世界四大酒精強化ワインをご存知でしょうか。
その4つの中にはシェリー酒、ポートワイン、マデイラワインに並んで、マルサラワインがあります。
酒精強化ワインというのは、ブランデーを加えて造られたアルコール度数が高めのワインのこと。
マルサラワインもアルコール度数が高く、18%前後となっています。
日本のバーや居酒屋などではマルサラワインを置いていることが少ないですが、ワイン好きならぜひとも知っておきたいワインです。
【目次】
では、上の目次に沿って「マルサラワイン」を説明します。
マルサラワイン(Marsala Wine)とは
マルサラワインは、イタリアを代表する酒精強化ワインです。
イタリアは国土が靴の形をしていますが、そのつま先にあるシチリア島の最西端にあるマルサラで造られています。
その多くはグリッロやカタラットというブドウ品種を用いた白ワインですが、黒ブドウ品種のネーロ・ダヴオーラやネレッロ・マスカレーゼを使った赤ワインもあります。
マルサラワインの特徴はオーク樽で熟成すること。
それにより、マルサラワインからは木やカラメル、アーモンド、バニラなどの香りが楽しめます。
酒精強化のワインとは
酒精強化のワインというのはフォーティファイドワインとも言い、ワインを醸造する際に高アルコールの蒸留酒を加えて、アルコール度数をおおよそ15~22度にまで高めたワインのことです。
ポルトガルのポートワインとマデイラワイン、スペインのシェリー酒を合わせて世界三大酒精強化ワインとされていますが、そこにイタリアのマルサラワインを加えて世界四大酒精強化ワインとも呼ばれています。
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マルサラワインの醸造方法とは
マルサラワインは他のワインと比べて作り方が特徴的です。
まずは、グリッロやカタラットといったブドウを使って、以下の4種類を造ります。
- 自然に止まるまでアルコール発酵させたワイン
- ワインから蒸留した酒精強化用のアルコール
- ブドウ果汁のアルコール発酵中に❷を添加して発酵を止め、ブドウの甘味を残したミステッラ
- ブドウ果汁を煮詰めたモストコット
この4種類を混ぜ合わせて造ります。
ただし、マルサラワインの種類については後ほど紹介しますが、その中のヴェルジネタイプは❶と❷だけを使います。
混ぜ合わせた後は、オーク樽で熟成させることによってマルサラワインが完成します。
高級品の中にはソレラ・システムで熟成されたものもあります。
ソレラ・システムとは
シェリー酒を造る際に使われるソレラ・システムですが、マルサラワインの高級な品を造るときにも使われています。
マルサラワインはオーク樽に入れて熟成しますが、その際にワインを詰めた樽は下から順に古いものとなるように3~4段に積み重ねます。
瓶詰するときには下段の樽からワインを一部取り出すのですが、このとき樽内のワインを3分の2以上残すようにして、取り出された分の量をすぐ上の樽から補充するという方法を取ります。
そうすることで、出荷するワインの品質を常に一定にしています。
このように混ぜ合わせることによって樽間の品質をも一定にする方法をソレラ・システムと言います。
マルサラワインの種類とは
マルサラワインには様々な種類があり、甘口・辛口などの味わいや、熟成年数によって呼び名が変わります。
甘口や辛口などの味わいによって呼び名が変わる
マルセラワインは、甘口や辛口などの味わいの違いによって、下表のように呼び名の違いがあります。
呼び名 | 味わい |
セッコ(Secco) | 辛口(残存糖分40g/L未満) |
セミ・セッコ(Semi Secco) | 半辛口(残存糖分40 g~100g/L) |
ドルチェ(Dolce) | 甘口(残存糖分100g/L以上) |
熟成年数によって呼び名が変わる
マルセラワインは、熟成年数の違いによって、下表のように呼び名の違いがあります。
呼び名 | 熟成年数 |
フィーネ(Fine) | 熟成年数1年 |
スペリオーレ(Speriore) | 熟成年数2年 |
スペリオーレ・リゼルヴァ(Speriore Riserva) | 熟成年数4年 |
ヴェルジネ(Vergine) | 熟成年数5年 |
ヴェルジネ・ストラヴェッキオ(Vergine Stravecchio) | 熟成年数10年 |
マルサラワインの歴史
マルサラワインも他のワインと同様に、偶然の賜物として生まれました。
1770年代、ジョン・ウッドハウスというイギリスの貿易商人が悪天候に見舞われた際、なんとか近くの島に避難します。
そこがシチリア島のマルサラでした。
ウッドハウスはその地でマルサラワインを飲み、その味わいが当時イギリスで流行していたポートワインやマデイラワインと似ていることに気づきます。
イギリスに持ち帰ろうとし、長い渡航で腐らないようにアルコールを添加したのが、マルサラワインの原型となっています。
その後マルサラワインの市場は長い間、イギリス人が独占していましたが、イタリア人のヴィンツェンツォ・フローリオ氏が参入していきます。
1833年にフローリオ社を起業して、イタリア国内外にマルサラワインを宣伝し、その名を世界に広めていきます。
フローリオ社は今でもマルサラワインの造り手として第一線で活躍しています。
マルサラワインの楽しみ方とは
マルサラワインは食前酒として、もしくは食後酒として楽しみます。
辛口のものは食前酒として飲むことが多いです。
その際はおおよそ6~8℃が適温となります。
一方で、甘口のものは食後にデザートと一緒に、あるいはデザートの代わりに楽しみます。
この場合には約18℃が適温です。
マルサラワインの魅力は飲むことだけではなく、料理酒としても活躍することにもあります。
特にティラミスを作るときに風味付けとして使われるのが最も有名な使い方となっています。
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まとめ
飲むだけではなく、ティラミスを作るときなどに料理酒としても使われているマルサラワイン。
どんなワインなのか想像できるまでにはなりましたね。
実際にどんなワインなのか知るために、ご自身の目で、鼻で、舌で直接味わってみてはいかがでしょうか。