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葉山考太郎先生が1999年に出版した『辛口・軽口ワイン辞典』(日経BP社)の続編です。ワインに関する用語が、葉山先生特有の痛快な語り口で解説されています。今回は、「ゆ」で始まる語から「る」で始まる語までをお届けします。
見出し語について
(1) アルファベットで始まる語はカタカナ表記で配列した。【例】AOC⇒エー・オー・シー
(2) シャトーやドメーヌが付くものは、それを除いた見出し語で収録した。【例】シャトー・ラヤス⇒ラヤス、シャトー
(3) 人名は、「姓+名」で収録した。【例】ロバート・パーカー⇒パーカー、ロバート
■ゆ■
ゆびきり(指切り)
約束をする場合、絶対に約束を守ることを誓う儀式。ワイン愛好家にウソをつかせるのは超簡単で、小指を絡ませて、「指切りげんまん、ウソついたらジャック・セロス千本飲ます」と言えばいい。
ユンケル (Yunker)
今からワイン会だけど元気のないときや、二日酔いの朝に飲むドリンク剤。一番の売れ筋はシリーズ27種類(この新痛快ワイン辞典を書き始めた頃は12種類だった)の中で最低価格のローヤルC(30ml、400円前後)。これは、ローヤルD同様、医薬部外品なので、コンビニでも買えるのが人気の秘密。最高価格はユンケル・スター(50ml、3000円前後)。750ccに換算すると、約4万5千円で、ムルソー・ペリエール並み。グラス売りのペリエールを飲んでいると思えば、霊験あらたか。
■よ■
よいソムリエのじょうけん(良いソムリエの条件)
客から見て、良いソムリエとは、「安くてウマいワインを薦めてくれる人」。一方、店にとって良いソムリエとは「高いワインをバンバン客に売って、利益を上げてくれる人」。この両方を満足させるのが本当に良いソムリエだけど、売値が安いのに利益幅が大きいワインなんて、「白いカラス」「正直な政治家」「美女の転校生」ぐらい少ないのでは?
■ら■
ラグビーごかこくたいこうじあい(グビー五カ国対抗試合)
イングランド、アイルランド、スコットランド、ウェールズ、フランスで争うラグビーの対抗試合のこと。男子更衣室に女子が一人迷い込んだように、英国グループにフランスが入っているのは、フランスのラグビー・チームは全員、ボルドー出身だかららしい。ボルドーの女王がイングランドの王様と結婚して、一時、ボルドーが英国領になったことがあるためか、いまだにボルドーをイギリス領と思っている英国人が少なくないよう。昔のことが頭にこびりついている現象は、京都の老人が、東京へ行くことを「東(あずま)下り」と言うのに似ている?
ラタフィア (Ratafia)
マール(粕取りブランデー)1/3、ブドウ・ジュースを2/3混ぜたリキュールの一種。スッキリした酸味と軽い甘味があり、そこにマールの香りが重なり、冷やすとアペリティフに絶好。ブルゴーニュとシャンパーニュのものが有名だけど、知っている人はかなりのワイン通。稀少価値は最高で、ロマネ・コンティを飲んだ人より、これを飲んだ人の方がずっと少ないかも。アンリ・ジローのラタフィアが出回っているようなので、是非、試してほしい。(関連項目:マール)
ラベルもあじのうち(ラベルも味のうち)
高級高価なワインを味わう場合の大原則。いかに希少価値の高い超高級ワインでも、ブラインドで飲むと偉大さがストレートに伝わらないため、かなり安目の味になる。やはり、高級高価なワインはラベルを見ながら、ワイワイガヤガヤと賑やかに盛り上がりながら飲まないとつまらない。逆に、コスト・パフォーマンスの良いワインは、ブラインドで強豪の中に入れるとスゴさが分かる。(関連項目:ラベルの威力)
■り■
リキテンシュタイン、ロイ (Roy Lichitenstein)
1985年のテタンジェ・コレクションのボトル絵を描いたアメリカ人画家。アンディー・ウォーホルと並ぶポップ・アートの大物。一コマ漫画が得意で、パルプ・マガジンの「スパイダー・マン」に登場しそうな金髪女性をセリフ付きでよく描いている。1995年、東京都現代美術館が6億円でリキテンシュタインの『ヘアリボンの少女』を購入したとき、「何でマンガに何億円も税金を使うんだ」と大騒ぎになった。その気持ちは分かるけど……。
×リバース・オズモシス (reverse osmosis)
逆浸透。水は通すが糖分は通さない特殊な膜の片方にブドウ・ジュースを入れて圧力をかけ、水分を浸透膜の向こうに追いやり、凝縮させること。潜水艦で海水から真水を作る場合も同じことをする(電気を食うので遠慮なくこの方法で真水を作れるのは原子力潜水艦だけ)。水分を抜く意味では、貴腐菌がブドウの皮に、水の分子は通れるが砂糖は通さない絶妙の大きさの穴を開けてブドウ・ジュースを凝縮させる貴腐ブドウと同じ原理。逆浸透膜みたいな大掛かりな装置なしに、畑で同じことをする貴腐菌はエラい。この言葉は、醸造の超専門用語だけど、知っているからといって、ワインがウマくはなる訳ではない。
リロイ (Leroy)
「Leroy」を「リロイ」ではなく「ルロワ」と読めるようになったら、現在、ワインにハマっている真っ最中と思って良い。
■る■
ルイ・ラトゥール (Louis Latour)
ブルゴーニュの大手名門ネゴシアン。100年前、ブルゴーニュで最初にシャルドネを植えたせいか、赤より白を作るのが大得意。大銘醸、シャルルマーニュの畑を半分以上所有しているが、ドメーヌとして出さず、全てネゴシアン物なのは「手抜き」の声あり。
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2020.10.23
葉山考太郎 Kotaro Hayama
シャンパーニュとブルゴーニュとタダ酒を愛するワイン・ライター。ワイン専門誌『ヴィノテーク』等に軽薄短小なコラムを連載。ワインの年間純飲酒量は 400リットルを超える。これにより、2005年、シャンパーニュ騎士団のシュヴァリエを授章。主な著書は、『ワイン道』『シャンパンの教え』『辛口/軽口ワイン辞典(いずれも、日経BP社)』『偏愛ワイン録(講談社)』、訳書は、『ラルース ワイン通のABC』『パリスの審判(いずれも、日経BP社)』。