ネグロアマーロとは? ~プリミティーヴォだけじゃない!プーリア原産「ネグロアマーロ」の魅力を徹底解説

プーリア州のブドウというとまず筆頭に上がるのがプリミティーヴォですが、黒ブドウ品種ネグロアマーロを忘れてはいけません。南イタリアの太陽を詰め込んだようなワインは、濃厚な赤がお好きな方にもおすすめで、コストパフォーマンスが良いものも多いです。今回はネグロアマーロについて学び、イタリアワインをもっと楽しめるようになりましょう!

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【目次】
1. ネグロアマーロとは? ワインの香りや味わいの特徴
2. プーリア州の気候と栽培環境
3. ネグロアマーロのワイン造りと代表的生産者
4. ネグロアマーロの有名産地とDOC
5. おすすめペアリングとネグロアマーロの楽しみ方
6. ネグロアマーロのまとめ


1. ネグロアマーロとは? ワインの香りや味わいの特徴

ネグロアマーロはイタリア土着の黒ブドウ品種。世界のネグロアマーロのほとんどを生産するのがプーリア、南イタリアにあるかかとの州です。名前のイタリア語で「黒くて苦い」を意味するとおり、黒みがかった濃い紫色の、パワフルな赤ワインを生み出します。そのため長年フランスや北イタリアのワインを補強するバルクワインとして重宝されてきました。

辛口の赤ワインやロゼになるのが多いのですが、スパークリングや甘口、酒精強化ワインにもなります。またネグロアマーロ単一だけでなく、ブレンドでも使用され、相性がいいのが同じくプーリアの土着品種マルヴァジア・ネーラ。酸が強くタンニンが粗いネグロアマーロと、アロマとなめらかな質感を与えるマルヴァジア・ネーラはお互いを補強し合ってくれるのです。

さてネグロアマーロの赤ワインのお味は、ブラックベリー、ブラックチェリー、プラムといった黒系果実の風味、クローヴやナツメグ、シナモン、甘草などのスパイス、ビターチョコレートのようなほろ苦い余韻が特徴。いい感じに「アマ―ロ」が効いています。熟成するとドライフルーツやタバコ、スパイスが増し、深みのある味わいにもなります。

同じプーリア州の黒ブドウといえば、プリミティーヴォ(ジンファンデルのシノニム:同物異名)がまず浮かぶかと思いますが、果実味豊かで早飲みにも向くプリミティーヴォに比べると、酸味とタンニンがよりしっかりしていて熟成向きなのがネグロアマーロといえるでしょう。またネグロアマーロはロゼの生産にも向いた品種で、その美しいピンクがかったオレンジ色の液体は、イタリアで夏のバカンスのお供として愛飲されています。

2. プーリア州の気候と栽培環境

ネグロアマーロは高収量かつ病気や干ばつにも強いのに加え、酸が保たれやすいため、温暖なプーリア州の気候に適しています。栽培は古代ローマ時代にまで遡り、現在はサンジョヴェーゼ、プリミティーヴォに続き州で3位のブドウ栽培面積を誇っています。プーリアの記事(「プーリア ~コスパワインの宝庫!プーリア州のワインとその魅力を徹底解説」)でもご紹介しましたが、この州はブドウ栽培に理想的な地中海気候に恵まれ、平地が多く機械収穫にも向いているため、安価に安定した収量が得られるワイン産地です。生産量もイタリアトップ3の常連で、かつてはヨーロッパ最大のバルクワイン供給地でもありました。そのワインの元となっていたのが、ネグロアマーロやプリミティーヴォといったプーリア土着の品種なのです。

徐々にワインが供給過多になり、バルクワイン需要が激減したのが1980年代以降。EUによるブドウ樹の引き抜き政策がすすめられ、ワインも質から量への転換が進んだ結果、品質重視の造り手や興味深いワインもでてきています。また最近の傾向としてシャルドネやカベルネなどの王道品種だけでなく、その土地固有のユニークな品種が着目されている潮流もあり、ネグロアマーロなどの品種も価値が再発見されているといえます。

なかでもプーリア州の先端にあるサレント半島では、栽培品種の80%がネグロアマーロ。現存する古い畑では、今も伝統的にマルヴァジア・ネーラと一緒に畑に植えられているのが多く、この2品種を同時収穫してブレンドする生産者も多いそう。また、南部では、強い日差しからブドウを守るために伝統的にアルベレッロ仕立て(株仕立て)で植えられていたのですが、機械収穫ができず手間がかかるうえ、収量も制限されるため、垣根仕立てなどに移り変わってきました。今でも伝統を守る生産者は、株仕立てを貫き、古樹のブドウから凝縮感深みのあるワインを生み出しています。

3. ネグロアマーロのワイン造りと代表的生産者

その色調の濃さからも想像できるとおり、ネグロアマーロは果皮が厚くみっちり詰まった密着果。そのため色素やタンニンを抽出しすぎないように醸造するのがポイントで、赤ワインの醸し発酵はたいてい7~10日です。リーズナブルで早飲みのタイプはステンレスタンクで発酵・熟成される場合もありますが、中価格帯以上になると、1年以上樽で熟成される銘柄が多く、どちらのスタイルも造れます。ロゼを造る場合は、酸を残すためにネグロアマーロを早摘みし、チャーミングな果実味と軽やかな味わいに仕上げていきます。

ネグロアマーロ

代表的な生産者としてまず挙げられるのが、レオーネ・デ・カストリス。1665年創立のプーリア最古の歴史を持つワイナリーです。イタリアで最初にロゼをボトリングした生産者として名高く、サリーチェ・サレンティーノDOCの設立(1976年)にも貢献しました。プーリア固有のブドウ品種、ネグロアマーロ、マルヴァジア・ネーラ、ヴェルデーカ、ビアンコ・ダレッサーノなどとともに、年月をかけて国際的なブドウ品種、シャルドネ、ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨンなどを植栽し、年間約250万本のワインを生産するビッグブランドです。

1935年設立の家族経営のワイナリー・ヴァローネは、ブドウを陰干しするアパッシメント製法で作ったネグロアマーロが有名。陰干しするとブドウの果実から水分を飛ぶため、非常に濃密な味わいのワインに仕上がります。

プーリア州では協同組合の力も強く、技術の向上や設備投資等によりクオリティも上がっています。例えばプーリア最古の協同組合である1932年設立のプロデュットーリ・ヴィニ・マンドゥーリアは、減農薬栽培や収量制限を行い、高品質でコストパフォーマンスに秀でたワインを造っています。全般的にプーリアはリーズナブルなワインが多いので、日常使いができるのはありがたいですね。

4. ネグロアマーロの有名産地とDOC

by Ralf – stock.adobe.com

イタリアでネグロアマーロをメインに使用するDOCはいくつかありますが、最も有名なのがサリーチェ・サレンティーノDOCです。

サリーチェ・サレンティーノDOCは、スプマンテ、白から甘口まで造れる包括的なDOC。幅広い品種の使用が認められていますが、ロゼやロッソの場合はネグロアマーロを75%以上使用し、90%以上でラベルに表示できます(伝統的なブレンドはネグロアマーロに20%マルヴァジア・ネーラ)。最大収量は84hL/haで、リゼルヴァワインの場合は最低2年間の熟成(うち木樽で6か月)が必要です。

その他のDOCとしてはスクインツァーノDOCコペルティーノDOCレヴェラーノDOCリッツァーノDOCがあります。サレント半島のアドリア海側にあるスクインツァーノDOCは、実はサリーチェ・サレンティーノよりもネグロアマーロの栽培の歴史が長い場所。ここからサリーチェ・サレンティーノに広がりました。海に近いため、ワインには赤系果実や軽やかさ、きめ細やかなタンニンと美しいフィネスがあるといわれています。

プーリア州以外だと、バジリカータ州やカンパーニャ州でも少量生産されているほか、オーストラリアでもわずかに生産されています。南オーストラリア・リバーランドの自然派生産者「デリンクエンテ」はネグロアマーロ100%のロゼ・ペットナットをリリースしており、あの変顔のラベルは一度見たら忘れられません。

https://delinquentewineco.com/

5. おすすめペアリングとネグロアマーロの楽しみ方

食とワインが切っても切れない関係のイタリア。当然ネグロアマーロも食事と一緒に合わせると美味しさ倍増です!トマトソースを使ったピッツァやパスタなど定番イタリアンに合わせても良いですし(きんと冷やしたロゼもいいですね!)、赤ワインと合わせるなら豪快に焼いた炭火焼きのお肉や煮込み、香辛料をたっぷり使ったお料理もおすすめ。ハーブ&スパイスのニュアンスの強いものは、子羊のような癖のあるお肉やジビエ系とも相性抜群です。

サレント半島はヨーロッパから人が集まるリゾート地としても有名。ロゼの産地としても有名な土地なので、暑い夏にネグロアマーロのロゼも愛飲されています。なかなかロゼ人気に火が付かない日本ですが、イタリア人を見習って、ロゼを日常に取り入れてみるのもいいかもしれません。

6. ネグロアマーロのまとめ

プーリア州といえば、ついプリミティ―ヴォにいきがちですが、実はネグロアマーロも古代より栽培されている大事な固有品種。日本でもリーズナブルに手に入りますし、デイリーワインとしての選択肢も豊富です。おいしいネグロアマーロのワインを見つけて、ご機嫌な夜をお過ごしください!

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