注目! 世界のワインニュース(2021年4月) ボルドーの明るいニュース3選!

春はボルドー・プリムール試飲の季節である。3月末、世界各地からジャーナリストやバイヤーたちがかの地に一斉集結し、その年のキャンペーンが始まるのだ。だが、去年に続いて今年もこの恒例行事がいつもの形では行われない。もちろん、Covid-19のせいだ。

4月末に、ボルドー市を含む世界7都市で大試飲会が行われるものの、東京が今年は開催都市から外れてしまったし(アジアは香港と上海のみ)、NYとサンフランシスコ、そしてまさかのロンドンまでもがコロナのせいでキャンセルになってしまった(これら3都市では、キーパーソンたちへのサンプル送付のみ行われる)。なんだかサミシイ。今年のキャンペーン対象である2020は、素敵なヴィンテージなのに。

そんなわけで今月は、ボルドーに関する明るいニュースを集めてみた。

文/立花 峰夫


【目次】

1. ボルドー地方で気候変動に対応した赤白6品種が正式認可
2. オーガニック&サステイナブルが急拡大するボルドー
3. ジェーン・アンソンの大著『Inside Bordeaux』がアンドレ・シモン賞にノミネート


1. ボルドー地方で気候変動に対応した赤白6品種が正式認可

「フランス、ボルドー発(2021年1月26日): 国立原産地名称研究所(INAO)は、ボルドー地方における赤ワイン用ぶどうの新品種4種と、白ワイン用ぶどうの新品種2種の使用を正式に承認しました。

フランス農務省の一部門であるINAOによるこのたびの発表は、ボルドーのワイン科学者と生産者たちが10年以上にわたって積み重ねてきた、膨大な研究を集大成させたもののひとつです。

現代のぶどう栽培における最大の問題である、気候変動への実に効果的・革新的な対策で、それが環境に優しい手法であることは特筆すべきでしょう。承認された以下の品種は、気温上昇と生育サイクルの短縮に伴う水分ストレスに、うまく適応することができるもので、2021年からの植栽開始が予定されています。

●赤ワイン用4品種: アリナルノア Arinarnoa、カステ Castets、マルセラン Marselan、トウリガ・ナショナル Touriga Nacional

●白ワイン用2品種: アルヴァリーニョ Alvarinho 、リリオリラ Liliorila

ボルドーの科学研究者たちは、ワイン造りにおける高品質志向と革新において世界を牽引しており、徹底的な調査研究、実験、産学協同を通じて、持続可能な未来のための基盤を築いてきています。今回の新品種導入に関しても、過去10年間で52種以上にも上るぶどうが厳しい査定を受けてきており、その中から6品種が厳選されたのです。

このたび改正された国のガイドラインの下で、ボルドーの新品種6つは、『気候変動への適応において注目すべき新品種』と、ふさわしい命名を受けました。

新たな品種の植え付けは、目下のところ地方全植栽面積の5%が上限とされていて、どの色のワインでも10%が最終ブレンドに占める割合の上限です。そのため、法の定めにのっとり、ボルドーワインのラベル上にこれらの品種名が記載されることはありません。」(ボルドーワイン委員会(CIVB)のプレスリリースより引用)

新しく認可された品種のひとつ、トウリガ・ナショナルは、ポルトガルを代表する黒ブドウだ。

<居酒屋解説>
「このニュース、明るいか?」と思ったアナタ、明るいです。もちろん、気候変動、地球温暖化は深刻な問題なのだが、フランスの他地方に先駆けて、ボルドーがまた革新的な動きを見せたところが明るい。やっぱりデキル子なのだ。お父さんは見ているよ、キミの頑張りを。

ボルドーでは温暖化への対策として、ブドウ栽培全般にわたって非常に多角的なアプローチがすでに取られているのだけれど、今回の新品種認可はなかなか決定的な一打である。思い切りが男前・女前だ。ボルドーは別に、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、ソーヴィニヨン・ブランでなくてもイイってか? そうなのである。

あまり知られていない事実だが、19世紀後半にフィロキセラが襲ってくるまで、ボルドーではカベルネやメルロが主力品種ではなかった。マルベックやプティ・ヴェルド、カルムネールが、もっと幅をきかせていた。それでもボルドーの赤は、その頃から世界最高だったのである。色だって、濃いめのロゼぐらいのもので、今の黒々とした色調からは想像もつかないほど淡かった。それでも、その頃からやっぱり世界最高だったのだ。

だからワタシは、トゥリガ・ナショナルやアルヴァリーニョが使われたボルドーが市場に出てくるのを、とても楽しみにしている。それは、「常に革新的」というこの産地のスピリットを反映したワインだと思うし、そのテロワールの優位性、唯一無二性を証明する素晴らしいワインだろうとも思うからだ。

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