アカデミーデュヴァンで、「シャンパーニュマスター講座」を」担当する人気講師で、自称シャンパーニュオタクの吉田さおりが、シャンパーニュの魅力を全力で伝える新連載。第1回目は、シャンパーニュ地方のなりたちをご紹介します。
文・写真/吉田さおり
【目次】
1.「シャンパーニュビギナーからシャンパーニュオタクへの道のり観察記」のタイトルのワケ
2.シャンパーニュは、フランスワイン産地の最北端
3.生産地域は大きく分けて5つある
1.「シャンパーニュビギナーからシャンパーニュオタクへの道のり観察記」のタイトルのワケ
読者の皆様、こんにちは!!
アカデミー・デュ・ヴァンでワインの講師をしております、吉田さおりです。
元々私は、アカデミー・デュ・ヴァンの受講生でして、2001年10月期のステップⅠ講座に通い始め、あれよあれよという間に、ワインにすっかりはまってしまい、2008年4月期より、講師をしております。
そして、私のこよなく愛するシャンパーニュの講座は2008年10月期、初めて立ち上げた「シャンパーニュ基礎講座」から始まりました。現在は「シャンパーニュマスター講座」という名になっておりますが、なんと、今秋シーズンで、13年目に突入のスーパーロングランな講座です!!
とは言いつつ、最初のシャンパーニュ基礎講座のご受講生は、新規の方はほぼ皆無で、私の友人(申込みしてくれと頼みこみました)で占めておりましたが!!(笑)
そして、このシャンパーニュ基礎講座から、更に一歩前進した研究科の「やっぱりシャンパーニュとブルゴーニュが大好き!!」講座を2009年10月期から、シャンパーニュだけに特化した研究科の「愛すべきシャンパーニュたち」講座は2010年10月期から始めております。いずれも、有難いことに10年以上継続している講座で、これも全て、支え続けて下さるご受講生のお蔭です!! 本当にありがとうございます!!
さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回の連載のお話しを頂き、サブタイトルを「シャンパーニュビギナーからシャンパーニュオタクへの道のり観察記」にしたのは、これはまさに、10年以上に渡ってシャンパーニュの講座を行ってきた私が目の当たりにした、ご受講生の皆様がシャンパーニュの達人へとなられる道筋をお話ししていきたいと思ったからです。どうぞ最後までお付き合い頂ければ幸いです。どうぞよろしくお願い致します!!
2.シャンパーニュは、フランスワイン産地の最北端
さてさて、この記事の第1回目は、まずはシャンパーニュ地方のご紹介から書きます。
シャンパーニュ地方は、フランスのワイン産地の中では最北にあり、中心都市であるランスの街の緯度は北緯約49度。日本で北緯約49度のところはなんと樺太付近です。もちろん、樺太ほどの寒さではありませんが、でもやっぱり冷涼な気候です。この冷涼な気候だからこそ、スパークリングワインをメインに造っているのですね。スパークリングワインに向くブドウは酸度が重要ですので、世界中の高品質なスパークリングワインを生産しているところは冷涼な気候のところが多いです。
シャンパーニュ地方へ電車で行く場合、パリの東駅からTGV(新幹線)で、シャンパーニュ・アルデンヌ駅(ランス駅から少し南にあります。パリから40分ほどで到着します)まで行き、そこからローカル線でランス駅に向かいます。
ランスの街と言えば、ユネスコ世界遺産にも登録されているノートルダム大聖堂!!
ランスの街の中心に聳え立つ、パリのノートルダム大聖堂と引けを取らない厳かな建造物です。かつて、このランスの大聖堂で、歴代のフランス王の戴冠式が行われておりました。
そして、ランスと言えば、シャンパーニュを牽引する大手メゾンの本社が多々あり、とても華やかですよ。シャンパーニュの大手メゾンの本社は、このランスとエペルネという街に集中しています。
また、ランスとエペルネは、お洒落なカフェやレストランなどがあり、まさに「街」ですがそれぞれの中心から車で20分くらい走ると、すぐに、のどかな田舎の風景になります。
なだらかに広がるブドウ畑と、道路脇などによくある甜菜(砂糖大根)の畑が印象的です。
この甜菜はシャンパーニュに使わるドザージュの元となる砂糖です。
そして、何よりも印象的なのは、のどかな風景の中にあるお家一軒一軒が素敵なのです!!
家の建物自体もそのお庭も、手入れが行き届いており、裕福さが伺えます。そうなのです、シャンパーニュ地方は全体的に裕福で、治安の良いところでもあります。これは、大手メゾン各社が世界的にブランドを確立し、ブドウ農家から買い取るブドウの価格が他産地比べ、高い価格で取引されるが故のことです。
3.生産地域は大きく分けて5つある
次に、シャンパーニュ地方の生産地区のお話しにいきましょう。
シャンパーニュ地方の生産地区は大きく分けて5地区あり、北からモンターニュ・ド・ランス地区、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区、コート・デ・ブラン地区、コート・デ・セザンヌ地区、コート・デ・バール地区です。
モンターニュ・ド・ランス地区は、ランスの街の北・北西部もエリア内ですが、中心はランスの南東にあるランス山の裾野に広がるエリアです。このランス山の裾野エリアの土壌は石灰岩質で、ブドウ栽培には理想的な土壌です。このランス山の裾野に広がるエリアの中で、素晴らしいブドウを産出する村は、アンボネィ村とブジー村です。
アンボネィ村は東向き斜面がメインですが、南向き斜面もあり、お隣のブジー村は南向き斜面が多くあります。
冷涼地域において、陽当たりの良い斜面がどれだけあるかは物凄く重要です。アンボネィ村はかつてピノ・ノワールがメインに栽培されていましたが、現在はシャルドネの栽培も増えてきております。一方、ブジー村はピノ・ノワールがメインの村です。
そして、マルヌ川沿いのエリアがヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区で、この地区でやはり最高の村と言えば、アイ村です。アイ村は、シャンパーニュ地方の中でも、最高のブドウを産出できる村のひとつで、真南向きの急斜面が多々あり、昔から赤ワインの品質に定評がある村で、よって、今も栽培は殆どピノ・ノワールが占めています。ボランジェやアヤラといった、大手メゾンも居を構える村です。
マルヌ川沿いの西部は、粘土質の土壌が多くみられ、ムニエの栽培がメインです。
そして、エペルネの街の南に広がるエリアが、コート・デ・ブラン地区です。「白い丘」という名の地区ですが、まさに「白い丘」なのです!! 道路脇の土でさえ、表面が白いのです。
土が白いだけでなく、栽培されているブドウはほぼシャルドネです。
土も白い、ブドウも白い!! この白い土は、純粋な石灰岩質土壌である白亜質で、シャルドネの栽培に向いた土壌なのだそうです。コート・デ・ブラン地区に居を構える生産者のシャンパーニュはほぼブラン・ド・ブランのシャンパーニュを造っています。「ほぼ」と書きましたが、コート・デ・ブラン地区の生産者でシャルドネ以外にピノ・ノワールをブレンドするシャンパーニュがあれば、それはヴェルテュ村の生産者ですね。コート・デ・ブラン地区でピノ・ノワールの栽培が見られるのはこのヴェルテュ村です。
コート・デ・ブラン地区の村の中で秀逸な村と言えば、アヴィズ村とル・メニル・シュル・オジェ村で、アヴィズ村にはRM界の巨匠であるジャック・セロスが居を構えています。
ジャック・セロスは、シャンパーニュに新たな潮流を創り出した生産者と言って過言ではありません。ジャック・セロスの話になると、私、大変熱くなってしまいますので、このあたりにしておきますが、ジャック・セロスはもはやシャンパーニュの域を超えた「秀逸な白ワイン」ですよね。が、価格も域を超えておりますが(笑)。
最後に、シャンパーニュ地方の最南にある地区のコート・デ・バール地区は、20世紀初頭までは、ブルゴーニュ地方の一部とみなされていたエリアです。ランスからなんと約180kmも離れており、ブルゴーニュ地方のディジョンから北に約180kmということで、シャンパーニュ地方のランスとブルゴーニュ地方のディジョンの丁度真ん中辺りにあるのがこのコート・デ・バール地区です。
コート・デ・バール地区には、今やシャンパーニュのひとつの潮流である「リュー・ディー・シリーズ」や、「古代品種」「自然栽培」などを掲げた意欲的な生産者が多々存在し、目が離せない魅力的な産地になっています!!
「リュー・ディー・シリーズ」とは、単一畑、単一品種、単一年、つまりアッサンブラージュ(ブレンド)しないシャンパーニュの事です。
シャンパーニュの古代品種とは、ピノ・ブラン・ヴレ、アルバンヌ、プティ・メリエ、フロンモントー、アン・フュメという品種で、いずれも白ブドウで、A.O.C.シャンパーニュに使用が認められている品種です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!!
次回は、シャンパーニュのテイスティングメソッドについて書きます。
次回もどうぞよろしくお願い致します!!
吉田 さおり/Saori Yoshida
JSA認定ソムリエ、JSA認定ワイン・エキスパート・エクセレンス、WSET®Level3 、CPA認定チーズプロフェッショナル、アカデミー・デュ・ヴァンでStep-1から学び、ワインの素晴らしさ、奥深さに魅せられる。資格取得後も、各種研究科を受講し、ワインの知識を磨き、JSA主催第3回ワインエキスパートコンクール優勝。ワインショップでの販売を通じて把握した様々な顧客ニーズを踏まえ、また培った商品知識も活かし、初心者から上級者まで、幅広いレベルの受講生に満足感を与える講座を目指している。また、「ワインを学ぶことは、知識を得るだけでなく、新たな人との出会いのきっかけになる」がモットーで、毎回の授業やクラス会が楽しみになるような雰囲気づくりを心がけている