今年の4月以降、新型コロナウイルス感染症の影響によってレストランは一時休業。
外食は自粛ムードとなり積極的に美食を楽しめない状況が続きましたが、最近はニューノーマルが浸透し、レストランもソーシャルディスタンスの確保を徹底しているので、安心して美食の喜びを享受できるようになりました。
海外で活躍する日本人シェフ
近年日本人シェフのつくるフランス料理は、本場フランスの料理よりも素晴らしいのではないかと感じることはありませんか?
30年ほど前からフランスの評判の良いレストランの厨房には必ず日本人が居ると言われていましたが、今や日本人の実力が認められ表舞台で大活躍。
フランスのミシュランガイド2020年、パリの「レストラン・ケイ」が3ツ星を獲得、2ツ星1ツ星を合わせるとフランス全土では11軒の日本人レストランがあります。
ブルゴーニュ地方ディジョンにある1ツ星「L’Asperuleラスペリュール」に昨年行った時に印象に残ったのは、厨房のスタッフ5人は全員日本人に対し超イケメンのフランス人2人がサービスをするという合理主義(?)。
また、ハーブとスパイスの魔術師「マルク・ヴェイラ」のオーベルジュで5年間腕を磨いたという、木村圭吾シェフの豊かな発想力による‘美しいアートのように端正な’料理には感動しました。
東京のレストラン・ガストロノミック
一方、東京では、才能豊かなフランス料理人が次から次へと現れ、ハイレベルな料理を提供しています。
伝統を踏襲したオーセンティックなスタイルからコンテンポラリー、イノヴェイティヴ等、バラエティに富んだ料理が私達に美食の喜びを与えてくれます。
オーセンティック系は格式の高い料理ですが、現在は古典的と言うよりも革新的要素を取り入れつつ妥協のない王道を貫くモダンフレンチが主流。
ジョエル・ロブションやロオジェ、リューズ、ひらまつ、レカン、タテルヨシノ、アピシウス等があります。
特にロブションとロオジェはフランス人シェフによる贅を尽くした料理に加え、豪華な内装と調度品等の付加価値があるので、予約する際は、ある程度の経済的覚悟が必要です。
通常このクラスの店では、料理よりもワイン代の方が高くつきますが、最近は比較的安く数種のグラスワインが飲めるペアリングコースが用意されているので、ワインリストを見て緊張する心配は無用です。
価格は店により数千円から2万円(ロブション)ほど。
因みに、ロブションのディナーコース料理は2万円~46,000円。
ペアリングの場合、苦手なタイプのワインが出ることがあるので、予めソムリエに銘柄を聞いておくと安心。
ボトルを頼む時は、ソムリエに自分の好みを伝え(産地名や品種名)コース料理の流れに寄りそう美味しいワインは何か尋ねると、親切に相談にのってくれるはずです。
ワイン持ち込みをする場合、ボトル1本につき抜栓料としてお店により3,000円~12,000円かかります。
また、持込み禁止をポリシーとするお店もあるので確認が必要です。
持ち込むワインは、お店に置いていない特別なものにしたいもの。そしてお店の方にも少し飲んで頂きましょう。
銀座「L’Affinage ラフィナージュ」のCulinary delight
今回紹介する銀座「L’Affinage ラフィナージュ」は、日本を代表する偉大なシェフを輩出した老舗「L’écrinレカン」6代目料理長の高良康之シェフが2018年にオープンしたレストラン。
フランス料理の真髄を格式ばらずに体験できるお店で、料理の要であるソースの洗練度はピカイチです。
生産者の顔が分かる日本の上質な食材にこだわっている点も魅力のひとつ。
ランチ7,000円、ディナー18,000円。ペアリングワイン昼4,000円、夜7,000円でペアリング厳選茶も同価格。
ワイン持ち込み料は1本5,000円です。
ワインスクール
アカデミー・デュ・ヴァン
はじめての方からワインの奥深さを追求される方まで、幅広く講座を開講しています。講師にはワイン業界をリードする現役のプロフェッショナルや、生産地から生産者をお迎えしています。
4名で4本ワインを持込みした昨年の冬のディナー
グジェールなど3品
雲丹のフラン
パリのワインショップLegrandから空輸したものなので、日本で購入したものよりもフレッシュ感が強いと感じました。R.D.は récemment dégorgé レサマン・デゴルジェ最近澱抜きをしたという意味。ラ・グランダネ(5年熟成)と同じボトルをさらに3年以上熟成することで風味に奥行が出ています。
トラフグのロックフォールチーズ・マリネは絶品。トラフグの唐揚げも添えて。
トーション(布巾)で形作られたフォアグラと干し柿のネットリとした濃厚さが、驚くほど軽やかで上品に感じられる逸品。
生命力とフィネスに溢れテロワールの輪郭をくっきりと表現するのがルフレーヴの真骨頂。シュヴァリエ・モンラッシェはモンラッシェの畑の斜面上部で表土が薄いのでミネラル感が強い。鉱物的なミネラルと緻密な果実味が口中に立体的に広がり複雑で格調高い味わい。
鮑とソースとの調和が見事。
ブルゴーニュワインの神様と称される故アンリ・ジャイエの甥エマニュエル・ルジェがドメーヌを引き継ぎ造るクロ・パラントゥ畑は、リシュブールの真上に位置する1haの畑。ジャイエが戦時中に畑を切り拓き1978年~2001年まで造る(1977年までは村名ラベルだった)凝縮したゴージャスな果実味とミネラルが複雑に何層にも広がり余韻がとても優雅。
アンコウの火入れと食感、香ばしくコクのあるソースとのバランスが絶妙。
ラ・ターシュはドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティのモノポール(独占占有畑)、世界一入手困難(今や高額過ぎる)なロマネ・コンティの弟分と言われています。どちらもフレイヴァーは似ていますが、ラ・ターシュはよりダイナミックでストラクチャーがしっかりしています。
絢爛豪華な果実味に溶け込む豊かなフィネス(繊細優雅)が圧倒的なDRCのワインを飲むと、その芸術性の高さに心揺さぶられます。
これぞ王道のフランス料理。
▶︎Restaurant L’affinage -レストラン ラフィナージュの詳細はこちら→https://laffinage.jp
次回は、もっと自由度が高いコンテンポラリー・フレンチをご紹介する予定です。どうぞお楽しみに。
ワインスクール 無料体験会のご案内
ワイン3杯のテイスティング付き無料会を毎月開催。
ロケーションや教室の雰囲気、授業の進め方などの不安を解消いただき、
ご納得いただいてからのご入会をおすすめしています。
2020.10.09
奥山久美子 Kumiko Okuyama
アカデミー・デュ・ヴァン 副校長
日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
チーズプロフェッショナル
WSET Advanced Certificate
称号はシュヴァリエ・ド・タストヴァン、シュヴァリエ・ド・シャンパーニュ、コマンドリー・ド・ボルドー、シュヴァリエ・デユ・タストフロマージュ、ポートワイン名誉シュヴァリエ。
成城大学、文芸学部・英文科を卒業後、原宿でブティックを経営。その間、年2回のフランス及びイタリア旅行の際にその食文化に触れ、とりわけワインの美味しさとその背景にある文化に興味をもつ。1987年にパリの分校として渋谷に開校した「アカデミー・デュ・ヴァン」第一期生となり、同校でワインの知識を深めつつ世界のワイン産地めぐりを重ね、1989年に日本ソムリエ協会認定「ワインアドバイザー」の資格を得、(2016年に「シニアソムリエ」と名称が変更)。
1989年より自宅にて手料理を供しながらワインを楽しむ「奥山ワイン教室」を主宰。1991年からアカデミー・デユ・ヴァン講師となり、2002年4月より「アカデミー・デュ・ヴァン」副校長。
著書に「ブルゴーニュ、コート・ドールの26村」(ワイン王国)、「極上ワイン100本」(朝日新聞出版新書)、共著に「ワイン上手になろう」(主婦と生活社)、「ワインの基礎知識」(時事通信社)、監修に「シャンパンのシーン別楽しみ方」(朝日新聞出版)。2018年には「大人のためのワイン絵本」(フランスVinographieを監修、日本文芸社)と、「コート・ドールの26村」(ワイン王国)改訂版を上梓した。