伊東道生の『<頭>で飲むワイン』Vol.108

伊東道生,ワイン,最新情報,トレンド,Vin de France,コロナ

*連載コラム「伊東道生の『<頭>で飲むワイン』」のアーカイブページはこちら

続・コロナウイルスに負けないワイン

伊東道生の『<頭>で飲むワイン』Vol.108

伊東道生の『<頭>で飲むワイン』Vol.108

前回のメルマガで、ワインやスピリッツの売り上げが伸びているというエピソードを書きましたが、在宅状態が続くと、アルコールが増えるきらいがあって、私もアルコール自粛でもしないと、という羽目になっています。

友人たちにもけっこういます。みなさん、ワインの飲み過ぎに注意を。

さて、コロナ禍で、アカデミー・デュ・ヴァンも大変ですが、日頃、この記事のネタにしているRevue du vin de France誌も、なかなか大変なようです。

私は雑誌本体をとっていますが、フランスからの航空便はストップ状態。新刊もストップしているようです。ネットで見ても先月号のままです。

ネットで掲載されている記事もコロナ禍の話題が多くあります。

例えば、マコン、ボジョレーのドメーヌ Jean Loron は葡萄の収穫のことを既に考え、心配になっている、と。

このドメーヌは135haあって、季節労働者を多数雇っています。

彼らはスペインや、ブルガリア、ポーランドなどからやって来ていますが、国境封鎖が続くと、彼らは期待できない、学生アルバイトも長い間やってきていない、と嘆いています。

またあるドメーヌでは、例年は40人を単位としたグループを3つ稼働させて、摘み取りをしているけど、それも困難、と。

9月には収束して、人の行き来が可能にならないと、大変なことになりそうです。

前回は、不況でボルドー暴落か?などと書きましたが、むしろワイン不足になり、高騰する可能性もでてくるでしょうね。

ところで、別のソースで、季節労働者の不足などがどうなのか調べてみると、そもそも2015年頃から人手不足が叫ばれていたということです。

労働政策研究・研修機構という行政法人の頁に「ワイン産地での人手不足深刻化」という記事が載っていて、ロワール、ボルドー、ブルゴーニュでは、単純労働者、熟練労働者が不足し、そもそもブドウ栽培に関する職業訓練を受けようという若年労働者が少なくなっており、将来は人手不足がさらに深刻になるだろう、と報告が載っていました。

フランス語でワインに関わる季節労働者はsaisonniers viticoles (前者が、季節saison から派生した季節労働者の意味です。複数形です。)と言いますが、これに関するフランスでの資料も掲載されています。▶︎資料:「ワイン生産地での人手不足の深刻化」

先のRVFの記事でも、フランス人そのものが、葡萄畑での労働に興味を失っていることが要因で、東欧からの季節労働者が多くなっているとも。

しかし不況で、働き口を求めて、という事態になるかも、という予測もできます。ドメーヌでは、在宅している多くの人々は、葡萄畑の仕事へ、とアピールしています。

これに加えて、弱小ドメーヌや独立系の葡萄栽培者は、前回書いた、数々のワイン・サロンの休止によっても痛めつけられています。

ソーヌ・ロワールに8haの葡萄畑をもつDavid Fragot氏は、サロンこそ新しい顧客を開拓する格好の場であったが、パリとボルドーのサロン(les salons des vignerons indépendants de Paris et Bordeaux)が3月から6月になったことで、しかもこれも開催が怪しいことで、顧客獲得のチャンスを失い、資金繰りに困難をきたしている、弱小ドメーヌにとってはカタストロフだと。

加えて、フランスワインに多額の関税をかけるアメリカの影響もチラホラあるようです。

フランス人にとってワインが必要不可欠な飲み物だから(?)、ワイン専門店(Cavistes)も営業許可はでているのですが、閉めている店も多いようです。

RVFのネット記事では、Cavisteはまだ開いている、とパリ5区でLa Cave de Cherche-Midiというお店を開いている Thomas Bravo-Maza氏を紹介しています。

一方で、フランスのみならず、各国で、ネットでワイン・オークションが開かれ、売り上げを医療機関などに寄付する話もあがっています。

時事通信の記事にもあります。▶︎仏でビストロ大好き運動 前払いで飲食店応援

またWine Spectorにも。▶︎Bid Big Against COVID-19

そこを見ていくと、winelovers against corona charity auction などという勇ましいオークションもあります。

これも前回書きましたが、ボルドー・プリムールが中止、リアルなボルドー・ワイン祭りは中止になりましたが、ネット・オークションを行うそうです。

売り上げはジロンド県の医療機関に。ボルドーの公式HPでは、オークションの入札や、商品提供のサイトにもリンクされていますので在宅の方々、試してみては。期間は2020年6月15日から6月21日24時(22日深夜0時)までです。

▶︎最新ニュース、春のボルドーから

さて、外出制限の続くフランスでは、レストランやカフェも閉鎖で、その代わりテイクアウト(à emporter)もやっています。日本でも増えましたね。Ovniで紹介されていました。さすが、美味しそうです。

▶︎外出規制中、営業しているおいしいお店。

では、飲み過ぎに注意して、ワインで乾杯!

2020.05.01


伊東道生 Michio Ito

東京農工大学工学研究院言語文化科学部門教授。名古屋生まれ。
高校時代から上方落語をはじめとする関西文化にあこがれ、大学時代は大阪で学び、後に『大阪の表現力』(パルコ出版)を出版。哲学を専門としながらも、大学では、教養科目としてドイツ語のほかフランス語の授業を行うことも。
ワインの知識を活かして『ワイナート』誌に「味は美を語れるか」を連載。美学の視点からワイン批評に切り込んでいる。

ワインスクール
アカデミー・デュ・ヴァン


はじめての方からワインの奥深さを追求される方まで、幅広く講座を開講しています。講師にはワイン業界をリードする現役のプロフェッショナルや、生産地から生産者をお迎えしています。

 

ワインスクール 無料体験会のご案内

ワイン3杯のテイスティング付き無料会を毎月開催。
ロケーションや教室の雰囲気、授業の進め方などの不安を解消いただき、
ご納得いただいてからのご入会をおすすめしています。

無料体験お申込フォーム

資料請求(無料)フォーム

 

伊東道生,ワイン,最新情報,トレンド,Vin de France,コロナ

豊かな人生を、ワインとともに

(ワインスクール無料体験のご案内)

世界的に高名なワイン評論家スティーヴン・スパリュアはパリで1972年にワインスクールを立ち上げました。そのスタイルを受け継ぎ、1987年、日本初のワインスクールとしてアカデミー・デュ・ヴァンが開校しました。

シーズンごとに開講されるワインの講座数は150以上。初心者からプロフェッショナルまで、ワインや酒、食文化の好奇心を満たす多彩な講座をご用意しています。

ワインスクール
アカデミー・デュ・ヴァン