あの人のワイン人生 vol.5 ~新山恵さん「中国料理とワインの名店を築く」

「先日、第1号店が20周年を迎えました。人間で言ったら20歳です。大人で一人前になったな、っていうイメージがあります―」そうしみじみ語るのは、中国料理店『礼華』を4店舗経営される社長の新山恵さん。飲食業界は非常に競争が激しく、新規開業した店舗の約30%が1年以内、70%が5年以内に廃業すると言われています。20年以上続けられる店舗は、まさにひと握りと言えるでしょう。新山さんに、20年の歩みをお聞きしました。

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【目次】
1. 全くの異業種からのスタート
2. 思いやりを具現化した新宿御苑のオアシス
3. フカヒレが教えてくれた、中国料理とワインの出会いううううう
4. ソムリエへの道
5. ソムリエ試験合格がもたらした相乗効果
6. 感謝と使命


1. 全くの異業種からのスタート

社会人1年目は、飲食店とまったく関係ないアパレル業界でキャリアをスタートさせました。その後は建築関係の内装の仕事に転職。現場管理が主な業務で、職人さんの手配、材料の発注、現場清掃など、何でもやりました。知人の紹介で、中国料理のシェフとして働く主人と知り合い結婚することになったとき、退職前に「インテリアコーディネーター」の資格を取得しました。もし、主人とお店をやって失敗したときに資格がないと困る、と思って一発奮起したのです。しかし実際は、開業するときに、自分で図面を描いたり、照明を考えたり…まさか前職や資格が開業に役立つとは思いませんでした。

2. 思いやりを具現化した新宿御苑のオアシス

2004年3月、晴れて新宿御苑に1号店をオープン。このお店は、自転車で御苑周辺を走っているときに、たまたま見つけた場所で、都心の緑の深さに一目惚れして決めました。

店名の『礼華』は古代中国の古い書物『礼記(らいき)』に由来します。その書のなかに「礼は飲食からはじまる」という一節があります。「礼」というのは人を思いやることです。まわりの気持ちを想像して動ける人やお店になりたい、と思いこの名前に決めました。開業以来、この「思いやり」ということを大切にしています。どうしたらお客様が喜んでくださるのか、お客様でなくても、店に関わってくれる業者やスタッフがどんな気持ちになるのか…、これは決して難しいことでなく「想像力」だと思っています。

3. フカヒレが教えてくれた、中国料理とワインの出会い

主人と知り合うまでは、高級中国料理には馴染みがなく、中華といえばチャーハンとラーメンしかし知りませんでした(笑)。しかし、あるとき主人が作ってくれたフカヒレを食べたときに、圧倒的な香り高さ、そして絶妙な塩加減と旨味に驚いたのです。すっかり中国料理の世界にひきこまれました。

「この奥深い中国料理に何を合わせたらいいか―」次第に、この問いが自分のなかのテーマになっていきました。ビールも、紹興酒も悪くないけど、どこかありきたり…。それならばワインがいいのではないか。20代の頃からワインが好きで、その幅の広さと、華やかさを知っていたからです。

4. ソムリエへの道

2013年、わたしにとって最大の転機となりました。ソムリエ資格取得のためにアカデミー・デュ・ヴァンに通うと決心したからです。開業当時から、中国料理とワインをウリにしていたものの、店に来てくれるソムリエさんはほとんどいませんでした。ある日、オーナーシェフでもある主人が、「ソムリエを雇うより、自分でソムリになった方がいいんじゃない」とアドバスしてくれたのです。

膨大な暗記量に圧倒されつつも、自宅に帰るとテレビや睡魔の誘惑に負けそうなので、毎日、営業後の深夜から午前2時までファミレスで勉強しました。何度もくじけそうになりましたが、講師やクラスメイトと励ましあいながら合格。ソムリエバッチを手にしたときには自信がつきました。なによりも家族や、スタッフ、常連のお客様が喜んでくれたことが本当に嬉しかったです。

シェフと新山社長。胸に輝くソムリエバッジ

5. ソムリエ試験合格がもたらした相乗効果

ソムリエ試験合格後、オーパス・ワンの前にて

ソムリエ資格取得後、思いがけない相乗効果が店に生まれました。まずは、ワインの売り上げた伸びたこと。「いいワインが揃っていて、良いサービスができるお店」と評判をいただき、お客様の数も増えました。2つ目に、この後、スタッフから9人もソムリエ合格者が出たことです。お客様から、「ソムリエが多いね」「頑張っているね」と褒められると、自分のことのように誇らしく思います。

今は、スタッフのソムリエ資格取得を応援しています。受験料のサポートはもちろん、勉強会、資格取得後の給与への反映…などなど。これはやはり、ブドウのバッチの重みを日々感じているからです。ときどき「ワインをわかっていれば、資格なんていらないよ」という声を耳にすることもあります。しかし、私は資格を取るということは、とても意義のあることだと思います。ブドウのバッジは、自分の自信にも繋がり、資格を取るため学校に行き、新しい友人が出来て、いろいろな出会いがあります。ワインを通してお料理のこと、ワインを作られる場所や地理的なこと、様々なことを学ぶことが出来たことは、わたしの大きな財産だと思います。

6. 感謝と使命

スタッフを家族のように大切に思っています。なんといっても、お店がここまで成長してきたのはスタッフのおかげと感謝しているからです。『礼華』から巣立って、自分のお店を持つというスタッフも出てきています。ソムリエ資格を取った今、今度は、彼らの成長を支えていくことが、わたしの大切な使命です。そのためにも、思いやりを大切にしつつ、中国料理とワインの魅力を、お客様だけでなく、スタッフにも日々伝えていきたいと思っています。

社員と伊勢神宮にて

プロフィール

新山恵(にいやまめぐみ)
中華料理「礼華」(https://www.rai-ka.com

  • 星座:牡羊座
  • 血液型:O型
  • ワイン以外の趣味:お料理を作ること
  • 好きな食べ物:卵
  • もし生まれ変わったら何になりたい?:同じように食に携わる仕事
  • 酔っぱらったらどうなる?:眠る
  • 人生を変えたワイン:ジョスメイヤー フルール・ド・ロテュス

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