ローヌ川は、スイス南部ヴァレー州のローヌ氷河からフランス南東部を流れて地中海にそそぐ、全長813キロの川です。ローヌといえば思い浮かぶのは雄大な渓谷、南仏の田園風景、ゴッホの絵画。そして銘酒の数々。リゾート気分でワインを巡る旅に、さぁ出かけましょう。
今回の記事で勉強すれば、レストランで選ぶのがちょっと難しかったローヌのワインが身近に感じられること請け合いです。ソムリエ試験やWSET受験のみなさんも、辛い勉強に潤いが出て合格率アップ!
【目次】
- 北ローヌと南ローヌ、2つの産地は何が違う?
- ローヌワインに格付けってあったかな?
- 北ローヌのブドウ品種とクリュ
- ついでにおぼえちゃう!ローヌの赤ワインだけ、白ワインだけのクリュ
- これから注目!北ローヌのIGP
- 南ローヌのブドウ品種とコート・デュ・ローヌ
- シャトーヌフ・デュ・パプと南のクリュ
- いろんなワインの造り方~ロゼ、田舎方式、酒精強化
- ローヌのワイン造り~北と南を比べてみよう
- 南北ローヌの当たり年・飲んでみたいヴィンテージ
- ワインだけじゃないローヌの醍醐味~世界遺産とヴァン・ゴッホ
- ローヌワインのまとめ
1. 北ローヌと南ローヌ、2つの産地は何が違う?
ローヌ渓谷のワイン産地は広大。南北200キロメートル以上に及びます。北と南の2つの地域にわけて、別々のワイン産地として理解した方が頭に入りやすいかも知れません。
北は温和な大陸性気候。冬の寒さは厳しいです。平均年間降雨量は900ミリを超え、気温はブドウ生育期間で平均18℃程度。ブドウ品種は限られています。先ずはシラーやヴィオニエから押さえておきましょう。渓谷沿いの急峻な斜面でのブドウ栽培が有名です。
南は温暖な地中海性気候。冬はおだやかで夏は乾燥します。南ローヌでは、降雨量は700ミリを割り、生育期間の気温は20℃程度と高くなります。品種はグルナッシュを主としながらもさまざまな品種が使われます。栽培面積は北に比べて、南ローヌが10倍以上と圧倒的に広く、平たんな土地にもブドウ畑が点在します。
北ローヌのコート・ロティやエルミタージュ、南ローヌのシャトーヌフ・デュ・パプといった高級ワインで有名ですが、カジュアルなコート・デュ・ローヌが、この産地で最も多いワインです。また、赤ワインの比率が高く、AOC(原産地統制呼称)ワインの7割を超えます。逆に白ワインは1割程度です。
この産地を語る上で忘れてはいけないのは、強力な北風のミストラルです。かび病の被害を抑えますが、一方で樹勢を削いで収量を低下させます。
北ローヌは、ヴィエンヌ から南はヴァランスの間。南ローヌは、ヴァランスから車で1時間ほど南下したモンテリマールからアヴィニョンまでの間がおおまかな範囲です。ちなみに、ブルゴーニュ南端のボジョレーへの玄関のリヨンからヴィエンヌは車で南へ30~40分の距離です。
2. ローヌワインに格付けってあったかな?
アペラシオンの序列は、コート・デュ・ローヌAOC(171村)、コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュAOC(95村)、村名を名乗れるコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュAOC、そして個別にAOCを与えられた最上級のクリュの4段階です。
クリュ予備軍とも言える、村名付きのヴィラージュ(一部複数の村を跨ぐ)は22を数えます。クリュは北ローヌで8つ、南ローヌでは9つの、合計17になります。
この序列には含まれていませんが、他のアペラシオン、コート・デュ・ヴァントゥ、コート・デュ・リュベロン、グリニャン・レ・ザデマールという衛星地区があります。
AOC全体の内訳を見てみると、コート・デュ・ローヌとコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュが6割を占めます。一方、クリュは北ローヌと南ローヌを合計しても15%程度に過ぎません。
コート・デュ・ローヌAOCの面積は広大でボルドーAOCに次ぐ広さです。ただし、北ローヌの産地は高級なクリュで占められていますので、現実的には南ローヌのワインがコート・デュ・ローヌのワインの大半なのです。
コート・デュ・ローヌやヴィラージュには夫々ワイン造りをする上での一定の規則があります。個別のアペラシオンを持っているクリュは更に厳格な独自のルールに沿ったワイン造りをしています。
3. 北ローヌのブドウ品種とクリュ
北ローヌは歴史が非常に古い産地です。紀元1世紀には、古代ガリアのケルト系のアッロプロゲス族の中心地が北ローヌのヴィエンヌでした。当時、アロブロジカという黒ブドウを既に栽培してワイン造りをしていたことが知られています。
北ローヌでは、エルミタージュとクローズ・エルミタージュを除けば、ローヌ川の右岸、つまり西側に多くのアペラシオンが集中しています。先ずはブドウ品種を見ておきましょう。黒ブドウはシラー、白ブドウはヴィオニエを頭に入れておけば先ずは一安心です。
シラーは、北ローヌのクリュで唯一認められている黒ブドウです。モンドゥース・ブランシュとローヌ地方に起源を持つデュレザの自然交配。平均の育成期間の温度は、16℃から20℃弱とカベルネ・ソーヴィニョンより、やや低い温度帯で栽培されていて、北ローヌが栽培の北限だと言われます。最適な収穫期間が短いことが特徴です。新梢が長いので強風には弱いところがあります。栽培地域の気候が冷涼なほど、胡椒などのスパイス 風味が強くなり、エレガントでしなやか。スミレなどの花の香りも。
ヴィオニエは北ローヌ起源の白ブドウです。シラーの親だとわかっているモンドゥース・ブランシュと親子関係があることが知られています。芽吹きは早いので霜害に遭う可能性があります。受粉が上手く行かない「花振るい」にもなりやすく、収量も高くありません。1960年代後半には絶滅の危機に瀕して、14ヘクタールしか栽培されていなかったことがあります。香り高い品種で、あんずや、すいかずらなどの華やかな香りを放ちます。
この際ですから、ルーサンヌとマルサンヌにも少しだけ触れておきましょう。北ローヌだけでなく、南ローヌでも活躍している白ブドウです。
ルーサンヌは北ローヌの伝統的なブドウです。18世紀の書物に記載があります。マルサンヌとは親子関係。うどん粉病や灰色かび病には掛かりやすいのですが、エレガントなワインを生みます。香り高く、比較的、酸にも恵まれます。南ローヌでも品質的に評価が高く、シャトーヌフ・デュ・パプの有名生産者シャトー・ド・ボーカステルの、この品種を使ったヴァラエタル(単一品種)ワインには定評があります。
マルサンヌは18世紀には存在を知られています。芽吹きは遅く、成熟は中庸。収量は上がりやすく、多産です。痩せた土地での栽培が向いています。かび病にも掛かり難く、ルーサンヌよりも育てやすいブドウです。この品種はエルミタージュでは、ルーサンヌと同様にブレンドが認められています。しかし、シャトーヌフ・デュ・パプでは使用を認められていません。
コート・ロティ
ローマ時代からの歴史をもった由緒あるクリュで、シラー主体の赤ワインを生産しています。しかし、急斜面の人海戦術での栽培でコスト負担が割に合わず、過去には凋落の憂き目にあいます。第2次大戦後には畑は二束三文で取引されるに至りました。1970年代初頭には70ヘクタールに栽培面積が落ち込みます。
この産地の土壌を代表する評価の高い区画、コート・ブリュンヌとコート・ブロンドは、コート・ロティの中心地アンピュイ村の北と南に分かれています。白雲母と黒雲母が混ざった北のブリュンヌと南の白っぽい片麻岩のブロンド。こうした夫々が際立つさまざまな区画をブレンドしてワインを造ることが伝統的でした。
ここで、1946年創業とまだ歴史が浅かった生産者、ギガルの活躍が大きく貢献します。テロワール毎の単一畑のワイン造りとブランディング、新樽を使った活用する新しい手法が、国際的に高い評価を受けたのです。
それまで、生産者元詰めのワインは殆どなかったコート・ロティの潮目が変わりました。ギガルの新しいワインスタイルの人気がコート・ロティ全体の知名度向上にも貢献したのです。今では、栽培面積も300ヘクタールを超え、エルミタージュを追い越しました。
エルミタージュ
このクリュの伝説は、中世の十字軍の遠征の時代にさかのぼります。1224年に、ブランシュ・ド・カスティーユの騎士であったガスパール・ド・ステランベールが遠征に疲れ果てこの地で、隠居したと伝えられています。そして、祈りとブドウ栽培に身を捧げ、隠修士という意味合いを持つこのエルミタージュという地名になったといいます。
エルミタージュの赤ワインは、ボルドーやブルゴーニュのネゴシアンに販売され、19世紀には大半がボルドーに送られるようになります。そして、ボルドーやブルゴーニュの高級ワインと同等の価格で取引されるまでになりました。
この産地では、シャプティエが単一区画にこだわったワインを造っている他は、ジャン・ルイ・シャーヴを始めとして異なる小区画のワインをブレンドするのが一般的です。レ・ベサール、ラ・シャペル、ル・メアル、レルミット、レ・グレフュー、ボームなどが代表的な区画。エレガントなコート・ロティと比べて、力強い男性的なワインが造られます。
エルミタージュでは、白ワインも生産されます。マルサンヌとルーサンヌのブレンド。もしくは単一品種から造られます。ルーサンヌは栽培するのは簡単では無いですが、一般的には高品質のワインを生むといわれます。一方、シャプティエは、マルサンヌを支持していて、マルサンヌ100%のエルミタージュの白ワインを造っています。
また、ごく少量ですが、ブドウが良く熟したヴィンテージでは、収穫したブドウを、わらの上で乾燥させた甘口のヴァン・ド・パイユが造られます。
コンドリュー
コンドリューは、ヴィオニエから造る白ワインのクリュです。
ローマ時代に遡るワイン造りの歴史があります。中世には川を下ってアヴィニョンの教皇にも献上されたと言います。しかし、華やかな歴史を持ちながらも、コート・ロティと同じように、栽培が簡単では無かった為、フィロキセラの被害から、中々立ち直ることができませんでした。やせた土壌の表土は簡単に崩れ落ちてしまい、収量も上がりません。コンドリューのヴィオニエは1965年には8ヘクタールが残る危機的な状況だったのです。
それが今や、元々3つの村でひっそりと栽培していたものが、南にも栽培範囲が拡大して、200ヘクタールの広がりを持つようになりました。
ヴィオニエはアルコール高め。酸があまり高くないという特徴もあり、一部の素晴らしい区画のワインは別として比較的若い内に飲むことが普通です。
シャトー・グリエ
17世紀に遡る歴史を持ったシャトー・グリエはコンドリューに囲まれた、わずか4ヘクタールもない白ワインのクリュです。ボルドーのシャトー・ラトゥールのオーナーでもあり、グッチも傘下に収めているフランソワ・ピノーが現在の所有者。ローヌで唯一のモノポールです。
150メートルから250メートルの標高の南向き斜面で、ヴィオニエをオーガニック栽培しています。
収量制限もコンドリューより厳しく植栽密度も高くなっています。ヴィンテージによっては、コート・デュ・ローヌのアペラシオンで、幾らかお手頃なワインを造っていますが、日本で手に入れるのは難しそうです。
サン・ジョセフ
サン・ジョセフは60キロにも及ぶ広大なクリュです。赤ワインと白ワイン共に造られています。
ローヌ川を挟んでエルミタージュの対岸となるアペラシオンの南部が元からの産地です。それが、北部へ大きく拡大してしまいました。1990年頃には540ヘクタールだった栽培面積が2倍を超えてしまっています。品質も玉石混交です。
やはり良いワインが造られるのは古くからある南部の区画モーヴとトゥルノンです。これらの区画は、エルミタージュと同じ花崗岩土壌を持ち、中世にまで遡る長い歴史を持ちます、
クローズ・エルミタージュ
クローズ・エルミタージュは北ローヌ最大のクリュです。北ローヌのワインでは一般消費者に取っては、最もなじみがあるのでは無いでしょうか? エルミタージュとは別物と考えてください。赤ワインと白ワイン共に造られています。
小規模栽培者が収穫したブドウの半分以上は協同組合のカーヴ・ド・タンに送られます。また、大手ネゴシアンで有るシャプティエ、ジャブレなども多くのブドウ畑を所有しています。ですから、小規模栽培者みずからが、クローズ・エルミタージュを一貫して生産しているのは2割にも満たないのでは無いかとも言われています。
北側の区画は比較的評価が高く、花崗岩土壌。北風を直接受けるので、引き締まった細身のワインになる傾向があります。
南側の区画は、沖積土にギャレや砂利質。水はけは良いものの干ばつの被害も受ける可能性があります。ワインは北の区画よりもフル・ボディでフルーティ、ふくよかな味わいになります。
4. ついでにおぼえちゃう!ローヌの赤ワインだけ、白ワインだけのクリュ
コルナスはもっとも職人的な造りと言われます。骨格のしっかりした赤ワインのみのクリュです。北のコート・ロティや南ローヌのヴァンソーブルも赤ワインのみのクリュですが、補助品種として白ブドウの使用(混醸)が認められていますので、黒ブドウのみ(シラー100%)の純潔!の赤ワインのクリュはコルナスだけです。
北からの冷涼な影響が丘陵地帯で遮られる一方で、南からの暖かい風を受ける温暖な気候。今後の温暖化に伴って栽培適地が丘陵地の中腹から標高の高いところへ移行して行く可能性がありそうです。
北ローヌ最南端のサン・ペレは、花崗岩だけでなく、ローヌには珍しい石灰岩の土壌にも恵まれています。ルーサンヌとマルサンヌから造る白ワインのみのクリュです。コンドリューとシャトー・グリエはヴィオニエのクリュでしたね。一緒に、おぼえておきましょう。
トラディショナル・メソッドの泡も造っていて歴史的には有名でした。最近は、ふくよかで酸が控えめなので高い評価を得られず、あまり見ないようになってきています。
5. これから注目!北ローヌのIGP
北ローヌはめいっぱい栽培がされていて、栽培面積を広げるのは難しいのですが、これから楽しみな産地があります。コート・ロティの対岸のローヌ川左岸のヴィエンヌの最北の地、セイシュエル。シラーとヴィオニエが栽培されて、今はコリーヌ・ロダニエンヌIGPの格付けです。
コート・ロティのように中世には有名だったのにすっかり忘れ去られていた畑です。この土地のポテンシャルに集まった醸造家たちが1996年からワインを造り始めています。ローマ時代に遡る、この産地のワイン、テール・ド・ヴィエナの再興を目指したAOC認定に向けて努力を続けています。
コリーヌ・ロダニエンヌIGPは北ローヌのAOCで定められた範囲外のブドウから造ったワインに与えられている呼称です。北ローヌの生産者に支持されていて、コート・ロティやコンドリューなどのクリュ生産者も、平たんな土地や、逆に、標高が高すぎる畑を、このIGPに割り当てています。お買い得感満載ではないでしょうか?
6. 南ローヌのブドウ品種とコート・デュ・ローヌ
南ローヌのブドウ品種
南ローヌで最も大切なブドウ品種は黒ブドウのグルナッシュ(ノワール)。
比較的芽吹きは早くて晩熟。暖かい気候での栽培に向いています。育成期間の平均気温は17℃弱から20℃強です。ほぼカベルネ・ソーヴィニョンと同様の気温帯です。特徴は、糖分があがりやすく、アルコール度数が高くなることです。一方、酸は控えめ。株仕立てが一般的です。かび病には弱いものの、幹の病気にかかり難く、様々な土壌にも適合します。干ばつにも耐性があり、暖かく乾燥した産地には向いている品種です。起源はスペインが最有力と考えられています。ダークチェリーやラズベリーなどの赤系果実やスパイスやハーヴや土っぽさも感じられるワインになります。
コート・デュ・ローヌ
コート・デュ・ローヌは生産量が多いため、カジュアルなワインから品質の高いものまで、ある程度の幅があります。ただし、平たんな土地から収穫したブドウで、赤系果実のフルーティで軽快なワインがその典型です。新樽はあまり使用されず、酸やタンニンは中庸です。
赤ワインが9割弱を占めます。収量はヘクタール当り51ヘクトリットル。黒ブドウのグルナッシュを中心に、シラー、ムールヴェードルを加えた、いわゆるGSMがブレンドの6割、栽培面積の7割を占める必要があります。白ワインはグルナッシュ・ブラン、ブールブーラン、ルーサンヌ等の定められた白ブドウを栽培面積で8割以上含む必要があります。霜害などのヴィンテージによる天候不順の場合は栽培面積の基準は都度見直されています。
コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュは規則が厳しくなり、最大収量も落とさなければなりません。更に、村名付きのヴィラージュになると、収量はヘクタール当り40ヘクトリットルを切ります。
生産者元詰めの動きはありますが、依然、3分の2は協同組合で造られます。殆どが南ローヌから調達されるのですが、有名なギガルやシャプティエ、ジャブレ等の北ローヌが本拠のネゴシアンも取り扱っています。
本来はネゴシアンと言えば、ブドウ、果汁若しくはワインを調達して瓶詰して自社ブランドで販売するという商売形態です。しかし、自社畑を所有、拡大して全ての工程を通してワインを造るということも多くなりました。そこまでいかなくとも、栽培方法や収穫日を指示するネゴシアンも多数存在します。逆に、元は自社で全てワインを造り瓶詰していた生産者がブドウや果汁を調達するというネゴシアン的な商売形態を取ることも出て来ています。
7. シャトーヌフ・デュ・パプと南のクリュ
3千ヘクタールを超える栽培面積を有し、クリュとして最大。歴史にも恵まれ、名声も確立しています。南北ローヌ全てのクリュで最も知名度が高いと言っても良いでしょう。
シャトーヌフ・デュ・パプの地でのワイン造りは12世紀には書面に残されています。
1309年にイタリアからアヴィニョンに移された教皇庁に、ローマ教皇クレメンス5世が入り、ブドウ栽培を奨励します。後継者のヨハネス22世が建設したブドウ畑を臨む別荘が、新しい城、つまりシャトー・ヌフ・デュ・パプの名前の由来になります。そして、18世紀から19世紀には国内外での高い評価が確立します。
13種類というクリュの中で最も多いブドウ品種が認められています。とはいうものの、全ての品種を使うという生産者はごく稀です。著名なシャトー・ド・ボーカステルがその一つです。方や、やはり有名生産者である、シャトー・ラヤスはグルナッシュ100%でワインを造ります。
良く、シャトー・ヌフ・デュ・パプのブドウ品種は13なのか、18なのかという話題になります。1936年のAOC認可当時の書類を見ると、13種類です。これは、一般的には黒ブドウを指す8品種、つまりグルナッシュ、シラー、ムールヴェードル、サンソー、テレ・ノワール、ヴァカレーズ、クノワーズ、ミュスカルダン。そして一般的には白ブドウを示す5品種、クレレット、ブールブーラン、ピクプール、ルーサンヌ、ピカルダン。これらを合計した13品種という事になります。
しかし、その後、明確に示されていなかった果皮色の変異種が具体的に記載された結果、18種類となっているということです。
グルナッシュが3つに分割:グルナッシュ・ノワール(黒)、グルナッシュ・グリ(灰)、グルナッシュ・ブラン(白)。ピクプールが3つに分割:ピクプール・ブラン(白)、ピクプール・グリ(灰)、ピクプール・ノワール(黒)。クレレットが2つに分割:クレレット(白)、クレレット・ロゼ(ピンク)。どうでしょうか?計算が合いますでしょうか。
赤ワインばかり注目されるシャトー・ヌフ・デュ・パプですが、白ワインも忘れてはいけません。グルナッシュ・ブランとクレレットが主要品種です。たったの7%しか生産されていませんが、樽発酵や新樽を使った控えめな酸とふくよかな味わいを持った良質なワインが少ないながらも存在します。
非常に大きなクリュであるにも関わらず、シャトーヌフ・デュ・パプには等級分け(グラン・クリュ、プルミエ・クリュ)がありません。こうした状況も影響して、1990年代に品質の高い、単一畑や古木からのワインや、特別に醸造や熟成に手間暇を掛けたワインをスペシャル・キュヴェと名付けて差別化するようになりました。しかし、必ずしもワイン法に則ったものではありません。また、通常のキュヴェの品質を犠牲にしているのでは無いかという声もあるようです。
土壌は、ギャレという丸石が有名です。南東部のラ・クラウや最北部のボーカステルに目立ちます。この丸石が昼間の太陽熱を蓄えて夜に放出すると良く言われていました。今では、気候も十分に温暖ですからブドウの成熟の観点ではギャレが本当に寄与しているのかは少々疑問です。
また、ギャレばかりが取り沙汰されがちですが、シャトーヌフ・デュ・パプの土壌は多岐に渡っています。シャトー・レイヤスでは沖積土壌や粘土岩、砂質でギャレは見られません。土壌を考える上で大切な点として、下層土に、保湿能力がある粘土質を含んでいるかという視点もあります。シャトーヌフ・デュ・パプでは、主として水はけが良くてやせた表層土が多いと言えます。こうした土壌で、乾燥した夏や干ばつに耐えられる水分が保持できるかという見方も必要かも知れません。
このシャトーヌフ・デュ・パプがフランス全体のワイン業界に貢献した歴史にも触れておきましょう。第一次大戦での戦闘機乗り、そして弁護士だったバロン・ル・ロワが、シャトー・フォルティアのオーナーの娘と結婚しました。そして、1935年にINAO(国立原産地名称研究所)を元農業大臣の友人と共同で設立。また、OIV(国際ブドウ・ワイン機構)の代表も務めました。そして、シャトーヌフ・デュ・パプを1936年にはAOCに認められた最初のワインの一つにしたのです。「ワインは少なくても良い、でも品質はより良くあるべきだ」という彼の信条は今でも息づいています。
リラックとフィロキセラ
中世には貴族達から評価を受けていたクリュで、今は、赤白ロゼ全てのワインを造れるリラックですが、過去には不名誉な事件がありました。
今は、リラックとなっているローヌ川右岸の畑でワイン商がアメリカの友人から送ってもらって植えたグルナッシュとアリカンテがフィロキセラに感染していたのです。
フィロキセラは、日本名でブドウネアブラムシというアブラムシの一種。体長1ミリ程度のこの昆虫はブドウ樹の葉や根に寄生し、 樹液を吸うことでブドウを枯死させます。今日では、フィロキセラ耐性があるアメリカ原産ブドウ樹を台木に使用。栽培したいヴィニフェラ種を穂木として接ぎ木するという対策が普通に行われています。
こうしたことを知る由も無い、1850年代後半から、60年代に掛けてフィロキセラがアメリカから輸入された大量のブドウ樹と共にヨーロッパに入ってきます。フランスで最初の感染とされているのが、1862年にローヌ川右岸のロックモールに植えたブドウ。シャトーヌフ・デュ・パプの対岸で、今のアペラシオンで言うと、リラックになります。そうこうしている間もなく、ブドウ樹が、ボルドーやアルザス他、欧州諸国へも次々と出荷されていったのです。フランスはその後、全土が被害に飲み込まれて、ワイン生産量は1875年と比べて、1889年にはそのたった3割までに激減することになります。
貧乏人向けのシャトーヌフ・デュ・パプ?~南ローヌのその他のクリュ
南ローヌのワイン・ツーリズムと言った時に、自然の景観でもっとも素晴らしい石灰岩の岩山、ダンテル・ド・モンミライユ。400メートル以上の標高でもブドウが栽培されています。
赤とロゼワインのクリュである、ジゴンダスはこの山の斜面に栽培されていて北風から守られています。新樽を使う生産者がいる一方で、伝統派はセメントタンクを使ったり大樽熟成をしたりと、旧来の造り方を守り長熟なワインを目指しています。また、古木からのスペシャル・キュヴェも造られています。
残念なことに、ワインのスタイルが似ていて、手ごろな価格で手に入る事から、以前は、「貧乏人向けのシャトーヌフ・デュ・パプ」と、ありがたくないニックネームを付けられていました。しかし、昨今の品質向上はめざましく、こなれた価格と相まって評価が高くなっています。
ヴァケラスもダンテル・ド・モンミライユ周辺ではありますが平たんな産地で造りは素朴。新樽の使用率も少ないアペラシオンです。ローヌ川左岸では赤、ロゼ、白の3色全てを造れる唯一のクリュです。このヴァケラスと右岸ではリラックが、ローヌで赤白ロゼの全ての色が認められているクリュ(酒精強化ワインを除く)です。
8. いろんなワインの造り方~ロゼ、田舎方式、酒精強化
ローヌでは通常の赤ワイン、白ワインのほかに様々なスタイルのワインが造られています。この産地特有なワインを例に少し醸造の流れを勉強しましょう。
先ずはロゼワイン。南ローヌのタヴェルです。歴史の舞台に現れるのは9世紀。1936年のAOC認定の前には軽快な赤ワインで有名だったのですが、ロゼのみがクリュに認められました。レ・ローズと呼ばれる石灰質の小石と赤い粘土質の痩せた土壌が特徴的です。
グルナッシュとサンソーが主要品種。色は赤ワインとロゼの間くらいで濃い色をしています。醸造方法は、プロヴァンスのロゼで主流の直接圧搾方式でもセニエ方式ではありません。
造り手にもよりますが、低温で12時間から24時間、長ければ48時間から72時間の醸し(低温浸漬)をした後に圧搾して白ワインと同じように発酵させます。醸しの時間の長さで色合いや香りの強さやタンニンの程度が決まります。15℃前後で10日から2週間ほどの発酵をします。
セニエ方式は赤ワインを造る際に、副次的にロゼを造るもの。本来は、赤ワインの凝縮度を増すことが主眼です。タヴェルでは、フレッシュな果実味と酸を持つフリーラン果汁も、骨格とパワーをもった圧搾した果汁も、双方共に発酵させてブレンド。この産地に伝統的なロゼワインに仕上げることが目的です。
この他にロゼの造り方には、少量の赤ワインを白ワインにブレンドする方法もあります。ただし、シャンパーニュでは認められているものの、ヨーロッパでは殆どの産地では認められていません。
色の濃いタヴェルですが、昨今のプロヴァンスワイン全盛の影響を受けて、低温浸漬の時間は減り、色は明るくなる傾向にあります。文豪ヘミングウェイが好んで飲んでいた頃とはだいぶ味わいも変わっているのでは無いでしょうか?
ヴァランスの南東、北ローヌと南ローヌのはざまにある、クレレット・ディ。田舎方式と言われる醸造方法でミュスカ・ブラン・ア・プティ・グランのブドウから造られるアロマティックな甘口のスパークリング・ワインを造っています。
ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グランはとても古い時代からあるブドウ品種で地中海地域でのシノニムだけでも数多く存在します。イタリアかギリシャが起源と考えられています。白だけなくてピンクや赤や黒など様々な変異種が世界中にあります。
田舎方式のスパークリング・ワインの造り方は、圧搾後、10℃以下に果汁を冷却します。野生酵母を使うのが典型的で1~2か月間ゆっくりと発酵させてアルコール度数が4~5%になったところで、いちど瓶詰めします。そのまま、低温で引き続き瓶内で発酵を続けて半年から1年ほど澱との接触を行います。瓶内の二酸化炭素の圧力で発酵は自然に止まります。その後、タンクにワインを一度集めて濾過してから改めて、瓶詰めするというのが一般的です。残糖がある低アルコール(7~8%)のスパークリング・ワインになります。シャンパーニュで使われるようなリキュール・ド・ティラージュやドサージュは使われません。この造り方はペットナット、自然派の微発泡ワインとして注目を集めています。
同じミュスカを使った酒精強化ワインがローヌにはあります。ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズはヴァン・ドゥ・ナチュレル(VDN)と呼ばれる酒精強化ワインです。デザートと合わせるような甘口ワイン。ダンテル・ド・モンミライユ山麓のジゴンダスの隣で造られます。十分な果実の熟度が得られてミストラルから守られる南向きの斜面での栽培が好まれます。
5~10%のアルコール濃度まで発酵した所でアルコールを添加して発酵を止めます。1リットル当たり110グラム程度の残糖を残します。できたワインは15%程度の高めのアルコール濃度。96%程度の高濃度のアルコールを添加するので、酵母がアルコール発酵をすることができなくなり糖分が残るのです。
9. ローヌのワイン造り~北と南を比べてみよう
シラーは栽培面積が上位の品種の割には、銘醸ワインが限定的。意識してレストランやバーで注文される方は少ないかも知れません。この記事を読んだあなたにはその理由が腹落ちできたかと思います。一方では多彩な表情を持つワインのスタイルは更なる可能性を感じます。この際に、ローヌ、オーストラリア、南ア、ニュージーランドなどのシラーを並べて果実の熟具合やスパイスの香りの出方、そして醸造方法やオーク樽の影響をぜひ確認してみてください。
栽培
北ローヌの共通的な栽培の特徴としては、急斜面での栽培です。急峻な斜面での手作業に頼らざるを得なかったということが、20世紀の北ローヌの凋落の一つの原因と言えます。
60°にもなる急斜面での作業にも対応できるように、コート・ロティでは1本若しくは2本の支柱にしっかりと新梢を結んだ棒仕立てが使われます。シャトー・グリエでも棒仕立てで栽培されています。
エルミタージュでも350メートルの標高があります。コート・ロティ程は急峻ではありませんが、土壌の浸食や流出を手直ししなければなりません。しかし、一方で、南向きの急斜面は、北風からブドウを守り、十分な日照を受けた素晴らしいワインを生み出すという、自然のめぐみでもあります。
エルミタージュの斜面では、低い樹高の株仕立てで支柱1本に新梢を結び付けます。平たんな土地では短梢剪定の垣根仕立てが一般的。南側の平たんな区画で機械収穫をするには適した仕立てです。
南ローヌではシラーは垣根仕立てが多いものの、多くのブドウ樹にはゴブレと呼ばれる株仕立てが用いられます。北ローヌよりも平たんなので、ミストラルの影響をまともに受けてしまいます。ですので、背の低い株仕立ては有効なのです。また、強い日差しからブドウ樹を守ることもできます。シャトー・ヌフ・パプではグルナッシュとムールヴェードルを含めた黒ブドウ4品種にはこの仕立てが義務付けられています。
一方で、機械収穫の容易さも考慮してワイヤーを使った垣根仕立てを評価する生産者も多数います。今のようなコロナ禍では収穫のための人手を確保するのも大変です。また、ブドウの成熟や天候の状況のタイミングに応じて素早く収穫できるのも、夜間に温度が低い内に酸化を避けて収穫できるのも機械収穫の長所。ですから、一概に機械収穫より手収穫の方が、品質が良いというのは短絡的です。
温暖化の影響
温暖化は北ローヌよりも、暖かく乾燥している南ローヌでの影響が深刻になりつつあります。
南ローヌでは、19世紀初頭に栽培が始まったグルナッシュに続き、1960年代以降、サンソー、そしてシラーのブレンドへの活用が大幅に増えました。最近では、シャトーヌフ・デュ・パプでは温暖化でアルコールが上がる方向なので、更にグルナッシュからシラーやムールヴェードルに近年栽培を移行する傾向が見られます。
夏の厳しさの中で新鮮さが欠けてきたシラーより、晩熟のムールヴェードルを増やしていく生産者もいます。ボーカステルではムールヴェードルが比較的多く使用されています。
これまであまり使わなかったブドウ品種、例えば、高アルコールになりにくいクノワーズや、白ブドウを、赤ワイン造りへ活用することを考える生産者もいます。
こうした厳しい環境の中で、干ばつが続くなど、ブドウ樹への水分ストレスが認められた場合に制約条件付きで灌漑が認められるようになりました。ただし、収量を上げたいという理由での灌漑は相変わらず許されません。
オーガニック栽培は1970年代末から80年代に掛けて始まり本格的に定着してきたのは21世紀に入ってからです。北ではシャポティエ、南ではシャトー・ド・ボーカステルが早くからオーガニック栽培に取り組んでいます。気候や地形のハンデがある北に比べて、南ローヌは平たんで乾燥している為、オーガニック栽培は進んでいます。
醸造
赤ワインでの全房発酵は流行のひとつとして、良く話題に上がります。全房のメリットとして、香りの複雑味や若干アルコールも低くなり、フレッシュ感がでることなどを挙げる生産者は多いです。
しかし、そもそも除梗機が発明される前は、手間暇を掛ける最高のワイン、エルミタージュやシャトーヌフ・デュ・パプなどの一部を除けば全房発酵以外の選択はありませんでした。例えば、ジゴンダスでは1980年以前には除梗はしていなかったのですが、今では、ほとんどが除梗をして醸造しています。
北ローヌでは、近年、全房を活用する生産者や、いったん除梗して、後から梗を足す生産者が増えています。
混醸は北ローヌで伝統的に見られる醸造方法です。赤ワインを造る時にシラーにヴィオニエや、ルーサンヌとマルサンヌを一緒に醸造します。エルミタージュもコート・ロティもかつては白ブドウ、黒ブドウを同じ区画で栽培(混植)していました。そうした中では混醸も自然な流れ。ですが、今ではそうした慣習も鳴りを潜めました。香りを高めたり、シラーのタンニンを和らげたりという趣旨で少量の白ブドウを混醸するのが、今では主流です。それも、昨今の温暖化で意味合いが薄れてきて、シラー100%のワインも多くなってきました。
コート・デュ・ローヌではマセラシオン・カルボニックを活用する傾向があります。ボジョレーで果実味中心のフレッシュなワインを造る手法として良く知られています。
マセラシオン・カルボニックは全房で収穫したブドウを使用します。二酸化炭素を充填したタンクで、酵母の働きでは無くて、果実内での酵素の働きでリンゴ酸を分解して2%程度のアルコールを生むものです。一方、発酵容器下部のブドウは上部の重みで潰れて、果汁が染み出しますので、果皮に付着している酵母で通常のアルコール発酵が行われます。
そうして得た、フリーラン果汁と圧搾して得た果汁を使いアルコール発酵を仕上げます。この方法を活用する利点としては、果皮との接触が無い所でアルコールを生成している部分があるため、タンニンが通常の発酵方法と比べて低く、スムースな口当たり。酢酸イソアミルやけい皮酸エチルと言ったエステルやベンズアルデヒド等の芳香成分を生み、チェリーやイチゴ、バナナと言った特徴的なフルーティな果実香が生まれます。
最近の北ローヌでの全房発酵の活用の中で、この醸造手法(二酸化炭素充填をしない、セミ・マセラシオン・カルボニック含む)は北上の流れがあるようです。
熟成
北ローヌではギガルの影響で新樽の活用が広がりましたが、今ではそうしたトレンドも落ち着きました。大樽も好まれて、新樽使用は控えめになっています。
新樽を使用するにしても、ヴァニラなどの樽香を得ることが中心では無くて、タンニンを和らげるなど、ワインを早い内から飲みやすくするという事などに関心が移ってきているようです。
南のシャトーヌフ・デュ・パプでは伝統的には、赤ワインの熟成には古い大樽やフードルを使用します。グルナッシュは酸化しやすいブドウなので酸素との接触は少ないに越した事はありません。一方で、還元しやすい傾向があるシラーには、小樽を使用して酸素との接触面積を増やしている生産者もいます。スペシャル・キュヴェでは、新樽も良く使用されます。
10. 南北ローヌの当たり年・飲んでみたいヴィンテージ
赤ワインの特に素晴らしいヴィンテージを見てみましょう。
北ローヌでは2015年は果実がとても良く熟した年です。暑く乾燥した夏でしたが、夜は涼しく、長熟可能なワインになりました。2010年も素晴らしく、比較的涼しくて、ゆっくりと果実が熟して、バランスが良いワインに仕上がっています。2005年も凝縮度が高いワインで、偉大なヴィンテージです。
南ローヌでは、2016年が素晴らしい年です。十分な降雨量にも恵まれ、成熟期には乾燥した気候。夏の日較差が大きく骨格のしっかりしたワインになりました。アルコールは少し高めですが、長熟可能性があります。2010年は、収量は低かったものの、パワーがあり、タンニンにも恵まれた熟成が期待できる年。2005年以来最高の出来とされます。2005年は北ローヌ共々偉大な年です。
11. ワインだけじゃないローヌの醍醐味~世界遺産とヴァン・ゴッホ
北ローヌでしたら、リヨン発着でエルミタージュ含めたクリュを訪れるワイナリーツアーが便利です。個人旅行ならヴィエンヌを拠点としてコート・ロティやコンドリューを訪れるあいまに、ガロ・ローマ博物館で充実した展示物やローマ時代の遺跡をそぞろ歩きしてみるのも楽しいでしょう。
南ローヌは旅の起点をアルルにすれば、ワイナリー訪問を忘れてしまうほど、観光したい名所が山のようにあります。先ずは、シャトーヌフ・デュ・パプの教皇庁を訪れるのは当然。折角ならワインミュージアム・ブロットでワインテイスティングと、ワイン造りの歴史の勉強もしておきましょうか。足を延ばして、ローマ時代の水道橋、ポン・デュ・ガールも見ておきたい世界遺産です。
そして、なによりアルルの街には、円形闘技場や古代劇場などのローマ時代の世界遺産。芸術が好きな方に堪らないのは、ここが、ヴァン・ゴッホが有名な絵画の数々を描きゴーギャンと共同生活を送った町だということです。「夜のカフェテラス」のモデルになったカフェ・ヴァンゴッホは立ち寄ってひと息つきたい名所です。美味しい南仏料理を楽しめるビストロも簡単に見つかります。
12. ローヌワインのまとめ
北と南の二つのローヌ。すこし、身近な存在になりましたでしょうか。引き締まったエレガントな印象の北のワイン。太陽が燦燦と降り注ぐイメージそのままの豊満な南のワイン。気候の影響や使われている主要ブドウ品種によって、大きく香りと味わいが変わってきます。
ワインのビジネスは、北も南も大手ネゴシアンが横断的に活躍しています。特に南は協同組合の存在も大きい。でも、活きの良い小規模生産者も登場してきています。
ワイン造りにも、さまざまなアプローチがあることを学びました。伝統派、モダン派、ブレンドでクリュ全体を表現しようとする生産者、そして単一畑や小区画の特徴にこだわるテロワールの求道者。
でも、あまり気難しく考えずに、気軽に楽しめるコート・デュ・ローヌを、いろいろ比較試飲。スタイルの違いを楽しみましょう。そして、たまには、手に入りにくいクリュのワインを飲みながら、更に産地の理解を深めて、ローヌ訪問の計画を立てましょう。