徴
3. アルコール発酵が鍵!
4. 醸造種、蒸留酒、混成酒
5. ワインの種類(製法、色、甘辛、品種、産地による分類)
6. ワインの作り方
7. 「ワイン Wine」という言葉の語源と各国での呼称
8. 世界の人はどれぐらいワインを飲むか?
9. まとめ

 


1. ワインの定義

ワインと一口にいっても、いろんな定義があり、守備範囲がまずまず広い言葉です。主要なワインの生産国では、ワインという言葉(またはその訳語)は法律で定義されています。

1.1 一般的な定義

果物の果汁を発酵させて作ったアルコール飲料を、広く「ワイン」と呼びます。原料はブドウが最も一般的ですが、ありとあらゆる果物から「ワイン」は作られていることを知りましょう。ブドウはグローバルな農作物ではあるものの、寒すぎたり暑すぎたりで栽培に適さない土地はやはりあり、そうした場所ではブドウ以外の果物から「ワイン」が生まれているのです(たとえば、寒冷すぎてブドウの栽培に向かない北欧では、野イチゴ(ベリー)のたぐいから多くワインが作られています)。

もっと広い定義では、果物以外が原料のお酒をも、ワインの語で指すことがあります。花やハーブで風味をつけた砂糖水を発酵させたものも、「ワイン」と呼ばれることがありますし、日本酒のような穀物原料のお酒ですら、「ライス・ワイン」と英語圏では呼ばれることがあるのです。

決め手となるのは、ワインと呼ばれるものはすべて「醸造酒」と呼ばれるカテゴリーのお酒であること(醸造酒については、4.の章で詳しくお話します)。ただし、ビール(主に麦が原料)、シードル(主にリンゴが原料)、ミード(ハチミツが原料)などについては、それぞれ固有の名前があるため、麦ワイン、リンゴ・ワイン、ハチミツ・ワインといった言葉は一般的ではありません。

1.2 ヨーロッパ(EU)での定義

ワインの本場ヨーロッパ(EU)諸国では、ワインは次のように法律で定義されています(正確な条文の翻訳ではなく、要約です/以下同じ)。

「新鮮なブドウの果汁を発酵させて作ったアルコール飲料で、その発酵は特定の地域において、その土地の伝統や実践に基づいて行われる」。

この定義からすると、ブドウ以外が原料のものはもとより、日本やイギリスなどで見られる、国外から輸入された濃縮ブドウ果汁(水で希釈する)を原料にしたものも、「ワイン」からは外れます。ヨーロッパの法律において「ワイン」は、原料ブドウが栽培される土地に根ざしたもの、と考えられている点が重要です。

1.3 アメリカ合衆国での定義

ワインは今では、ヨーロッパ以外のエリアでも広く作られています。そうした土地産のものを「新世界」ワインと呼び、アメリカ合衆国が生産量の面でも品質の面でもリーダー的存在です。

アメリカ合衆国の法律では、「ワインとは、ブドウ100%の果汁を発酵させて作られたアルコール飲料のことで、他の果物の果汁をブレンドすることは認められていない」と、定義されています。

ヨーロッパ(EU)諸国における定義とほぼ類似のものですが、特定の土地に根ざしたものでなければならない、という条件は見られません。よって、複数の土地のブドウを混ぜて作ったものや、他国産の原料(ブドウや濃縮果汁など)を使用したものも、「ワイン」として認められます。

なお、ブドウ以外の果物を発酵させて作ったお酒には、「ワイン」の語の前に、その果物の名前を付けることがアメリカ合衆国の法律では義務です(例: エルダーベリー・ワイン)。

1.4 日本での定義

日本で作られたり流通したりするお酒に関する法律、酒税法においては、ワインにあたる言葉「果実酒」は、次のように定義されています。

「果実または果実および水を原料として発酵させたもの。あるいは、果実または果実および水に糖類(砂糖、ブドウ糖、または果糖)を加えて発酵させたもの」

果実がブドウに限定されていない点が、ヨーロッパ(EU)諸国やアメリカ合衆国とは異なる点です。また、ヨーロッパではワインを作る際に、ブドウ果汁に水を加えることが、アメリカ合衆国ではブドウ果汁に糖類を加えることが、法律で禁じられていますが、日本の果実酒ではいずれも認められています。

2. ワインの特徴

あらゆる種類のお酒が、ユニークで際だった特徴を備えているものですが、狭い意味での「ワイン」(ブドウ原料のもの)もまたしかりです。ここでは、いくつか代表的なポイントをご紹介しておきましょう。

2.1 極端な多品種・小ロット

ワインが非常に多くの国で生産されているのは、先に触れたとおりですが、極端な多品種・小ロットであるのがこのお酒の特徴です。ワインを作る製造所のことを「ワイナリー」と呼びますが、主要なワイン生産国にはおびただしい数のワイナリーがあり、それぞれのワイナリーがたいてい複数の銘柄を生産しています。

世界中で毎年、どれぐらいの種類のワインが作られているかは、正式な統計が存在しないためはっきりわかりませんが、ざっとした推計で100万銘柄と言われることがあります。つまり、毎年100万種類の異なるラベルが貼られたワインボトルが、世に出ているということです。毎日1銘柄飲んだとしても、全種類制覇までには2700年以上かかります。どんなワインの専門家、マニアであっても、世界中のワインを飲み尽くすことはできないのです。

ワインの銘柄を構成する要素としては、生産国、地方、畑といった地理的区分、ワイナリーの別、原料となるブドウ品種の種類(これまた1500種類ほどあります)、製造法やタイプ・色、収穫年(そのワインの原料となったブドウが摘まれた年)などがあり、それらを掛け合わせると膨大な数になるのは当然でしょう。

その結果として、ワインは1銘柄があたりの生産量が少ない飲み物です。中には、毎年数千万本単位で作られるマンモス銘柄もありますが、ワインの大多数は一銘柄あたり数千本から数十万本しか生産されません(中には、年産数百本という希少銘柄もあります)。

これは、ビールの世界と好対照です。昨今はいろんな国の少量生産地ビールが日本で飲めるようになりましたが、日本で消費されるビールの大多数がいわゆる四大メーカーの製品なのはご存じのとおり。トップ2のメーカーが、それぞれ年産300万キロリットルほどで、これはワインで一般的な750ml瓶に換算すると、40億本!!桁がいったいいくつ違うのかと驚きますが、世界で一番売れているビールのバドバイザー社になれば、その10倍以上の生産量があるそうです。

2.2 グローバルだが土地に根ざしたお酒

ワインは、世界中で生産・消費されるグローバルなお酒ですが、前述の「極端な多品種・小ロット」が招く論理的帰結として、それぞれの生産地(これまたものすごい数があります)の個性が反映されやすいという特徴があります。

特にヨーロッパ諸国では、この「土地に根ざす」という要素が重要され、生産地の個性がくっきり表れていることが、高品質のひとつの基準になっているのです。昨今では、ヨーロッパ以外のワイン生産国でも、「土地の個性」(フランス語では、「テロワール」という言葉で呼びます)を表現することが、だんだんと重視されるようになってきました。

2.3 食べ物と一緒に楽しむお酒

ワインは、食前、食中、食後のいずれのタイミングでも飲まれますが、主には食事と一緒に楽しむお酒です。最近は、いわゆる食事だけでなく、スイーツとともにワインを楽しむ人も増えています。

面白いのは、ワインと食べ物を合わせると(ペアリング、マリアージュなどと言います)、双方が互いにその魅力を引き立て合うことです。もちろん、「ピタっと合うペア」とそうでないものがありますので、恣意的な組み合わせがすべて成立するわけではありません。また、同じ組み合わせでも、人によって合う、合わないの感じ方にはかなりの個人差があることも知っておきましょう。

この「食べ物との組み合わせの妙」も、ワインの魅力を底知れぬものにしている大切な要素です。「このワインにはこの料理でなければ」などと、義務的に考えだすと窮屈なので、あまり気にしすぎてもいけませんが、深掘りすれば面白い世界であるのは間違いありません。

3. アルコール発酵が鍵!

これまでなんどか、「発酵」という言葉がでてきました。発酵とは、微生物が起こす化学変化(有機物を分解)のうち、人間にとって有用なものを指します(同じ微生物による化学変化でも、人間にとってよくないものは「腐敗」と呼ばれます)。

味噌、醤油、漬け物、生ハム、中国茶、ヨーグルトなど、発酵によって生まれた食品は数ありますが、お酒もその代表選手のひとつ。

お酒をつくるための発酵を特に、「アルコール発酵」と言います。

これは、酵母という目に見えない微生物が、原料に含まれる糖分(ブドウ糖、果糖など)を分解し、アルコール(エタノール)と二酸化炭素に変化させる工程です。

●酵母 ⇒ エタノール + 二酸化炭素

ブドウ果汁という「甘い」原料が、ワインという(ほとんどの場合)甘くないお酒に変わるのは、このアルコール発酵によって、甘い糖分が、甘くないアルコールに変化するからです(厳密に言うと、エタノールにはごくわずかな甘さがありますが、糖分と比べればないに等しいです)。

このアルコール発酵によって直接生み出されるお酒のカテゴリーのことを、「醸造酒」と呼びます。ワインは、醸造酒の代表格のひとつです。

4. 醸造酒、蒸留酒、混成酒

ここで一度、視点を俯瞰に切り替えて、ワインがあらゆるお酒の中でどのようなポジションにあるのかを見ておきましょう。
世界中で作られるさまざまな種類のお酒は、醸造酒、蒸留酒、混成酒の三つに大別されます。

醸造酒: 原料のアルコール発酵によって直接生み出されるお酒。比較的アルコール度数が低いのが特徴です(おおむね20度以下)。ワイン(8~15度が主)、ビール(5度前後が主)、日本酒(15度前後が主)など。アルコールが低いのは、発酵を司る酵母の、生物としてのアルコール耐性上限がおおむね20度以下だからです(酒造用の酵母にも多数の種類があり、そのアルコール耐性は種類によって異なります)。つまり、アルコール度数が15~20度に達した時点で酵母が死滅または活動を停止し、発酵が止まってしまうため、醸造酒はアルコールがそれ以上にはなりません(後述の酒精強化ワインは例外)。

蒸留酒: 醸造酒を蒸留して生み出されるお酒。蒸留とは、「混合溶液を加熱してその一部を揮発させ、発生した蒸気を別の場所に移して凝縮させる操作」のことで、お酒の世界では蒸留酒を煮沸して水分を飛ばし、アルコールを濃縮することだと理解してください。蒸留酒は、アルコール度数が高いのが特徴です(20度以上で、40度前後のものが多い)。ブランデー、ウイスキー、焼酎、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラなど。

混成酒: 醸造酒や蒸留酒に、ハーブ、ナッツ、スパイス、果実などの香味や糖類を加えて作ったお酒。甘みをもつものがほとんどで、リキュールとも呼ばれます。ワインの一種である「アロマタイズドワイン」(後述)も、混成酒の一種です。

ワインは、「果実(狭義にはブドウ)を原料とした醸造酒」ということになります。醸造酒には、穀物を原料としたものも多くあり、ビール(主に麦が原料)、日本酒(主に米が原料)が代表的です。

「ブドウが原料」という切り口で見ると、醸造酒がワイン、そのワインを蒸留した蒸留酒がブランデーということになります。

5. ワインの種類(製法、色、甘辛、品種、産地による分類)

ワインにはなにせ膨大な種類がありますから、いくつかタイプによる分類方法があります。同じ「ワイン」でも、タイプが違うだけでずいぶんとその色、香り、味わいが異なるのがまた面白い点です。たとえて言うなら、同じ犬でもチワワとドーベルマンぐらいの差が、タイプ違いのワインのあいだにはあります。

5.1 製法による分類

ワインはその製法によって、スティルワイン、スパークリングワイン、酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)、アロマタイズドワイン(フレーヴァードワイン)の四つに分けられます。

スティルワイン: いわゆる「普通のワイン」で、以下の三つに該当しないものがスティルワインと呼ばれます。量的には、ワイン全体のほとんどを占めます。

スパークリングワイン: 炭酸ガス(二酸化炭素)を含む、泡の出るワイン(発泡性ワイン)のことです。泡の強さは、弱炭酸から強炭酸まであり、それぞれ国によって異なる名で呼ばれています。法律的には、1気圧以上のガス圧をもつワインを、スパークリングワインに分類している国が多いです(1気圧以下の微炭酸ワインは、スティルワインに含まれます)。フランスのシャンパーニュ地方で生産される「シャンパーニュ」、イタリアのヴェネト州で生産される「プロセッコ」などが代表格です。ときおり、「シャンパン」という言葉をスパークリングワインと同義で使うことがありますが、これは救急絆創膏をすべて「バンドエイド」(ジョンソン&ジョンソン社の登録商標)と呼ぶのに似て、誤用になります。

酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン): スティルワインのアルコール度数を、人為的に強化したワインのことを言います(「酒精」とはアルコールの訳語です)。アルコール度数を強化する目的は、飲み応えのアップ、保存性の向上などです。スペインのアンダルシア地方で生産される「シェリー」、ポルトガルのドウロ渓谷で生産される「ポート」、ポルトガル領のマデイラ諸島で生産される「マデイラ」が、世界三大酒精強化ワインと呼ばれています。

アロマタイズドワイン(フレーヴァードワイン): スティルワインに、ハーブのエキスやブドウ以外の果物の果汁などを加えた変わり種のワインで、ワインの一種ですが混成酒に分類されます。甘みやアルコールを人為的に加えたものも多いです。イタリアやフランスで生産される「ベルモット」(ハーブのエキスを添加)、スペインの「サングリア」(ブドウ以外の果汁を添加)が代表格になります。

5.2 色による分類

ワインを色で分ける分類法も一般的です。ワインは、大別して赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン、オレンジワインの四つに分けられます。上記5.-1でとりあげた四つのタイプ(製法)のワインそれぞれに、この四つの色があると考えてください。色が違うと、味わいで感じる渋み(口の粘膜が収縮する感覚刺激)の強さが変わってきます。渋みの強さが違うのは、後述する作り方の違いによるもので、色が違うのは原料ブドウの果皮の色が違うためです。

赤ワイン: 主に黒ブドウ(青紫色の果皮をもつブドウ)を原料としたワインで、赤い色をしています。強めの渋みがあるのが特徴です。

白ワイン: 主に白ブドウ(黄緑色の果皮をもつブドウ)を原料としたワインで、「白」とは便宜的な呼び名、実際には透明度の高い黄色をしています。渋みはほとんどありません。

ロゼワイン: 主に黒ブドウを原料としたワインで、ピンク色をしています(ロゼとは、「薔薇色」を意味するフランス語で、薔薇色とはピンクの古い言い方です)。軽い渋みがあります。

オレンジワイン: 主に白ブドウを原料としたワインで、オレンジ色をしています。ロゼや赤ワインと同じぐらいの渋みがあります。

5.3 甘辛による分類

ワインは、ふつうに生産すると、糖分をほとんど含まない「辛口」になります。これは、原料に含まれる糖分を、酵母がアルコール発酵でアルコール(エタノール)に変えてしまうからです。

しかし、甘みを求める人類のニーズに即して、昔から人為的に甘みを残した(あるいは加えた)甘口のワインも生産されてきました。甘みを含むワインは、その程度によって、「中辛口」、「中甘口」、「甘口」、「極甘口」といった言葉で分類されます。ヨーロッパ(EU)諸国では、甘みの呼称ごとに、ワイン1リットルに含まれる糖分の値が法律で定められていて、ラベルに甘みの呼称を記載している銘柄が多いです。

ワイン1リットルに含まれる糖分の量(グラム)は、少ないと1桁ですが、多いと数百グラムにもなります。

上記5.1でとりあげた四つのタイプ(製法)のワインそれぞれに、また上記5.2でとりあげた四つの色のワインそれぞれに、辛口と甘口があると理解しましょう。

5.4 ブドウ品種による分類

ワインの原料となるブドウには、さまざまな品種があります。その総数は1万品種を超えますが、現在世界中で商業ベースでの栽培がなされているのが、約1500種類ほど。

ブドウ品種は、ワインの風味を大きく左右します。同じ場所で作られた白ワインや赤ワインであっても、ブドウ品種が違えば、その色、香りや味わいが大きく異なってくるのです。

また、ワイン用のブドウにも、その品質が高いことから、世界中で好んで栽培されるものがあります。こしひかり、あきたこまちといった、ブランド米の品種のようなもので、ワインの世界では「高貴ブドウ品種」あるいは「国際ブドウ品種」などと呼ばれています。

たとえば白ブドウのシャルドネ、リースリング、ソーヴィニョン・ブラン黒ブドウのカベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、シラー(シラーズ)、メルロなどがそうです。

こうした品種からできたワインは、単に香味に優れているだけでなく、その品種ならではの際だった特徴をもっています。そのため、あまたあるワインを、ブドウ品種を鍵に分類することがあります。

5.5 産地による分類

前述のように、ワインは土地の個性が尊ばれるお酒ですから、産地名によってワインを分類することも一般的です。高級レストランのワインリストや、ワイン専門店の棚割は、たいていワインの生産国別、ひとつの生産国の中では地方別になっています。

一年間に10万リットル以上ワインを作っている国の数は、ざっと70ほどですが、少量ならタイ、インドネシア、ベトナムといった東南アジア諸国、ナミビアやエチオピアといったアフリカの国々でさえも、ワインは作られています。

生産量でのトップ5は、イタリア、フランス、スペイン、アメリカ合衆国、オーストラリアの順(トップのフランスとイタリアは、年によって順位が入れ替わるほど拮抗しています)。

ひとつの生産国の中にも、多数のワイン産地があるのが一般的で、たとえばフランスであれば著名な地方が10あります。その中でも「王位」に君臨するボルドー地方、ブルゴーニュ地方、シャンパーニュ地方などは、比類ないブランド価値をもっているのです。

ブルゴーニュ地方などは、その中に含まれる多くの村や、それぞれの村の中にある個別の畑までもが、独立した産地としての知名度をもっています。日本の米どころとして新潟県があり、その中に有名な魚沼町があり……というのと似ているといえば、理解しやすいでしょうか。

6. ワインの作り方

ワインは、非常にシンプルに作ることができるお酒です。原料としては、ブドウの果実だけがあれば基本OKで、ビールや日本酒のように水を足してやることも、原則としては必要ありません。アルコール発酵を司る酵母は、純粋培養した乾燥タイプのものも実用化されていますが、ブドウの果皮やワイナリーの空気中にも生育しているので(天然酵母)、これも買い求めなくてよいのです。

製法も、ビールや日本酒と比べるとシンプルで、原料であるブドウ果汁にもともと豊富に糖分が含まれているので、ビールや日本酒といった穀物酒では必要な糖化という工程(穀物のでんぷんを、糖分に変えるプロセス)が、必要ありません。

そんなわけで、ワインは太古の昔から人類とともにあった、非常に歴史の古いお酒なのです。美味しい不味いを別にすれば、ブドウの果実を潰して置いておくだけで、ワインは自然にできあがります。最近の研究では、オランウータンが果物を発酵させてフルーツワインを作り、楽しんでいることもわかりました。考古学的な証拠として一番古いワイン製造の跡は、今のところ紀元前6000年頃のものですが(ジョージアで見つかりました)、実際には人類が猿から進化したかしないかぐらいの頃から、ワインは作られていたと推定できましょう。

6.1 スティルワインの作り方

ブドウを収穫し、潰したり搾ったりして液状または液体と固体の混合物にしたものを、アルコール発酵させてやれば、原始的な意味でのスティルワインはできあがります。

現代のワイン生産では、アルコール発酵が終わったあと、一定期間(数ヶ月から数年間)、熟成容器(ステンレスやコンクリート製のタンク、木樽など)の中で「寝かせて」やり、必要に応じて濁りをとる作業(清澄、濾過)をしたうえで、瓶に詰めてできあがりです。瓶詰めしてから出荷するまでに、さらに熟成期間を取ることもあります。

6.2 スパークリングワインの作り方

スティルワインと比べると、スパークリングワインの製造工程は若干複雑で、いくつか方法があります。

肝心なのは、アルコール発酵で発生する炭酸ガス(二酸化炭素)を、ワインの中に閉じ込めてやるようにすることです。スティルワインの製造では、発酵中に出る二酸化炭素はワイナリーの空気中に「逃げて」いってしまいますが、スパークリングワインの生産ではその一部がワインの中に残るようにしてやります。

ただし、安価なスパークリングワインでは、スティルワインに二酸化炭素を吹き込むだけの製法も一般的です。

6.3 酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)の作り方

スティルワインの発酵前、発酵中、発酵後にブランデー(ワインと同じブドウ原料の蒸留酒)を添加し、アルコール度数を人為的に高めて作るのが酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)です。

ブランデー添加後のアルコール度数は、ワイン用酵母のアルコール耐性を上回る値(15~22度)になるよう調整されるので、添加した時点でアルコール発酵は起こらなくなります。そのため、発酵前または発酵中にブランデー添加をした酒精強化ワインは、必然的に甘口になります(ブドウ果汁またはワイン中の残留糖分が、発酵されずにそのままワイン中に残るため)。

6.4 甘口ワインの作り方

甘口ワインの作り方にも、スパークリングワイン同様さまざまなものがあります。

ワイン用酵母のアルコール耐性上限が、度数にして15度程度であることを利用するのが、甘口ワインの製法その1です。酵母が食べきれないぐらい多量の糖分、つまりアルコールに変換したときに15度以上になるだけの甘さが、原料ブドウまたはその果汁にあれば、アルコール発酵が途中で止まり、その時点で分解されていない糖分がワインに残ります。

それだけの甘さの果実または果汁を手にいれる方法は、これまたいくつかあり、貴腐菌というブドウ果実に生えるカビの働きを利用するもの、ブドウ果実または果汁を凍らせるもの、ブドウ果実の摘み取り時期を遅くして熟する(甘みが強くなる)のを待つもの、摘んだブドウ果実を陰干しして甘みを強めるものなどがあります。

甘口の酒精強化ワインも、酵母のアルコール耐性に上限がある性質を利用して作るものです(上述)。

ワインのアルコール度数が15度未満、つまり酵母の耐性上限未満でも、人為的にアルコール発酵を止めてやれば、その時点で未分解の果汁中糖分はワインに残り、甘口ワインができます。これが、甘口ワインの製法その2です。アルコール発酵を止める方法としては、濾過や遠心分離で発酵のエンジンである酵母をワイン中から取り除くもの、果汁を冷却したり、亜硫酸(二酸化硫黄)という殺菌剤・酸化防止剤を一定量入れたりして、酵母の動きを止めるものなどがあります。

辛口のワインに甘みを足して、甘口にするのが製法その3です。アロマタイズドワイン(フレーヴァードワイン)のように、直接甘みを加える場合もあれば、発酵前のブドウ果汁(当然甘いです)を、辛口ワインに加えて甘くする場合もあります。

6.5 色別の製法の違い

前に、ワインは色によって渋みの強さが違うと述べました。四つ色(赤、白、ロゼ、オレンジ)は、アルコール発酵中に、果汁だけを使うか、はたまた果皮や種といった固体部分も使うかで、渋みの強さが変わってきます。

赤ワイン(主に黒ブドウが原料)とオレンジワイン(主に白ブドウが原料)は、アルコール発酵を行う容器に、果汁だけでなく、果皮や種も(場合によっては果柄も)投入してプロセスを進めます。そうすると、果皮や種から渋み成分(タンニンといいます)がにじみ出てきますし、赤ワインの場合は黒ブドウの果皮から赤い色素が、オレンジワインの場合は白ブドウの種子から黄色い色素がにじみ出てくるのです。

一方、白ワイン(主に白ブドウが原料)は、アルコール発酵を行う容器には、果汁しか投入しません。発酵の前にブドウを搾って、果汁と固体部分(果皮、種、果柄など)を分離するのです。だから色が薄く、渋みがほとんどないワインができあがります。なお、黒ブドウでもほとんどの品種は果汁に色がついていないため、黒ブドウだけを原料にしても、白ワインは作れます(数・量は多くありませが、実際にそのような白ワインは存在します)。

ロゼワイン(主に黒ブドウが原料)は、赤/オレンジワインと、白ワインの中間的な製法になります。すなわち、アルコール発酵の初期に数時間から数日のみ固体部分(果皮、種など)を容器に投入して多少の色と渋みを抽出し、そのあとアルコール発酵の途中で固体部分を取り除くのです。

7. 「ワイン Wine」という言葉の語源と各国での呼称

「ワイン Wine」という言葉は英語で、古くは「ウィーン Win」と綴られ発音されていました。この「ウィーン Win」という言葉は、もともとラテン語の「ヴィヌム Vinum」から派生しています。

フランスやイタリア、スペインといったラテン系の国では、ラテン語の「ヴィヌム Vinum」により近い言葉がワインの意味で使われていまして、すなわちフランス語では「ヴァン Vin」、イタリア語では「ヴィーノ Vino」、スペイン語では「ビノ Vino」と言います。ゲルマン系のドイツやオーストリアでは、「ヴァイン Wein」です。

なお、英語でブドウ畑を意味する「ヴィンヤード Vineyard」、ブドウ樹を意味する「ヴァイン Vine」といった言葉も、ラテン語の「ヴィヌム Vinum」から派生しています。

8. 世界の人はどれぐらいワインを飲むか?

日本人の食卓でも、すっかりワインはおなじみの存在になりました。では日本では、毎年どれぐらいの量のワインが消費されていて、国民ひとりあたりにすると何本のワインを飲んでいるのでしょうか。

2018年における日本のワイン消費量は、3.6億リットルほど。これを日本の人口1.2億人で割ると、国民ひとりあたり年間3リットル飲んでいることになります。750mlの瓶にすると4本ですね。

これでも昔と比べればずいぶんと増えたほうですが、世界のトップクラスのワイン消費国と比べれば、まだまだ少ないのです。

2018年の国民ひとりあたり消費量トップの国は、ポルトガルで62リットル(750ml瓶で約83本)。日本の20倍以上です! 第2位がフランスの50リットル(約67本)、第3位がイタリアで44リットル(約59本)と続きます。

国民ひとりあたりの量ではなく、国全体の絶対量が一番多いのはアメリカ合衆国で、33億リットルほど。日本の10倍近いですね。ただ、アメリカ合衆国の人口は3.3億人ほどなので、国民ひとりあたりのワイン消費量は10リットルと、ヨーロッパの国々と比べればまだ少ないです。

国全体の消費量順位は、フランス(27億リットル)、イタリア(22億リットル)、ドイツ(20億リットル)と続きますが、赤丸急上昇中なのが第5位の中国(18億リットル)です。中国には14億人もの人口がありますから、今後国民ひとりあたりの消費量が上昇を続ければ、絶対量で世界トップになる日もそう遠くないよう思われます。

9. まとめ

本記事では、ワインという世界標準のお酒について、分類や作り方を中心にご紹介してきました。ワインは、単なるお酒の枠を超えた「文化」と言えるもので、その奥の深さは筆舌に尽くしがたいものがあります。

しかし、百聞は一見にしかず。まずは酒屋さんでワインを買って、あるいは飲食店でワインを注文して、実際に飲んでみましょう。その色、香り、味わいは実にさまざまで、個性にあふれ、値段に応じた魅力があります。

インターネットが発達した現代においては、昔と比べてワインの情報は簡単に手に入ります。飲んだワインが気に入ったら、ぜひスマホにその名前を入れて検索してみましょう。どんな国・産地で、どんな人が、どんなふうに作ったのかがたちどころにわかりますから、そこでまたさらに興味が沸いて……という無限ループに入ること請け合いです。

それでは、ぜひぜひ充実したワインライフをお過ごしください!!

豊かな人生を、ワインとともに

(ワインスクール無料体験のご案内)

世界的に高名なワイン評論家スティーヴン・スパリュアはパリで1972年にワインスクールを立ち上げました。そのスタイルを受け継ぎ、1987年、日本初のワインスクールとしてアカデミー・デュ・ヴァンが開校しました。

シーズンごとに開講されるワインの講座数は150以上。初心者からプロフェッショナルまで、ワインや酒、食文化の好奇心を満たす多彩な講座をご用意しています。

ワインスクール
アカデミー・デュ・ヴァン