タナ ~パンチのある赤ワイン好きにはたまらない品種「タナ」を徹底解説

タナ(Tannat)とは、フランス南西部のバスク地方に起源を持つ赤ワイン用のブドウ品種です。まさにその名前の由来になったのですが、非常に強いタンニン(Tannin)と多量の色素を持ち、深い色合いと力強い味わいの赤ワインを生み出します。フランスでは、南西部のマディランイルレギーなどの地域でタナが栽培されていますが、19世紀にバスク人移民によってこのブドウが南米ウルグアイに持ち込まれ、大きな花を咲かせました。本記事では、タナの特徴や歴史、主要産地や代表的生産者、特有の醸造技術やサービス方法、フード・ペアリングなどについて詳しく紹介していきます。

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【目次】
1. タナとはどんな特徴のブドウか(色、香り、味わい)
2. タナの栽培特性・条件
3. タナの起源と歴史
4. タナの主要産地と代表的生産者
 ● マディラン
 ● イルレギー
 ● フランス南西部のその他の産地
 ● ウルグアイ
 ● 日本
 ● 世界のその他の産地
5. タナが生んだ醸造技術:マイクロ・オキシジェネーション(微酸素添加法)について
6. タナのサービス方法とフード・ペアリング
7. タナのまとめ


1. タナとはどんな特徴のブドウか(色、香り、味わい)

タナは、色が濃く、酸もまずまず強いのですが、なんといってもタンニンが豊富なブドウ品種です。そのタンニンの量は、強い渋みで知られるカベルネ・ソーヴィニョンをはるかに超えており、肩を並べるのはイタリア品種のサグランティーノぐらい。そのため、タナのワインはがっちり骨格のある赤ワイン好きにはおおいに好まれますが、逆に渋みが苦手な方には向かないかもしれません。ただし、後述するように、ウルグアイ産のタナなどには、比較的マイルドな味わいのものもありますから、気が向けば一度試してみましょう。

タナのワインには、カシスや赤いプラムなどの果実の香りが見られ、そこに甘草や燻製肉、カルダモンなどのスパイシーなニュアンスが加わります。ただし、タナが栽培される土地の気候によって、その果実風味は熟したものから、ハーブっぽいもの、土っぽいものまで多様に変化するでしょう。口に含むと、タナのワインは辛口で、ボディがしっかりとしており、強い渋みと張りのある酸味が感じられます。タナのもつ強い骨格は、長期の熟成にも耐えることを意味しており、時を経るとその味わいが少しずつ柔らかく変化していくのも楽しみのひとつです。色が濃くタンニンの強いタナのワインには、レスベラトロールといった抗酸化物質が豊富であることから、カベルネ・ソーヴィニョンなどと同様に、いわゆる「健康に良い」赤ワインのひとつとして知られています 。

2. タナの栽培特性・条件

タナは、基本的にワイン造りにしか用いられない品種で、生色用途では用いられません。その房は大きいのですが、果粒は小~中ぐらいのサイズです。タナは、原産国のフランスで栽培される多数のブドウの中では、比較的晩熟なブドウに分類されます。かなり生育力(樹勢)の強い品種で、長めに剪定されることが多いです。タナは乾燥に対して非常に弱いため、水分を保持しつつ、それでいて排水性の良い土壌を必要とします。たとえば、粘土石灰質の土壌などは、こうしたニーズに合致するでしょう。病害虫については、灰色カビ病にかかりやすいため、夏から秋にかけては雨の少ない土地に向きます。タナはまた、ダニやヨコバイの害を受けやすい品種です。

こうした諸特徴はクローン(品種内のサブタイプのようなもの)によって、多少の違いがあります。原産国のフランスでは、現在10種類ほどのクローンが公式に認められています。

3. タナの起源と歴史

タナは、フランス南西部のマディラン地区が原産地と考えられており、文献にその名がはじめて登場するのは18世紀末のことです。その時は、Nがひとつのスペル、Tanatと綴られていましたが、19世紀に入って、Tannatと変化します。名前の由来は、マディラン付近で話されていた方言の tanat という言葉で、これは「なめし皮のように濃い褐色」という意味です。タナの果皮が濃い色をしていたのと、また非常に強いタンニンを含んでいることから、その名が付けられたと考えられています。タナは、マディランと同じフランス南西部で栽培される他の多くの品種と、葉の形状などが似ており、そのことからもフランス南西部が原産地だという推定が有力です。実際、DNA鑑定の結果、近隣で栽培されるマンサン・ノワールというブドウと、親子の関係にあることが確認されています。

タナは、19世紀にバスク系の移民によって南米のウルグアイに持ち込まれ、現在ではウルグアイの「国民的ブドウ」として広く栽培されるようになりました(これは、同じくフランス南西部原産の品種、マルベックが南米アルゼンチンに、カルメネーレがチリに持ち込まれ、おおいに栄えているのとパラレルな現象と見ることができます)。

4. タナの主要産地と代表的生産者

マディラン

フランス国内でのタナの栽培面積は約2700haで、その大半がマディランというフランス南西部のAOCに集中していることから、「タナといえばマディラン」というイメージが形成されました(フランス南西部は、ボルドー地方から南へ、スペインとの国境付近に広がるエリアで、ワイン産地が点在しています)。タナは、マディランの気候と土壌に適応しており、強靱なタンニンをもつ力強い赤ワインは、20世紀末に世界中のワイン好きにとって「知る人ぞ知る銘醸」となりました。土壌はさまざまなタイプのものが見られますが、粘土石灰質土壌や斜面に広がる石の多い土壌の畑で、大きなスケールと長期熟成能力を備えたワインが生まれるようです。マディランAOCでは、法律の定めによりタナを60~80%の間の比率で使用せねばなりませんが、一部の生産者は、AOC規格外のワインとして100%タナで造られた銘柄も造っています。AOCの規定に沿ったブレンド・ワインとなる場合、タナに混ぜられるのはカベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、フェールといった黒ブドウ品種です。AOCにおける法定樽熟成の期間が20ヶ月と極めて長いのも注目すべき点で、これも厳しいタンニンを和らげるために取られる手段のひとつになります。

マディランの代表的な生産者として、まずその名があがるのが、シャトー・ブスカッセシャトー・モンテュスというふたつのワイナリーを所有する、アラン・ブリュモン氏です。20世紀末に、マディランがワインの世界地図に載ったのは、ブリュモン氏の功績が最も大きいでしょう。人気俳優のトム・クルーズが、プライベート・ジェットで買いに来るといった華やかな逸話も、その名を高めました。その他のマディランの有名生産者としては、シャトー・ダイディ、ドメーヌ・ベルトゥミュー、シャトー・ビエラなどあげられます。

イルレギー

イルレギーは、フランス南西部のバスク地方にある小さなワイン産地で、タナはこの地域の主要な赤ワイン用ブドウ品種になります。イルレギーのブドウは、険しい傾斜地に作られたテラス式の畑で育ち、その土壌は赤い砂岩や片岩など多様で、南風の影響を受ける温暖な気候です。タナ以外にも、カベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンなどの赤ワイン用ブドウ品種が栽培されています。代表的な生産者としては、ドメーヌ・ブラナドメーネ・イラリアなどがあげられます。ドメーヌ・ブラナは、当主がボルドーの大銘醸シャトー・ペトリュスで修行した縁から、ペトリュスの元醸造帳である高名なジャン・クロード・ベルエが醸造に関わっていることで話題となりました。

フランス南西部のその他の産地

タナは、マディランやイルレギーのほかにも、フランスの南西部のいくつかの産地で栽培されています。サン・モン、ベアルン、トゥルサン、コート・デュ・ブリュロワなどです。これらの産地でも、タナはカベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランなどとブレンドされて、濃厚でタンニン豊富な赤ワインを生み出しています。また、「黒ワイン」の名で知られる南西部の産地カオールでは、主要品種のマルベックに、タナがブレンドされることがあります。

ウルグアイ

タナは、ウルグアイで最も広く栽培されている品種で、この国の気候と土壌に適応して栄え、今では「国民的赤ワイン」と呼ばれるほどです。フランス南西部から移植されたのは1870年代で、当初は持ち込んだ人物、パスカル・アリアゲの名を取ってアリアゲと呼ばれていいました。ウルグアイのタナも、フランス南西部のものと同じく、色が濃く、タンニンが強いのが特徴ですが、より温暖な気候のおかげでブドウがよりよく熟し、マディランなどと比べれば渋味は少しマイルドでしょう。また、近年では醸造技術の進歩や栽培法の改善により、より軽いタンニンで、柔らかくて飲みやすいスタイルのタナも増えてきました。樽熟成や、ピノ・ノワールやメルロといった他品種のブレンドなどの手法も多様化しており、ウルグアイのタナは多彩な表情を見せています。実際、ボージョレと類似の製法で仕込んだ軽快な赤ワインや、ポートのような甘口でアルコールの高い赤ワインも生産されていますし、タナを原料としたロゼもこの国では造られているのです。代表的な生産者としては、ボデガ・ガルソンボデガ・ブーザピサノなどがあげられます。

日本

日本においても、まだその数はさほど多くはないものの、複数のワイナリーがタナの栽培にチャレンジしており、成功例も増えてきました。この品種の先駆者として知られるのが、栃木県のココ・ファーム・ワイナリー。長野県高山村で育ったタナを、他の品種とはブレンドせずオーク樽でしっかり熟成させた本格的赤ワインが、「山のタナ」という銘柄です。同ワイナリー曰く、タナは「高温多湿で日照量もそれほど多くない日本においても、他品種と比べて突出した色の濃さとタンニンを持つブドウに育っています」とのことで、今後栽培面積が増えていくことが期待されます。他にタナに取り組んでいるワイナリーとしては、京都府の丹波ワイン、大分県の安心院葡萄酒工房など。

世界のその他の産地

タナは、フランスとウルグアイだけでなく、他のワイン生産国でも少量は栽培されています。アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、ペルー、南アフリカ、スイス、イタリアのプーリア州などで、主にブレンド用のブドウとして用いられることがあるのです。また、アメリカ合衆国では、カリフォルニアやオレゴンといった主要なワイン生産州だけでなく、バージニアやメリーランドなどの州でも試験的に栽培されています。こうした国々でタナは、それぞれの気候や土壌に合わせて栽培や醸造、ブレンドが工夫されており、たとえばオーストラリアでは、タナはシラーズとブレンドされて、フルボディでスパイシーな赤ワインに仕上げられるといった具合です。イタリアでは、タナがネグロアマーロやプリミティーヴォといった品種にブレンドされて、プーリア州の伝統的な赤ワインに深みとタンニンを加えます。ブラジルでは、タナは高地の涼しい気候で栽培されており、出来上がるのはエレガントでフルーティな赤ワインやロゼワインです。

5. タナが生んだ醸造技術:マイクロ・オキシジェネーション(微酸素添加法)について

タナはタンニンが非常に強く、熟成に時間がかかる品種です。そのため、タナのワインをより早く飲み頃にするために、マディランの醸造家パトリック・デュクルノーが1990年に開発したのが、マイクロ・オキシジェネーション(微酸素添加法/仏語:ミクロビュラージュ)という技術です。タンク内や樽内に入ったワインに向けて、発酵中や熟成中に、専用の機械を用い、細かい酸素の泡を吹き込むというもの。吹き込まれる酸素の量は厳密にコントロールされており、適度な酸化を進めることができます。この技術は、1990年代の後半にはボルドー地方の高級赤ワインにも盛んに用いられるようになり、そこから世界中に広がりました。この技術の効果として認められているのは以下のようなものです。

  • 酵母の増殖を促進し、アルコール発酵を早める
  • ワインの色を安定化させる
  • ワインのタンニンを柔らかくし、飲み頃を早める
  • 還元臭や青っぽい香りを減らし、ワインの香味を複雑にする
  • コスト削減(木樽熟成によるワインへの酸素供給の代替手段として)

一部の識者は、マイクロ・オキシジェネーションとオークチップの組み合わせにより、伝統的な樽熟成の効用を完璧に再現できると述べています(これは大きなコスト削減につながります)。いずれにせよ、タナというブドウ品種の特性が、世界のワイン造りに新風を吹き込む技術の開発につながったのは、実に興味深いことでしょう。

6. タナのサービス方法とフード・ペアリング

タナは、ボディがしっかりとしていてタンニンが豊富な赤ワインです。そのため、サービスするときには、デカンタージュなどの方法で酸素に触れさせてやり、タンニンの角を丸めて柔らかくし、香りを引き出してから飲むのがしばしば推奨されます。また、タナはサービス温度についても気を配るべき品種です。温度が高すぎるとアルコール感が強くなり、温度が低すぎるとタンニンがギザギザと際立ちます。一般的に推奨される適切な温度は、15~20℃程度。大ぶりな、ボルドー・タイプのワイングラスと相性が良いようです。

カスレ

タナは、濃厚で力強い料理に合わせると良い相性を見せます。特に、脂質やたんぱく質が多い肉料理は、タナのタンニンを和らげてバランスを取ってくれます。例えば、ステーキ、ラム肉、ソーセージなどのグリル料理や、カスレ、鴨のコンフィなどの煮込み料理は、タナとのペアリングに最適です。また、マッシュルームやトリュフなどのキノコ類や、ロックフォールやショームなどの熟成チーズも、タナとよく合います。なお、タナはフランス産とウルグアイ産で味わいに違いがあると言われますので、その点にも配慮するとよいでしょう。フランス産のタナは、黒果実や甘草などの香りが強く、ウルグアイ産のタナは赤果実や花の香りが優しく感じられるのがしばしば。そのため、フランス産のタナはより濃厚で力強い料理に、ウルグアイ産のタナはより軽やかでハーブや野菜を使った料理に合わせると、満足のいくペアリングになりそうです。

7. タナのまとめ

高い知名度と高い価格が特徴の、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールほどのベテラン・スター・プレイヤーではないものの、ブドウのメジャー・リーグには所属している注目の若手選手が、このタナという品種ではないでしょうか。今後の活躍が大いに期待されるところです。誰にも負けないほど強いタンニンという個性は、扱いを間違えなければ大きな武器になりましょう。100年後のワインの世界では、赤ワイン・チームの筆頭選手になっているかもしれません。いずれにせよ今のところ、本格的な赤ワインを、比較的お手頃価格で楽しみたいときの有力なオプションとして、ぜひ覚えておくべきその名がタナなのです。

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