南北40キロの南東向きの斜面に、宝石のような珠玉の畑が並ぶコート・ドール。屈指のテロワールから類い稀なる銘酒が生み出される、今も昔も人々を魅了して止まない特別な産地です。この地を20年以上欠かすことなく訪れている奥山久美子が、コート・ドールを取り巻く昨今の社会情勢や注目の造り手の姿に焦点を当てながら、黄金の丘の魅力に迫ります。Vol.2は、自然な農法を取り入れながら、高品質なワイン造りを目指す、スター・ヴィニュロンたちのお話です。
文・写真/奥山久美子
【目次】
1.職人気質の生産者たちにみる、サステイナブルな動き。
2.著名なビオディナミ・コンサルタントの興味深い講義。
3.スター・ヴィニュロン①モレ・サン・ドゥニの最高峰シプリアン・アルロー。
4.スター・ヴィニュロン②マダム・ルロワの申し子、シャルル・ラショー。
1. 職人気質の生産者たちにみる、サステイナブルな動き。
2020年以降、地球環境や地域のことを考慮してつくられた健康的で安全な(エシカル)ワインや食品が、世界的に急増しています。フランス農務省の有機農産物認証機関によると、世界のブドウ畑のうち有機栽培が占める割合は6.1%。その87%はヨーロッパであり、EUの有機ブドウ畑の中でもフランスが急速に増加中です。また、世界中でビオワイン消費が増え続けている中で、77%を占めるヨーロッパ。現在ドイツが1位フランスは2位ですが、2023年にはドイツを抜いてビオワイン市場の5分の1を占めるであろうと予測されています。
ブルゴーニュでも高品質なワイン造りを目指す職人気質の生産者は、テロワールをワインを介して表現するために有機栽培、ビオデイナミ、自然農法などでブドウを健康的に育てる努力をしています。しかしながら、卓越したドメーヌの中でも有機認証を取得しないこともある。日照量が豊かで乾燥している地域では順調に有機認証が増加しているが、ブルゴーニュの場合申請者が多いのは2009年と2015年のような乾燥した猛暑の年でした。寒冷地であるブルゴーニュの気候条件から有機栽培の実践は苦労が多いようです。
今年のような壊滅的な遅霜被害や夏の多雨による病害などが広がると化学農薬を少しは使用しなければ生産量は減少するばかり。温暖化による気候変動によって、暑さ寒さや自然の驚異が激しくなっています。
有機栽培には多大な時間と労力を必要としますが、ビオデイナミを実践するためにはさらに金銭的負担も加わります。それでも素晴らしいワインを造るために、志の高い造り手は弛まない努力をしています。
また、歴史的な大ネゴシアンであり大ドメーヌのルイ・ジャドは、2014年にフランス農務省が推奨する、畑の生物の多様性や肥料、病害対策などブドウ栽培の環境に高度に配慮することが求められる認証 HVE(Haute Valeur Environnementale)の最高位のレベル3を、2019年に取得し、ブルゴーニュワインに貢献しています。