世界中のワイン産地で栽培・醸造の修業を積んだあと、日本産ワイン(日本ワイン+国産ワイン)の現場に立った筆者が直面した、日々の現実をさまざまな角度から切り取るコラム。現在独立して業界に忖度や遠慮がいらない立ち位置のため、書く前から光:影が1:9くらいのバランスになる気がしないでもない。第3回はブドウ栽培にとって、少なすぎても多すぎても困る雨と、その中での収穫にまつわる、日本ワインの哀しきエトセトラ。
文/國吉 一平
【目次】
1. ヒトと天気の不可分性
2. 乱立する無責任予報
3. レイニーブルー・ハーヴェスト
4. 雨×棚×契約
1. ヒトと天気の不可分性
一体全体、人生のどれくらいを天気予報のチェックに割いているのだろうか。出勤や登校時に傘はいるのか・いらないのか、いるとしても折り畳みで事足りそうなのか。朝食中何気なく目に入ってくる情報までを含めると、一生のうち数ヵ月程度にはなりそうだ。農業に関わっていれば、潅水、消毒など作業との絡みもあり、平均以上は費やしているに違いない。
屋内の仕事であっても、例えばレストランでは、その日の天気によって注文に偏りが出てくるだろうし、湿度などで調理の具合も変わってくる。仮にあなたがアカデミー・デュ・ヴァンのスタッフだとしたら、台風や付随する列車の運行状況などは、休校決定の判断材料として、殊更注視する必要があるだろう。今やコロナの気苦労で、台風による休校など、古き良き時代の些末な出来事に感じているかもしれないが。