奥深いイタリアワインの世界。第2回は、覚えておくべき主要産地と有名ワインをご紹介します。多種多様で、好みのワインが必ず見つかるイタリア。レストランやワインショップでイタリアワインがわかるようになると、ワインの世界がさらに楽しくなりますよ!
【目次】
1. 覚えておくべき主要産地と有名ワイン
1.1 北部
● ピエモンテ:王(バローロ)と女王(バルバレスコ)率いる高貴なワイン州
● フリウリ・ヴェネツィア・ジュ―リア州:今はやりのオレンジワインの聖地
● ヴェネト:イタリア一の生産量!ソアヴェとヴァルポリチェッラ、陰干しワインも
● ロンバルディア:ファッショナブルな泡ならフランチャコルタ
1.2 中部
● エミリア・ロマーニャ:赤の発泡スパークリング「ランブルスコ」
● トスカーナ:二大王者はキャンティとブルネッロ、カジュアルから高級ワインまで揃う万能州
1.3 南部
● プーリア:ジンファンデルのルーツで脚光を浴びたかかとの州
● カンパーニャ:古代からワイン造りが盛んな南部イタリアの要
● シチリア:土着品種のオンパレード、ピノ・ノワールに似たワインも
2. 当たり年・飲んでみたいヴィンテージ
3. まとめ
1. 覚えておくべき主要産地と有名ワイン
1.1 北部
ピエモンテ:王(バローロ)と女王(バルバレスコ)率いる高貴なワイン州
綺羅星のごとく銘醸ワインが存在するのがピエモンテ州。誰もが憧れる高級ワインも多く、まさにノーブルなイタリアの風を感じられるのがピエモンテです。筆頭格はワインの王バローロと、女王バルバレスコ。ネッビオーロから造られるワインは、長期熟成のポテンシャルを持ち、その偉大な風格のある味わいでワインファンを虜にしています。熟成すると発達してくるトリュフや皮革などの、あの高貴な香り!ピエモンテにあるアルバは白トリュフの名産地ですから、ピエモンテのワインとトリュフは抜群の相性です。「バローロやバルバレスコはお値段も高いし、普段飲みにはちょっと…」という人におすすめなのが、バルベーラ。ネッビオーロがあまりに有名ですが、実はピエモンテ州で最も栽培されている品種です。若いうちから楽しめるチャーミングなワインも多く、普段飲みにもぴったりです!
フリウリ・ヴェネツィア・ジュ―リア州:今はやりのオレンジワインの聖地
泡白ロゼ赤すべてが存在するイタリア。「え?オレンジワインは?」というわがままな声にもイタリアは応えてくれます。オレンジワインとは、白ブドウを赤ワインのように、果皮を醸して発酵させて造ったワイン。最近のナチュラルワインブームで脚光を浴びたジャンルですが、ワインの歴史が古く昔はアンフォラでワインを熟成していたイタリアにとって、アンフォラワインやオレンジワインなんてお茶の子さいさい。その聖地が北イタリアのスロヴェニア寄りの産地、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州です。ヨスコ・グラヴナーやラディコンといったカリスマ生産者たちが、大地のエネルギーを感じるような深遠な味わいのオレンジワインで世界中のファンを魅了しています。
ヴェネト:イタリア一の生産量!ソアヴェとヴァルポリチェッラ、陰干しワインも
恋人達の街ヴェネツィアのあるヴェネト州。なんといっても有名なのがソアヴェです。基本はさっぱりとした白ワインで、ガルガーネガという不思議な名前の品種から造られています。イタリアでは赤のキャンティと並んで生産地も広く、過去には平地で大量生産したブドウから水みたいなワインが造られていた時代もありました。その「ソアヴェ=安ワイン」というマイナスイメージを払拭しようと生産者の努力のおかげで、今では全体的に質は上がっています。スタイルも価格もさまざまで、最近は樽熟成した飲みごたえのあるソアヴェなどもあり面白い産地です。
白がソアヴェなら赤はヴァルポリチェッラが有名なヴェネト州。特に世界的人気を誇るのがアマローネ(アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ)。陰干しして糖度を高めたブドウから造られる凝縮感のある赤ワインで、アルコール度数は14度以上とパンチ力があります。やや甘みのあるものもあり、ドライフルーツやチョコレートなどの芳醇な香りと滑らかな口当たりがなんとも甘美なワインです。
アマローネの片鱗を感じられるコスパワインとしては、ヴァルポリチェッラ・リパッソを覚えておくとよいでしょう。リパッソはrepass、発酵終了間際のアマローネの果皮を分離させ、ヴァルポリチェッラ・ワインに加えることで、ワインにアマローネの風味と強さをプラスしたワインです。価格もアマローネに比べるとかなりリーズナブルで、おすすめです!
ロンバルディア:ファッショナブルな泡ならフランチャコルタ
華やかな北部にさらに花を添えるのが、泡、泡、泡!イタリア随一の高級スパークリング、フランチャコルタです。瓶内二次発酵から造られるビロードのような泡が、そのおしゃれなイメージにぴったりのフランチャコルタ。ミラノのおひざ元で発展してきただけあり、ファッショセレブ御用達の高級感あるスパークリングワインなのです。ボトルもスタイリッシュなものが多いので、感度の高いワイン好きへのプレゼントに選ぶと喜ばれるでしょう。
1.2 中部
エミリア・ロマーニャ:赤の発泡スパークリング「ランブルスコ」
さてスパークリングといったら、赤い泡についても語らないわけにはいきません。世界一有名な赤い色をしたスパークリングといえば、ランブルスコ。エミリア・ロマーニャ州の名物ワインです。1970~80年代にアメリカで大人気を博し、大人のコーラとして愛飲されていました。甘口も辛口もあり、辛口のランブルスコなどは、同じくエミリア・ロマーニャ州の名物である生ハムやプロシュートともよく合います。ぜひお試しあれ。
トスカーナ:二大王者はキャンティとブルネッロ、カジュアルから高級ワインまで揃う万能州
ようやく来ました、イタリア二台巨頭のブドウのサンジョヴェーゼのふるさと、トスカーナ。その代表的な赤ワインが、キャンティ。麻布のイタ飯屋の看板名になるくらい有名なワインです。サンジョヴェーゼを主体に造られ、生産者によっては国際品種をブレンドすることも。最近は土着品種が見直されていることから、サンジョヴェーゼの割合を高める生産者が増えているようです。ソアヴェ同様、生産エリアが広いだけにスタイルもさまざまですが、ネッビオーロに比べると親しみやすいワインになるサンジョヴェーゼ。若いうちから楽しめるものも多く、それが万人愛されるゆえんともいえるかもしれません。
トスカーナの高級ワインが、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ。同じくサンジョヴェーゼですが、ブレンドもできるキャンティと違ってサンジョヴェーゼ100%であることが大きな違いです。熟成期間が長いのが特徴で、できあがったワインも長期熟成のポテンシャルを持つしっかりとしたワインになります。ブルネッロという舌を転がすような名前も美しいですよね。高級ワインのマーケティングで成功しているので、プレゼントにも喜ばれるでしょう。
そしてトスカーナの沿岸部は、前述したとおり型破りのワイン造りでイタリアワインルネッサンスをけん引した「スーパー・タスカン」の産地でもあります。語りつくせないトスカーナ州。もっと知りたい方は、こちらもご覧ください。
1.3 南部
プーリア:ジンファンデルのルーツで脚光を浴びたかかとの州
イタリア南部にあるブーツのかかと、プーリア州。気候も温暖でイタリア一平地が多いプーリア州は長らくバルクワインの産地でした。平地=機械化できる=大量生産というのは世界共通の図式ですが、プーリアでもその図式がまかり通ってきたのです。ですが、バルクワイン需要が激減した80年代以降は品質向上が目覚ましく、これからが楽しみな産地です。他州同様土着品種のオンパレードで、特に有名なのがプリミティーヴォ。ジンファンデルと同じ品種です。アメリカのジンファンデルの名声にあやかり、逆輸入的にプリミティーヴォにも光が当たるようになりました。ジンファンデルについてはこちらで詳しく解説しています。
カンパーニャ:古代からワイン造りが盛んな南部イタリアの要
ナポリのあるカンパーニャ州は、南部イタリアの要。古代から銘酒の産地として栄え、ギリシャ人にも絶賛された「ファレルヌム」というワインもカンパーニャ産ワインでした。グレコやフィアーノといった土着品種の白ワインも有名ですが、なんといっても偉大な存在は、アリアニコから造られる赤ワイン、タウラジ。「南のバローロ」と称されることも多く、豊かな果実味と堅牢なタンニン、その長期熟成のポテンシャルで圧倒的な存在感を放っています。
シチリア:土着品種のオンパレード、ピノ・ノワールに似たワインも
イタリア最南端にして最大の州シチリア。プーリアと並んでバルクワインの産地でしたが、今では高品質化が進んでいます。品種としては白のインツォリア、カッリカンテ、グリッロ、黒ブドウのネロダ―ヴォラ、ネレッロ・マスカレーゼなどが有名で、安くて美味しいワインの宝庫です。火山大国イタリアにはあちこち火山性土壌が分布していますが、特に有名なのがエトナ山周辺のエリア。ネレッロ・マスカレーゼから造られるエトナの赤ワインは、ピノ・ノワールに似たエレガントさで、ファンを集めています。
2. 当たり年・飲んでみたいヴィンテージ
イタリアと一口にいっても気候が違うため一般化するのが難しいのですが、一般的に長熟が期待されるピエモンテ(バローロ・バルバレスコ)とトスカーナの当たり年は以下のとおり。
トスカーナ
2016年、2010年、2006年、1997年
ピエモンテ
2016年、2010年、2007年、2004年、2001年、2000年、1996年、1990年、1989年
※ヴィンテージチャートはメーカー等が独自に発表したものであるため、各社違いがあります。
熟成したイタリアワインは、キノコやなめし皮、スパイスなどの香りを呈し、とても香り高く優美です。その年月を経たいぶし銀のような味わいは、得も言われぬ感動を与えてくれます。
3. まとめ
一つの国のように独立した各州が寄り集まったイタリアは、一言では言い表せないほど多様で奥深いワイン産地です。まずはこの記事を繰り返し読み込み、各州の品種や有名ワインを押さえておくと、そこから芋づる式にイタリアワインの世界が広がっていくはず。ワインショップやワインバーで、イタリアワインをぜひ選んでみて下さいね!