シャンパーニュとは? ~これだけは知っておきたい!仕事や人生に役立つシャンパーニュの基礎知識

ハレの場には欠かせないシャンパーニュ。
宝石のような泡の煌めきは見ているだけで美しく、気分を上げに上げてくれる最高のアイテムですよね。一方でさまざまな種類があり造り手の数も多く、「よくわからない…」と悩まれる方も多いのでは?

大丈夫。本記事を読めば、シャンパーニュの基本はばっちり!ワインライフが充実するだけでなく、仕事や人生にきっと役立つマメ知識も身に着けることができるでしょう。

本記事は、ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」が監修しています。ワインを通じて人生が豊かになるよう、ワインのコラムをお届けしています。メールマガジン登録で最新の有料記事が無料で閲覧できます。


【目次】

  1. シャンパン=シャンパーニュの定義と特徴
  2. シャンパーニュの歴史とドン・ペリニョンの功績
  3. フランス最北のワイン産地シャンパーニュ地方の風土
  4. シャンパーニュの認定品種は実は7種類
  5. 5つの生産地区と3つのAOC
  6. ちょっと変わったシャンパーニュの格付けシステム
  7. 瓶内二次発酵とは?製法解説
  8. エクストラ・ドライは辛口?シャンパーニュの甘辛度
  9. シャンパーニュにまつわる様々な用語
  10. NM、RM、CMって?シャンパーニュ生産者の業態
  11. 抜栓には注意!シャンパーニュの開け方とおすすめグラス
  12. 観光にも人気のシャンパーニュ地方
  13. シャンパーニュのまとめ

1. シャンパン=シャンパーニュの定義と特徴

「シャンパン」の正式名称はシャンパーニュ。それでは泡物はすべてシャンパーニュかといえば、否。フランス北東部のシャンパーニュ地方で、伝統的な製法で造られたものだけがシャンパーニュを名乗れます。ワインを飲まない人でもその用語を知っているように、ブランドが広く浸透しているシャンパーニュ。強大なブランド力にあやかろうと、シャンパーニュ以外の産地のスパークリングワインも「シャンパーニュ」として売られていた時代もありましたが、現在は原産地呼称制度により厳しく禁止されています。

シャンパーニュの味わいの特徴といえば、伝統的製法―すなわち瓶内二次発酵ならではのきめ細やかでシルキーな泡(製法の詳細は7章参照)。そして澱(酵母の残滓)とともに熟成させることで生まれる、あの芳醇な香りと旨味。フランス最北のワイン地方という寒冷地ならではの硬質な酸とミネラルも、シャンパーニュならでは。その優美で芸術的な泡の虜にならずにはいられない、奥深い飲み物なのです。

2.  シャンパーニュの歴史とドン・ペリニョンの功績

意外なことに、シャンパーニュはもともと非発泡性ワインの産地として有名でした。ブドウ栽培は紀元前1世紀にスタート。17世紀半ばになると、シャンパーニュ地方のワインはパリの宮廷でも愛されるように。まだこの頃は泡はなく、逆に寒冷な気候による意図せぬ発泡(発酵途中に寒さで活動停止した酵母が、春になると発酵を再開し、その炭酸ガスがワインに溶け込み泡となる)が問題となっていました。

シャンパーニュ造りに大きく貢献したのが、オーヴィレール村の修道士だったドン・ペリニョン。もとは「ワインが発泡しないようにせよ」と指示を受けた彼でしたが、スパークリングワインが宮廷で好まれるようになるとシャンパーニュの立場も逆転。ドン・ペリニョンは、密閉性の高いコルク栓を使う、ブレンドの技術を開発、黒ブドウから透明な果汁を得る、などさまざまな技術を取り入れ、シャンパーニュの品質を底上げしました。

その後、澱抜き技術が19世紀初頭に開発され、ガラス瓶の強度も上がると、1860年代にはシャンパーニュ黄金期を迎えます。味わいもそれまでは甘口でしたが、イギリス市場に向け始めてポメリー社が辛口のシャンパーニュを生産。20世紀に入り、イギリス以外の市場でも甘口から辛口スタイルが好まれるようになり、現在のシャンパーニュのスタイルに近づきました。映画『マリー・アントワネット』ではマリー・アントワネットがクープ・グラスで泡三昧しているシーンが印象的ですが、あのシャンパンはなんと甘口だったのです…!

3. フランス最北のワイン産地シャンパーニュ地方の風土

シャンパーニュ地方の緯度は、北部のランスで北緯49.3度。ワイン用ブドウ栽培に適しているのが南北経緯30~50度なので、まさにブドウの北限近く!生育期の平均気温は14.7度。夏も涼しく冬は寒く、凍害と春の遅霜は生産者の頭を悩ませる問題です。

このような寒冷な気候ではブドウを完熟させるのが難しく、非発泡性ワインには酸の高すぎるブドウができがちですが、実はそれこそが質の高いシャンパーニュの鍵。硬質な酸と透明感のあるベースワインに微細な泡を閉じ込めることで、唯一無二のシャンパーニュの個性が確立されました。

そしてシャンパーニュの味わいに重要な影響をもたらすのが、シャンパーニュ地方全体に広がるチョーク質の石灰土壌。石灰岩に手を添えると、しっとりと冷たく湿気を帯びているように、石灰は水はけの良さと保水性の両方を兼ね備えた湿度調整器。ブドウに必要な水分だけを補給してくれるのです。ワインの保存にも最適で、大手メゾンの地下には広大なチョーク質の天然セラーが広がっています。シャンパーニュは、まさにその冷涼な気候特異な土壌の強みを活かし成功した世界に類をみない産地といえます。

4. シャンパーニュの認定品種は実は7種類

シャンパーニュの基本3品種といえば、シャルドネピノノワールムニエ。シャルドネは花や柑橘系のアロマと酸味をプラス、ピノノワールは赤い果実の風味&ボディと骨格をプラス。ムニエはブレンドに果実味や華を添えるといわれます。

実はその他にも認定品種があることは、意外と知られていません。その名もアルバンヌ、プティ・メリエ、ピノ・グリ、ピノ・ブラン。シャンパーニュ地方での栽培が難しく、この4品種合計の栽培面積は0.3%と極小ですが、いまだに古樹を大切に守っている生産者も。例えばラエルト・フレールという造り手は、7品種すべてをアッサンブラージュしたユニークなシャンパーニュ「Les 7 Cepages レ・セット・セパージュ」を生産しています。ワイン好きの集うワイン会に持っていくと、喜ばれること間違いなし!

5. 5つの生産地区と3つのAOC

シャンパーニュ地方の起点となる街が、ランスエペルネ。街を取り囲む3つの地区―マルヌ県のモンターニュ・ド・ランスヴァレ・ド・ラ・マルヌコート・デ・ブランがシャンパーニュ生産の中心地です。モンターニュ・ド・ランスとヴァレ・ド・ラ・マルヌは黒ブドウが有名。コート・デ・ブランは直訳すると「白の丘」という名のとおり、シャルドネの聖地です。

もう2つの地区は、コート・デ・ブランの南西20㎞にあるコート・ド・セザンヌとオーブ県に属するコート・デ・バール。シャンパーニュ最南のブルゴーニュにほど近いコート・デ・バールには、シャブリと同じキンメリジャン土壌が広がります。

そしてシンプルなことに、シャンパーニュのAOCはたったの3つ。泡のあるワインは、すべてAOCシャンパーニュです。AOCコトー・シャンプノワは非発泡の白・ロゼ・赤、AOCロゼ・ド・リセ―は非発泡のロゼのワイン。シャンパーニュ地方には、泡のないワインもある、というのも知っておくと感心されますよ!

6. ちょっと変わったシャンパーニュの格付けシステム

シャンパーニュの格付けはちょっぴり変わっています。村単位で格付けが決まっており、生産されるブドウの平均的品質に応じて80~100%の21段階に格付けがされるのです。100%の村が「グランクリュ」と、99〜90%の村が「プルミエ・クリュ」となり、それぞれ17村と42村が認定されています。

グランクリュの村々はシャンパーニュの中心地(モンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ、コート・デ・ブラン)に集中。それぞれ畑の栽培環境によってグランクリュのブドウの特徴も異なります。一概にはいえないですが、例えば同じモンターニュ・ド・ランス地区の中でも、ヴェルズネーやヴェルジーなど北向き斜面で育ったピノノワールは繊細で酸が高め、南向き斜面で太陽をしっかり浴びるアイ村のピノノワールは力強め、などなど。好きなシャンパーニュを見つけたら、使われているブドウの出自を確かめてみるのも面白いですよ!

7. 瓶内二次発酵とは?製法解説

あのきめ細やかな泡と、複雑で芳醇な香りを生むのは、シャンパーニュの特別な製法によるもの。順を追ってみていきましょう。

一次発酵(ベースワイン造り)とブレンド

シャンパーニュのアルコール発酵は2段階で行います。まずはブドウを絞り、ベースワインと呼ばれる泡のないワインを造ります(一次発酵)。ブドウを絞る際は「すばやく優しく」が高品質の条件で、最初に絞る一番搾りは高級品に使われます。

そしてシャンパーニュ造りの肝が、フランス語で「アッサンブラージュ」と呼ばれるブレンド作業。通常ベースワインは品種別、地区別など細かい単位で仕込み、さまざまなベースワインをブレンドすることで、品質を均一化し生産者のスタイルを作り上げていきます。過去のベースワインは「リザーヴワイン(保管用ワイン)」としてキープしておくことが一般的。

二次発酵

その後、ベースワインに酵母とリキュールを加え、瓶詰めします。酵母はリキュール(糖分)を食べ、アルコールと二酸化炭素に変換します(二次発酵)。通常だと二酸化炭素は空気中に逃げてしまいますが、栓をした瓶の中では二酸化炭素の逃げ場がないため、ワインの中に溶け込むしかありません。それがあの愛すべきシャンパーニュの泡の正体です!

熟成

酵母が二次発酵を終えた後は、瓶をセラーで熟成していきます。ヴィンテージ表記のないものでも15ヵ月以上と長い熟成期間が必要です。この熟成期間に役目を終えた酵母(澱)からアミノ酸が溶け出し、旨味と香ばしい複雑な香りが生まれます。

動瓶と澱抜き、仕上げ

そして出荷前に行われるのが、澱を瓶口に集める「動瓶(ルミアージュ)」作業。職人が毎日少しずつ瓶を回すこともありますが、ジャイロパレットと呼ばれる機械で効率的に行うメゾンも増えてきています。

瓶口に澱が集まったら、瓶口を冷やして澱を凍らせ澱抜き(デコルジュマン)をし、目減りしたワインを補充し糖分調整(ドサージュ)をしてからようやく出荷です。スパークリングワインの製法には、炭酸ガスを注入する手軽な方法もありますが、段違いに手間と時間がかかる瓶内二次発酵方式が、あの気品あふれるシャンパーニュを生み出すのです。

8. エクストラ・ドライは辛口?シャンパーニュの甘辛度

  1. エクストラ・ドライは辛口?シャンパーニュの甘辛度

シャンパーニュにも辛口~甘口まであり、ワイン中に残った糖分の量(残糖)により下記のように分類されます。瓶詰直前に糖分を追加しないスパークリングワインは「ブリュット・ナチュール」「ドサージュ・ゼロ」「ノン・ドサージュ」などと呼び、残糖は3g/ℓ未満と極辛口です。最近は、残糖度の少ない辛口タイプのシャンパーニュもすごく人気があります。

紛らわしいのが「エクストラ・ドライ」。ブリュットよりも残糖が多く、やや辛口レベルです。用語だけで見るととっても辛口そうなのに…。

9. シャンパーニュにまつわる様々な用語

その他、シャンパーニュでよく使われる用語を以下にまとめました。

ノンヴィンテージ(NV)

どのメゾンでも基本となるのが、ヴィンテージ表記のないNV。現行の収穫年をベースに、必要に応じてリザーヴワインをブレンドし、そのブランドの味わいを均一に保ちます。瓶内熟成期間は15ヵ月以上。

ヴィンテージ or ミレジメ

当たり年のみに造られる年数表記のシャンパーニュ。瓶内熟成期間は36ヵ月以上。

プレステージ・ワイン

造り手が自信をもって少量生産する高級品

ブランドブラン

「白から造った白」という意味で、白ブドウのみから造られるシャンパーニュ。

ブランドノワール

「黒から造った白」という意味で、黒ブドウのみから造られるシャンパーニュ。

RD (Recemment Degorge)

「最近澱引きされた」という意味。ヴィンテージワインを通常とは別に長期間澱と接触させ、出荷直前に澱抜きしてリリースしたもの。澱引きの時期によって味わいも全く異なるため、最近ではRDならずともラベルの裏にデコルジュマンの年月がかかれたラベルも徐々に増えています。

10. NM、RM、CMって?シャンパーニュ生産者の業態

シャンパーニュの生産量の7割を占めるのが、モエ・エ・シャンドンのような大手メゾン。原料の大半を栽培農家から購入して自社ブランドのシャンパーニュを造るネゴシアン・マニピュラン(NM)です。逆に自社畑のブドウのみを使い、栽培から醸造まで一貫で行うのがレコルタン・マニピュラン(RM)。ブルゴーニュのドメーヌにあたり、小規模の家族経営のところがほとんど。生産本数も少なめですが、最近のRMブームにより日本にも素晴らしいシャンパーニュがたくさん入ってきています。

もう一つ押さえておきたいのは、協同組合のシャンパーニュ(CM)。有名なメゾンだと二コラ・フィアットがそう。組合員が栽培したブドウで共通ブランドを造ることで、コストを抑えられるメリットがあります。

11. 抜栓には注意!シャンパーニュの開け方とおすすめグラス

さて、ここまで読んだあなたは、うずうずシャンパーニュが飲みたくなっているはず。いざシャンパーニュを開ける際の注意点もお伝えしておきましょう。何より大切なのは、コルクを抜栓するときにしっかりと親指で栓を押さえて、栓が勝手に飛び出さないように注意すること。シャンパーニュの内圧は約6気圧(水深50mの水圧と同じくらい!)もあり、コルクを自然に抜くと、なんと時速60kmの速さにもなるそう! 目に当たったりするととても危険なので気を付けましょう。

少しずつ栓が上がってきたら、引き続き栓をギューッと抑えつつ瓶を少しずつ回します。ぽんっ!と音を出すのはマナー的にはNGで、ふしゅぅーと静かに、「乙女のため息」のように抜栓するのがエレガント。ですが、プロのソムリエさんでも、お祝いかつカジュアルな席などでは「ぽんっ!」とわざと音を出すこともあるので、TPOに合わせてみて下さい。まれに泡が吹きこぼれることもあるので、ふきんも用意しておきましょう。

シャンパーニュにおすすめのグラスは、泡をきれいに見せたいならフルートグラス。白ワインのように香りと味わいをしっかり楽しみたいなら、ぷっくりとボウル部分が大きめのグラスがおすすめ。提供温度も、すっきり系のシャンパーニュはきりっと冷やして、ヴィンテージものや樽熟成したものは温度高めなど、シャンパーニュの種類によって変えてみると、楽しみが広がりますよ!

12. 観光にも人気のシャンパーニュ地方

日本でシャンパーニュ経験を積んだ後は、シャンパーニュ地方を実際に訪れてみることもおすすめ。パリからシャンパーニュ地方の玄関口ランスまではTGVで45分、気軽に訪れることができます。ブドウ畑をめぐるもよし、観光するもよし。
ランスのシンボルといえば、ランスの大聖堂。歴代のフランス王の戴冠式も行われた由緒あるゴシック様式の大聖堂です。あとは日本人なら絶対訪れたいのがフジタ・チャペル、20世紀前半にパリで活躍した芸術家・藤田嗣治が眠る教会で、フレスコ画やステンドグラスが美しいです。

エペルネには、モエ・エ・シャンドンポメリーランソンドゥモワゼルはじめ名シャンパーニュハウスが軒を並べ、まさに聖地といった雰囲気。ワイナリーツアーに参加したり、シャンパーニュ試飲ホッピングしたり…「シャンパーニュ通り」は歩いているだけで楽しいですよ。

シャンパーニュのまとめ

ワイン好きにとって、避けて通ることのできないシャンパーニュ。基本知識を押さえておけば、その知識を活かせる機会も多いものです。晴れの場や乾杯の際に、さりげなくシャンパーニュ通をアピールしてみてくださいね。

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