トップソムリエ藤巻 暁氏のプライベートセラー潜入記 Vol.4/いま、目をつけておくべきはスイスのワイン

藤巻 暁ソムリエはスイスワインがことのほかお好き。そこで今回はスイスワインを提案。「ではスイスやりましょう。確かに僕スイスワイン好きですけど、でもほかにもフランスやイタリア各地、カリフォルニアやオーストラリアや日本も、好きな産地いっぱいあるんですけどね(失笑)」……。要は筆者が好きなのだ、スイスが。ならば藤巻氏に教えてほしい、スイスワインの底力。役得、悪しからず。

文・写真/谷 宏美


【目次】

1. 日本におけるスイスワイン事情
2. それでもスイスワインが好きなわけ
3. スイスワインの生産地域をレクチャー
4. 世界に知られる銘醸スイスワイン
5. 地下セラーで発掘したスイスワインたち10選
6. 今回のお宝ワイン/ジャン-ルネ・ジェルマニエ プティット・アルヴァン 1998


1 日本におけるスイスワイン事情

ソムリエ教本のスイスに関する記述はここ数年で増え、呼称資格認定試験にトライしている読者は知識もあるだろう。だがまだ一般的には「スイスってワイン造ってるの?」という人が大半。スイスワインを目にしたことがない人も多いだろうし、プロでさえスイスの原産地呼称や品種を比較試飲までしている人は多くない。藤巻氏いわく、理由は3つ。

☑️その1 輸出量が極小
国民ひとりあたりのワイン消費量は世界第4位と、結構な飲んべえ国スイス。自国生産では全然足りず消費量の6割を輸入に頼っている。年間生産量約980,000hlのうち、輸出に回されるのは2%足らず。お目にかかれないはずである。

☑️その2 蔵出し価格が高い
山岳地域が多いという国土事情や永世中立国としての信頼度により外資が流入する国家事情などにより、世界でも群を抜いて物価高。他国から見れば生産コストそのものが高い上に、圃場のほぼ全域が山あいの斜面に位置し、機械化は不可能なためさらなるコスト高に。スイスワインは安く造れない。

☑️その3 流通コストが割高
ワイン自体の価格が高い理由のひとつでもあるが、周囲をアルプスやジュラの山脈に囲まれた内陸国であるスイスは輸送費がかさむ。船賃に加えさまざまなコストが上乗せされるため、輸入すると結構な金額になってしまう。

以上の理由から、スイスワインは他の産地と比較して割高である上に流通量が圧倒的に少ない。オン、オフトレードともに弱いのである。

 

2. それでもスイスワインが好きなわけ

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