「死んだらどうなるんだろう。寝ているときのように真っ暗になるだけなのかな」そんな疑問と、死ぬときに後悔したくないという気持ちが、わたしをワインの道へとかき立てたのです。
米倉利典さんは、長野県東御市に2018年にブドウを植えて6年目になります(リリースから4年目)。ワイナリー名は「Yone Farm TOMI(ヨネ・ファーム・トウミ)」。寡黙な男がワイン人生を語ってくれました。
【目次】
1. 会社員からワインバー開業へ
2. ソムリエ資格取得と仲間との出会い
3. ワインをつくりたい!
4. 東御市の自然の恵みと挑戦
5. クールクライメイト・シラー
6. さらなる高みを目指して
1. 会社員からワインバー開業へ
はじめてワインが「うまい」と思ったのは大学生のときでした。先輩と一緒に飲んだシャトー・レオヴィル・バルトン1983年。当時はドイツの甘口ワインが主流でしたが、「こんなワインがあるんだ」と驚きと興味が湧いてきたのです。
その後、通信系の会社に就職し、会社員生活を送るかたわら、ワインを楽しんでいました。ある日、仲間と企画したワイン会でルロワのミュジニー1992年を飲んだのですが、「こんなに素晴らしいワインがあるんだ」と、度肝を抜かれました。
それ以来、ワインにどんどん魅了されていきました。会社新生活25年を迎える頃、ふと思ったのです。「このまま定年を迎えてもいいけれど、大好きなワインを仕事にするのもいいのではないか」と。そして神楽坂にワインバーを開く決意をしたのです。
2. ソムリエ資格取得と仲間との出会い
ワインバーをするなら「ソムリエ資格を取った方がいい」と、アカデミー・デュ・ヴァンのソムリエ試験対策講座の門を叩きました。はじめて学ぶワイン、暗記は大変だったけど、世界のワイン産地を俯瞰することができるようになったのがよかった。普段は飲まないワイン産地について知ることができたのは楽しい経験でした。何よりも、飲食店だけでなく、さまざまなバックグラウンドをもつ仲間とワインを共有できることが楽しくて、あっという間に20回修了していました。
3. ワインをつくりたい!
資格取得後は、ますますワインが好きになって、気が付けば仲間と一緒にStep-Ⅱまで受講していました。クラスメイトがワインバーに訪れてくれたり、仲間の店に遊びに行ったり、充実したワインライフでした。
そんななか長野県東御市が、千曲川ワインアカデミーの受講生を募集していることを知りました。聞くところによると、農業を学びながら給料を受け取る仕組みがあるとのこと。ただ、ワインバーを開いてまだ2年しか経っておらず、ちょうど軌道に乗ったばかり。妻が賛成してくれるのだろうか、ローンの支払いは大丈夫なのだろうか…不安もよぎりました。しかし、そういった心配よりも、「死ぬときに後悔したくない」「体が動くうちにはじめたい」という気持ちに突き動かされました。
4. 東御市の自然の恵みと挑戦
現在、借りている畑は長野県東御市の鞍掛地区と祢津地区の2つ。鞍掛地区は標高660メートル、祢津地区は標高760メートルに位置します。東御市全体が南向きの斜面になっており、日当たりが良く、果物の栽培に向いている土地。斜面を遮るものが何もないので常に風が吹いているのが特徴です。
土壌は強粘土で、初めの頃は雨が降ると、激しいぬかるみができ、草刈り機が沈んでしまうほど。乾くと固くなってしまう性質があり、根が伸びにくいために、ブドウ樹の成長は3年も遅れてしまいました。ただし3年ほどたって、だいぶんその状況も改善されてきました。
5. クールクライメイト・シラー
栽培しているブドウ品種は14種類。シャルドネ、メルロのほか、ヴィオニエや、ルーサンヌ、シラー、カベルネ・フラン…など。メルロとシャルドネにしぼっている人が多い中、この栽培品種の多さはヨネファームの特徴といえるかもしれません。
なかでも手ごたえを感じているのがシラーで、黒コショウがはっきり香ります。標高が高く、涼しいのでロタンドン(ワインの香り成分の1つで、黒コショウの香りの原因)がたくさんふくまれているのです。
6. さらなる高みを目指して
5年以内に、ワイナリーをつくるのが次の目標です。もちろんワインの学びも継続しています。勉強のためにワインを飲むようにするだけでなく、仲間との勉強会にも積極的に参加したりしています。最近では、自分のワインを持ち寄って、感想やアドバイスをもらったりすることもあります。
プロフィール
米倉利典(よねくらとしのり)
Yone Farm TOMI代表
- @yone_farm_tomi
- 星座:やぎ座
- 血液型:A型
- ワイン以外の趣味:お酒全般、料理、サッカー、野球、ゴルフ
- 好きな食べ物:ステーキ、ポトフ、刺身、チョコレート
- もし生まれ変わったら何になりたい?:人生を楽しめる人
- 酔っぱらったらどうなる?:陽気になる
- 人生を変えたワイン:シャトー レオヴィル・バルトン 1983
「ワインづくりをはじめてからは、人と話す機会がますます減った」と苦笑いする米倉さん。そんな、物静かな米倉さんもワインのことを語らせるときは、熱く、そして楽しそうなのでした。
あの人のワイン人生 ~ワインは人生を豊かにする