お肉料理を最高に楽しむ!肉とワインのマリアージュの基本

お肉には赤ワイン!
絶対的な法則のように言われていますよね。

そもそも何故お肉に赤ワインを合わせるのでしょうか?

ひとつには、赤ワインに含まれている渋味成分であるタンニンがお肉の脂をさっぱりと感じさせてくれるから、という味覚的なことが挙げられます。

他にも、赤ワインに含まれるポリフェノールが血中の脂質酸化を防ぎ、高脂血症や高コレステロール症による動脈硬化を予防できるのではないかという健康面からのメリット*も言われています。

*赤ワインの摂取量の多いフランス人は、肉消費量は世界トップクラスにもかかわらず、心筋梗塞などの心臓病が極端に少ないという『フレンチ・パラドックス』と言われる逆説的な現象が報告されています。

これらの理由から、お肉には赤ワイン!というのが常識化しているようです。

しかし、本当にお肉料理には赤ワインが合うのでしょうか?

今回は、マリアージュの定義や起源を簡単にご紹介しつつ、お肉料理とワインのマリアージュのコツや実践例についてお伝えしていきます。

文/竹本 聡子


【目次】

1, そもそもマリアージュとは?
2, 料理とワインのマリアージュの起源
3, お肉料理とワインの「濃さ」をあわせるのがコツ
4, 肉料理別ワインのマリアージュのご紹介
焼き鳥にあわせるワイン
豚肉料理にあわせるワイン
牛肉にあわせるワイン
③-1, ヒレステーキにあわせるワイン
③-2, 霜降り和牛にあわせるワイン
③-3, オージービーフにあわせるワイン


1,そもそもマリアージュとは?

料理とワインを組み合わせることによって新しい味わいが生まれたり、より料理が美味しく感じることができたりする、それがマリアージュです。
難しく考えることはなく、トマトに少し塩をかけると甘みが増すとか、生ハム&メロンとか。
これだって言ってみればマリアージュなのです。

そんな感覚で、「どんな要素を足せばこの料理はもっと美味しくなるのか?」
そこからマリアージュを考えてみましょう。
決して難しく捉える必要はありません。

 

2,料理とワインのマリアージュの起源

ヨーロッパでは紀元前にワイン造りがスタートし、2000年以上のワインの歴史があります。

プロヴァンスに旅行して、地中海のシーフードを食べながら、初めの1杯はシャンパーニュ。
今だったらよくある光景ですが、中世のヨーロッパではこれは無理。
現在のように交通網がなかった時代、プロヴァンスから遠く離れたシャンパーニュのワインを運んでくる術がありません。

当時は水も安全に飲めるものではないため、ワインは水代わりとして飲まれていました。
つまり、他の選択肢がない中で、その地の食材から作られた料理と、その地で穫れたブドウから造るワインを飲む。
お互いが歩み寄り寄り添い合い、その中でマリアージュは生まれてきたのです。

例えば、プロヴァンスでは黒ブドウから赤ワインを造るのではなく、地中海のシーフードに良く合うロゼワインが造られました。

また、羊の飼育で有名なボルドーのポイヤック村では、子羊の料理にポイヤックの赤ワインを合わせます。

トリュフで有名なイタリア・ピエモンテのアルバでは、熟成したバローロにトリュフの香りが現れ、トリュフを使ったお料理との相性は抜群です!

このように同じ地方の料理とワインを合わせるという伝統的なマリアージュのスタイルは、偶然の一致ではなくて長い歴史の中で生み出された必然なのです。

一方、ニューワールドと呼ばれる、例えばカリフォルニアやオーストラリアでワインが造られるようになったのは1700年代後半。
ヨーロッパのような伝統的なマリアージュのスタイルはありません。

オージービーフにはやっぱりバロッサのシラーズ!
アメリカンビーフにはナパのカベルネ・ソーヴィニヨンが最高だ!
なんてことはないのでご注意を!

 

3,お肉料理とワインの「濃さ」をあわせるのがコツ

近年の赤ワインは非常に飲みごたえのある、フルボディのスタイルが多く見られます。
地球の温暖化や栽培技術の向上により、熟度の高いブドウが得られるようになった事も理由の一つですし、何より消費者の求めるスタイルがそういう方向へ向かったのだと思います。

ワインスクールの授業でのテイスティングの際、生徒さんたちから人気が高いのも、
やはり濃厚なスタイルのワイン。

しかし、こういうスタイルのワインは、単体で飲むにはとても印象的で満足度が高いのですが、料理と合わせるとなると少し話が違ってきます。
ワインの主張が強すぎて、料理の存在感が薄くなってしまうのです。

これはお肉料理でも例外ではありません。

お肉といえども、濃厚な赤ワインに負けないぐらいの濃さを持った、例えばサーロインのように脂の多い部位であったり、濃厚なソースで味付けされていたり。
そういうお肉料理であればもちろんフルボディの赤ワインとの相性は抜群。良いマリアージュです。

しかし、赤身の部位や、塩とコショーのシンプルな味付けの肉料理の場合には、ワインの香りや味わいばかりが強く感じられ、お肉だけ食べた方が美味しかった、というようなこともあるのです。

これでは良いマリアージュとは言えませんよね。

「お肉には赤ワイン!」は必ずしも正しくはないのです。

大切なのは、ワインと料理の『濃さ』を合わせること、まずはこれをしっかりと意識してください。

 

4,肉料理別ワインのマリアージュのご紹介


rose wine and garden grill

濃さを意識したマリアージュ例をご紹介します。

 

① 焼き鳥にあわせるワイン

焼き鳥を塩で食べるのであれば白ワインやロゼワインを合わせてみましょう。

例えば、「モモ肉」なら脂もあってお肉の味もしっかりしていますから、味わいがしっかりとしているシャルドネがおすすめ。
レモンを絞って食べるのなら、冷涼地で造られた酸味があるシャルドネも良いかもしれませんね。

「ささみの梅肉のせ」だったら、ピノ・ノワールのロゼワインがおすすめです。
特に梅のアロマを持つブルゴーニュのロゼは特に合いそうじゃないですか?

また、タレの焼き鳥であれば、甘めのタレとの相性が赤ワイン、例えば南仏のリーズナブルなグルナッシュとの相性がよいですよ。

② 豚肉料理にあわせるワイン

「アスパラの豚肉巻き」であれば、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランがオススメ!
アスパラを思わせるアロマに、レモンを絞ったような酸味、実はお肉に負けないほどのアルコールを持つボディが料理を引き立てます。

また、「トンカツ」にはニューワールドの樽熟成のシャルドネを是非。トンカツの香ばしさとお肉の甘味をさらに引き立ててくれます。
ソースで食べるならジンファンデルをあわせるのもオススメです。ソースの甘さとスパイシーさがジンファンデルとよく合います。

③ 牛肉にあわせるワイン

先ほど、濃厚な赤ワインには、サーロインステーキが合うと説明しました。ここでは、もう少し細かく牛肉とワインのマリアージュについてご紹介します。

 

1,ヒレステーキにあわせるワイン

牛肉だから、ステーキだからという理由で、赤ワインを選びたくなりますよね。
でも、ヒレ肉は、繊細な味わいのため、濃厚な赤ワインであるカベルネ・ソーヴィニヨンだと重すぎます。
では、ピノ・ノワール?という選択肢が思い浮かぶ方が多いかと思います。実際、ペアリングコースなどでもヒレステーキにピノ・ノワールを合わせることが多いかもしれません。
しかし、酸味が豊かなピノ・ノワールだと、ヒレ肉のわずかな脂身の甘味を酸味がさっぱりと消してしまうのです*。

であれば、ここは思い切って白ワインを合わせてみましょう!
牛肉に負けないボディを持ち、酸味は強すぎないニューワールドのシャルドネや、南仏やイタリアのヴェルメンティーノ、南アフリカの樽熟成タイプのシュナン・ブランがオススメです。

 

2,霜降り和牛にあわせるワイン

脂の甘みが特徴の霜降り和牛にあわせるなら、ナパのカヴェルネ・ソーヴィニヨンでしょう。霜降り和牛に負けない強い果実味やアルコール感でマリアージュを楽しめます。

 

3,オージービーフにあわせるワイン

オージービーフのステーキにはフランス・ローヌのシラーがおすすめです。
オージービーフは牧草を飼料としていることが一般的。お肉はやや香りが強めなので、ジビエや生肉、コショーの香りを持ったローヌのシラーが合うのです。

ただし、オージービーフでも甘い味付けのスペアリブなら、濃厚で甘やかさのあるバロッサのシラーズがおすすめです。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?
料理とワインの濃さを合わせ、その上で、このお料理にはどんな要素を足してあげればもっと美味しくなるのか?
そうやってマリアージュを考えてみてください。

ひとつのお料理に対して、色々なタイプのワインを合わせてみる実験をすると、組み合わせによってお料理の味わいもワインの味わいもこんなにも変わるのかと驚くはずです。

次回のコラムでは、焼肉とワインのマリアージュについてご紹介します。


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竹本聡子 Satoko Takemoto

J.S.A.認定ソムリエ
WSET® Level 3

『ワインを学ぶと世界が広がる!』
ワインバー勤務を経てソムリエ資格を取得。資格取得後、受験勉強中にただただ詰め込んだ知識をゆっくりひもといていき、すっかりワインのお勉強にはまる。
知らない事を知る喜びを伝えたくて、プライベートでのワイン勉強会”Salon de Soleil”を立ち上げ、その後、アカデミー・デュ・ヴァン講師に。
現在、女優・ナレーターとしても活動中。

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