ポートワインと聞くと、赤玉ポートワイン(現:赤玉スイートワイン)を思い浮かべるかもしれません。
たしかにサントリーの販売する赤玉ポートワインは日本で一世を風靡したワインですので、頭に浮かぶのも不思議ではありません。
しかし、ここに紹介するポルトガル産のポートワインはそれとは異なるものです。
こちらのポートワインも赤玉ポートワインと同様に、名高いワインです。
【目次】
- ルビー・ポート(Ruby Port)
- ホワイト・ポート(White Port)
- トウニー・ポート(Tawny)
- ヴィンテージ・ポート(Vintage Port)
- レイト・ボトルド・ヴィンテージ・ポート(Late Bottled Vintage Port)
では、上記の目次に沿ってポートワインを説明します。
ポートワインとは
ポートワインとは、ポルトガル北部にあるアルト・ドウロ地区で造られる酒精強化ワインの一種です。
ドウロ地区で栽培された黒ブドウと白ブドウを使って造られたワインは、アルト・ドウロ地区の西側にあるポルト(英語名はポート)という港から出荷されます。
出荷されるその港の名前が由来となって、ポートワイン(ポルトワイン)と呼ばれるようになりました。
ルビー色や琥珀色をしているポートワイン。
その外見が宝石のようなために「ポルトガルの宝石」とも称されています。
基本的にはポートワインと言えば、赤の甘口ワインです。
ただ、流通している量こそ少ないですが、白やロゼ、辛口タイプのものもあります。
酒精強化ワインとは
酒精強化ワインというのはフォーティファイドワインとも言い、ワインを醸造する際にブランデーを加えて、アルコール度数をおおよそ15~22度になるまで高めたワインのことです。
ポートワインの場合はアルコール度数が高く、一部を除いて19~22度までの間と決められています。
そんなポートワインは、シェリー酒やマデイラワインと合わせて世界三大酒精強化ワインとされています。
あるいはそこにマルサラワインを加えて世界四大酒精強化ワインと呼ばれています。
また、酒精強化ワインの多くは複数の年のワインをブレンドすることが多く、収穫年表示されないことがほとんどです。
しかし、後に紹介するヴィンテージ・ポートのような一部の高級品は、単一の年のブドウを使って造るため、収穫年が表示されます。
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ポートワインの醸造・熟成方法とは
ポートワインの生産では、アルコール発酵の途中でブランデーを添加することによって発酵を停止させます。
発酵を止める際には、77%のアルコール濃度のブランデーをワイン4に対して1の割合で加えます。
そうしてアルコール度数を19~22度にまで引き上げています。
発酵中には糖分をアルコールに変化させるという特徴がありますので、発酵を止めたワインには糖分が残ります。
そのため、ポートワインには甘口ワインが基本となるというわけです。
また、本来発酵中には、ブドウの果皮や種子から色素やタンニン(渋味成分)といった成分を抽出することができます。
しかし、ポートワインの場合には発酵を途中で止めてしまうので、効率的に成分抽出を行う必要があります。
そこで、古くはコルタと呼ばれる作業が行われていました。
膝丈ほどの高さの発酵タンクにブドウを入れ、10人前後の人が素足で踏みつぶすことで抽出を促進していました。
ただ、現在ではコルタは行われず、概ね機械化されています。
ポートワインに使われるブドウ品種にはどんなものがある?
ポートワインに使われるブドウ品種は白と黒のどちらもありますし、その種類は数多いです。
その中でもポートワインのブドウ品種として有名なのが以下の5つです。
<ポートワイン造りに使われるブドウ品種>
- トウリガ・ナショナル(Touriga Nacional)
- ティンタ・バロッカ(Tinta Barroca)
- トウリガ・フランカ(Touriga Franca)
- ティンタ・ロリス(Tinta Roriz)
- ティント・カン(Tinto Cão)
ポートワインの歴史とは
ポルトガルで造られるポートワイン。
その歴史にはイギリスが大きく影響してくるのです。
17世紀末にイギリスはフランスと戦争をしていました。
フランスワインはイギリス国内で需要が高かったのですが、フランスが戦争の相手国ということもあり、そのフランスワインの輸入を禁止しました。
イギリスのワイン商たちはフランスワインに代わるものを探していたのです。
そこで、注目されたのがポートワインです。
アルコール発酵中のワインにブランデーを添加して発酵を止め、甘口に仕立てるという製造法も、その頃確立されています。
高アルコールにすることで、船でイギリスまで運んでも品質は衰えません。
イギリス国内ではその甘口のワインが評判になりました。
その後もイギリス人によってポートワインは愛され続け、今に至っても最大の市場はイギリスのままだと言います。
ポートワインの種類とは
ポートワインには、いくつかの種類があります。
<ポートワインの種類>
まずは「ルビー・ポート」と「ホワイト・ポート」から、順に見ていきましょう。
ルビー・ポート(Ruby Port)
ルビー・ポート(Ruby Port)は、3年程度の樽熟成で出荷される赤ワインのスタンダード品です。
熟成期間は、比較的に短期間です。
ホワイト・ポート(White Port)
こちらは3~5年熟成を経て出荷される白ワインのスタンダード品です。
比較的安価なルビー・ポートやホワイト・ポート以外にも、高級品としてスペシャルタイプというものが存在します。
それには「トウニー・ポート」と「ヴィンテージ・ポート」、「レイト・ボトルド・ヴィンテージ・ポート」があります。
トウニー・ポート(Tawny)
スペシャルタイプの中にも種類があり、ホワイト・ポートとルビー・ポートをブレンドさせたものと、ルビー・ポートを10~20年熟成させたものがあります。
トウニー・ポートは、10~40年にも渡って長期間の樽熟成を行い、琥珀色になってから瓶詰されるタイプです。
こうした長い熟成があるため、スペシャルタイプとして存在しているのですね。
ヴィンテージ・ポート(Vintage Port)
スペシャルタイプの中で最も高級なのがこのタイプ。
優れた年のブドウだけを用いて造られる甘口の赤ワインです。
単一の年に収穫されたブドウを使っているため、収穫年の表示がなされています。
特徴としては2つあります。
1つは、基本的に20年程度の樽熟成がされるということです。
長期間の熟成を経た貴重なワインとなっています。
もう1つは、瓶詰の際に濾過がされないということ。
飲む頃には大量の澱がボトルの中に沈殿しています。飲む際には必ずデキャンタージュしてください。
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レイト・ボトルド・ヴィンテージ・ポート(Late Bottled Vintage Port)
ヴィンテージ・ポートのブドウに次いで優れた品質のブドウを使って造られるワインがこちらのレイト・ボトルド・ヴィンテージ・ポートです。
出荷後すぐに飲めるようにするために、4~6年ほどの長めの樽熟成を行ってから瓶詰したものです。
ヴィンテージ・ポート同様に、単一の年に収穫されたブドウが使われているため、週各年が表示されています。
また、レイト・ボトルド・ヴィンテージ・ポートは濾過してから瓶詰されているため、大量に澱が発生するということは基本的にありません。
そのため、デキャンタージュなしで気軽に楽しめる高級ポートワインとして販売されています。
ポートワインとよく合う組み合わせとは
一般的に、辛口で酸味のあるものは食前酒として飲まれることが多く、甘口でフルーティーな香りのものは食後酒として飲まれています。
食事と合わせるのであれば、クセのあるブルーチーズなどが合います。
食後酒として飲む甘口タイプのものであれば、デザートと合わせるのもよいでしょう。
チョコレートとの相性も抜群です。
また、ポートワインには葉巻を合わせるという楽しみ方もあります。
ワインは香りも楽しむものなので、タバコなど臭いの強いものは避けるべきと考えられています。
しかし、葉巻も香りを楽しむものであるからなのか、葉巻と合わせることもあります。
その際は、濃厚な香りを楽しめるトウニー・ポートと合わせるとよいでしょう。
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まとめ
以上、ポートワインについてご紹介しました。
まだ味わったことがない方は損をしていると言っても過言ではありません。
その魅力的な味わいや香りは一度味わったら忘れることはできないでしょう。
一度試してみてはいかがでしょうか。