あの人のワイン人生 vol.4 ~清水啓介さん「チーズマン誕生ストーリー」

エッフェル塔とチーズマン

「生きているというだけで、こんなに幸せな気持ちになれるのかー。」病室のベッドで目を覚ましたとき、1週間前、に自転車ごと交通事故に巻き込まれ、生死をさまよっていたことを知ったのです。当時は、声も出せず、妻のこともわからなかったくらい朦朧としていました。しかし、その後、8回の手術を経て復活、「人生を全力で輝けるものにしたい」「人のために役に立つ何かをしたい」と思うようになりました。

本記事は、ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」が監修しています。ワインを通じて人生が豊かになるよう、ワインのコラムをお届けしています。メールマガジン登録で最新の有料記事が無料で閲覧できます。


【目次】
1. ダイエット成功が変えた人生
2. パン好きから自転車好きへ
3. フランスで目覚めた味覚の旅:パン、自転車、そしてチーズ
4. クラスメイトの笑顔が見たい
5. チーズマン誕生!
6. 終わりのない旅


1. ダイエット成功が変えた人生

子供のころから、人と同じことをするのが嫌い、興味があることには没頭するタイプで、百科事典を開いて調べていました。物心ついたころから、パンに夢中になっていて、母親に「近所のパン屋さんの食パンは、当日はおいしいけど、翌日はイマイチ。翌日ならばスーパーの食パンのほうがマシ」とこぼすほどの愛パン家でした。

その影響もあり、ものすごい肥満児(笑)。なんと体重は120㎏もあったのです。まったくモテない学生時代を経て、「このままじゃいけない」と一大決心して、社会人1年目に半年で120kgから70kgのダイエットに成功しました。振り返れば、このダイエットの成功体験が自信の原点となり、今の自分のモチベーションとなっていると思います。

学生時代の清水さん

2. パン好きから自転車好きへ

20代は日本中のパン屋を1000軒以上巡りました。日本はもとより、パン王国フランスも何度か旅してパン屋を訪ねました。そのうち、それだけでは満足できなくなり、「フランス人と一緒に暮らして、フランス人がどうやってパンを食べているか、この目で確かめたい」と思うようになったのです。

パン屋をめぐるときは、自転車を使います。理由は太らないように自転車でカロリー消費をするためです。そのうち気が付いたら、パンだけでなく自転車にも魅了され、ロードバイクの競技にものめりこんでしまいました。

フランスで牛たちを眺めながら自電車で走る

3. フランスで目覚めた味覚の旅:パン、自転車、そしてチーズ

パンも自転車もフランスが本場。本場のパン、本場のロードレースを体験したいという気持ちは抑えきれず、31歳のとき、会社員を辞めてフランスで学ぶことに決めたのです。知人にフランス北西部に位置するノルマンディの自転車チームを紹介してもらい、半年間、監督の家にホームステイしました。

パンも自転車も新しい発見がたくさん…しかし、それよりも驚いたのがチーズの美味しさです。なかでもホームステイ先で経験した、近所のパン屋で手に入る焼き加減控えめのバゲット、水と同程度の値段で売られている赤ワイン、そしてカマンベール・ド・ノルマンディというチーズの組み合わせに感動したのです。A.O.P.(最上位の品質カテゴリー)のカマンベール・ド・ノルマンディ以外は、ごく普通のパンとワインなのですから、まさにハンマーで頭を殴られたような衝撃でした。「一流の役者ばかり集めた芝居が、おもしろいとは限らない」と、ホームステイ先のお父さんがぽつりと語った言葉は、今も胸に突き刺さっています。このとき、はじめてチーズ、パン、ワインのペアリングに目覚めたのです。

フランスのホストファミリーと

4. クラスメイトの笑顔が見たい

帰国後、チーズプロフェッショナルの資格取得のため、アカデミー・デュ・ヴァンに入学。クラスメイトに美味しいパンとチーズの組み合わせを知ってもらいたいと、担任の加藤真美先生に「チーズに合うおすすめのパンを持ってきてペアリングを試したいのですが…」と提案しました。すぐに快諾いただき、カマンベール・ド・ノルマンディと持ち込んだバゲットをみなさんにおすそ分けして食べていただいたところ大評判。その後、毎回授業で試食するチーズに合わせてパンを選んで持ち込ませもらうようになりました。クラスメイトが「チーズとパンを合わせるとこんなに味が変わるんですね」と喜ぶ顔を見るのが毎回嬉しかったです。このことがきっかけとなり、後に講師として「チーズとパンのマリアージュ」の講座を担当するきっかけになるとは夢にも思っていませんでした。

アカデミー・デュ・ヴァンのクラスメイトと

5. チーズマン誕生!

交通事故に遭った年、チーズプロフェッショナル協会が主催となり大規模イベント「チーズ・パン博」が開かれることとなったのです。そのころには、「チーズとパンの両方に精通している人といえば清水さん」と認知されるようになっていたおかげで、協会から「イベントを盛り上げる面白いアイディアが欲しい」という企画協力の依頼を受けたのです。

当時は、筋トレにはまり「ベストボディジャパン」というバランスの取れた肉体美と見た目の美しさを競うコンテストにも挑戦していました。そんなところへ、子供のころに憧れていたウルトラマンやスーパーマンのような、チーズのヒーロー戦士になったら面白そうだな、アイディアが舞い降りてきたのです。

『ウルトラマン』に出てくるハヤタ隊員は、初回で死んでしまう設定です。しかし、ウルトラマンによって復活させられる…そのストーリーも思い出したのです。交通事故に遭い、生死をさまようような辛い体験をした自分とちょうど重なるようで、「わたしもチーズマンを通じて復活したい」という思いもあったのかもしれません。

6. 終わりのない旅

いつかは、チーズマンのコスチュームで、自転車でフランス一周しながら、各地のチーズ、パン、ワインとそれらにかかわる人々とふれあう旅がしたいです。これを実現するには、仕事、時間、語学力、お金といったいくつものハードルをクリアしなければなりません。まだまだ実現できる目途はたっていませんが、生かされた奇跡に感謝していつか実現させたいと思います。

プロフィール

清水啓介(しみずけいすけ)

  • 星座:やぎ座
  • 血液型:AB型
  • ワイン以外の趣味:自転車・チーズ
  • 好きな食べ物:チーズ以外ならフォアグラ
  • もし生まれ変わったら何になりたい?:地球が抱えている問題を解決できる人になりたい。
  • 酔っぱらったらどうなる?:寝てしまう。
  • 人生を変えたパン(1個だけで)30年前に食べたビゴの店のバゲット
エッフェル塔とチーズマン

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世界的に高名なワイン評論家スティーヴン・スパリュアはパリで1972年にワインスクールを立ち上げました。そのスタイルを受け継ぎ、1987年、日本初のワインスクールとしてアカデミー・デュ・ヴァンが開校しました。

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