飛ぶ鳥を落とす勢いの人気を誇る日本ワイン。いまや佐賀県を除く46都道府県でワインが造られ、ワイナリー数も爆発的に増えています。甲州やマスカット・ベーリーAのワインが代表格ですが、実はその品種やスタイルは多種多様。
本記事を最後まで読めば、押さえるべき日本ワインの知識はばっちり。美味しい日本ワインに出会うチャンスが増えるはずです!
【目次】
1. 日本ワインの基本を押さえよう
● 甲州やマスカット・ベーリーAだけじゃない、多様性が魅力
● 「日本ワイン」と「国産ワイン」の違い
2. 140年の軌跡と日本ワインの今
3. そもそも向いていない?日本でのブドウ栽培
4. 日本ワインに使われる品種
5. 北から南まで、主な産地の特徴
6. 世界での日本ワインの評価
7. まとめ
1. 日本ワインの基本を押さえよう
甲州やマスカット・ベーリーAだけじゃない、多様性が魅力
まず「日本ワイン」にどんなイメージをお持ちでしょうか?「高い」「美味しくない」といったイメージを思い浮かべた方は要注意!損をしているかも…。今では栽培・醸造技術の向上や造り手の研鑽により日本ワインの評価はうなぎのぼり。品質は世界レベルです。さらに面白いのが、その多様性。甲州種の白ワインが最も有名ですが、実は白と赤の生産比率は約1:1。日本固有の品種から欧州系品種、スパークリングから白、ロゼ、オレンジ、赤、甘口ワインまで多種多様なワインが全国で造られています。フランスをはじめとするヨーロッパのようにワイン法が厳しくない日本では、比較的自由な発想でワイン造りが可能なのです。
日本ワインの特徴を一言で表すのは難しいですが、あえていうならば、主張しすぎない奥ゆかしさといえるかもしれません。海外のワインのようにパンチは強くないものの、繊細な風味を持つ日本ワインは、素材重視の日本食ともいわずもがなの相性です。みずみずしく体にしみ込むようなワインは、疲れた心と体をも優しく包み込んでくれます。ワインビギナーから海外のワインをさんざん飲みつくした愛好家まで、今その魅力に気づく人が増えているのです。
「日本ワイン」と「国産ワイン」の違い
「日本ワイン」を語るときに、はっきり区別する必要があるのが、「日本ワイン」か「国産ワイン」か。以前はこの二つの言葉が混同されて使われていましたが、2018年より両者がきちんと区別されるようになりました。ワインのラベル表示ルールが初めて法律で規定され、国内原料100%のものだけが「日本ワイン」と表記できるようになったことは、ワイン業界にとって大きな前進でした。
大事なポイントなので、きちんと整理しておきましょう。
まず、「日本ワイン」とは、「国産ブドウのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒」のこと。つまり、日本国内の原料ブドウ100%から造られた純粋なる日本産ワインです。
かたや国産ワイン(国内製造ワイン)といえば、「日本国内で製造された果実酒・甘味果実酒」のこと。つまり海外から輸入した原料を使っても、最終的に日本で製造すれば「国産ワイン」となるのです。国税庁の資料もとてもわかりやすいので、ぜひご覧ください。
●ワインラベルが語ること(国税庁)[PDF:3.65 MB]
ちなみに「国産ワイン」の生産量上位の件はどこかご存じですか?実は、ブドウの主要産地とはいいがたい神奈川県と栃木県が首位を争っています。これは、神奈川県にはメルシャン、栃木にはサントリーの国内製造ワイン工場があるからなんです。
さらに産地を保護するために導入されたのがワインのGI(地理的表示)制度です。この制度では、一定の基準を満たしたワインのみを「●●産ワイン」と名乗ることができます。現在は山梨、長野、北海道、山形、長野、大阪のワインがGIに認定されています。
すっかり一ジャンルとして定着した感のある日本ワインですが、どのくらいの規模感であるかは把握しておく必要があるでしょう。国内製造ワインの生産量91136kl(2020年度)のうち「日本ワイン」は18%(16499kl)と、いまだに8割超が輸入原料を含む国産ワインです。「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」といったスーパーやコンビニに並んでいる国産ワインのシェアがいかに大きいかがわかりますよね。いま盛り上がっているように見える「日本ワイン」は、海外輸入ワインも含めた全流通量で見るとたったの5%。まだまだ割合としては少ないことわかります。
2. 140年の軌跡と日本ワインの今
日本で本格的なワインが造られるようになったのは、ここ140年ほどのことです。
はじめて山梨県で本格的なワインが造られたのが1874年。白は甲州、赤は山ブドウのワインでした。1877年には現メルシャンの前身である初の民間ワイナリー「大日本山梨葡萄酒会社」が設立されます。折しも日本は明治初期。海外に倣った殖産興業政策の一環としてワイン造りが奨励され、全国にワイナリーが誕生しました。1893年には新潟に岩の原葡萄園ができます。創立者の川上善兵衛は、交配によりマスカット・ベーリーAやブラッククイーンなど日本独自の品種を生み出し、日本ワイン産業に貢献しました。ただし当時一般に飲まれていたのは、原料に砂糖や香料を加えた薬用酒がわりの「甘味ブドウ酒」。今のように辛口の食中酒が主流になったのは1970年代以降です。
ワインが日本人の生活に根付かなかった理由のひとつの文化の違いがあります。海外では古代から水代わりに飲まれてきたワインですが、日本には綺麗な水が豊富にあり、その水を利用した酒造り(日本酒や焼酎)が発達してきたのです。そのため日本人の味覚は酸味や渋みになれておらず、日本人の食生活にもワインは合いませんでした。
東京オリンピック(1964)や大阪万博(1970)の流れで起こった1972年の第一次ワインブームを皮切りにワイン消費量が急激に伸び始めたのが1970年代。1975年にはついに辛口ワインの消費量が甘口ワインを抜き、ワインも食の欧米化に伴い辛口へとシフト、食中酒として飲まれるようになります。
参考までに、これまで起こったワインブームを見てみましょう。
- 第1次ワインブーム (1972年) :本格テーブルワイン市場幕開け
- 第2次ワインブーム (1978年):1000円ワイン
- 第3次ワインブーム (1981年):地ワイン
- 第4次ワインブーム (1987~90年):ヌーヴォー &高級ワイン
- 第5次ワインブーム (1994年):低価格ワイン
- 第6次ワインブーム (1997~98年):赤ワイン
- 第7次ワインブーム(2012~):低価格輸入ワイン
現在も第7次ワインブームが続くとされる日本で、同時に起こっているのが2004年頃から続いている自然派ワインと日本ワイン人気です。特に2000年代以降には小規模ワイナリーの増加が目立ち、ワイナリーの数は200軒以上も増えています。今年の6月に奈良県にワイナリーができたことで、ワイナリーのない県は残すは佐賀のみ、全国413ワイナリーになりました。
実際、日本ワインの品質向上には目を瞠るものがあります。「お土産ワイン」を造っていた時代から栽培・醸造の技術は飛躍的に進歩しました。メルシャンなどの大手企業による情報公開、生産者同士の情報交換も日本ワイン全体の品質の底上げに寄与したほか、広い視野でワインを学んだ意欲的な造り手のたゆみない努力によるところが大きいでしょう。
3. そもそも向いていない?日本でのブドウ栽培
海外では紀元前から造られていたワイン。日本で歴史が浅い理由には、前述した文化の違いもありますが、日本の気候条件も大きく影響しています。ブドウは乾燥した痩せた土地に向いた植物。温暖・湿潤かつ肥沃な土壌な日本では育てるのが難しい植物です。なにせ春から秋にかけ、梅雨、台風、秋雨など雨がじゃんじゃん降ります。雨が降ると日照量も減りますし、湿気が高くなりかび病など病気のリスクも上がります。収穫間際に雨が降り、せっかく育ったブドウが台無しになることも…。生育期の雨は生産者にとって非常に頭の痛い問題なのです。
ブドウの病気を防ぐために生産者が口をそろえるのが、とにかく果実を水に当てないこと。フルーツゾーンに雨除けのビニールをかける、ブドウの一房一房に傘紙をかけるなど、生産者は様々な工夫を凝らしています。
そして蒸し蒸しした日本の気候に合わせて昔から発達してきたのが、棚栽培です。棚仕立てにすると通気性がよく湿気がこもりにくくなります。さらに棚仕立てでは1本から多くのブドウを成らせる仕立てのため、強くなりがちな樹勢を押さえる効果もあります。甲州やマスカット・ベーリーAなど昔から栽培されている品種は、今でも棚仕立てで栽培しているところがほとんどです。垣根仕立ては日本では難しいとされていましたが、1980年代以降、欧州系品種の栽培が増えたことにより現在は垣根式栽培も増えています。
また、日本の土壌は火山性土壌が主で肥沃です。雨が多い&土が肥沃=樹勢が強くなりやすく、生産者が頭を悩ませているのが、樹勢のコントロールです。例えば、海外と同じ垣根仕立てを日本に適用しようにも、同じ間隔でブドウを植えると樹勢が強くなりすぎてしまうことがあります。そのため造り手たちは、自分達の土地にあった栽培方法や仕立て方を試行錯誤しながら、よりよい品質のブドウを収穫するために工夫を凝らしています。よく、「日本ワインは海外のワインに比べて高い!」という声も聴きますが、それは放っておけばブドウが収穫できる土地とは違って膨大な人手が必要になるため。どうしてもコストが高くなってしまうのです。
4. 日本ワインに使われる品種
実は世界でも珍しいほど、日本ではさまざまな品種からワインが造られています。まずこれだけは覚えてほしい品種は、甲州とマスカット・ベーリーA、日本固有の品種です。日本で最も栽培面積が広い甲州は、コーカサス地方からシルクロードを通って日本に落ち着いた品種。香りや味わいの穏やかな、爽やかな辛口白ワインの原料になる品種です。こちらで詳しく解説しています。
マスカット・ベーリーAは、1927年に日本で交配された品種で、「ベーリー」と「マスカット・ハンブルグ」という品種の掛け合わせです。チャーミングないちごの香りを持つ黒ブドウで、ライト~ミディアムボディのフルーティーな赤ワインになります。以前は新酒の原料になることが多い品種でしたが、現在は、樽熟成をしたものなど、フランスのブルゴーニュワインを彷彿とさせるような素晴らしいワインが続々と出てきています。
ちなみに甲州もマスカット・ベーリーAも、生でも食べられる品種。ほかにもナイアガラやデラウェアなど食用品種からワインが造られています。特にデラウェアは辛口スパークリングの原料として近年人気が高まっており、その甘い香りと辛口のギャップが面白いワインを生み出しています。
そして異彩を放っているのが、日本に古くから自生し古事記にも登場する山ブドウ。ブドウの樹が雄雌に分かれており、受粉させる必要があるのが珍しい品種です。耐寒性に優れ北海道や岩手など寒い産地でも育ちますが、酸が非常に高いのが特徴です。山ブドウの交配品種としては山幸(山ブドウ×清見)や山ソーヴィニヨン(山ブドウ×カベルネ・ソーヴィニヨン)、小公子(交配不明)なども有名。山幸は甲州、マスカット・ベーリーAに続き2020年にOIVにも登録されました。
ヨーロッパ系品種で栽培面積が多いのは黒ブドウだとメルロ、カベルネ・ソーヴィ二ヨン、ツヴァイゲルト、白ブドウだとシャルドネ、ケルナー、ソーヴィニヨン・ブラン。特に日本に適しているとされるのがメルロで、その品質は世界レベル。そのほか栽培の難しいピノ・ノワールやシラーに挑戦する造り手や、ジョージア原産のサぺラヴィなど珍しい品種まで日本で植えられています。最近では湿潤な日本の気候でも耐病性のあるアルバリーニョやプティ・マンサンといった果皮が厚めの品種の人気も上がっています。
5. 北から南まで、主な産地の特徴
山梨
日本のワイン造りの屋台骨が日本最大のワイン産地、山梨県。約80ワイナリーがひしめき、日本ワインの1/3を生産しています。歴史の古いワイナリーも多く、日本ワイン発祥の地としての誇りを持ってワイン造りに取り組んでいます。特に甲府盆地東側の甲州市、山梨市、笛吹市は山梨のワイナリーの7割が集中する日本ワインのメッカ。西側の八ヶ岳を望む北斗市周辺も、ミエ・イケノやボーペイサージュなどカリスマ的な造り手が集まる注目エリアです。また、長野や北海道と比べるとワイナリーが1地域に密集しているため、ワイナリー巡りがしやすいのが山梨の魅力。「ワインツーリズムやまなし」や「塩ノ山ワインフェス」といったワインイベントも頻繁に開催されています。
品種としては甲州とマスカット・ベーリーAの生産が多く、甲州は日本全体の9割以上が山梨県産です。カベルネ・ソーヴィニヨンなど欧州系品種も栽培されていますが、最近は生育期の高温障害により着色不良が問題になることも。これまでメルロやカベルネ、プティヴェルドといったボルドー系品種の評価が高かった山梨ですが、2020年の日本ワインコンクールではメルシャンの「鴨居寺シラー2017」が欧州系品種ではじめて金賞を受賞したことで話題になりました。現在は多くのワイナリーが他の品種の可能性を探っています。
長野
早くからワイン産業に注力してきた長野県。大手企業がワイン用ブドウ栽培を進めてきたほか、ワイナリー設立のハードルを下げる特区制度の活用がさかんで、新規のワイナリー増加も著しい産地です。とくに千曲川流域にはプレミアムワイナリーが集結し、ヴィラデストワイナリーを筆頭に、ワインツーリズムもさかんです。
降水量が比較的少なく寒暖差の大きい長野は、シャルドネやメルロなど欧州系品種の栽培にも向き、生産量の65%が赤ワイン用ブドウ品種と全国的にも高いことが特徴。とくに桔梗が原は、一大メルロの産地です。これまでコンコードやナイアガラなどアメリカ系品種の産地であった塩尻にメルロを大量に植えるという大決断をしたのが、当時メルシャンの工場長だった故・麻井宇介氏。彼の薫陶を受けた造り手は「ウスケボーイズ」と呼ばれ、映画にもなっています。その一人、安蔵光弘氏の半生を描いた映画「シグナチャー」も2022年11月公開予定です。
北海道
梅雨のない北海道はまさにワイン栽培に向くと期待される場所。比較的まとまった土地があるので、新規ワイナリーもどんどん増えています。寒冷な北海道の気候に合うドイツ・オーストリア系品種のケルナーやミュラー・トゥルガウ(白)、ツヴァイゲルトレーベといった品種のほか、シャルドネやピノ・ノワールなどヨーロッパ系品種も多く栽培されています。
北海道でいま注目が集まるのが、余市/仁木町と空知地方(三笠、岩見沢)です。余市にはドメーヌ・タカヒコを筆頭に、自社畑で造ったブドウから自分でワインを造る「ドメーヌ」が多いのが特徴。また、オチガビワイナリーや仁木ヒルズのように、観光客の受け入れに力を入れているワイナリーもあります。空知には、映画「ぶどうのなみだ」の舞台になった山崎ワイナリーや、中澤ヴィンヤードやKONDOヴィンヤードなど、カリスマ栽培農家が個性を発揮しています。2012年には、日本初のカスタムクラッシュ(受託醸造)ワイナリーとして10Rワイナリーが創業。新規就農からワイン造りを目指す意欲ある造り手が集まっています。
東北
さくらんぼなど果樹栽培がさかんな山形はワイン生産量では第4位。歴史も古く、赤湯にある東北最古の酒井ワイナリーは今年で創業130年を迎えました。マスカット・ベーリーAやデラウェア、ナイアガラといった食用ブドウのほか、シャルドネやメルロなどヨーロッパ系品種からも上質なワインが生まれています。古い産地だけに古木もあり、古木のマスカット・ベーリーAは素晴らしい品質!ボルドー品種の赤ワインも秀逸で、飲みごたえのある熟成向きのワインも見つかります。
ワイン生産量5位の岩手県も、実は非常に有望な産地。とくに山ブドウから造られたワインやリースリング・リオンという交配品種のワインが異彩を放っています。冷涼な産地ですが、近年は温暖化の影響で栽培可能な品種も増加。ツヴァイゲルトやグリューナー・フェルトリーナーなどオーストリア品種も栽培されています。
上越
今ワイン生産県として注目を集めるのが、新潟県。日本酒だけじゃないんです!面積の広い新潟ではワイン産地もあちこちに分散しています。海の産地として有名なのが、新潟ワインコースト。カーブドッチやフェルミエなど数件のワイナリーが集結する一帯には、宿泊施設やスパ、レストランもあり、ワインツーリズムが楽しめる人気エリアです。新潟~富山周辺はアルバリーニョの産地としても地位を固めてきており、さながら日本のスペイン沿岸部のよう!内陸部には、マスカット・ベーリーA産みの親、川上善兵衛が興した岩の原葡萄園や、第三セクターながら秀逸なワインを造る胎内高原ワイナリーなど、粒ぞろいのワイナリーが揃っています。
関西
意外と知られていないのが、大阪が古くからのワイン産地であること。ブドウの栽培面積も最盛期の1930年代には山梨をしのぐほどでした。昭和に入りワイナリーは激減したものの、近年は大阪ワイナリー協会も設立されるなど、大阪のワイン造りを復興させようという機運が復活。デラウェアの産地としても有名で、デラウェアを使った瓶内二次発酵方式の辛口スパークリング「たこシャン」は大阪を代表するカタシモワイナリーの看板商品です。最近では2022年6月に奈良県に木谷ワインができたことで、日本全国ワイナリーがない県は佐賀県だけになりました。
そのほか、生産量として多いのは岡山県。ドメーヌ・テッタやラ・グランド・コリーヌなど、自然派ワインの造り手の活躍が目立ちます。また、日本ならではのワインと言えば、山ブドウの交配品種である小公子。広島、島根、岡山などで優れた逸品が造られています。
九州
九州にも美味しいワインがたくさんあります。特に評価が高いのがシャルドネ。大分の安心院葡萄酒工房、熊本の熊本ワイン、宮崎県の都農ワインのシャルドネは、シャルドネのゴールデン・トライアングル。いずれも南らしいトロピカルな風味を持つシャルドネで存在感を放っています。甲州やマスカット・ベーリーAのワインも、本州のものとは異なる温暖な地域の個性が感じられ面白いですよ。宮崎県ではキャンベル・アーリーといういちごの香りがする品種の栽培もさかんで、都農ワインのキャンベル・アーリーのロゼは地元の人にも大人気(チキン南蛮に合うそう)。そのほかにもテンプラニーリョやアルバリーニョ、シラーやピノ・ノワールの栽培にも挑戦するなど、興味深い産地です。
6. 世界での日本ワインの評価
これまでは世界的な認知度も低く、「日本でワインが造られているの?」という認識だった日本ですが、その状況はいまや変化しています。ワイン愛好家のバイブル『世界のワイン図鑑』にも日本はきっちり2ページ見開きで掲載されていますし、世界的なワインジャーナリストも日本をたびたび訪れています。
国際的なコンクールでの受賞数も増えてきました。1989年、メルシャンのフラッグシップワイン「桔梗が原メルロ1985」がリュブリアーナコンクールで大金賞を受賞したことは伝説的で、桔梗が原はメルロの銘醸地として知られるようになりました。2014年には権威ある「デカンター・ワールド・ワイン・アワード」で、中央葡萄酒が造る甲州ワインが日本ワイン初の金賞&地域最高賞を受賞。その後も3年連続で金賞を受賞&2016年には全体の1%弱しか得られないプラチナ賞をアジアで初めて受賞し、日本ワインの底力を見せつけました。最近では、余市ドメーヌ・タカヒコのワインが世界のレストランNo.1に輝いたデンマークの「NOMA」にオンリストされたことで話題になりました。
徐々に認知度を上げている日本ワインですが、輸出量を見てみると91kl(2020)、全生産量の1%以下と決して多くはありません。輸出先は台湾、香港、シンガポールなど近隣諸国が上位を占めています。そもそもの生産量も少なく、日本国内の消費者ですら手に入りにくいワインがあるくらいなので、海外に多く輸出するのは、まだ先のこととなりそうです。逆に、外国人が日本に来た時に、「こんなに美味しい日本のワインがあるんだ!」と思ってもらえる機会が増えたら誇らしいですよね!
7. まとめ
丁寧な手仕事を大切にする日本の生産者のたゆみない努力により、いまや全国で美味しい日本ワインが造られるようになりました。今も現在進行形でダイナミックに進化し続けており、とても興味深いワイン産地です。ワインショップやレストランで見かけたら、ぜひ試してみて下さいね!