有機栽培や無農薬の食材をこだわる方も増え、最近ではいたるところで「オーガニック」や「有機」と見かける機会が増えてきました。
ワインにおいてもオーガニックワインがあります。
現在、オーガニックワイン産業は急速な成長の真っただ中にあり、2004年から2015年の12年間で生産量が28倍近くなっています。
【目次】
オーガニックワインについて、上記の目次に沿って説明します。
オーガニックワイン(Organic Wine)とは
そもそもオーガニックには「有機の」や「化学肥料を用いないで育てた」といった意味があります。
オーガニックワインを直訳すれば、化学肥料を用いないで育てたワインということになります。
もう少し正確にお伝えすると、オーガニックワインを造る際には、農薬や肥料などにおいて化学的なものを使わず、遺伝子操作や放射線処理をせずに栽培したブドウを用います。
添加物に関しては全く使用しないと、ワインが腐ったり劣化しやすくなってしまいますので、安全面を配慮して極めて少ない一定の基準まで使うことが許可されています。
オーガニックワインとビオワインの違い
オーガニックはビオともいい、ビオワイン(Bio Wine)というのも存在します。
このビオワインとオーガニックワインに関しては、日本とEUで扱い方が全く異なります。
日本におけるオーガニックワインとビオワインの違い
日本において、重要視されているのは「オーガニック」や「有機」という言葉です。
これらは有機JAS認定を取得しなければ、商品につけることはできません。
その一方で、「ビオ」や「ビオワイン」という言葉に関しては、有機JAS認定などを取得しないで使えるという違いがあります。
ですが、消費者としてそこまで理解している方は少なく、認定を取得しているオーガニックワインと、認定を取得していないビオワインの区別がついていないでしょう。
EUにおけるオーガニックワインとビオワインの違い
EUでは日本と違い、オーガニックワインだけではなく、ビオやビオワインという表現に関しても決まりがあります。
EUの基準においてビオワイン、あるいはオーガニックワインと名乗るためには専門機関の認証が必要です。
市場に出回っているビオワインやオーガニックワインのうち、EU圏の国で造られたものには、ラベルに認証マークが貼ってあります。
認証機関にはどんなものがある?
ビオワインやオーガニックワインと称することを認める専門機関は世界各国にあります。
<各国のオーガニックワイン / ビオワインの認証機関(代表例)>
様々な認証機関がありますが、その中でも有名なこの5つの機関をご紹介します。
日本:有機JAS規格
日本には農林水産省が認める有機JAS規格というものがあります。
この機関の認証を得ると「オーガニック」、「有機」と名乗れるようになります。
EU:Euro leaf(ユーロ・リーフ)
EUでも有機食品を認定する基準があり、それを満たしたものにはユーロ・リーフのロゴを貼ることが許されます。
なお、2012年から有機ロゴの表示が義務となっています。
ただし、非包装の食品や輸入品の場合はロゴの使用は任意です。
フランス:ECOCERT(エコサート)
1991年に設立されたECOCERTは、フランス経済省と農務省が認めた国際有機認証機関です。
現在ではフランスのトゥールーズを本部として世界各地に23の支社を置き、80を超える国で有機認証をしています。
日本にも支社が置かれています。
フランス:AB認証
1981年にフランス政府や有機栽培などに関する指針を制定し、1985年以降基準を満たす有機食品にビオ認定、オーガニック認定のマークとしてABマークが使われています。
ただし、このABマークを貼れるのはEU国内で加工された製品であって、先ほどご紹介したECOCERTの厳格な審査をクリアしたものに限ります。
ドイツ:demeter(デメター)
ドイツで一番古い民間認証団体のdemeter。
その基準は極めて厳しく、ビオディナミ農法と呼ばれる方法で造られた有機食品のみがdemeterの認証を受けられます。
これに認められたワインのラベルには、demeterの認証マークをつけることが可能です。
世界各国にはこれ以外にもいくつもの認証機関が存在します。
ビオやオーガニックにこだわっている方は、こうした認証機関が良いとした証であるマークの入っているワインを購入してみてはいかがでしょうか。
認証マークがなくてもオーガニックにこだわっている農家はある
認証マークの入っているワインは、先ほどご紹介したような認証機関の基準を満たしたことが証明されているものとなりますから、消費者としてオーガニックな商品を選びたいときには分かりやすいかもしれません。
ただ、農家によってはコスト的に認証を受けるだけの余裕がなかったり、認証マークは必要ないと考えていたりします。
実際にはオーガニックにこだわって、なるべく自然な環境で栽培したブドウでワインを造っている農家もあるのです。
とはいえ、消費者の私たちがそれを知るには、ビオやオーガニックに詳しいソムリエやバイヤーに直接聞くしかありません。
ご興味のある方は聞いてみても良いかもしれません。
オーガニックワインに使うブドウの栽培方法
オーガニックワインに使うブドウを栽培するには以下3つの方法があります。
<オーガニックワインに使うブドウの栽培方法>
それぞれ説明していきますが、まず知ってほしいのはリュット・レゾネよりもビオロジック、ビオロジックよりもビオディナミのほうが厳格な決まりがあるということです。
どれも使用する化学物質を少なく、自然に近い状態で栽培する農法ですが、決まりには差があります。
リュット・レゾネ農法
減農薬農法とも言われるリュット・レゾネ農法は、完全に化学肥料などを使わないわけではありません。
基本的には化学肥料や農薬などを使わずに栽培しますが、必要に迫られた場合には極少量なら農薬の使用が認められています。
リュット・レゾネ農法には明確な定義もなく認証団体もないため、使う農薬の量に関しては、農家の良心を信じるしかないというのが現状です。
オーガニックにしたくても、シャンパーニュやシャブリ地方などの厳しい環境では年によって農薬を使わなくてはならなくなることもあります。
そういった地域ではリュット・レゾネ農法を使ってブドウが造られています。
ビオロジック農法
有機農法とも呼ばれるビオロジック農法。
リュット・レゾネ農法とは違い、化学肥料や除草剤、農薬などは使用できませんので、動物のフンなどを肥料として使ってブドウを育てています。
ただし、ボルドー液という病気予防のための伝統的な農薬だけは例外として使って良いとされています。
収穫は機械を使わず、手摘みで行われます。
ビオディナミ農法
ビオディナミ農法は、基本的にはビオロジック農法と同様です。
異なる点としては、ルドルフ・シュタイナーというオーストラリアの哲学者が提唱した理論に基づき、栽培するうえで天体や宇宙の力も活用するという農法です。
具体的には、月や星座の動きによって肥料を散布したりブドウを収穫したりする日取りを決めるというものです。
かの有名なロマネコンティに使うブドウを造る際には、このビオディナミ農法が使われます。
オーガニックワインと一般的なワインにはどんな違いがある?
オーガニックワインと一般的なワインには当然のことながら違いがあります。
ここには「香り」、「味わい」、「頭痛のしやすさ」という3つの観点から違いをお伝えしていきます。
香り
オーガニックワインには独特の香りがあり、ビオ臭とも呼ばれています。
「臭」という漢字が使われていることからも分かるように、あまり好かれるような香りではありません。
ビオ臭の例えとしては、馬小屋のような香り、硫黄のような香り、土のような香りといったものが挙げられます。
ただし、香りはワインによって異なりますし、ビオ臭のしないオーガニックワインもあります。
味わい
オーガニックワインは自然に近い状態で造られ、瓶詰めして保存をする際にも化学的なものをなるべく添加しないようにします。
一般的なワインを保存する場合には亜硫酸塩と呼ばれる添加物を使い、瓶詰めした後にワインに変化が起こるのを防いでいますが、オーガニックワインの場合には亜硫酸塩の使用量には制限があります。
そのため、オーガニックワインは一般的なワインに比べると味わいに変化が起こりやすくなっているのです。
ワインごとに味わいが変わってきますので、飲む楽しみが増えますね。
頭痛の起こりづらさ
オーガニックワインは一般に「頭痛がしにくい」、「二日酔いになりにくい」などと言われています。
たしかに先ほどもご説明したようにオーガニックワインは亜硫酸塩の使用量が少ないために、頭痛がしにくくなるのではないかとも考えられます。
しかし、それは科学的に証明されたものではありませんし、飲む量や飲むときの体調によっても、頭の痛くなりやすさや二日酔いへのなりやすさは変わってくるでしょう。
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まとめ
繰り返しますが、オーガニックワインというのは有機栽培したブドウを使って造られたワインの総称ですので、オーガニックワインのすべてが、頭が痛くなりにくいとか、ビオ臭があるとかいったように言いきれるものではありません。
そうした傾向があるものの、ワインによってはビオ臭のしないものもありますし、頭痛が起こりやすいものもありますから、そうしたことを頭に入れつつ楽しんでいきましょう。