初デートで正しくワインで失敗する方法 vol.5:ワインでデートのお悩み相談室

ワイン・エキスパートに合格したほどワイン愛好家なら、デートのお相手ももちろんワインが大好き。となれば、ワインをダシにデートをするのが定石ですね。
今回は、熱い想いを寄せている男性との恋愛を成就させたいと願う女性から、お悩み相談が来ていて、ワインと男性にまつわる深刻なお悩みに回答します。

文/葉山考太郎


【目次】

質問1
質問2
質問3


①質問1

「ワイン・エキスパート」に合格していても、「デート・エキスパート」は?

物凄く困っています。一日でワイン通に見える方法を教えてください。プロジェクトの打ち上げで、明日、お洒落なワイン・バーへ行くことになりました。プロジェクトの全員(男性4人、女性4人)が感染防止を徹底して、参加するのですが、その中のプロジェクト・リーダーの男性が大好きでたまりません。お店を選んだのは彼で、ワインが大好きだそうです。頑張って、彼の隣の席を確保しますが、ワインのことを全く知らないので、彼から馬鹿にされないか心配です。ワイン通に見えて、彼に好かれる方法を教えてください。(27歳、女性、都内在住、物流関係)

回答1
貴女が望んでいることは、「1日で、J.S.バッハの超絶技巧のピアノ独奏曲、『半音階的幻想曲とフーガ ニ短調』を弾けるようになりたい」と同じです。でも、弾ける雰囲気を出すだけなら、ワイン通に見せかけるだけなら超簡単ですよ。「オレ、腹話術が得意なんだ」と言いながら、携帯電話越しに腹話術を披露する程度の効果はあります。熱い想いを寄せる男性のために、ワインに詳しくなりたいというのは、物凄く真っ当な理由ですね。貴女には、彼だけでなく、ワインも好きになってもらえると、私も嬉しく思います。上手く行くよう、応援しています。
まずは、自宅にあるワイン・グラスに3分の1ほど水を入れてグラスを回す練習をしましょう。グラスを右手の人指し指と中指で挟み、逆時計回りに回します。テーブル・クロスの上を滑らせるのがコツです。テレビを見ながらでも、電話で誰かと話しながらでも、無意識にグラスを回せると合格です(10分も回せばすぐにできます)。これで、明日、彼の隣に座った時、「液体はなんでも回す」というワイン通の癖が身に付いたことになります。明日は、ワインに限らず、コップの水も、「つい、うっかり」という感じでクルクル回してください。それを見た彼は、「いつも、ワインを飲んでるの?」と言うはずですので、「ワインはそんなに飲んでませんし、ワインのことは全然知りません」と強く否定してください。本当にその通りなのですが、彼は、「強い否定は肯定」と勘違いしてくれます。
次はワインの飲み方です。1杯目が出てきたら、まず、グラスを回さず、そのまま4、5秒香りを嗅ぐフリをしてください(本当に嗅いでもかまいません。この時の香りをアロマと呼び、ブドウの品種の特徴が出るのですが、そこまで深入りする必要はありません)。で、左上の天井を見て「ふーん」という表情をしましょう(「昨日のランチで何を食べたっけ?」と考えるといいでしょう)。次は、これまで練習してきたグラス回しです。5、6秒ほど回してから、香りを嗅ぐフリをします(この香りをブーケと呼び、発酵や熟成の特徴が出るのですが、そんなことは恋の成就と無関係ですので、無視してください)。で、今度は天井の右上を見て「へェー」という表情をしましょう(「昨日の晩御飯で何を食べたっけ?」と考えるといいでしょう)。その後で、一口飲みます。飲んだ後、フンフンと2、3回、軽く頷いてください(同僚に、「明日のランチ、新しくできたイタリアンに行かない?」と誘われた時と同じ頷き方で構いません)。そんな仕草をすると、彼は必ず、「さっき、ワインのこと、知らないって言ってたけど、本当は詳しいんだね」と感心してくれます。この瞬間、彼の関心は、100%、貴女に向かい、「このワイン、僕が選んだんだけど、どう?」と聞いてきます。
飲んでいるワインをどのようにコメントするかですが、ワイン通っぽく見える「5つの試飲キー・ワード」をバシバシ使うことをおススメします。この5つは、初心者でも簡単に使えるのに嫌味がないのが素晴らしいところです。
最初のキー・ワードは「果実味」です。赤白泡のどんなワインを飲んでも、「果実味がありますね」と言えば、物凄くプロっぽく聞こえます。ワインはブドウで作るので、「果実味がある」は当たり前。小学生に、「君は若いねぇ」と言う以上に当然です。逆に、一口も飲まなくても、「そこそこの果実味がありますね」と言えば、みんなが納得します(私も、大量にワインを試飲する場合、最後は疲れてくるし、酸で歯が痛くなるので、飲まずに試飲コメントを書くことがあります。その時に便利な言葉が「果実味」です。なお、「飲まずにコメントする」は、私の企業秘密ですので、公言しないでください)。「フルーティー」も、果実味と全く同じ意味ですが、チャラく聞こえるで、彼の前では使ってはなりません。「かなりの果実味がある」「思った以上に果実味がある」など、いろんな言い方をするとイイでしょう。
キー・ワードその2は、「凝縮感」です。要は、水っぽくないことで、高級ワインの重要な要素です。少し濃厚なワインなら赤白のどちらでも、例えば、「1本980円のワインなのに、そこそこの凝縮感がありますね」と言えば、ハッタリ抜群です。
3番目のキー・ワードは「タンニン」で、赤ワインの渋みのことです。めちゃくちゃ渋い赤を飲んで、「うわぁ、渋ぅ~」ではなく、「タンニンがたっぷりですね(あるいは、バチバチですねぇ)」と言うとよいでしょう。ワイン・バーで出る赤ワインには、必ず渋みがありますので、無条件に「タンニンがいい感じですね」と言いましょう。
キー・ワードその4は、「ミネラル感」です。本当の意味は誰にも分からないのに、辛口の白を飲んだ時、試飲会の全員が必ず使う不思議な言葉です。甘味が全くないキリッとした白(ワイン好きの彼が選ぶ白ワインとして、半甘口の白は出てこないと思います)を飲んだ時、「ミネラル感がいい感じですね」と言うとそれらしく聞こえます。
最後のキー・ワードは「酸」です。これも、赤白の両方でよく使います。「キレいな酸がありますね」とコメントすれば、物凄くそれらしく聞こえます(酸味のないワインはないので、「果実味」と同様、あらゆるワインに無条件で使用できます)。
ミネラル、果実味、タンニン、凝縮感、酸の5つの頭文字を取ると、「ミカタギョウサン」になります。京都の古い言葉で「ぎょうさん」は「たくさん」の意味。「味方ぎょうさん」と覚えて、明日の打ち上げ飲み会でたっぷり使ってください。みんなが味方ですよ。しっかりお気張りやす。

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