ブドウ栽培面積世界第1位、輸出量第2位、生産量第3位に君臨するワイン大国スペイン。庶民の味方安旨ワインから、通をもうならせる有名高級ワインまで、その多彩な魅力でワイン好きの心を掴んでいます。面白いのは、今もなおダイナミックにワイン産地として進化し続けているところ。好奇心くすぐられる未知なるワインや知られざる産地がまだまだあるのです。そんな高すぎるポテンシャルを持つスペインワインの魅力を本記事ではたっぷりお伝えしていきます。
【目次】
1. 眠れる獅子スペインの目覚め
2. 王者テンプラニーリョと土着品種
3. スペインの気候と問題点
4. スペインワインの格付けと熟成規定
5. 急激な品質向上と樽使いの変遷
6. 主要産地と有名ワイン
7. スペインワインの当たり年
8. まとめ
1. 眠れる獅子スペインの目覚め
カバ(スパークリングワイン)からシェリー(酒精強化ワイン)まで多様なスタイルのワインが見つかるスペイン。土着品種も多く、好奇心旺盛な私たちの心を引き付けてやみません。その特徴を一言で表すならば、「古くて新しい産地」という言葉がぴったりです。紀元前にまで遡る長いワイン造りの歴史を持つスペインですが、19世紀にいたるまで世界的に有名だったのは、海を通して海外へ輸出されていたシェリーやマラガなど酒精強化ワインでした。スティルワインに初めて注目が集まるのは19世紀後半。ヨーロッパをフィロキセラが襲い激減したワインの生産量を埋めようとボルドーの商人がリオハに目をつけたのです。ちょうどリオハの玄関口アロまで鉄道が通り、陸輸送が可能になったこともリオハワインの需要増に拍車をかけました。リオハ以外の産地が有名になるのは、スペインがEUに加盟した1986年代以降。プリオラートやリベラ・デル・デュエロを皮切りに素晴らしい産地が次々見いだされ、現在はアラゴンやグレドス山脈周辺の古木のワインにも注目が集まるなど、可能性が再発掘され続けています。
眠れる獅子のごとくポテンシャルを持ちながらも最近目覚めた産地だけに、今でもダイナミックに進化し続けているのが、スペインワインの大きな魅力です。
2. 王者テンプラニーリョと土着品種
スペインといえば、テンプラニーリョ!スペイン全土で栽培される黒ブドウ栽培面積トップに君臨する王者です。テンプラは「天ぷら」ではなく、スペイン語で「早い」の意味。その実、熟すのが早い品種です。赤系や黒系果実、スパイス等の香りとしなやかな口当たりが特徴のバランスの良いワインになります。地方によって多くの呼び名を持ち、リベラ・デル・デュエロでは「ティント・フィノ」、ラ・マンチャ地方では「センシベル」、トロでは「ティンタ・デ・トロ」、カタルーニャ州では「ウル・デ・リェブレ」として根付いています。単一でも優れたワインを産みますが、酸やタンニン、ボディといったブドウ品種の骨格となる要素が強くないため、他の品種とブレンドされることも多い品種です。詳細はこちらの記事をご覧ください。
最近世界的に注目されているのが、生産量第2位のガルナッチャ。フランスではグルナッシュでしたね。チャーミングな果実香、酸味と渋みの穏やかな芳醇なワインの原料になることの多い品種です。皮が薄いためロゼの原料としても好まれ、スペインで有名なナバラ産のロゼはグルナッシュが主原料です。最近では古木のガルナッチャにも注目が集まっています。詳しくはこちらで解説しています。
そしてピノ・ノワール好きなら、おすすめしたいのがメンシア。赤果実や花、ハーブ、スパイスなど繊細な香りを持ち透明感溢れるワインを造るメンシアは、フードフレンドリーで軽やかなワインが流行している世界のワイントレンドにぴったりです。
白ワイン用の品種も、土着品種のオンパレード。白黒合わせても栽培面積第一を誇るアイレンは、基本的には大量生産型ワインになります。猛暑にも耐えうる馬車馬品種のため、降水量が極端に少ない内陸部の厳しい気候に適し、スペイン最大のDOラ・マンチャで最も多く栽培されています。収量を増やしてもそれなりにフルーティーなワインが造れるため、1000円以下の安旨白ワインの原料は、アイレンであることが多いのです。
現時点で今世紀最大のヒットといえば、ガリシア地方のアルバリーニョ。果皮が比較的厚く病気に強いことから雨の多いガリシア地方で繁栄している白ブドウ品種です。香りはアロマチックですが、リースリングやソーヴィニヨン・ブランほど強くなく、ほどよい華やかさと塩気を伴うフレッシュな口当たりが心地よい「海のワイン」として人気を博しました。降水量が多い日本でも可能性が期待され、新潟県の角田浜周辺はアルバリーニョの産地として地位を確立しているほか、富山県、山形県、大分県等でも栽培が増えている興味深い品種です。
そのほか再注目されているのが、リオハの白ワインに使われるヴィウラ。フランスではマカベオと呼ばれ、カバにも使われる品種です。樽熟成するとナッツ風味のこってりと非常に複雑なワインになりますが、最近は酸と果実味を重視したフレッシュなタイプも増えています。
もう一つ、白ブドウのトレンドといえば、ガリシア地方のゴデーリョ!リアスバイシャスから内陸に入ったバルデオラスという地区を一躍有名にした品種で、酸のしっかりしたフレッシュな白ワインから樽熟成タイプまで造られます。
このように土着品種がのびのびと個性を発揮しているスペインですが、国際品種もほどよく取り入れられています。例えばカタルーニャ地方のペネデスという産地は、国際品種の植樹をいちはやく進めてきた産地でもあり、今でもカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなどさまざまな国際品種から質の高いワインを造っています。また、リベラ・デル・ドゥエロではテンプラニーリョにボルドー品種を混ぜるなど、ブレンドにも国際品種が使用されます。
3. スペインの気候と問題点
ピレネー山脈を挟んでフランスと国境を接し、地中海と大西洋に囲まれたスペイン。南部のアンダルシア地方からアフリカ大陸までは船でいける距離にある温暖な産地ですが、北緯36~43度という緯度の低さとは裏腹に標高が高い産地も多いため、酸が保たれたフレッシュなワインも多く造っています。
広大なスペインの気候は大きく3つに分かれます。一つが地中海と面した東部の地中海性気候。中央高原メセタに広がる内陸部は大陸性気候。厳しい冬に酷暑の夏、昼夜の寒暖差の激しいエリアです。スペイン北部や北西部など大西洋沿岸は、温和な海洋性気候。基本乾燥していて病害も少ないスペインですが、このあたりは雨が多いエリア。皮が厚くて病気に強いアルバリーニョが伝統的に棚で仕立てられたのも納得です(最近は垣根仕立ても増加中)。
温暖なスペインで常々大きな問題となってきたのが、猛暑による水不足。特にラ・マンチャなど内陸エリアでは、よく低密度の株仕立てでブドウが植えられています。極度に乾燥した産地に適した仕立て方ですが、問題は収量が少なくなること。スペインが栽培面積では世界首位にも関わらず生産量が1位でないのは、低収量が原因でした。極端な水分ストレスはぶどうの樹にとっても良くありません。1994年、95年の干ばつをきっかけに1996年についに公的に灌漑が許可され、それに伴い質と量の向上が可能になったのです。
4. スペインワインの格付けと熟成規定
格付け
スペインでワイン法ができたのは1932年。実はフランスのAOC制定(1935年)よりも早いですが、AOCに比べるとだいぶざっくりとした格付け制度になります。テーブルワインは「Vino」、EUだとIGPに相当する広範囲の地理的表示は「Vino de la Tierra」、原産地呼称ワインはDOPと呼ばれ、上級のDOCaには現在はリオハ(1991年認定)とプリオラート(2009年認定)のみが認められています。VPは、地域としての格付けからもれた、優れた単一畑に与えられる称号です。2003年にスペインではじめてVPに認定されたのが、ラ・マンチャにあるドミニオ・デ・バルデプーサ。13世紀から続くグリニョン家が所有する畑です。
熟成規定
Crianza, Reserva, Gran Reserva
そしてスペインワインを特徴づけるのが、熟成規定です。白・ロゼ・赤ワインの熟成基準も法律で定められ、合計熟成期間と樽熟成期間の規定によりクリアンサ、レゼルバ、グラン・レゼルバに分類されます。基本的にスペインには、熟成期間が長いほど品質が高いという考えが根付いており、白・ロゼで4年、赤で5年もの熟成を要するグラン・リゼルバはより希少で高価なワインとなります。リオハの地元のバルに行くと、マダムがメニューも見ずに「クリアンサ頂戴」とオーダーしている姿を見かけることができ、熟成によるワインの分類スタイルが根付いていることがうかがえます。
5. 急激な品質向上と樽使いの変遷
スペインワインの品質はこの50年で飛躍的に上がりました。かつては酸化した茶色いワインが多かった白ワインも、醸造技術の向上によりフレッシュ&フルーティーになりました。その立役者が、ペネデスの名門トーレス社。1960年代、垣根仕立てやステンレスタンクによる温度管理などフランスで学んだ栽培・醸造技術を持ち帰りました。1986年にスペインがEUに加入すると、EUからの補助金のおかげもありワイナリーの近代化が急速に進みます。暑い地域でも温度管理や衛生的な環境が保てるようになり、スペインワインの品質は飛躍的に向上したのです。海外のフライングワインメーカーもスペインに集まるようになり、国際市場を意識したモダンなワインがどんどん造られるようになりました。
醸造面で押さえておきたいのは、やはり伝統産地リオハをはじめとする樽使いです。リオハワインの買い付けにきていたボルドーの商人に学び小樽熟成するようになったリオハですが、ボルドーと異なるのは、フレンチオークでなくアメリカンオークを用いたこと。テンプラニーリョはココナッツ風味をもたらすアメリカンオークと相性が良く、アメリカンオークによる長期熟成はクラシック・リオハの伝統的スタイルとして定着しました。その他のエリアでもアメリカンオークが伝統的に使われてきましたが、最近はフレンチオークの使用が増えています。また、凝縮感のあるパワフルな赤ワインよりピュアな果実味がより好まれる現在では、新樽の使用を控え果実の抽出を抑えたエレガントなワイン造りや十着品種への回帰が見られます。リオハでもフレンチオークを使い、熟成期間もあえて短くしてフルーティーでモダンなワインを造る新世代の生産者も増えています。
6. 主要産地と有名ワイン
リオハ、ナバラ
スペインが誇る伝統産地リオハ。老舗ワイナリーが集うアロの街の中央広場には、リオハを象徴する樽が多数飾られています。ブレンドの産地ボルドーから学んだだけあり、リオハでも品種や産地をブレンドするのが伝統的。赤ワインではテンプラニーリョを主体にガルナッチャ、グラシアーノ、マスエロ(カリニャン)等をブレンドします。グラシアーノは栽培が難しいのですが、ワインにしっかりとした酸味を与える優れた品種のため、近年栽培面積が増えており、クネ社傘下のコンティノ社はグラシアーノ100%のワインで成功しています。
リオハはリオハ・アルタ、リオハ・アラベサ、リオハ・バハの 3つのサブリージョンに分かれています。農家が造ったブドウを大手ワイナリーが購入するスタイルが根付いていたリオハでは、リオハワインも畑のブレンドであることが一般的でした。ですが、最近はテロワールを重視し、単一畑によるワイン醸造の動きも広まっています。2017年にはリオハの法律も改正され、単一畑の格付けを導入、3つのサブリージョンもラベルに表示できるようになりました。
赤ワインが有名ですが、実は白のリオハにも要注目。「トンドニア」のように樽で長期寝かせた酸化熟成型の白ワインが伝統的でしたが、今はよりピュアな果実味を引き出すためフレンチオークで短期間熟成させたモダンなスタイルのリオハ白も。シャルドネに変わる飲みごたえのある白ワインとして評価が高まっています。
お隣のナバラはもともとガルナッチャから造る色の濃いロゼが有名な産地。最近はカベルネやメルロなどの国際品種やテンプラニーリョによる赤ワインが増えていますが、一方で古木のガルナッチャから造られる赤ワインにも光が当たり始めています。
プリオラート
リオハと並びスペインで唯一DOCaに認定されているプリオラートですが、この産地が世界地図に載ったのは1980年代後半。ブドウ栽培の歴史は長かったものの、山岳地帯の急斜面という非常に厳しい栽培環境に加え、フィロキセラなどさまざまな要因が重なり、1970年代には瀕死寸前だったのです。革命を起こしたのが「プリオラートの4人組」と呼ばれる生産者のグループ(ルネ・バルビエ、アルバロ・パラシオス、カルロス・パストラーナ、ホセ・ルイス・ペレスの4人)。新樽を使い十着品種を国際品種とブレンドしたモダンなスタイルのワインが世界の注目を浴び、高級ワイン産地になりました。
主要品種はガルナッチャとカリニャン。リコレッラと呼ばれるきらきら輝く粘板岩土壌の間を這うようにブドウの根が地中深く深く伸び、低収量から凝縮感のある上質なプリオラートの赤ワインを生みだします。
また、プリオラートにはブルゴーニュをモデルとした独自の格付けがあるのですが、最低樹齢や収量制限など非常に厳しい基準があることでも知られています。例えば最上級の「特級畑」の収量規定は、たったの3t/haという雀の涙ぶり!樹齢75年以上、または1945年以前に植樹された畑のワイン(かつ収量3.5t/ha)は「古木」を名乗れるという、古木に関する規定があるのも珍しい点です。
リベラ・デル・デュエロ
DOCaにこそ認定されていませんが、リオハと並ぶ非常に高品質なテンプラニーリョ主体の赤ワインが名高い産地です。標高が高く寒暖差の激しい畑からは酸と果実味が凝縮した濃厚な長熟タイプの赤ワインが生まれます。1980年代はほぼ無名でしたが、アレハンドロ・フェルナンデスの造る「ぺスケラ」がパーカーに評価され1990年代に世界的に流行。1982年に24軒だけだったボデガの数は今では300軒以上に増えました。1864年創業の老舗名門ワイナリーであるベガ・シシリアがテンプラニーリョにカベルネやメルロといった国際品種をブレンドしていたことから、スペインでは珍しく国際品種の使用がさかんです。デンマーク出身のピーター・シセック氏の造る「ピングス」というワインは約10万円前後の、スペイン随一の超高級ワインです。
ルエダ、トロ
ルエダは白、トロは赤の産地として有名です。ルエダの白の原料となるのは土着品種ヴェルデホとソーヴィニヨン・ブラン。昔はシェリーのような酒精強化ワインが造られていましたが、1970年代にリオハのマルケス・デ・リスカルがこの地の可能性を見出し、白ワインの生産をルエダで始めたのを機に産地全体の品質が上がりました。すっきりとした白ワインが多いですが、スキンコンタクトや樽熟成したものなど、さまざまなタイプの白ワインがあり、お値段も比較的手ごろで狙い目のワインです。
お隣のトロは、地元では「ティンタ・デ・トロ」と呼ばれるテンプラニーリョの名産地。リベラ・デル・デュエロの著名ワイナリーやテルモ・ロドリゲス等のほか、LVMHなど海外からも投資がさかんなエリアです。非常に暑く乾燥した気候からは、凝縮した濃厚な赤ワインが生まれます。
ラ・マンチャ
ワイナリーの近代化による恩恵を最も受けた産地のひとつが、ここラ・マンチャといえるでしょう。内陸部の中央台地メセタの平坦な土地に広がるラ・マンチャは、スペインの全生産量の約62%を占める一大ワイン産地です。単一の原産地呼称としては世界最大、オーストラリアのブドウ畑をすべて合わせた面積より広いというから、いかほどかわかると思います。栽培面積の多くを白ブドウの地品種アイレンが占める大量生産地でしたが、1990年以降技術向上と灌漑のおかげにより、全体的な品質は上がっています。最近では、テンプラニーリョ(ここではセンシベル)やカベルネ、メルロ、シラー、そしてシャルドネやソーヴィニヨン・ブランといった外来品種の栽培も増えています。
ソモンターノ&ペネデス
固有品種の多いスペインにおける異色の存在がソモンターノとペネデス。「山のふもと」を意味するアラゴン州のソモンターノは1984年にDOに認定された新興産地で、1980年代後半以降、行政によりテンプラニーリョと国際品種の植樹が推奨されてきました。「スペインのニューワールド」とも呼ばれるエリアで、コストパフォーマンスの高いワインを生産しています。
ペネデスは、前述したミゲル・トーレスが国際品種の植樹をいち早く始めたエリア。標高の高いエリアから質の高いカベルネ・ソーヴィニヨン単体のワインや、アロマチック品種を含むさまざまな品種・スタイルのワインを造っています。そしてペネデスといえば、一大スパークリングワインの産地。マカベオ・チャレッロ・パレリャーダというスペイン品種3兄弟から瓶内二次製法で造られるスパークリングワイン、カバが有名です(カバの詳細はこちらhttps://www.adv.gr.jp/blog/kaisetsu-cava/)。コストパフォーマンスの高い泡としておなじみですが、最近は熟成期間を長くした「グラン・レゼルバ」など高級カバも人気傾向です。また、大手企業も多くワインツーリズムがさかんなのもこのエリアの魅力。ペネデスはバルセロナからも近いため、バルセロナから日帰りのワインツアーがたくさん出ています。行かれる際はぜひチェックしてみてくださいね!
ガリシア:リアス・バイシャス
21世紀に入ってからトレンドの産地として高い人気を誇るのが、ポルトガルと隣接する大西洋沿岸部のリアス・バイシャス。栽培面積のほとんどをアルバリーニョが占めています。塩気とミネラル感を感じる独特の個性あるシャープな白ワインは「海のワイン」ともいわれ、魚介類との相性も抜群。スタイリッシュなワインが世界中のワイン愛好家を魅了し、みごとファッショナブルな白ワインとしての地位をゲット。生産量が少ない割に需要が高いため、価格もスペインワインのなかでは全体的にお高め。ブランディングに成功している産地といえるでしょう。
ビエルゾ、バルデオラス、リベイラ・サクラ
リアス・バイシャスから内陸に進んだビエルゾやバルデオラス、リベイラ・サクラといった産地も最近注目のエリア。昼夜の寒暖差が大きい丘陵地帯に畑があることが多いため、酸のしっかりとしたワインが多い産地です。ビエルゾは特に十着品種メンシアの産地で、ピノ・ノワールをほうふつとさせる涼しげで繊細な赤ワインが近年大人気。プリオラートのアルバロ・パラシオスとその甥リカルドの造るメンシアが世界を震撼させました。また地域全体の品質向上に貢献した「醸造の魔術師」ラウル・ペレスの名も覚えておきましょう。
バルデオラスはゴデーリョの産地で、酸と骨格のしっかりした白ワインを産みます。ちなみにこのバルデオラスを有名にした樽発酵によるゴデーリョを造ったのは、アルバロ・パラシオスの弟であるラファエル・パラシオス。このエリアでパラシオス家の果たした役割が大きいことが判ります。その中間に位置するリベイラ・サクラもメンシアとゴデーリョから素晴らしいワインを産む注目の産地です。
アンダルシア地方
スペイン南部、アンダルシア地方はシェリーやマラガといった酒精強化ワインの産地として有名です。大航海時代の船旅にも耐え、中世でスペインワインと言えば酒精強化ワインが有名だったのです。シェリーはソレラシステムという特殊な製法で作る酒精強化ワインで、辛口から甘口、軽いものからどっしりタイプまでさまざまな味わいがあります。開封してからも日持ちがして、お値段も質の割に異常なほどお安いので家に1本常備しておくことを強くおすすめします。
その他
この数年トレンドして注目されているのは、古木のガルナッチャやカリニャンから造られるワイン。ガルナッチャの原産地とされるアラゴン州のカラタユドやカリ二ェナ、カンポ・デ・ボルハには古木が多く残るほか、マドリードの南にあるグレドス山脈当たりも最近のトレンド。標高の高い場所で育った透明感のある味わい深いガルナッチャは、ピノ・ノワール好きにもおすすめです。
7. スペインワインの当たり年
リオハやリベラ・デル・デュエロといったスペインを代表する赤ワインはいずれもしっかりとした味わいのため、上質のものは長期熟成のポテンシャルを持ちます。バックヴィンテージを探し、その熟成による変化を楽しむにも最高のワインです。ファインズ社によるヴィンテージチャートでは、以下のとおり発表されています。
リオハ
秀逸な年:2016年、2010年、2004年
とても良い年:2018年、2012年、2011年、2009年、2005年、2001年、1995年、1994年、1989年
リベラ・デル・デュエロ
秀逸な年:2018年、2016年、2010年、2004年、1994年
とても良い年:2015年、2014年、2012年、2011年、2009年、2005年、2001年、1996年、1995年
8. まとめ
知れば知るほど、その奥深さに驚かされるスペイン。レストランやワインショップで、あえてマイナー産地の美味しいワインを探してみるのも、冒険心がくすぐられますよね。超高級ワインを除いては、比較的リーズナブルなところも嬉しいポイント。ぜひ未知なるスペインワインを探しに、街に出てみて下さい!