岩瀬大二のワインボトルのなかとそと Vol.12〜スペインの祝祭を代々木公園で

岩瀬大二,ドン・ぺリニヨン,リシャ―ル・ジェフロワ,日本酒,富山,IWA

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スペインの祝祭を代々木公園で

岩瀬大二のワインボトルのなかとそと #12 〜スペインの祝祭を代々木公園で

 

「フィエスタ・デ・エスパーニャ」というイベントをご存じでしょうか?

毎年11月中旬ごろ、代々木公園で開催されている、「食」「飲」・「文化」・「舞踊」・「音楽」など、スペインの魅力を詰め込んだ2DAYSイベントです。

日本スペイン交流400周年にあたる2013年に初開催し、2019年まで7回開催され、総来場者数は70万人を超え、注目度の高いイベントとして、名実ともに「日本最大級」のスペインフェスティバルとして成長してきました。

そして8年目となる2020年は、私が実行委員長に就任し、11月21日(土)、22日(日)、23日(月・祝)と、はじめて3日間にわたって開催することを決定しました。

 

とはいえ、この環境下ですから、開催決定までには何度も話し合いを重ね、開催の可否、また開催された場合の体制や対策などを、スタッフが代々木公園を管轄する東京都とも協議しながら慎重に進めてきました。

当然この後のリスクも少なくありません。

中止となった場合の出店者への補償、イベント自体の損失、なによりも安全性の担保など、開催決定後も課題は山積みです。その中での開催の決断の理由はいくつかありますが、私個人のある思いもそこにはかかわっています。

それはワインとその地の文化の関係を知っていただくうえで大切なイベントであるということです。

このイベントではスペインがテーマとなりますが、ほかのエリアも同様の課題を持ち、希望があると考えています。


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はじめての方からワインの奥深さを追求される方まで、幅広く講座を開講しています。講師にはワイン業界をリードする現役のプロフェッショナルや、生産地から生産者をお迎えしています。

 

私がこのイベントに関わったのは2年目から。

ステージMC、DJユニットとして出演したことがきっかけでした。

その際の印象は、パエリアやアヒージョというようなわかりやすい料理屋台とフラメンコやスパニッシュギターのステージはあるけれど、スペインっぽいけどスペインではないものの要素も強く、その点について出演者ながら積極的に主催・運営スタッフとも意見交換をしました。

実際は立ち上げたばかりのイベントで、スペイン色だけではイベントが成立しなかったこと。

スペイン業界内での知名度がまだ高くない上に、気づいたのは来場者も、スペインっぽいけどスペインではないものをスペインだと思って受け入れていて、むしろそちらのほうが、認知度が高いという事実でした。

その中で痛切に感じたのは、当時、来場者から「スペインワイン」についての声が聞かれないことでした。

 

せっかく目の前にスペインの料理があり、スペインの舞踊があり、スペインの音楽があるのに、ワインは「別にスペインでなくてもいい」という状況。出店者もスペインワインということを声高にいうのではなく、とりあえず「生ハムにワイン」というような程度のプッシュでした。

このメルマガコラムでも「広義のテロワール」というような話を書いていますが、まさに、スペインワインの知名度を上げるチャンス!というイベントで、そこでスペインワインが訴求されないのは、スペインワインの価値を下げてしまうことにつながるのではと危惧していました。

 

その思いを共有していただけたのか、セグラヴューダスやフレシネといったカヴァの大手、流通大手のイオンのスペインワインブース、スペインオーガニックワインを扱うインポーターの出店、さらに毎年恒例のイベントとしてシェリーを扱うベネンシアドールのみなさんのステージなど、次第にスペインワインの味と香りが会場に溢れ、それが料理、舞踊、音楽、文化にドライブをかけるものとなりはじめました。ご当地ワインの力を感じる瞬間です。

 

スペインワインはまだ日本で周知され、人気が高まっているものではありませんが、サッカー、ファッション、建築、ディスティネーションなどスペインの文化は日本で愛されています。それらと一緒にワインの魅力を知っていただく。

その先に、スペインワインの深い世界が開けています。これはほかのエリアも同様でしょう。

 

スペインワインの魅力を知っていただくためにも、このイベントを、単にこの時期だからとやめるわけにはいきませんでした。

このタイミングで実行委員長に就任することには逡巡がありましたが、決断した裏にはこのような理由がありました。

ニューヨーク、イングランド、チリ、トルコなど中近東…私がもっと伝えたいワインも同様に、何かアクションをしていきたい。

その実践だと思っています。

 

ワインボトルのなかとそと。

この先、結果として中止を決断する可能性もありますが、今は前向きに捉えています。

開催されましたら、ふらりと代々木公園にお立ち寄りください。かの地のワインを伝えるためのひとつの模索、感じていただけましたら。

お立ち寄りいただけるように環境が落ち着いていることも祈りつつ。


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2020.09.04


岩瀬大二 Daiji Iwase

MC/ライター/プランナー/イベント・オーガナイザーなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカー、ビール、日本酒などの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」、「酒旅ライター」。「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。お酒単体ではなく、スポーツやロック、旅、地域文化、演芸などさまざまな分野とお酒の魅力を結びつけ紹介している。

フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長
ぐるなび「IPPIN」酒キュレーター
「ヤフー!ライフマガジン」日本酒特集担当
他、ワイン専門誌や情報誌、WEBメディアでの特集企画・ワインセレクト・インタビュー、執筆。日本ワイナリー収穫祭や海外生産者交流イベント、日本最大級のスペイン祭りなどお酒と人々を結ぶイベント演出、MC/DJ多数。

 

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