カルメネールとは? ~いま花開くポテンシャル!ボルドー原産「カルメネール」の特徴・産地を徹底解説

カルメネーレ

ボルドー原産の黒ブドウ品種カルメネール。チリではメルロと混同されていたことでご存じの方も多いと思いますが、普段あまり目を向ける機会は少ないのではないでしょうか?原産地のボルドーでも絶滅寸前になるなど不遇な歴史を歩んできた品種ですが、今ようやくポテンシャルが花開きつつあります。今回は、カルメネールに焦点をあて、その特徴から産地などを解説していきます。

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【目次】
1. ボルドーで消えたわけ カルメネールの生育特性
2. 「深紅色」に由来 カルメネールの香りと味わいの特徴
3. 実は中国でも栽培 カルメネールの主な産地
 ● チリ
 ● フランス
 ● 中国
 ● イタリア
4. カルメネールのおすすめペアリング
5. カルメネールのまとめ


1. ボルドーで消えたわけ カルメネールの生育特性

現在はチリでの栽培がほとんどですが、原産地は実はボルドー。カベルネ・フランとグロ・カベルネという品種の自然交配で生まれた品種です。カベルネ・ソーヴィニヨン(カベルネ・フラン×ソーヴィニヨン・ブラン)やメルロ(カベルネ・フラン×マドレーヌ・ノワール・デ・シャラント)とは片親が違う兄弟。これまでカベルネ品種やメルロと混同されてきたのも納得ですね。

18世紀にはボルドーのメドック地方で広く栽培されており、片親であるカベルネ・フランとともに「収量は低いが良いワインができる」と評判を確立してきました。しかし、受粉の時期が低温になると花振るいを起こしやすいのに加え、熟期が極めて遅く、収量がふるわないことからボルドーで生産量が低下。さらに19世紀後半にヨーロッパで流行したフィロキセラ禍により、カルメネールの生産はほぼ壊滅してしまいました。現在は、ボルドーの歴史的な品種が見直され、栽培面積は少しずつ増えています。

カルメネールの主産地であるチリには、19世紀半ばにカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどほかのボルドー品種と一緒に持ち込まれました。ただし長い間メルロ種と混同され、同じ畑で混植されていたのです。それもそのはず、葡萄の外観もメルロとよく似ており、チリの造り手たちは「ちょっと変わったメルロのクローン」くらいに思っていたそう。1994年にようやくDNA検査により別品種と判明。現在は植え分けがなされ、カルメネールの栽培方法への理解も進んでいます。

メルロより熟すのが2~3週間遅い晩熟品種のカルメネールは、ブドウを植える場所の見極めが重要。しっかりブドウが熟す日照量の多い畑に植える必要があります。未熟だと収穫するとメトキシピラジン由来のピーマンやトマトのような青臭さや荒々しいタンニンが残ってしまいます。成育期間中はあまり水分を好まないため、地中海性気候で生育期に雨の少ないチリに根付いたのも納得です。ただし温暖すぎてもダメ。糖度(=アルコール)が上がりすぎ酸も落ち、ワインのバランスが崩れてしまいます。なかなか難しい品種なのです。

2. 「深紅色」に由来 カルメネールの香りと味わいの特徴

語源はCarmin(深紅色の)から来ている通り、秋になると葉が紅く色づくカルメネール。ワインの色も非常に濃く、カルメネールの赤ワインは、深い色調と凝縮感のあるフルボディが特徴です。未熟なブドウだと青臭さが出ますが、完熟したものはブラックベリーやプラムなどの黒系果実に、ハーブやスパイス、樽熟成によりローストコーヒーやチョコレートの香り、グリルしたお肉など複雑なアロマが楽しめます。カベルネ・ソーヴィニヨンと比べると渋みも酸味も穏やかでマイルドな口当たりなので、赤ワインの渋みが苦手な人にもおすすめです。同郷のボルドー品種とブレンドされることも多く、ボルドーブレンドに華やかなアロマとジューシーさをプラスしてくれます。

3. 実は中国でも栽培 カルメネールの主な産地

チリ

ボルドーから持ち出され、温暖で乾燥したチリに根付いたものの、長らくメルロと混同されていたカルメネール。とはいえ現地の人も、「早く熟すメルロ」と「遅く熟すメルロ」があるとは認識していました。1994年、ブドウ学者のジャン・ミッシェル・ブルシクオ氏により、「遅く熟すメルロ」はボルドー品種のカルメネールであると判明。当時カルメンの醸造家だったアルバロ・エスピノサ氏がはじめてカルメネール単体からワインを造ったのが、「グラン・ヴィデュール1994」。まだカルメネールは一品種として認められておらず、カルメネールの名をつけることができなかったのです。チリで公式に別品種として認められ、ラベル表示できるようになったのが1996年。初めてカルメネールをラベルに冠し英国へ輸出したパイオニアのデ・マルティノ社などは、今も単一畑のワイン造りに取り組んでいます。その後、1990年代に国際品種の人気が高まると同時に畑の植え替えが進んだこともあり、チリ全土でメルロとカルメネールも植え分けが進みました。

一方で、同じ畑に混植された熟期の違う二種類の「メルロ」を同時に収穫することで、熟した果実味に、トマトやパプリカの風味と表現される個性が加わり、チリの「メルロ」の独自の魅力を生み出していたという説も。カルメネールを分離し、熟したメルロのみから造ったメルロはジャムのような香味のワインが多くなったとも言われています。

主要産地は、アコンカグア・ヴァレーマイポ・ヴァレーなどの暖かい産地。特にカチャポアル・ヴァレーのペウモ、コルチャグアのロス・リンゲスやアパルタ、アコンカグアのサン・フェリペなどのブドウ畑は、チリを代表する質の高いカルメネールの産地として注目されています。コンチャ・イ・トロエラスリスモンテスなどチリを代表するワイナリーもカルメネールから素晴らしいワインを造っているほか、チリのカルトワイン「アルマヴィーヴァ」にも毎年20%程度のカルメネネールがブレンドに一役買っています。

フランス

2008年の栽培面積は21haと、ボルドーでは絶滅寸前だったカルメネール。カルメネールを比較的多く残しているメゾンとしては、ポイヤックにある5級シャトーのシャトー・クレール・ミロンが知られており、0.4haと全栽培面積の1%がカルメネールです。ほかには、コート・ド・カスティヤンのクロ・ルイには、フィロキセラ以前の樹齢130年超のカルメネールが現存しています。

最近のトレンドとしては、ボルドーでマイナー品種となっているカルメネールを復活させる動きがあること。温暖化の影響や栽培技術の向上等もあり、かつては青臭さが前面に出ていたカルメネールをうまく扱えるようになったことも一因でしょう。さらに晩熟なカルメネールは糖度が上がりにくくアルコールが低く抑えられるため、温暖化によりアルコール度数が上がりがちな昨今、注目する生産者が増えているようです。マルゴーの名門シャトー・ブラーヌ・カントナックでは2007年に0.5haを植樹し、2011年からグランヴァンにカルメネールをブレンドしたことが話題になりました。また、グザビエ・ミラード社のように、ボルドーのカルメネール100%のワインも出てきています。

カルメネールだけでなく、プティ・ヴェルドやマルベックなどボルドーの他のマイナー品種を増やそうという動きが広がっており、この3品種の栽培面積は20年で倍増しています。

中国

国内では「カベルネ・ガーニッシュ」という名前で親しまれ、意外にも、カルメネールが多く栽培されているのが中国です。ただしカベルネ・ガーニッシュ(gernischt)の由来は、「挿し木の混合物」を表すドイツ語のCabernet Gemischtに由来すると考えられており、カベルネ・ガーニッシュが全てカルメネールであるかは定かではありません。カベルネ・フランが混ざっているという研究もあります。カベルネ・ガーニッシュの主要産地は、中国で2番目に大きなワイン産地で最も評価の高いニンシア(寧夏)回族自地区。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロと並んで広く栽培されています。1000m級の標高の高い産地では日射量が増加し、多くのアントシアニンを持つ濃い色調のワインになります。有名生産者としては、チャンユー(張裕)グループや長城ワイン(グレイト・ウォール・ワイン)が知られています。

イタリア

フリウリやヴェネツィア・ジューリア州などイタリア北部や北東部でもカルメネールは少量栽培されています。2000年から2010年の国勢調査の間に、イタリアにおけるカルメネールの公式総作付面積は45haから1,000haに増加しましたが、これは実は、カベルネ・フランと考えられていたブドウがカルメネールと判明したため。もう、どれだけ混同されれば気がすむのでしょうか…。生産者によってはいまだにカベルネ・フランとラベル表示される例も多いようです。

多くはブレンドに使用されますが、トレンティーノ州のサン・レオナルドやロンバルディア州のカデル・ボスコなどは、カルメネール単体から優れたワインを造っています。

4. カルメネールのおすすめペアリング

カルメネールに合うラムチョップの香草焼き

しっかりとコクのあるカルメネールのワインは、パンチの強いお肉料理によく合います。スパイスやユーカリなどのハーブの香りやスパイシーさを合わせ持つワインも多いので、ハーブで味付けしたお肉には当然よく合います。塩コショウ、ブラックペッパーでシンプルにグリルした牛肉ステーキや香草のきいたラムなどがおすすめです。また、まろやかで柔らかい口当たりのカルメネールは、ハンバーグや、ローズマリーなどハーブで煮込んだビーフシチューなど、口の中でほろほろと解ける質感のお肉料理にもぴったり。ひき肉とトマトのミートソースパスタやペッパーの効いたペンネアラビアータなど、パスタと合わせてもよさそうです!

5. カルメネールのまとめ

コアなワイン好きでない限り、なかなか飲む機会も少ない方も多いと思いますが、カルメネールはブレンドでも単体でも素晴らしいワインを造ることができるポテンシャルの高い品種です。百聞は一飲にしかず。スーパーやコンビニで売っている動物シリーズなど手に入りやすいものもあるので、ぜひ試してみて下さいね!

カルメネーレ

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