ヴィンテージワインを注いでいくうちに、みるみる色が変わっていき、最後に注いだワインには元あったルビー色の輝きが失われてしまったという経験をお持ちの方もいるかもしれません。
こうなると、見た目の楽しみがなくなるだけでなく、ワインの風味も損なってしまうのです。
最大限においしく飲むためにはデキャンタージュが必要になります。
ヴィンテージワインをおいしく飲みたいという方のために、ヴィンテージワインのデキャンタージュについてご紹介します。
【目次】
- 手順1:コルクを抜く
- 手順2:ボトルの口をキレイな布で拭く
- 手順3:ろうそくの準備をする
- 手順4:ボトルを利き手で持ち、デキャンタをもう一方の手で持つ
- 手順5:デキャンタの内側の壁を伝わせるように静かにゆっくりとワインを注ぐ
- 手順6:澱が入るギリギリのところで注ぐのをストップする
では、上の目次に沿って、ヴィンテージワインのデキャンタージュについて説明します。
色が変わってしまう原因とは
最初に注いだときと最後に注いだときにワインの色が変わってしまうのは、澱が原因です。
澱というのは、ワインに含まれるタンニン(渋味成分)や色素成分などが結晶化したもののことです。
しばらく置いておくと、ボトルの底に沈みますが、ワインを注ぐ際に舞い上がってしまうこともよくあります。
黒に近い色をした澱が舞い上がってしまったために、キレイなルビー色の輝きが失われてしまったというわけです。
澱が生じやすいワインとは
タンニン(渋味成分)が多く含まれるワインには澱が生じやすいという傾向があります。
赤ワインはブドウの皮と種を果汁と一緒に漬け込んで造られるのですが、その際に皮や種に含まれるタンニン(渋味成分)がワインへと染み出してきます。
その一方で、白ワインはブドウの果汁だけを使って造られますので、澱が生じにくいのです。
つまり、澱が生じやすいのはタンニン(渋味成分)を多く含む赤ワインということです。
特に5年以上熟成させた赤ワインの多くは、ボトルの底に澱があるのを見て取れます。
長期熟成させたヴィンテージワインには澱があるものだと考えておくとよいでしょう。
澱は飲まない
果汁の多い野菜ジュースやフルーツジュースなどの場合、果汁の塊のようなものが下に溜まっていることがあります。
その場合、よく振って沈殿したものを溶かしてから飲みますよね。
それと同じように、ワインの下に溜まった澱に対しても、ワインに溶かすように振って舞い上げている方もいるのではないでしょうか。
「澱は残すもの」と知らなければ、振って飲んでしまおうという考えはよく分かります。
ジュースの場合には、沈殿したものに甘さやおいしさが詰まっているからよいのですが、ワインの場合には澱(渋味成分のタンニンなどが結晶化したもの)が沈殿しています。
澱は少し舌に触れるだけでも荒々しい渋味や苦味を感じられます。
澱も飲めないわけではありませんが、澱を舞い上げてしまうとワインの味わいを台無しにしてしまうことになるでしょう。
ヴィンテージワインはデキャンタージュしてから楽しむ
澱は飲むものではないということは先ほどお伝えした通りです。
「澱は飲みたくないけれど、ワインを注ぐときに舞い上がってしまう」と困っている方もいるかもしれません。
澱を除去するのにはデキャンタージュが有効です。
デキャンタージュとは、ボトルに入ったワインをデキャンタと呼ばれるガラス製の容器に移し替えることです。
デキャンタージュの際に、澱をボトルに残して上澄みをデキャンタに移せば、最後までルビー色のキレイでおいしいワインを堪能できるというわけです。
デキャンタージュしないほうがよいワインもある
基本的にはスパークリングワインや白ワインはデキャンタージュをしないほうがよいです。
スパークリングワインであれば、移し替えることによって、炭酸ガスの繊細な泡立ちが失われてしまいます。
白ワインには、赤ワインに比べて澱が生じにくいという特徴があります。
また、白ワインの場合、酸味とフレッシュな果実味を楽しむものです。
デキャンタージュをすることによってワインが多量の酸素に触れてしまうと、そうした魅力が損なわれてしまうことがあります。
ですから、スパークリングワインや白ワインはデキャンタージュをしないほうがよいのです。
ただし、例外もあります。
長期熟成が可能なスパークリングワインや白ワインの場合、デキャンタージュをすることもあります。
ですが、これは非常に稀なことですので、デキャンタージュをするのは赤ワインとお覚えておけばよいでしょう。
デキャンタージュの6つの手順
デキャンタージュは、ボトルに入ったワインをデキャンタに移し替えるだけです。
しかし、そう簡単なものではありません。澱を入れないためのコツがあるのです。
デキャンタージュをする際には以下の手順を参考にしてください。
<デキャンタージュの6つの手順>
では、順に説明します。
手順1:コルクを抜く
古いワインほどコルクは柔らかくなり、壊れやすくなっています。
キレイに抜くために、オープナーはスクリュー部分(コルクに刺す部分)の螺旋の幅が広いものを使用しましょう。
また、スクリュー部分はコルクを貫通させ、先が少し見えるくらいまで刺すと、コルクを抜きやすくなります。
手順2:ボトルの口をキレイな布で拭く
保存状態のよいものはボトルの口にカビが発生しています。
カビを除去するのはもちろんですが、デキャンタージュの前にはボトルの口もきちんと拭きましょう。
手順3:ろうそくの準備をする
移し替える際には、澱がデキャンタに入らないようにボトルの中のワインを見る必要があります。
そのときに下から光を当てることで、見やすくすることができます。
ちなみに、下から光を当てられるのであれば、ライトでも構いません。
手順4:ボトルを利き手で持ち、デキャンタをもう一方の手で持つ
澱を舞い上げないためには、ボトルを揺らさないことがポイントになります。
ボトルを持つ利き手は脇を閉めることで、揺れにくくなります。
また、デキャンタを持つ手は上部の細くなっている部分を持ちます。
その際に親指を立てるようにすることがポイントです。
注ぐ際にワインの口を親指に置くことによって、ボトルを持つ手が揺れてしまっても、静かに注ぐことができます。
体の中心に光を置き、光の上にはボトルの肩と首の中間(上部の細くなる部分)が来るように準備します。
手順5:デキャンタの内側の壁を伝わせるように静かにゆっくりとワインを注ぐ
静かにゆっくりと注ぐ理由は2つあります。
1つはヴィンテージワインのため、なるべく酸素に触れないようにしたほうがおいしく飲めるからです。
ドボドボと注ぐとワインが酸素に触れやすくなります。
若いワインの場合は酸素に触れさせるのがおいしさの秘訣ですが、熟成が進んだヴィンテージワインの場合はその逆で、なるべく酸素に触れさせないことがポイントになります。
もう1つは、ボトル内の澱を舞い上がらせないためです。ボトル内のワインの動きにも注意しましょう。
手順6:澱が入るギリギリのところで注ぐのをストップする
ボトル内のワインが少なくなってきたら澱の動きに注意してください。
澱が入るギリギリのところまで注ぎます。
ボトル内にワインが少し残ってしまうのはもったいないと感じる方もいるかもしれませんが、澱が入ってしまってはせっかくのワインが台無しになってしまいます。
ですから、デキャンタに移し替えるのは澱が入らないところまでにしましょう。
この手順で進めていきましょう。
デキャンタージュの前に数日置いておくと、澱が沈殿して移し替えやすくなります。ですので、買ったらすぐに飲むのではなく、数日間は静かに置いておくことをおすすめします。
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ポート・ワインのデキャンタージュの方法と4つの手順
ポート・ワインは大量に澱が生じますので、デキャンタージュは必須です。
ただ、ポート・ワインのボトルには非常に色の濃いガラスが使われていますので、光を当てても澱がほとんど見えません。
そこで、ポート・ワインの場合には先ほどとは違う方法でデキャンタージュをします。
こちらの動画を参考にしてください↓
以下が、このポート・ワインのデキャンタージュの手順です。
<ポート・ワインのデキャンタージュ 4つの手順>
では、ポート・ワインのデキャンタージュの手順を説明します。
手順1:ポート・バサミの先端部分を加熱する
ガスバーナーなどを使って、ポート・バサミ自体を熱します。
ポート・バサミでなく、ポート・トングを使っても構いません。
手順2:熱したポート・バサミで瓶口の部分を挟む
熱したポート・バサミで瓶口の部分を挟みます。
挟む時間は1分~2分ほど。十分に熱したら、ポート・バサミを安全なところに置きましょう。
手順3:挟んだ部分を氷や濡れた布巾で急速に冷やす
ポート・バサミで挟んで熱した部分に、氷や濡れた布巾などを当てて急速に冷やします。
破片が飛ぶと危ないので、冷やした布巾やタオルを巻きつけるのがおすすめです。
温度差で瓶が割れますので、先ほど挟んだところから上の部分を取り除きます。
手順4:専用のじょうごを使ってデキャンタに移し替える
ポート・ワイン専用のじょうごがありますので、デキャンタにじょうごを挿します。
その上からデキャンタにワインを注げば、デキャンタージュの完了です。
ポートワインの詳細については、「ポルトガルの宝石とも呼ばれる「ポートワイン」はどんなワイン?」を参照ください。
ヴィンテージワインに適したデキャンタとは
デキャンタージュには、酸素に触れさせて熟成を進めさせる目的と、澱を取り除く目的があります。
その目的に合わせてデキャンタの種類もいくつかあります。
例えば、底の近くが広くなっていてワインと酸素が触れやすくなっているものがあります。
それから、ワインと酸素が触れないように細長くなっているものもあります。
十分に熟成させたヴィンテージワインの場合は、酸素に触れさせる必要はほとんどありませんので、酸素に触れる面積の少ない、細長いデキャンタを選びましょう。
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まとめ
以上、ヴィンテージワインのデキャンタージュについて詳しくご説明しました。
せっかくのヴィンテージワインだから、できる限りおいしく飲みたいですよね。
ここに紹介した方法を参考にしてデキャンタージュをし、ヴィンテージワインを楽しんでみてはいかがでしょうか。