2021年のワイントレンド7 ~今年知っておくべきフィールドとカテゴリーはこれだ!

2021年のワイントレンド7 ~今年知っておくべきフィールドとカテゴリーはこれだ!

全人類にとって忘れえぬヴィンテージになったのが昨年2020。パンデミックにより、私たちのワインの飲み方も大きくさま変わりした。そして今年2021には、どんなワインがどのように飲まれるのだろうか。独断と偏見による大予想を7項目でお届けしよう!

文/立花 峰夫


<目次>

1.オンライン購買とウチ飲みが引き続き主流に
2.ウェビナー、ヴァーチャル・テイスティングの隆盛と洗練
3.日本ワインブームは続く
4.自然派ワインとSDGS/エシカル消費
5.缶入りワインなど新しい容器
6.クリーンなオレンジワイン
7.ロゼがとうとう日本でも流行る
8.まとめ……東京オリンピックは!?


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1.オンライン購買とウチ飲みが引き続き主流に

オンライン購買とウチ飲みが引き続き主流に

2021年も少なくとも前半は、「レストランで楽しく飲む」雰囲気にはなってくれそうにない。COVID-19以前のようには。

辛いけどいなめない。でもワインとは離れがたい。

だから、ウチ飲み優先モードでのワイン消費は、2021年も続くしかない。外出そのものを自粛せにゃならん世情であるから、馴染みのワインショップの店先を冷やかすのもはばかられる。そんなわけで、オンラインでみんなワインを買うようになった。ワインに限らないが、世界中でEコマースの伸びが著しかった昨年。今年も同じ傾向が続くだろう。

ただし、「選択と淘汰」はもう始まっている。オンラインショップにも当然ながら、いい店と悪い店、あなたにあった店とそうでない店がある。相互扶助の精神で、潰れそうな店からせっせと不良在庫を買いこむのもひとつのチョイスだが、節操もなく勝ち馬に乗っかる人が大半だろうし、そうしたところで責められる筋合いはない。

2.ウェビナー、ヴァーチャル・テイスティングの隆盛と洗練

ウェビナー、ヴァーチャル・テイスティングの隆盛と洗練

2020年はワインの世界でも、ウェビナー(オンラインセミナー)とヴァーチャル・テイスティング元年となった。世界中のワイン醸造家、ジャーナリスト、エデュケーター、ソムリエたちなどが、情報伝達の場をリアルからヴァーチャルに移したのだ。

醸造家から文字通りの「生の声」を聞ける機会がほぼ消滅してしまったのは残念なことだが、一般のワイン愛好家にとっては、よかったこともある。それは、モニター画面を通じてであれ、造り手やワインのプロたちの語りを聞き、ともにワインを飲むチャンスが激増したことだ。

COVID-19の前、日本にやってきた造り手や専門家たちは、みなリアルの場でセミナーやディナーなどのイベントを開いていたが、そのほとんどが業界関係者に向けられたものだった。アカデミー・デュ・ヴァンで行っているような、愛好家向けのセミナーはかなりの例外なのだ。なぜ業界関係者に限っていたかというと、会場キャパという絶対的な制約があったからである。

しかし、オンラインのイベントなら、原理的にはほぼ無制限にオーディエンスの数を増やすことができる。だから、各種のワインイベントは、愛好家に開かれた。日本語通訳付きのものも、昨年後半から高頻度で開催されるようになったし、英語でOKの人ならその数は「膨大」という水準のものになる。

無料のものもあれば有料のものもあり、イベント中に飲むためのワイン購入が必須のものもあれば、そうした縛りがないものもあるが、なんにせよ「おウチから世界へ」というのは便利なことこの上ない。交通費ゼロ、移動時間ゼロ。開催地が500キロの遠方だろうが、太平洋の向こうだろうが、関係ないのである。ステイホームの状況を楽しめるよう、「お茶の間留学」に精を出すのは得策だ。

とはいえ、ここでもやはり「選択と淘汰」がすでに始まっている。生産者が画面に出てきただけで、視聴者のテンションが上がってくれていた時代は過ぎ去った。オーガナイズがお粗末そうな匂いがするものに、もはやウェビナー慣れした愛好家は洟もひっかけない。「見てソンした」と思いたくなければ、ゲストスピーカーと同じく、誰が/どこがオーガナイズしているイベントかを、ちゃんと選ぶようにしよう。

3.日本ワインブームは続く

日本ワインブームは続く

日本ワインの銘柄数は、今も急勾配を描いて増え続けている。一般社団法人日本ワインブドウ栽培協会(JVA)が先日発表した統計によれば、日本国内で栽培されたブドウを原料にワインを生産している蔵の数は、390にも達した(2020年11月時点)。2010年の数が196だから、過去10年で2倍になった計算だ。特に、過去5年は新しいワイナリーの設立ラッシュだった。

パンデミック下でも、この傾向はまだ続きそうな様子で、その背後には強い需要がある。つまり、みんな日本ワインを飲んでいるのだ。もちろん、玉石混交で「選択と淘汰」が始まっているのは日本ワインも同じだが、全体的な品質水準は高まるいっぽうだから、未来はまあまあ明るい、はずだ。

海外への渡航は今年も難しそうだから、ワイナリー訪問をするならさしあたって国内しか選択肢がない。幸いなことに、昨今は新旧問わず、訪問客の体験充実を意識したワイナリーがずいぶん増えた。同じエリアに複数のワイナリーが固まっている「産地」も多くできてきたから、ワイナリー・ホッピングも満喫できる。

本稿執筆時点では、11都府県で緊急事態宣言が発令中のため、他県への移動は控えねばならないが、いずれまた、GO TO TRAVELも再開される……かもしれない。そうなったらワイナリー訪問旅行へと、ぜひでかけよう!

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アカデミー・デュ・ヴァン


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4.自然派ワインとSDGS/エシカル消費

自然派ワインとSDGS/エシカル消費

ワインの世界では、世紀の変わり目ぐらいから「持続可能性(サステイナビリティ)」という言葉が盛んに語られてきたのだが、一般世間がやっと追いついてきた。昨今、テレビやSNS、ウェブメディアなどで「SDGS」(持続可能な開発目標)という言葉を聞かない日はない。「SDGS」ほどの頻度ではないものの、関連する「エシカル消費」も、バズワードとして飛び交うようになった。

SDGS、エシカル消費とはなんぞやということは、検索すればほんとうにいくらでも情報が出てくるので、本稿では触れない。

ワインの世界とこのふたつのキーワードは、過去10年世界を席巻してきた「自然派ワイン」をブリッジにつながる。一過性のブームから、定着のフェーズへと勝手に進んできた自然派ワインだが、世間全体の関心がSDGS/エシカル消費に向かうことによって、今年もう一度ブームが燃え上がりそうな気配がぷんぷんだ。

5.缶入りワインなど新しい容器

缶入りワインなど新しい容器

前項と深い関わりをもつのがこのハナシ。17世紀後半以来、3世紀半にわたって「ワインといえばこれ」というデフォルトだったガラス瓶が、「エコじゃなくね?」ということになってきた。ガラス瓶を製造するときには大量の二酸化炭素が排出される上に、ガラスは重い。運搬時の二酸化炭素排出料も大量なのだ。

もちろん、地元で造られたワインを地元で消費し、ガラス瓶を100%の率でリサイクルしている限りにおいて、上記の問題は生じない。が、わたしたちの住む世界はそんなふうにできていない。

そこで登場してきたのが、ガラスよりも軽い素材を容器に使ったものだ。缶入ワインは過去数年でかなりの銘柄数が登場してきたし、まだまだ増えそうな勢いのあるセクターである。缶も、製造時の二酸化炭素排出量は多い容器だが、リサイクル率が比較的高く、ガラスよりもはるかに軽いのがメリットである。

ほかにも、ペット樹脂を使ったボトル、再生紙を使ったボトルに入ったワインなどが登場してきた。

いまのところ、比較的低価格なワインにこうした「ガラス以外の容器」は用いられることが多いが、中には高級品もあり、今年はもっと増えてきそうだ。世間の関心が高く、消費者による需要という絶対的な後押しがあるのだから。

6.クリーンなオレンジワイン

クリーンなオレンジワイン

過去20年間で、赤白ロゼに続く「第4のジャンル」として市民権を得てきたのがオレンジである。果皮との浸漬を経た白ブドウ原料のワインのことで、実際にオレンジ色をしている。

ワインの曙の地コーカサス地方(ジョージア、アルメニアなど)では、8000年前から連綿と造り続けられてきたものだから、別に新しいものではまったくない。「再発見」されたのがイタリアの地で、20世紀がまさに終わろうとするタイミングだった。

ジョージア、アルメニア、そして再発見組のイタリアの生産者たちが仕込むオレンジが、もうほんとうにウルトラ・プリミティブな製造プロセスを経ているため、「オレンジ=自然派」と捉える向きも多いが、ちっとも自然ではないオレンジも今では多数ある。赤白ロゼ同様のカテゴリーのひとつだと考えたほうがいい。

そうした「一般化、世俗化」のプロセスを通じて、オレンジはずいぶんと「飲みやすく」なった。

加えて、近年は自然派ワインの生産者の中にも、「クリーン・ナチュラル」志向と呼ばれる動きが目だってきた。「自然なブドウ栽培、ワイン造りだけど、イケナイ匂いはしない」ものを造ろうとするものだ。これも、「飲みやすいオレンジ」の増加に貢献している。

というわけで今年、たまにはオレンジも買ってみよう。

7.ロゼがとうとう日本でも流行る

ロゼがとうとう日本でも流行る

5年ほど前から、世界の先端的ワイン市場では、辛口のロゼが爆発的に流行っている。かつては夏限定のワインという位置づけだったが、年中飲むものとして完全に定着した。

しかし、日本市場だけが置いてきぼりをくっている。なぜだか、さっぱり売れない。夏にさえ売れない。唯一、ワインショップの店頭に特設コーナーができるのが、桜の季節だ。だが昨年は、COVID-19のせいで花見もできなかったから、まったくいいとこなしだった。

ワイン業界人たちは毎年、「今年こそ」と鼻息を荒くするのだが、2021年にはとうとう宿願が叶うかもしれない。黒船が来航するからだ。イタリアを代表するカジュアル・スパークリングといえば、プロセッコをいの一番にあげる人が日本でも多いだろう。いままで白しかなかったこの泡に、この1月からロゼが加わったのである。

こいつは流行りそうだ。プロセッコのくせに、ピンク色をしているのだ。なんてポップでキャッチーなんだ。

このプロセッコ・ロゼの成功が導火線となって、ロゼ全体が日本でも人気を呼ぶ……と、そんなにうまくいくかしら?

8.まとめ……東京オリンピックは!?

以上、7項目にわたって今年のトレンドを占ってきたのだが、あえて触れなかったコトがある。

そう……延期になった東京オリンピックである。

20世紀後半、日本には何度かワインブームが起き、そのたびに消費量がドンと伸びてきたのだが、そのうちのひとつが1964年の東京オリンピックを契機としたものだった。外国人がいっぱいやってきて、ワインを飲む文化を連れてきたのだ、簡単に言うと。

2021年夏、東京オリンピックが開催されるなら、同じことが起きるだろう。もちろん、無観客開催かもしれないし、無観客じゃなくても外国からはまだ人が来られないかもしれない。本稿執筆時点では、まったくもってなんともいえない。

筆者は名うての非国民なので、スポーツの祭典にもガンバレ・ニッポンにも、1ミクロンの興味すらない。だが、業界の末端に生息するものとして、ワインが売れてくれなきゃ困っちゃうのだ。そんなわけで、東京オリンピック2020の開催を、本気で心から願うのである。

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立花 峰夫 Mineo Tachibana
タチバナ・ペール・エ・フィス代表。ワイン専門誌への記事執筆、欧米ワイン本の出版翻訳を精力的に行う。
翻訳書に『アンリ・ジャイエのワイン造り』ジャッキー・リゴー著、『シャンパン 泡の科学』ジェラール・リジェ=ベレール著、『ブルゴーニュワイン大全』ジャスパー・モリス著、『最高のワインを買い付ける』カーミット・リンチ著などがある。

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