江戸の台所として発展してきた深川で、地産地消の“江戸前ワイン”を目指す「深川ワイナリー東京」。地域の活性化も狙ったユニークなプロジェクトを続々と立ち上げながら、都市部に姉妹ワイナリーを次々とオープンさせ、今やアーバンワイナリーのアイコン的存在となった。そして今なお、ワクワクするような楽しいワイン造りに向かって、走り続けている。
文・写真/谷 宏美
【目次】
1.「深川ワイナリー東京」ってこんなところ
2.「醸造人」上野浩輔さんのワイン造り
-ナチュラルに造りたいからこまめなチェックが欠かせない
-料理に合わせやすいデラウェアが好き
3. 江戸前ワインを目指す取り組み その1:屋上畑で深川産ブドウを栽培
4. 江戸前ワインを目指す取り組み その2:産学連携の「海中熟成ワイン」
5. ワイナリーの1年
6. こんなワインがあります
7. ワイナリーDATA
1.「深川ワイナリー東京」ってこんなところ
東京湾のほど近く、江戸の世に料亭や屋台が立ち並び繁華街として栄えた深川。築地や豊洲の市場そばの料理屋には食通が集い、下町情緒が残る。この地にワイナリーができたのは2016年。日本各地の優れた栽培農家が育てたブドウを用い、この東京の下町で醸す「江戸前ワイン」を造り続けている。
晴海方面へ繋がる清澄通りから路地に入ると見える、「ワインマン」が描かれたオレンジ色のフラッグが目印。醸造スペースと熟成エリアを合わせて約70㎡、毎年10アイテム前後をリリースし、年平均約20,000本を生産。ワイナリーの裏手に回るとワインを購入できるショップがある(※こちらはワイナリーとガラス1枚で隔てられたテイスティンスペース&レストランとして、ワインを試飲したり料理を楽しむことができたのだが、取材時=2021年9月上旬は残念ながらクローズ)。
ワイナリーは予約制で見学が可能。産地での収穫やワイナリー内での仕込み作業に参加できたりするほか(※2021年度は多くのイベント規模を大幅に縮小)、ホテルや企業のリクエストにより、収穫・醸造の研修を行うことも。さらに日本ソムリエ協会認定資格試験のセミナーを開催するなど、ワインにまつわるさまざまな体験のために人が集うことのできる街のワイナリーとして、その門戸を開いている。