島悠里のシャンパーニュ日和、時々カリフォルニアVol. 2 シャンパーニュの興味深いテイスティング体験 ~コルクv.王冠、異なる温度帯での保管による違い

こんにちは。シャンパーニュを中心に授業やウェビナーをしている、講師の島悠里です。8月、有料会員の方向けの、山本香奈先生による「香奈の部屋」のトークライブに、初回ゲストとして呼んでいただきました。ご参加いただきました皆さま、どうもありがとうございました!

さて、今回のコラムでは、その時のトークでも少しご紹介したシャンパーニュの生産者、セドリック・ムセCedric Mousseと、ジャキノChampgne Jaquinot&Filsを訪問した時の、実験的なテイスティングについてのお話です。

文・写真/島 悠里


【目次】

1.革新的な取組みをするセドリック・ムセ
2.長いワインビジネスの歴史を持つエペルネに拠点を置くジャキノ


1. 革新的な取組みをするセドリック・ムセ

セドリック・ムセ(Cedric Mousse)さん

セドリック・ムセさんは、ヴァレ・ド・ラ・マルヌにあるChampagne Mousse Filsの現当主。笑顔が素敵な方ですが、ワインに対する信念は確固たるもので、様々な実験的な試みや革新的な手法を取り入れ、ところどころに彼の強い意志を感じます。実際に、これまでにシャンパーニュにはなかった手法を導入するなど、シャンパーニュの現在に風穴をあけようとしている意欲的な生産者でもあります。

コルクv.王冠キャップの違い

シャンパーニュ造りでは、瓶内二次発酵時の栓は、多くの場合、ステンレス製の王冠(クラウンキャップ)が使用されますが、一部、瓶内二次発酵時にも、コルクの栓を選択する生産者がいます。

コルクの栓で瓶内二次発酵、それに続く澱熟成を行うことには、何のメリットがあるのでしょうか? これまでにも様々なリサーチがあり、生産者によっても、それぞれの見方がありますが、長期の澱熟成の場合はコルクの方が良いというのが今の一般的な見解と言えます。コストとしては、コルクの方が高くなり、さらにディスゴージメント(澱抜き)も手作業となり手間がかかりますので、生産者としても、特別なキュヴェにだけコルクを使うことがほとんどです。例えば、ドン・ペリニヨンDom Perignonは、P2、P3など長期の澱熟成が予定されているキュヴェは、瓶内二次発酵時の栓をコルクにしています。

さらに、コルクの場合、TCA(ブショネ)のリスク、瓶差があること(王冠よりボトルヴァリエーションがある)、コルクとワインが接触することでワインの味わいやテクスチャに影響を与えることなども検討事項です。

7月に、セドリックさんを訪問したとき、同じシャンパーニュ「Les Vignes de Mon Village」を、二次発酵用に、王冠とコルクのそれぞれで栓をしたものをブラインドで比較試飲しました。このシャンパーニュの瓶内二次発酵&澱熟成の期間は5年間です。

試飲の感想は…

Cedric Mousseさんの畑。オーガニックやビオディナミを取り入れて栽培されています。

両者の違いは大きく、コルクで栓をしたボトルの方が、複雑性やバランスに長け、ワインに奥行きが感じられました。王冠で栓をしたボトルは、やや還元的で、味わいも少しフラットで一面的な印象が残りました。

通常、このキュヴェは、コルクを使用して造られています。セドリックさんとしては、このキュヴェに限っていえば、王冠で二次発酵の栓をするよりコルクの方が優れた結果になると再確認したようでした。わたしも同感でした。

ちなみに、この試飲は、一緒に訪問をしていた、アメリカ人のシャンパーニュ専門家のピーター・リエム(Peter Liem)さん、そしてフィンランド人のシャンパーニュ専門のMaster of Wineであるエッシ・アヴェラン(Essi Avellan)さんら、専門家やインポーターの方たち、6人で行われ、意見を交換しました。若干それぞれの結果にバラつきがありましたが、概ね、コルクの方がよいことで一致しました。

 

2. 長いワインビジネスの歴史を持つエペルネに拠点を置くジャキノ

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