世界中のワイン産地で栽培・醸造の修業を積んだあと、日本産ワイン(日本ワイン+国産ワイン)の現場に立った筆者が直面した、日々の現実をさまざまな角度から切り取るコラム。現在独立して業界に忖度や遠慮がいらない立ち位置のため、書く前から光:影が1:9くらいのバランスになる気がしないでもない。第2回は耕作放棄地について。いざ書いてみたら、さしてひねくれた内容にもならず。新幹線の座席ポッケに入っている小冊子に掲載されていても、なんら違和感がないほどである。
文/國吉 一平
【目次】
1. 耕作放棄地、実体と実態
2. あるがままこそ自然?
3. シャッター商店街ヲ思フ
4. ふるさとのカタチ
1. 耕作放棄地、実体と実態
耕作放棄地とは一体何なのか。その定義をまずは紐解こう。一般に「耕作放棄地」というワードからイメージするものは、実は「荒廃農地」にあたり、農林水産省によると、現に耕作に供されておらず、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地を荒廃農地と呼ぶようだ。
一方の「耕作放棄地」とは、農林業センサスによる定義であり、平たくいえばこちらは、農家が栽培や作付けをする意志のない土地。つまりは辞めてから年が浅く、まだ荒廃してはいなくとも、耕作放棄地に該当する農地があることを意味している。
現在、耕作放棄地を含む土地を再整備し、新たな団地形成をする事業の恩恵を受けている身である。また、私のようなよそ者も、しばらく農作業に精を出している姿が認められると、方々から「この畑もやってくんないか」などと、お声がかかるようにもなったりする。
少し前、地域の認定農業者の集まりに顔を出した。座席にはA3の配布資料が置かれている。広げるとそれは、高齢者所有且つ後継者未定の畑を、赤く塗り潰した航空写真だった。いやはや、見事に一面真っ赤っ赤だ。加えれば、その日の出席者、つまり今、耕作放棄地の心配をしている連中も、すでに耕作放棄予備軍なのである。