今年2月、5-アミノレブリン酸というアミノ酸が新型コロナウイルスの増殖を抑えるという論文が発表され、ワインに含まれる量が他の食品に比べて多いことから「ワインを飲んでコロナに勝とう」といった文句があちこちで聞かれました。
しかし、この「ワインとコロナの関係」については、まったくもって科学的根拠に乏しい、デマと言ってもいい論理です。その背景を検証します。
文/小原 陽子
【目次】
報道の表現にも問題が
100%と書いてある「科学的根拠」は信用してはならない
ワインに多く含まれるのは事実だが
科学論文をねじ曲げて根拠とするのはデマと同じ
報道の表現にも問題が
そもそも、この噂がまことしやかにささやかれるようになった原因の一つは報道の表現方法です。一部のメディアでは「新型コロナウイルスの増殖を100%阻害するアミノ酸」というミスリーディングなタイトルで報道されており、「治療効果」が期待できるというような文言まで添えられていました。これは明らかに事実を誇張した表現ですし、その効果が承認されていない食品(サプリメントを含む)について「効果」という言葉を用いることは薬事法に違反するほど重大な問題です(健康食品のCMなどで「個人の感想です」と書かれているのは「効果を与えるという誤解を与え」てしまうと薬事法違反に問われるので、その予防策です)。