リケジョが行く! ワインを科学で考えるコラムvol.7無灌漑って何がすごいの?

「無灌漑のブドウで造られたワイン」という表現がまるでイコール高品質かのように使われている場面に遭遇することがあります。実際に無灌漑の意味と価値はどこにあるのでしょうか。

文/小原 陽子


【目次】

1.  灌漑はなぜ必要なのか
2.灌漑は悪いことという印象はなぜ?
3.灌漑に対するイメージの変化
4.無灌漑の意味と価値
5.安定的に高品質のブドウが生産できるのは素晴らしいこと


1.灌漑はなぜ必要なのか

後方に見えるのは砂漠ではなく、全ての草が枯れた山。手前の灌漑されたブドウ畑と対照的

灌漑はブドウ畑に水を撒くこと。植物を栽培するうえではあたりまえとも思えることですが、このことがワイン用ブドウ栽培となると、なぜこれほど注目を集めるのでしょうか。

それを知るには、世界のワイン用ブドウ栽培地の気候を把握する必要があります。重要なことは、ほとんどのブドウ栽培地域ではブドウの生育期である春から秋にかけて極端に降雨量が少ないということです。この点は冬が乾燥し、夏が蒸し暑い日本に住んでいると見落としてしまいがちです。

ワイン用ブドウ栽培に適した年間降雨量は500-900㎜ということは読者の皆さんもよくご存知と思いますが、そのほとんどが冬に降る点を忘れてはなりません。雨の降る冬の時期にはブドウは休眠状態にありますから、ブドウが水を必要とするのは萌芽から収穫までの生育期です。つまり、冬の間に降った雨がしっかりと土壌に蓄えられれば、夏の間に雨が降らなくてもブドウは育ってくれるのです。

しかし、もしも冬に十分な雨が降らなければ、あるいは土壌の水分保持能力が低ければ、ブドウに十分な水が届かず、枯れてしまうこともあり得るのです。だからこそ、灌漑は必要とされているのです。

 

2.灌漑は悪いことという印象はなぜ?

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