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マデイラ島
2020年も半分過ぎました。
振り返ってみても、なんだか空白の時間が過ぎてしまったように感じてしまいます。
徐々に日常を取り戻しつつも、まだまだ海外ワイン産地への自由な渡航が解禁になるには時間がかかりそうですね。
国境を越えて、次に訪問するワイン産地はどこだろう?と、想いを巡らせてしまいます。
さて、今回は少し記憶を遡って、2017年1月末に訪問したポルトガルのマデイラ島をご紹介したいと思います。
「大西洋の真珠」と称されるマデイラ島は、奄美大島と同じくらいの大きさの大西洋上に浮かぶ火山由来の島です。
サッカーがお好きな方にとっては、ポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド選手の出身地としても有名ですね。
マデイラ島の玄関口、フンシャルの空港は、2017年3月「クリスティアーノ・ロナウド・マデイラ国際空港」に改名されています。
スペインのシェリー、ポルトガル本土のポートと並んで、世界三大酒精強化ワインの一つ「マデイラ」の産地として知られるこの島の海岸線は、切り立った断崖絶壁が連なっていて、その急な斜面にテラス(段々畑)が築かれ、伝統的な棚仕立てでブドウ栽培が行われています。
ヴィニョス・バーベイト社のリカルドさんが運転する車で、そのテラスの畑を案内して頂いたのですが、細くて入り組んだ坂道を蛇行しながらぐんぐん登って行くのは、ジェットコースターさながら、なかなかエキサイティングでした!
冬のブドウ畑は、緑の葉がない分、樹の仕立て方がよく観察できます。
表土はカバークロップの緑と黄色い花が覆い、見晴らす先は大西洋と青い空が視界を埋め尽くし、まさに絶景!これが「大西洋の真珠」と言われる由縁、と感じる瞬間でした。
年間を通じて穏やかな気候と標高差を利用して、異なるブドウ品種が栽培されているのですが、標高がより低いエリアは、南国らしくバナナなどが栽培されています。
プレミアムマデイラに使用される4種の白ブドウ品種は、辛口から甘口の順に、セルシアル、ヴェルデーリョ、ボアル、マルヴァジアで、標高が高いほど、あるいは島の北部ほど気温が低いため、高い酸度を保った繊細なブドウが育ちます。
ワインのセンス・オブ・プレイスを考えるとき、産地の気候は大きな要素なのですが、同じくらい地形も影響します。
四方を海に囲まれた島のワインは、どこか潮風を感じる要素がありながら、同時に火山由来の険しい山の要素も感じられます。
そして、17世紀ごろに赤道を横切る暑く長い航海中に変化したワインから発見されたとされるマデイラ独特の熟成によって、酸化と加熱による特有の風味がもたらされ、ほぼ永久的にその風味が保たれます。
多くのヴィンテージマデイラを貯蔵しているドリヴェイラ社のセラーでは、なんと一番古いもので1875年まで遡り、まるでタイムトリップのようなテイスティングを体験しました。
甘さは高い酸味とバランスし、熟成由来の旨味や、海と火山のミネラル感が凝縮された上質なマデイラは、日本の珍味との相性も良く、また、さまざまな異なる食材を使うお寿司や天ぷらとも不思議と寄り添います。
ワイン好きな方でも、普段なかなか飲む機会の少ないマデイラかもしれませんが、このユニークな経験をしてみたいという方にオススメのお店が、銀座にある『マデイラ エントラーダ』さんです。
ぜひ、マデイラで時間と空間を超えてセンス・オブ・プレイスを体験してみてください。
並木通りの地下のバーから、大西洋の真珠へトリップ出来ることでしょう!
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
マデイラ エントラーダ
〒104-0061 東京都中央区銀座7-6-19
ソワレ・ド・銀座弥生ビル B1F
2020.07.03
高橋佳子 Yoshiko Takahashi
JSA認定ソムリエ、SAKE DIPLOMA
WSET® Level4 Diploma in Wines and Spirits
A+オーストラリアワイン・トレード・スペシャリスト
ワインサービス、インポーター、卸、と多角的にワイン業界に携わった経験と、オーストラリアの生産者の元で学んだ経験を活かし、フリーランスでワインコンサルタントとして活動中。
ワインで繋がるご縁を大切に、自然体なライフスタイルに寄り添ったワインの魅力を伝えていきたいと思っています。