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南アフリカワインの現状
コロナ禍で世界中のワイン産地も様々な困難に直面しています。
国際的なワインイベントは軒並み中止や延期となり、ワインメーカーたちのプロモーション行脚は、今やオンラインでの開催が当たり前となりました。
今回は、少しテーマからはそれますが、日本ではあまり知られていないかもしれないので、南アフリカの状況をお伝えさせて頂きたいと思います。
南アフリカは、Covid-19のヨーロッパにおける感染拡大を受け、3月26日より国境封鎖措置が取られました。
季節柄、まだ収穫を終えていない産地や品種も残っていたのですが、ワイン産業は当初「Essential Business(必須産業)」のリストに加えられず、収穫作業やセラーでのワイン造りを継続できないかもしれないという状況に直面したのです。
そこで、業界団体らが政府に強く働きかけ、なんとかロックダウン開始直前に、感染予防対策を取りながら収穫作業と進行中のワイン造りを継続することが認められました。
生産者たちは安堵しましたが、一方で、一切のアルコール類の流通・販売は禁止されました。
主要なワイン生産国で、このような措置が取られた国は他にありません。
業界団体は、引き続き規制緩和を求めるロビー活動を行い、ロックダウンから2週間後の4月7日、輸出用ワインの港への輸送が認められたのですが、その10日後、再び輸出規制がかかってしまいました。
5月に入り、ワインの輸出規制は再度緩和されましたが、国内のワインを含む全てのアルコール販売は禁止されたまま。
この状況がさらに1カ月続き、6月1日に一旦解禁されたのですが感染拡大は収まらず、逼迫する医療体制を守るという理由で、7月12日に再び国内のアルコール販売が禁止となってしまいました。
まさに、ジェットコースターのような展開。
アルコール販売禁止措置はワイナリーのみならず、もちろんレストランやバー、小売店、オンラインでの販売も含みます。
また、ワイン産業は観光業にとっても重要な役割を占めています。
このままでは多くの人びとが職を失ってしまう、と、現地では「#SaveSAWine」や「#JobsSaveLives」と書いたボードを掲げてデモ運動が行われ、ソーシャルメディアでも国際的な世論を巻き込んだ大きなキャンペーンが展開されました。
8月15日、南アフリカ大統領シリル・ランポーザは、8月18日からの警戒レヴェル引き下げを発表し、それに伴い現在、国内のアルコール販売禁止措置は制限付きで解除となっています。
ですが、一時緩和もあったとはいえ、ほぼ5カ月に及んだこの規制による業界へのダメージは甚大です。
業界団体Vinproによると、80ワイナリーと350の栽培農家が今後18カ月の間に倒産の危機に直面し、21000人が失業する可能性があるとの見込みを発表しています。
2021年の生産シーズンへ向けて、およそ3億リットルのワインが販路を失った状況を、一刻も早く回復させなければなりません。
南アフリカは世界第8位のワイン生産国。近年の品質向上は本当にめざましく、世界のワインの多様性の一翼を担う重要な生産国です。私自身、その魅力にこの数年圧倒されっぱなしです。
恵まれた唯一無二の豊かな自然環境から生み出される素晴らしいワインの未来を守るため、「飲んで応援!」をぜひお願いします。
手ごろな価格帯でおうち飲みにも嬉しいワインがたくさん見つかると思いますよ。
ご興味ある方は、南アフリカワイン協会の公式FBページをフォローしてみてください。
→https://www.facebook.com/WOSAJP/
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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2020.08.28
高橋佳子 Yoshiko Takahashi
JSA認定ソムリエ、SAKE DIPLOMA
WSET® Level4 Diploma in Wines and Spirits
A+オーストラリアワイン・トレード・スペシャリスト
ワインサービス、インポーター、卸、と多角的にワイン業界に携わった経験と、オーストラリアの生産者の元で学んだ経験を活かし、フリーランスでワインコンサルタントとして活動中。
ワインで繋がるご縁を大切に、自然体なライフスタイルに寄り添ったワインの魅力を伝えていきたいと思っています。