日本でも近年、ワインはすっかり市民権を得たアルコール飲料となり、さまざまなジャンルの飲食店でハレの日の食卓を飾り、また「ウチ飲み」の強い味方として多くの人に愛されています。
こうした人気拡大にともない、日本国内で取得できるワインの資格や検定もどんどんと増えてきました。
ひと口にワインの資格・検定と言っても、選択肢は実に幅広いです。
ビギナー向け検定から専門性の高い資格、日本国内だけで通用する資格と国際的に通用する資格、世界中のワインを対象にする資格と特定の産地だけを対象にする資格など、ガイドがなければ迷ってしまいます。
本記事では、世界でも最大規模のワインスクールであるアカデミー・デュ・ヴァンが、日本国内で現在取得できるワインの資格・検定とその特徴を網羅します。
以下の目次でご紹介します。
【目次】
1.日本国内で現在取得できるワインの資格・検定
2.目的・レベル別おすすめ資格・検定
自分の目的や興味関心にあった資格・検定を見つけ、ぜひチャレンジしてください。
1.日本国内で現在取得できるワインの資格・検定
まずは、日本ソムリエ協会認定の資格から紹介します。
1) 日本ソムリエ協会認定資格「ソムリエ」
一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)が認定する、日本で最もポピュラーなワインに関する職業資格です。
一次試験日の時点において、ワインに関連した職業にフルタイムで通算3年以上従事していて、かつ現職であることが受験資格となっています。
試験は年に1回、夏から秋にかけて行われ、一次試験(択一式で知識を問うもの)、二次試験(テイスティング、論述)、三次試験(サービス実技)に分かれます。
過去7年(2015年~2022年)の平均合格率は31.3%%という難関資格で、半年から1年程度の準備期間が合格のためには必要になります。
日本のワイン業界で働く人の、ほぼ全員が取得を目指す資格です。
なお、この呼称資格を取得した方を対象とした上級資格として、「ソムリエ・エクセレンス(2019年度よりシニア呼称はエクセレンス呼称に名称変更)」があります。
2) 日本ソムリエ協会認定資格「ワインエキスパート」
一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)が認定する、ワイン愛好家向けの資格で、上記「ソムリエ」と同格の位置づけです。
満20歳以上の方であれば誰でも受験が可能ですが、試験内容はプロ向けの「ソムリエ」資格とほぼ同じというハードなもの(ただし、「ソムリエ」で課される二次試験の論述と、三次試験のサービス実技は、「ワインエキスパート」試験では課されません)。
直近5年の合格率(2018~2022年)は、平均合格率は38.8%という難関資格で、やはり半年から1年程度の準備期間が合格のためには必要になります。
にもかかわらず、認定開始年の1996年から2022年までの26年間で、合計21,064人もの方々がこの資格を手にされてきました。
試験は年1回で、上記「ソムリエ」資格と同時期に実施されます。この呼称資格を取得した方を対象とした上級資格として、「ワインエキスパート・エクセレンス(2019年度よりシニア呼称はエクセレンス呼称に名称変更)」があります。
3) 日本ソムリエ協会認定「ワイン検定 ブロンズクラス、シルバークラス」
一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)が、ワインに興味を持ち始めたビギナーの方を対象に行う検定試験で、上記「ソムリエ」「ワインエキスパート」の下位資格的な位置づけです。
満20歳以上の方なら誰でも受験可能なこの検定には、2つのレベルが設定されています。
「家庭でごワインを楽しく飲むための知識を習得する」ためのブロンズクラス。
「ブロンズクラス認定者を対象に、レストランでソムリエに相談したり、ワインショップでワインアドバイザーからアドバイスをもらったりしながら、好みのワインを選んでいくための知識を習得する」ためのシルバークラスがあります。
講習会と試験がセットになった半日間の検定試験で、ブロンズクラスは年に3回、シルバークラスは年に1回検定が実施されています(2018年実績)。
試験は筆記のみで、テイスティングはありません。
試験前の講習会をしっかりと聞けば、まず確実に合格できる難易度だとされています。
4) WSET®認定資格「 Level 1~Level 4」
英国に本部を置く酒類教育機関WSET®(Wine & Spirit Education Trust)が認定するレベル別の資格で、Level 1からLevel 4までがあります。
日本語で受験できるのはLevel 3までで、Level 4はすべて英語での試験です(Level 1~3についても英語での受験は可能)。
WSET®は、世界70カ国以上のワイン教育機関と提携して試験を実施しているため、この認定資格を取れば世界中で通用するというのが大きな特徴です。
近年は、日本でも受験者数が増加しています(世界でのWSET®認定資格の取得者総数は50万人を超えます)。
WSET®の試験は、認定を受けたワイン教育機関(日本にはアカデミー・デュ・ヴァンを含め4校)にて、所定の連続講義を受けた方だけが受験できるものです。
Level 1とLevel 2は択一式の筆記試験のみ、Level 3は択一式および記述式の筆記試験とテイスティング試験に分かれ、Level 4は小論文、記述、テイスティングから成る6つのユニットの試験に分かれます。
合格率はレベルが上がっていくにつれて下がり、Level 3の世界平均が50%前後です。
Level 3の難易度が日本ソムリエ協会の「ソムリエ」「ワインエキスパート」と同程度です(ただし、筆記の出題傾向や求められるテイスティング技術は、日本ソムリエ協会の試験とかなり異なり、論理性がより重視されます)。
受験にあたって特定の職業に従事している必要はありませんが、Level 4の受講・受験に限っては、事前にLevel 3の試験に合格していることが必須となります。
◆Japanese Qualifications | Wine & Spirit Education Trust
5) 国際ソムリエ協会認定資格「Internatinal A.S.I. Sommelier Diploma」
日本ソムリエ協会もメンバーであり、世界57カ国が加盟する国際ソムリエ協会(A.S.I.)が、2012年から年1回、ヨーロッパ、アメリカ大陸、アジア・オセアニア地区の3地域で実施している国際的なソムリエの資格試験です。
一次試験がテイスティングと筆記試験、二次試験が口頭試問とサービス実技で構成されます。
母国語以外の言語での受験が必須とされていて、日本では英語、フランス語、スペイン語のいずれかを選択します。
受験資格としては、日本ソムリエ協会の正会員または賛助会員で、ワインに関する職業での実務経験が4年以上あることが求められています(日本ソムリエ協会認定の「ソムリエ」資格の保持は必須ではありません)。
外国語での試験ということもあり、難易度はかなり高めです。
◆9th International A.S.I. Sommelier Diploma認定試験│一般社団法人日本ソムリエ協会
6) ワインエデュケーター協会認定資格「CSW」
米国のワインエデュケーター協会(SWE)が認定するワインの資格で、「CSW」はCertified Specialist of Wineの略です。
知識を問うコンピューター方式の択一式試験で、テイスティングはありません。
受験資格は特にありませんが、試験問題はすべて英語になります。
難易度は日本ソムリエ協会認定の「ソムリエ」「ワインエキスパート」資格と同じぐらいですが、出題分野・内容はそれなりに異なっています。
この資格を取れば、同団体の上級資格である「CWE」(Certified Wine Educator)の受験資格が得られます(「CWE」資格の試験は、現在日本では行われていません)。
7) 一般社団法人日本ワイン協会日本のワインを愛する会認定資格「日本ワイン検定 1級~3級」
近年、大きく発展を遂げている日本のワインについての検定資格で、一般社団法人日本ワイン協会 日本のワインを愛する会が2011年から認定しています。
レベル別に3段階に分かれており、1級が最上級です。
受験資格については、3級は特になし、2級は満20歳以上であること、1級については満20歳以上であることに加え、2級の合格者であることとなります。
試験は選択式で知識を問う一次試験とテイスティングの二次試験から成り(3級は一次試験のみ)、一次試験は全国180カ所以上ある試験センターで、希望の日時を選んで受験します(コンピューター方式の試験)。
2級、1級の二次試験(テイスティング)については、東京・大阪の会場で年に2回(6月と11月)実施されます。
8) 日本ドイツワイン協会連合会認定資格「ドイツワインケナー、ドイツワイン上級ケナー」
ドイツワインの普及・啓蒙を行う団体である一般社団法人日本ドイツワイン協会連合会が、2003年から認定している資格で、「ドイツワインケナー」と、その上級資格である「ドイツワイン上級ケナー」に分かれます。
試験は年に1回実施、両資格とも筆記とテイスティングからなっており、満20歳以上のドイツワイン愛好家であれば誰でも受験が可能です。
2017年に行われた試験の合格率は、「ドイツワインケナー」で55%、「ドイツワイン上級ケナー」で18%でした。
◆一般社団法人日本ドイツワイン協会連合会 ドイツワインケナー試験
9) 日本イタリアワインソムリエ認定資格「WSAイタリアワインソムリエ」
「WSAイタリアワインソムリエ」は、一般社団法人日本イタリアワインソムリエ(IVS Japan)が、2016年より認定しているイタリアワインに関する国際的なソムリエ資格です(イタリアでは国家資格)。
受験資格は特にありません。
試験は、イタリア人の講師を招聘しての数日間の短期集中コース(通訳付き)の最後に行われるもので、不合格の場合は、復習の場が与えられた上で再試験が行われます(そのため、基本的には受験者全員が合格できるようになっています)。
10)シェリー委員会認定資格「ベネシアンドール公式資格称号、シェリー・アンバサダー資格称号」
ベネシアンドールとは、ベネンシアという特有の器具を使ってシェリーの樽からワインを汲み出し、グラスに注ぐ優れた技術を持つ人のことをいいます。
シェリー委員会では2002年から、この技術とともにシェリーに関する知識・テイスティング能力を有する人たちに向けて、「ベネンシアドール公式資格称号」の認定試験を行ってきました。
毎年春に郵送による一次試験(筆記)が行われたのち、合格者は秋に東京で行われる二次試験(筆記、テイスティング、実技)に進みます。
二次試験に合格して資格認定がなされた方々を対象として、二次試験当日に最終実技審査が行われ、その年の最優秀者1名が選ばれるのもこの資格の面白い特徴です。
資格認定に至る合格率は例年6~7%ですから、大変な難関資格と言えるでしょう。
なお、「ベネンシアドール公式資格称号」は、満20歳以上でワインに関する職業についている人しか受験資格がありません。
一方、2015年から認定が始まった「シェリー・アンバサダー資格称号」は、満20歳以上であれば誰でも受験ができる資格で、「シェリーの知識を持って、ファンを増やす活動をする方のための」ものと説明されています。
試験は「ベネンシアドール公式資格称号」と同時期に行われますが、ベネンシアを使った実技試験がなく、出題傾向も多少異なります。
11)南アフリカワイン協会認定「南アフリカワイン検定」
南アフリカワインについての検定で、南アフリカワイン協会と南アフリカ共和国大使館との共催プロジェクトとして、2014年にスタートしました。
かつては会場に受験生が集まって事前セミナーを受講し、筆記・テイスティングの試験を受けて認定されていた資格なのですが、現在はオンラインでの筆記試験のみの検定に移行しています。
受験資格は特にありません。
◆南アフリカワイン検定 オンライン・エデュケーション・コース
12)一般社団法人葡萄酒技術研究会 エノログ部会認定資格「エノログ」
ワインを製造する醸造技術者向けの資格です。
認定団体である葡萄酒技術研究会 エノログ部会は、国際エノログ連盟に加盟しているため、日本で取得したエノログの資格は世界に通用します。
「エノログ」資格の認定を受けるためには、工業高等専門学校、大学、大学院でワイン醸造に関連する科学及び技術の知識を修得したことがあり、かつ3年以上の実務経験を持つ葡萄酒技術研究会会員でなければなりません。
この要件を満たした上で、エノログ部会長によりエノログとしての資質を満たし適格であると認められた場合、この資格が得られます(試験はありません)。
13)全日本ソムリエ連盟認定資格「ワインコーディネーター/ソムリエ」
前述の日本ソムリエ協会認定資格「ソムリエ」以外にも、「ソムリエ」を名乗れる民間資格が日本にはもうひとつあります。
NPO法人FBO(料飲専門家団体連合会)に属する団体である全日本ソムリエ連盟(ANSA)が、1997年から認定している「ワインコーディネーター/ソムリエ」です。
(受験者は、「ソムリエ」または「ワインコーディネーター」の資格名を任意に選ぶことができます。)
日本ソムリエ協会認定資格「ソムリエ」と違って、こちらは受験資格に職業要件がありません(申込時に満20歳以上であればOK)。
また、認定試験と事前のトレーニングコースがセットになっているのも、日本ソムリエ協会の「ソムリエ」資格試験と大きく違う点です。
試験の出題傾向としては、日本ソムリエ協会のものと比べて、より実務寄りの内容が多く含まれます。
認定者数は、2018年10月現在で約3,300名と、日本ソムリエ協会の「ソムリエ」資格認定者の10分の1ほどです。
◆ワインコーディネーター/ソムリエ | 全日本ソムリエ連盟(ANSA)
14)全日本ソムリエ連盟認定資格「ワインナビゲーター」
全日本ソムリエ連盟が、一般のワイン愛好家を主対象に認定している資格が「ワインナビゲーター」です。
ワインの基礎を学ぶ2時間のセミナーを受講すれば、無試験でこの資格の認定を受けることができます。受講資格は特にありません。
15)全日本ソムリエ連盟認定「ワイン検定 1級~3級」
全日本ソムリエ連盟も、日本ソムリエ協会と同じく「ワイン検定」という名の資格試験を行っています。こちらもワインビギナーを対象としたもので、1級~3級の3つのレベルがあります(1級が最上級)。
満20歳以上であれば誰でも受験ができますが、1級を受験するには2級に合格していなければなりません(ただし、同団体認定の「ワインコーディネーター/ソムリエ」資格保持者は1級からの受験が可能)。
いずれの級も、マークシートの択一式試験のみです。
目的・レベル別おすすめ資格・検定
日本で取得できるワインの資格や検定、実にさまざまなものがあるのに驚かれたのではないかと思います。
最後に、目的やレベル別のお勧め資格・検定をあげておきましょう。
●ビギナーの方に まずはお勧めの資格・検定
ワインビギナー / ワイン初心者には、以下の資格・検定がお勧めです。
●ワインに関する職業に関わられている方にお勧めの資格・検定
ワインに関する職業に関わられている方には、以下の資格・検定がお勧めです。
●知識やテイスティング技術を深めたい愛好家の方にお勧めの資格・検定
ワインに関する知識やテイスティング技術を深めたいワイン愛好家には、以下の資格・検定がお勧めです。
●世界に通用するものが欲しい方にお勧めの資格・検定
世界に通用する資格・検定としては、まずは以下がお勧めです。
上記の資格・検定をまずは取得され、そのあとご自身の好きな産地の資格を取ったり、外国語での受験になる難関資格に挑戦されたりするとよいでしょう。
皆様のご武運をお祈りしております!
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