テンプラニーリョとは? ~スペイン・ワインの王様。品種の特徴から注目産地まで徹底解説

テンプラニーリョはワイン用の黒ブドウ品種では、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロに次いで世界第3位の栽培面積、約23万ヘクタールを有しています。でも、そんなにポピュラーだったなんて、余り、ピンとこないですよね?メジャーな印象が無いですし、順位が下のシラーは国際品種なのに、テンプラニーリョは、スペイン土着のブドウの扱い。一方で、リオハのワインの知名度は高くて有名です。今回は、縁の下の力持ち的なこのブドウ品種に焦点を当てていきます。ソムリエ試験やWSET対策にも、役立つ内容ですが、つまみ食い的にでも、ぜひ気楽に読み進めてください。

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【目次】

1. テンプラニーリョは、なにげに涼しい所が好き:早熟な品種
2. おいしいワインを造る栽培方法は?
3. リオハが分かれば、テンプラニーリョが分かったも同じ!
4. リオハと樽とボルドーと:長くて深いその関係
5. 伸び盛りの注目産地:リベラ・デル・ドゥエロ
6. 世界に羽ばたけテンプラニーリョ!
7. テンプラニーリョのまとめ


1. テンプラニーリョは、なにげに涼しい所が好き:早熟な品種

テンプラニーリョは、まぎれもなくスペイン・ワインの王様です。ブレンドされる場合にも主人公としての扱いですし、単一品種でのヴァラエタル・ワインも良く見ます。そして、世界第3位の栽培面積!こう見れば、意外にもかなりメジャーなブドウ品種とわかります。

なのに、今ひとつパッとしないのは、9割近くが生誕地であるスペインのみで栽培されているということが一因です。かたや、カベルネ・ソーヴィニョンやメルロは世界の至るところに栽培地区が広がって、有名生産者やブランドと世界各地で紐づいています。こうした品種とは、知名度が違ってしまっているのは無理もありませんね。

ポルトガルでも、実は最大栽培面積を有してはいるのですが、有名な酒精強化のポート・ワインで、ブレンドに使われたり、品質面では評価の高いトゥーリガ・ナショナルに隠れていたり。グローバル市場という視点から見れば、余り、品種自体の知名度は行き渡っていません。

ブラインド・テイスティングなどの機会には、ネッビオーロやサンジョヴェーゼと言ったイタリアの晩熟なブドウ品種と比較をすることが多いと思いますが、テンプラニーリョは、その名前の語源の通り(スペイン語の「Temporano=早生の、早熟な」に語源があります)、実は早熟な品種。平均生育期間の温度は、16℃から19℃弱が適しているとされます。この気温帯だと、寒いフランスのロワール地方で生育しているカベルネ・フランとさして変わりません。これもだいぶ意外では無いでしょうか?ですから、ブドウが十分な熟度を得られると共に、酸も維持できる気候条件が必要になります。

最初にこのブドウが書物に登場するのは、19世紀初頭。起源はスペイン北部のラ・リオハ州とナバラ州辺りとされています。スペイン原産の白ブドウのアルビーリョ・マヨールとほぼ絶滅していると言われるベネディクトという黒ブドウの交配品種との説もありますが、確かな所はわかりません。

2. おいしいワインを造る栽培方法は?

樹勢が強いので、収量は中庸から高くもなりがちです。ピノ・ノワールに似て、収量が上がると品質に影響が出やすいブドウ品種と言われています。また、温暖な産地では、酸を失いがちです。粒は大きめで、果皮は特段厚いというほどではありませんので、かび病にも被害を受けます。

スペインでの仕立ては伝統的なものはバソ仕立て。いわゆる、株仕立てです。一方で、機械収穫に適した短梢剪定のコルドン仕立ても増えています。長梢剪定は、強い樹勢を考えると余り推奨できませんが、摘房などの栽培上の工夫と組み合わせることは可能です。

リオハ 株仕立ての葡萄畑

20世紀後半に、リオハでは栽培面積が大きく増えますが、それ以上に収量が上がって、品質問題が生じました。1990年から2000年の僅か10年間でヘクタール当り34ヘクトリットルの収量が、60ヘクトリットルまで増加してしまうのです。輸出の大幅な減少などの深刻な影響が出ます。化学肥料の多用や、剪定・摘房不足などの問題と、灌漑が認められたことによる複合的な原因でした。その後、2020年には40ヘクトリットルへと落ち着きを見せています。原産地呼称統制委員会は昨年2021年に、収量が乏しくなりがちな古木を保護する施策を発表しました。

全世界で見ると、2000年代初頭からの栽培面積の拡大が著しく、オーストラリアなどの新世界の産地も含めて、その後の10年間でシラーやカベルネ・ソーヴィニョンを抑えて世界一位の急激な伸び率を経験します。

クローンは、フランスで認定されているのは、770、771、776といずれもリオハ起源のものです。リベラ・デル・ドゥエロでは、リオハとは違って粒が小さいと言われます。この産地起源の苗木を、カリフォルニアの醸造家マーカス・ボキッシュが、2001年にカリフォルニア大学デービス校の付属機関に寄贈します。ブドウ樹のDNA鑑定やクローン管理、販売をしているFPSに、FPS12として登録されたのです。他にも、スペインのトロ地区で使われているFPS11やFPS14などがあります。

台木は、樹勢が中庸から弱いものが、特に植栽密度が高い場合には向いています。樹勢が控えめな、リパリアとルペストリスの交配品種の3309Cや101-4や、乾燥に強いベルランディエリとルペストリスの交配品種の1103P等が使われます。

いろいろな呼び名

テンプラニーリョは、産地によって、異なる呼び名がとても多いので、ソムリエ試験対策に向けて、この際、纏めて覚えてしまいましょう。リベラ・デル・ドゥエロでは、ティント・フィノ。トロでは、ティンタ・デ・トロ。カタルーニャ地方では、ウイ・ダ・リェブレ、ラマンチャではセンシベル。ポルトガルでは、ティンタ・ロリスアラゴネスの名前で呼ばれています。

3. リオハが分かれば、テンプラニーリョが分かったも同じ!

テンプラニーリョの産地は何といってもリオハ。重点的に勉強しましょう。6万5千ヘクタールの栽培面積があります。これは、ブルゴーニュの2倍強の広さ。最も西側と東側の畑では収穫が1か月ほど変わってくると言われます。全体の9割弱がテンプラニーリョの栽培にあてられています。

スペイン北部を水源として、西から東へ向かい、カタルーニャ地方から地中海にそそぐ、エブロ川流域にブドウ畑が広がります。

西の大西洋側のリオハ・アルタ地区リオハ・アラベサ地区は、大陸性と海洋性の気候の影響を受けます。北のシエラ・デ・カンタブリアの山々が大西洋の冷気を遮断してくれます。それでも、西部は、冷涼で湿度も高くて雪も降ります。20世紀にはブドウ成熟にはギリギリの地域もありました。それが、東へ向かうに連れて、暑く乾燥した地中海性気候の影響を受けるリオハ・オリエンタル地区に入ります。降雨量はリオハ中心部で年間400ミリ程度。

リオハ・アルタが2万7千ヘクタールと最大面積を有し、アラベサはその半分程度。リオハ・オリエンタルは2万5千ヘクタールほど。標高は、アラベサとアルタは、700メートル級ですが、アラベサの方が少し高めです。土壌は、粘土石灰質や鉄分を含んだ粘土質が有名です。

人それぞれ意見は有りますが、最高のテンプラニーリョのワインは、このリオハ・アラベサと、後ほどご紹介するリベラ・デル・ドゥエロから生まれるという専門家達の意見を良く聞きます。アラベサは、ボディが有って酸も高く、新鮮さを感じるワインを産出すると言われます。一方、最も東のオリエンタルは、ふくよかでアルコールも高くなりますが、テンプラニーリョ栽培よりも、ガルナッチャ(グルナッシュ)に向いた産地です。

こうした様々な産地から伝統的なブドウ品種を仕入れて、テンプラニーリョ中心のワインにブレンドするというのが長い間、リオハのワインの基本的なスタイル、リオハ・ブレンドでした。ガルナッチャは高めのアルコールでワインにボディを与え、マスエロ(カリニャン)は、豊富なタンニンと濃い色合いで貢献。そして、近年、消滅の危機から脱したグラシアーノは香り高く、酸も高い、しっかりした骨格を与えるという具合です。

熟成かテロワールか

リオハは、格付けではスペインで2つのみしか認められていないDOCaという高級ワイン産地です。それでも、産地としては広大なので、何を目安にワインを選ぶかというと、生産者を良く知らない場合は、熟成規定をもとにワインのスタイルを推測して選ぶことが多いのでは無いでしょうか?

テンプラニーリョを使った赤ワインでは、もっとも若いワインはホベンと呼ばれていた樽熟成を必要としない、果実味中心の若々しいジェネリック・ワインです。マセラシオン・カルボニックを使ったフルーティで早飲みの安価なワインが多いタイプ。クリアンサは2年間の樽熟成が必要で、うち1年間は225リットルのオーク樽で熟成します。レゼルバは、3年の熟成期間のうち、1年間はオーク樽熟成で、最低6か月の瓶熟成が求められます。もっとも、規定が厳しいのは、グラン・レゼルバで、5年間もの長期熟成。うち2年間のオーク樽熟成と2年間の瓶熟成が必要と定められています。

クリアンサ迄は、スペイン国内での販売が主流で、レゼルバとグラン・レゼルバは輸出市場に多く出回ります。

リオハの赤ワインというと、長いことオーク樽で熟成して、色が淡くなってオレンジっぽいとか、葉巻やら皮革、コーヒーやらの熟成香や、凝縮したチェリーなどの赤系果実を想像するかも知れません。これは、グラン・レゼルバで良く見られるスタイルで、実は色々な種類のワインがこのブドウ品種からは造られるのです。

原産地呼称統制委員会は、こうして熟成期間でのワイン等級を付けた以外は、最近まではサブ・リージョンや村名、畑名ワインの規定には否定的でした。様々な産地の農家からブドウを調達して、大手のボッデガがワイン造りをするという産業構造には馴染まないという思惑があったようです。ブドウ栽培業者が1万5千とも言われる中、ボッデガは600程度と、シャンパーニュの業界構造と似ています。

しかし、流石に近年の全世界的なテロワール至上主義の盛り上がりで、潮目は変わって、2017年から、産地による分類基準が導入されました。

リオハ全土のブドウをブレンドできるリオハ、これまでのサブ・ゾーンである、リオハ・アラベサ、アルタ、オリエンタルのゾーナ。そして、ブルゴーニュで言えば、ヴィラージュに相当するムニシピオ。(15%迄はブレンドが可能です。)

そして、真打ちは、ビニェードス・シングラーレスで、単一畑或いは集合畑。とても厳しい規定をクリアする必要があります。ワイナリーがその区画のブドウ畑を所有若しくは長期リース契約をしている必要がありますし、樹齢は35年以上、収量もヘクタール当り5トンと低く抑える必要があります。テイスティング・パネルによる官能評価もばっちりありますので、日本市場に出回るのが楽しみです。ただし、2019年で6万5千ヘクタールのリオハの栽培面積の内、たったの数百ヘクタールだけが祝福された畑。ですので、暫くは見つけるのは簡単では無いかも知れません。

4. リオハと樽とボルドーと:長くて深いその関係

ボルドー・コネクションとリオハの伝統

19世紀には、今でも歴史的遺産のように、時には目にするラガールと言われる、石造りの桶。ブドウを足で踏んで破砕、果汁抽出する方法が普通に行われていました。これを近代的なワイン造りへと変えた先駆者のひとりは、ボルドーの新しい技術を持ち帰った、リスカル侯爵、マルケス・デ・リスカル社の創始者です。

ボルドーのシャトー・ラネッサンの醸造長をスカウトして、9千本とも言われるカベルネ・ソーヴィニョンをリオハに1862年に持ち込みます。フランス原産の品種とテンプラニーリョのブレンドです。リスカルのワインには今でも、カベルネを25パーセントも含むキュヴェがあります。著名な評論家から高い評価を受けて、有名なワイン雑誌の賞も受賞しているワインです。しかし、公式ホームページには、使用ブドウ品種にはテンプラニーリョと、「その他」としか記載されていません。本来、リオハのアペラシオンのルールでは、除梗した場合で95パーセントまでは、テンプラニーリョを始めとした土着のブドウ品種を中心に使わなければならないのです。マルケス・デ・リスカル社は、つい最近まで、フランスの有名シャトーの醸造責任者をコンサルタントとして活用し続け、ボルドーとの関係は紡がれてきました。

この19世紀の半ばは、フランスの畑がスペインよりもずい分と前に、うどん粉病、フィロキセラで壊滅的な被害を受けた時期です。それを契機にリオハのワインの買い付けにフランスのネゴシアンが訪問し、醸造家も遠征、投資も行われて、リオハとボルドーとの関係は大いに深まっていきました。

リオハと樽のなが~い歴史

余り知られていませんが、革命的な変化をリオハに起こした先駆者の前にも、ボルドー・コネクションは存在していました。アラベサ生まれのマニュエル・キンターノも1780年代後半にボルドーから様々な醸造技術と共にフレンチ・オークによる熟成技術を持ち帰っていたのです。しかし、ワイン造りのコストアップが当時の価格統制で売価に反映できず、広く普及することはありませんでした。

マルケス・デ・ムリエタ社は、リスカルと並んで近代リオハのワイン造りの始祖と言える生産者。最初のヴィンテージは1852年に遡り、リスカルよりも古い歴史を持ちます。リスカルと同時代にボルドーで近代的なワイン造りを学びます。そして、キンターノが紹介したものの、リオハに根付かなかったオーク樽による熟成をリスカルと共に広めていきます。

こうして、生産者の間で、小樽熟成が根付いていくものの、経済的な理由で、主流は安価なアメリカン・オークでした。リオハには、輸入材料を使い、樽に組み上げる19世紀に創業した木樽工房が今でも残っています。

そもそも、スペインは、大航海時代にアメリカを植民地化しています。15~16世紀には既に海外でも名声を獲得していたシェリーの輸送には貿易取引があるアメリカのオーク樽が使われたのは自然の流れでした。その後の英国との戦争に負けて経済的に困窮する一方で、リオハのワインも海外で知られるようになる、17~18世紀には廉価なアメリカン・オークの調達に拍車が掛かったという流れもあるようです。20世紀に入ってからも、2つの大戦に加えて、1936年から1939年の内戦でもリオハは被害を受けて、本格的なワイン産業の復興は60年代に入ってから。ワイン造りもコストを優先せざるを得ない事情があったのです。

一方、フレンチ・オークの新樽の本格的な活用はまだ最近。ボルドーでシャトーを所有し、ボルドー大学のエミール・ペイノー教授とも親交のあった、エンリケ・フォルネが1970年代に入り、マルケス・デ・カセレス社を興しました。そして、選果や発酵温度の管理などの進んだ醸造技術と共に、ステンレス・タンクでの醸造と、フレンチ・オークの新樽の活用、そして熟成期間が短いワインを広めました。まだ、アメリカン・オークの古樽での長期熟成が主流であったリオハの生産者の中にあって、モダン派のはしりと言って良いかも知れません。

世界的に見た場合、現代でも、フレンチ・オークの方がアメリカン・オークより2倍ほども高い価格なので、フレンチ・オークは高級ワインに使われることが多いです。アメリカン・オークは有名な所では、アメリカやオーストラリアの生産者の一部とスペインでの使用に概ね限られます。タンニンも含めた総フェノール量は、フレンチ・オークの方が高いので触感に厚みが出る事を好む生産者もいます。一方、アメリカン・オークでは、ココナッツ風味を感じるラクトンやバニラの香りのヴァニリンなどの成分が多いので、樽香は強く、また、甘やかな味わいを感じることが多いようです。

伝統派VSモダン派

本格的にモダン派が登場するのは、1990年代になります。それまでの、いわゆる伝統派は、アメリカン・オークによる長期熟成。抽出は少なめで色合いが薄く、比較的軽やかなエレガントなボディでアルコールは中庸。これに対して、モダン派は、19世紀に遡るフレンチ・オークへの回帰。抽出は高くて、色合いは濃く、凝縮感やアルコールが高めでパワフルです。熟成期間も抑えて、早くからでも楽しめます。消費者に取って、とっつきやすいワインになる一方で、生産者に取っても、キャッシュフローの改善に繋がります。

とは言っても、最近では、この二つの陣営は、融合が進んでいて、例えば、名門生産者のクネ社でも、両方のスタイルを造っていたりします。あるいは、一つの樽の中の部位に応じてアメリカン・オークとフレンチ・オークを使い分ける有名生産者もいます。

5. 伸び盛りの注目産地:リベラ・デル・ドゥエロ

リベラ・デル・ドゥエロ ペニャフィエル城と葡萄畑

この産地は、リオハの南西。全長115キロに及ぶドゥエロ川流域にあります。この川は、ポルトガルに流れ込んだあと大西洋に注ぎ、ポルトガルではポート・ワインの産地で有名で、ドウロ川と呼ばれます。栽培面積は、2万2千5百ヘクタール。リオハの3分の1ほどです。地中海性気候に大陸性の影響が重なり、暑く乾燥した夏で雨量も少なく、一方で冬は長く厳しい上に、遅霜に襲われることも、しばしばです。生育期間が短くて、極端な気候の産地だと評されます。

しかし、こうした厳しい気候、大きな日較差や、高い所では千メートル近くになる標高のお蔭で、ブドウの果皮は厚くなり、タンニンも多く得られ、酸も引き締まります。結果、リオハよりも骨格のしっかりとした力強いワインを生むといわれています。土壌は、砂質や粘土質、石灰岩、泥灰土の堆積土壌です。この地ではテンプラニーリョはティント・フィノと呼ばれ、総栽培面積の9割を上回ります。

比較的、歴史の浅い産地で、100年以上前からワイン造りをしているベガ・シシリアを除けば、20世紀末から急激な盛り上がりを見せている産地です。1982年にはDOに認定されましたが、リオハが取得しているDOCaにはまだ昇格していません。

テンプラニーリョの他に、リオハのアペラシオンでは認められていない、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、マルベックのブレンドも許されています。テンプラニーリョが最低75%含まれていれば良いのです。

この産地の大立者のベガ・シシリアの創立者エロイ・レカンダが、創業時より栽培していますから、無理からぬことです。もっとも、今日では、ベガ・シシリア以外では、これらの国際品種のブレンドは少なくなってきています。この生産者では、最高のヴィンテージで造られ、カベルネ・ソーヴィニョンもブレンドされているウニコや、メルロを少量ブレンドしたヴァルブエナ・シンコが有名です。

90年代後半までは2桁だった生産者も今では、300ほど。フレンチ・オークを使用する、いわゆるモダン派生産者が多く見られます。

こうした産地の急拡大の原動力になり、この産地を世界地図に載せるのに多大な貢献をしたのは、昨年2021年に亡くなられた生産者アレハンドロ・フェルナンデスです。1970年代に、泣く子も黙るロバート・パーカーからスペインのペトリュスと評された、ティント・ペスケラを世に出します。この生産者はテンプラニーリョ単一品種にフォーカスします。特に最良年にのみ造られるグラン・レゼルバのハヌスは数えるほどのヴィンテージしか生産されていません。

この偉大な生産者達の後を追いかけたニュー・ウェーブが、デンマーク人のピーター・シセックです。彼もやはりボルドーでワイン造りを学びます。ヘクタール当り10リットル強という、極めて低収量の株仕立ての古木を探してフレンチ・オークの新樽をふんだんに使ったワイン造りをしました。初ヴィンテージを1995年に発表したピングスは、たちまちブレーク。ロバート・パーカーも絶賛して、投機対象になります。2006年辺りから新樽率を減らしますが、カルト的な人気は変わらず、今でも、10万円前後の価格帯で流通しています。

6. 世界に羽ばたけテンプラニーリョ!

アルゼンチン

アルゼンチンのテンプラニーリョ栽培はその9割以上がメンドーサに集中しています。かつては、高収量で安価なテーブル・ワインにタンニンや色合いを加えるような使われ方がされましたが、高品質なワインも生まれています。

オーストラリア

オーストラリアでは、2000年迄にはほとんど栽培されていなかったが、それからの10年間で10倍以上の伸びを見せます。暖かなマクラーレン・ヴェールから、冷涼なアデレード・ヒルズまで、200を超える生産者がテンプラニーリョを栽培しています。なかでも、ヴィクトリアのブラウン・ブラザーズは19世紀に遡る家族経営の生産者ですが、早くからセラー・ドアを立ち上げるなどの革新的なワイナリーとして知られていて、テンプラニーリョのワインでも高い評価を得ています。

アメリカ

19世紀末から20世紀初頭にテンプラニーリョが持ち込まれ、カリフォルニアのセントラル・ヴァレーで栽培されました。バルデペーニャスと呼ばれましたが、大量生産の安ワインのブレンド用途以外では人気がでませんでした。生産者に受け入れられるようになるのは、1980年代になってからです。このバルデペーニャスの苗木をカリフォルニア大学デービス校のFPSで見つけたワシントン州のマイク・ザウアーのお蔭で、ヤキマ・ヴァレーにも20世紀末に広がります。

7. テンプラニーリョのまとめ

黒ブドウ品種の3大メジャー品種の一角なのに、控えめな印象。ブドウ品種より主要産地のリオハの方が良く知られているという地味なブドウ品種のテンプラニーリョ。ですが、熟成期間や樽の選択、ブレンドによってスタイルが変わり、投機の対象にもなるアイコン的なワインも登場しています。また、リオハは今、まさにテロワール重視へと移り変わって行く最中です。お値段もボルドーやブルゴーニュと比べると安価。きっと、お値打ちワインに巡りあえます。ブログ記事を読み終わったら、テンプラニーリョをテイスティング。熟成等級の異なるワインの飲み比べも良いですし、伝統派、モダン派をゲーム感覚でブラインド・テイスティングするのも楽しいですよ!

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